麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年05月09日(土)
中町信「十和田湖殺人事件」読了。鹿角刑事の妻・容子が旅行先の十和田湖で転落死した二ヶ月後、釧路空港を離陸した大和航空機が墜落した。搭乗者名簿の中には容子の事件に関わる四人の名前があり奇跡的に助かった一名は記憶喪失に。そんな中、事故現場から容子の死が他殺だと示唆する遺書が見付かる。
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posted at 23:06:19
プロットの錯綜度でいえば、これまでに読んだ作者の著作の中でも間違いなく上位に入る作品。とにかく多重推理ならぬ多重ミスディレクションの凄まじさが圧巻であり、その中のある展開は折原一作品にも通じるものがある。
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posted at 23:06:42
さりげなく添えられたアリバイトリックも被害者の設定を巧く活かしているのが○。また決め手となるある特殊知識にしても、手掛かりはきちんと提示されているのでそれ自体は知らなくてもどんなものか推察するのは十分可能だろう。本作は中町作品を読み慣れた人でも真相を見抜くのは難しい秀作である。
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中町信「阿寒湖殺人事件」読了。次回作の取材のため、妻と共に道東めぐり三泊四日ツアーに参加した推理作家の氏家周一郎だったが、その初日から阿寒のホテルでツアー参加者の男が殺される事件に遭遇。やがて事態は連続殺人へと発展し、三ヶ月前に登別で起きた信用金庫強盗事件との接点が浮かんでくる。
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posted at 23:07:22
推理作家・氏家周一郎が探偵役を務めるシリーズの一作。何故か中止にならない恐怖の殺人ツアー(!)展開は相変わらずながら、ミステリとしての見所は多く、特に秀逸だったのはミスディレクションと手掛かりを兼ね備えたダイイング・メッセージと、実は○○○○物だったという真相だろう。
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posted at 23:07:37
その真相の気付きとしてあるエロミス要素(!)が関わってくる点も巧いし、何気に毒殺トリックとタバコを巡るロジックも地味に決まっている。個人的にはシリーズ中一、二位を争う佳作である。
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2015年05月10日(日)
樹下太郎「散歩する霊柩車」読了。告別式が終わった後、夫が不貞を働いて自殺した妻の相手を探すべく霊柩車で関係者の家々を廻っていく表題作の他、あるネオンが停止すると必ず東京近郊の河川で水死人が出る謎を扱った「夜空に船が浮ぶとき」など八編を収録。
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posted at 19:40:01
光文社文庫版の解説によれば本作に収録されているのは全て本格物の推理短編となっているが、本格としての出来はかなり微妙。例えば「夜空に~」は謎は面白い反面、真相に意外性は全くなく、ただのメロドラマで終わってしまっているのが難。
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posted at 19:40:31
その他の短編にしても真相がバレバレだったり、伏線が取って付けたものだったりと気になる点が多く、どちらかといえば事件を通して描かれる人間ドラマを楽しむのが吉だろう。唯一例外なのは表題作で、奇抜な展開と捻りのきいたオチに唸らされる傑作である。
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夏樹静子「夜更けの祝電」読了。バツイチOLが39回目の誕生日を迎えた夜に突然届けられた数本の紅いバラ。そして翌朝彼女はダイイング・メッセージを残して死んでいるのが発見された……。表題作を始め外部犯の殺人、交通事故、無理心中などに見せかけられた四つの事件に検事・霞夕子が挑む短編集。
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検事・霞夕子が探偵役を務める倒叙ミステリシリーズの一作。とはいえ表題作のみは例外で通常のミステリ同様、犯人が伏せられている。全編、基本的に事件の重要なキーワードがタイトルになっているが、中でも最もその使い方が上手かったのは女友達の復讐劇を描いた「早朝の手紙」だろう。
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posted at 19:41:12
オーソドックスではあるが、犯人を追い詰める際の演出も実に効果的。次点は追突事故に見せかけた殺人という変わり種の「知らなかった」で、事件の焦点がどこにあるのか、ぎりぎりまで掴ませない展開は面白いが、そこが判明して以降は些か駆け足気味なのが惜しい。
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posted at 19:41:24
逆に最も微妙なのが表題作で、ダイイング・メッセージが出てきた瞬間にある程度ミステリを読み慣れている人であれば容易に真相が読めてしまうため、折角の決め手があまり効果を上げていないのが残念。
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2015年05月15日(金)
大槻一翔「薫子さんには奇なる解を」読了。密室状況から消えた本、失われたメロディの意味、ドッペルゲンガーの謎、そして回想のホワイダニット――今日も僕は彼女・九条薫子さんのために謎を解く。彼女は言う。「事実が面白ければ正解を。つまらなければ、桐生くんの考えた奇なる解を教えてください」
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posted at 22:34:34
探偵役に求められるのが真相よりも面白い解決という異色連作ミステリ。作中で度々、カーやチェスタトン、クリスティなどが引き合いに出される時点で作者がかなりのミステリ好きであることが窺えるが、ただ引き合いに出すのではなく解決の方もそれらを踏まえたものであるのが素晴らしい。
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posted at 22:34:45
また扱われる事件は不可能状況からホワイダニットまで幅広いバリエーションを取り揃えており、中には構図の反転をかました後にフーダニットへと繋げるなどなかなか凝った構成で魅せてくれるものまである。
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posted at 22:35:03
但し最後の事件に関しては連作として纏める都合上、面白い解とは言い難いのが残念だが、それでも伏線の妙を感じることはできる。レーベル的にミステリ好きで手に取る人は少ないかもしれないが、本格ミステリとしても普通にお勧めできる良作である。
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2015年05月17日(日)
伽古屋圭市「なないろ金平糖 いろりの事件帖」読了。時は大正。金平糖専門店「七ツ堂」の看板娘・いろりには千里眼の能力があった。彼女はその力を使い、会話を交わすことのできる猫のジロと共に舞い込んでくる様々な事件を鮮やかに解決していく。
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posted at 00:27:12
千里眼持ちの金平糖屋の看板娘が探偵役を務める連作ミステリ。捜査の際に食べる金平糖の種類によって発揮される千里眼の能力が違うなど工夫を凝らしてはいるものの、扱う事件自体はたわいないものばかりで真相がすぐに読めてしまうのが難。
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posted at 00:27:53
どちらかといえば連作としての纏めの方に力が入れられているが、そちらにしてもどれが伏線でどう回収していくのかが手に取るように分かってしまうので、意外性を求めるとどうにも物足りなさが否めない。故に最初から意外性は求めず、その予定調和ぶりを楽しむのが吉な作品である。
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posted at 00:28:17
村崎友「風の歌、星の口笛」読了。次々と壊れるペットロボットを皮切りに街のあちこちで観測される異変、砂漠化し滅びてしまった星で発見された密室の死体、姿だけではなく人々の記憶からも消え去った恋人の謎……無関係と思われた三つの物語が一つに繋がる時、壮大なトリックが明らかになる。
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posted at 22:51:01
第24回横溝正史ミステリ大賞受賞作。本作の優れている点は何といっても密室トリックを成立させるためだけにSF的ホラ話をでっちあげたことであり、SFとしては落第だけどトリックの奇想がいいと褒めている綾辻、北村両氏の選評が大変微笑ましい。
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posted at 22:51:12
ただ三つの話が一つに繋がるという趣向に関しては正直なくても成立するのでは? と思わないでもないが、個人的には前述したトリックをやってのけてくれた点だけでも大いに評価したい。
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posted at 22:51:35
日影丈吉「内部の真実」読了。太平洋戦争末期の台湾で起きた殺人事件。闇夜の庭園で拳銃による決闘を試みた二人の男のうち、一人が至近距離から射殺され、もう一人が頭を殴られ気絶していたのだ。だが奇妙なことに生存者の拳銃には弾丸が充填されていなかった。
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posted at 22:51:46
一つの射殺事件を巡り次々と仮説が示されては否定されていく展開がまず圧巻で、しかもそれらが全て真相のミスディレクションとして機能しているのが素晴らしい。更に不自然な語りも計算済みという念の入りようで、それが最終的にあるテーマを浮き彫りにする。
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2015年05月23日(土)
仁科裕貴「座敷童子の代理人」読了。座敷童子がいると噂の旅館「迷家荘」にネタ探しにやって来た妖怪小説家・緒方司貴。彼はそこで偶然出会った妖怪少年の力で妖怪が見えるようになったことから「座敷童子の代理人」として旅館に集まる妖怪たちが持ち込むおかしな事件を解決していくことになる。
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posted at 16:34:52
妖怪、人情、ミステリを詰め込んだ結果、ミステリ部分が余計なものに感じられてしまう残念な作品。それでも一話から二話にかけては何とか設定を活かした謎解きをやろうという努力の跡が感じられるのだが、三話以降は明らかにミステリ部分が浮いていると言わざるを得ない。
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posted at 16:35:02
最後のオチにしても捻りすぎて物語にうまく溶け込んでいるとは言えず、結果的には微妙な読後感になってしまった。これなら最初からミステリ抜きの妖怪お悩み相談物に徹してしまった方が良かったように思う。
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posted at 16:35:23
岬鷺宮「放送中です!にしおぎ街角ラジオ」読了。夢破れてしまった大学生三人組が西荻窪の喫茶店の片隅で始めたミニFM局の番組『アットホームナイト』。それぞれに夢を抱えつつも足踏みしている三人がリスナーからの相談を解決したりしなかったり、たまには夢を叶えたりしていく連作短編集。
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失恋探偵シリーズで知られる作者の非ミステリ作品。とはいえ収録作の中にはミステリっぽい意外性も一応盛り込まれていたりする(ただ厳密にミステリとしてみると伏線が弱過ぎるのが難ではあるが)。
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物語的にはローカルラジオらしいアットホームな雰囲気と夢を追う若者たちの姿が巧く溶け込んでおり、それに失恋探偵シリーズで培った連作を纏めあげる構成力が加わって最後まで気持ち良く読ませてくれる快作である。
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posted at 16:40:42
風見潤「TOKYO捕物帳」読了。中学生の亜矢が住んでいる近所にある怪談話で有名な妙廉寺で次々と人が消え、それから間もなく少し離れた廃病院で首のない死体が発見される。そんな中、怪談の元になった殺人事件を追っていた目明かしだった亜矢のご先祖様が江戸時代からタイムスリップしてきて……。
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posted at 19:50:32
TOKYO捕物帳シリーズの一作目。江戸時代と現代でそれぞれ起きる首切り殺人の謎に迫るという内容がまず魅力的で、それにタイムスリップ物の面白さまで加わり、読み物としては非常に楽しい作品に仕上がっている。
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ただその反面、事件の不可解さを演出しようとするあまり、肝心の手掛かりがかなり後にならないと出てこないなどバランスの悪さが気になる。また首切りの理由も凡庸なのが残念。とはいえ、色々と読みどころの多い作品である。
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posted at 19:51:08