麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2017年07月01日(土)
風見潤「卒業旅行幽霊事件 」読了。大学の卒業を間近に控えたある日、麻衣子たちの前に人間が落ちてきた。それはかつて麻衣子と対決した怪盗シルバーアイだった。怪盗の切り裂かれた喉から漏れた言葉を手がかりに調査を始めた麻衣子たちの前に立ちはだかる謎の数字「16、12、79」は何なのか?
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posted at 21:37:29
幽霊事件シリーズの学生編最終作。本作は怪盗が登場する関係上、本格ミステリというより冒険サスペンスに比重を置いた内容になっているが、最後までそれでいくのかと思っていると意外なところに仕掛けが用意されていたりするので油断ならない。
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posted at 21:37:46
尤も仕掛け自体はよくあるものながら、伏線の張り方が実に自然なので気付く人はそんなにいないのではないだろうか。学生編の掉尾を飾るという点でやや物足りなさが否めないものの、それに目を瞑りさえすれば気軽に楽しめる良作だと思う。
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posted at 21:38:02
2017年07月02日(日)
風見潤「死んでも死ねない殺人事件 」読了。小さなコンピュータ・ソフト会社の電話係のバイトを始めた女子大生の島津絵理子。夏休み返上だけど、まっ、いいか。だって苦手なこの業界の内幕をお金もらって覗けるっていうのも面白そうだし。だけど、いきなり社長室に死体、しかもそれが目の前で消えた!
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posted at 16:21:27
幽霊事件シリーズにも登場する女子大生・島津絵理子が探偵役を務める長編ミステリ。連続死体消失事件を扱った本作はネタ自体はよくあるものながら、事件の演出や検証が丁寧に描かれているのは好印象。またある小道具からの気付きとSF好きの冗談を巧く事件の構図と結び付けている点がいい。
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posted at 16:21:48
ただその反面、ミスディレクションのためとはいえ、メインの事件とは全く関係のない事件を入れるのはどうかと思うし、作中で語られるコンピュータ知識が今となってはだいぶ古びてしまっているのも気になる。とはいえ致命的な欠点というわけでもないので、そこは割り切って楽しむのが吉な作品である。
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posted at 16:22:09
2017年07月11日(火)
風見潤「恋愛ゲーム殺人通信」読了。零細編集プロダクションに勤める宝生敦子は晩夏のある日、原稿の進まない翻訳家・加賀淳平宅を訪れた折り、OL時代の親友・高瀬知美の自殺を知らされる。通夜の席上、機械嫌いだったはずの知美がパソコン通信をしていた形跡を発見した敦子は……!?
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posted at 13:05:15
パソコン通信を題材にした長編ミステリ。パソコン通信というと今や隔世の感があるが、実際読んでみると意外とやっていることは今のネットでのやり取りとあまり変わっていないような気がする。
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posted at 13:06:04
ミステリとしてみると犯人は分かりやすいが、それよりもあるものをでっち上げた点に見るべきものがあり、そこから犯人を追い詰める根拠に繋げている点も巧い。小粒ながら手堅く纏まった作品である。
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posted at 13:06:11
早坂吝「ドローン探偵と世界の終わりの館」読了。北神大学探検部が向かった先は北欧神話の終末論に取り憑かれた男が建てた迷宮「ヴァルハラ」だった。神話に基づいた仕掛けが至るところに施されたその場所で一人、また一人と襲われていく部員たちをドローン探偵こと飛鷹六騎は救うことができるのか?
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posted at 23:14:20
本書には、ドローンという最先端の科学技術を使ったトリックが仕掛けられている。今回諸君らに取り組んでいただくのは、そのトリックが何かを当てるということである――そんな不敵な挑戦状から始まる本作は、どことなくタイトル当てを謳った作者の処女作を彷彿とさせるものがある。
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posted at 23:14:45
しかし似ているのはそこだけではない。本作に盛り込まれた謎の数々は全てある大ネタと有機的に結び付いており、大ネタが明かされることで全ての謎が芋づる式に解けるようになっている構成が実に秀逸。加えて、探偵役の存在が大ネタの絶妙なミスディレクションになっている点もいい。
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posted at 23:16:07
ただその反面、犯人を絞り込む根拠に些か物足りなさを覚えなくはないが、それを差し引いても充分お釣りがくるくらいの満足感がある。本作は構造的に見れば綺麗な(?)「○○○○○○○○殺人事件」とも言える傑作である。
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2017年07月13日(木)
鳥飼否宇「紅城奇譚」読了。16世紀中頃。九州にある勇猛果敢で「鬼」と恐れられた鷹生龍政の居城・紅城で次々と起こる摩訶不思議な事件。消えた正室の首、忽然と現れた毒盃、殺戮を繰り返す悪魔の矢、そして天守の密室――眉目秀麗な鷹生氏の腹心・弓削月之丞が真相解明に挑む。
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posted at 23:48:07
紅城と名付けられた戦国時代の城を舞台にした連作ミステリ。本作は言うなれば作者が得意とする逆説的本格ミステリで血塗られた因果を見事に描ききった作品であり、扱っている事件も後半になればなるほど真相のおぞましさが増していく点がいい。
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posted at 23:48:49
ただその一方でテーマが明確になっていくにつれ真相が見えやすくなってしまっているきらいがあるが、それも最後の事件「天守の密室」における戦国ならではのダイナミック過ぎる謎解きを見せられてしまうとさして気にならなくなる(というか変な笑いが込み上げてくる)。
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2017年07月14日(金)
吉田恭教「化身の哭く森」読了。七年前に消息を絶った祖父の痕跡を探すため「入らずの山」と呼ばれる禁断の地に足を踏み入れた大学生・春日優斗と友人たち。下山後、ほどなくして彼らは次々と死を遂げる。更には祖父と繋がりのあった探偵も六年前に変死していた。これは祟りかそれとも……。
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私立探偵・槙野康平と鉄仮面と渾名される女性刑事・東條有紀が活躍するシリーズの四作目。このシリーズは代々犯人が鬼畜という特徴があるが、今回の犯人もそれに負けず劣らずなかなかの鬼畜っぷりで、特に第三章で犯人が使った人を人とも思わない殺人トリックには痺れた。
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posted at 23:52:31
その一方でシリーズのもう一つの特徴であるホラー要素がミステリ的仕掛けに絡んでいないのは残念だが代わりに物語としては巧く噛み合って独特の余韻を生み出すことに成功している。個人的にかなり難ありだったシリーズ前作「鬼を纏う魔女」から一転、本作はその不満を見事に払拭してくれる良作である。
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posted at 23:53:54
2017年07月16日(日)
「ノーゲーム・ノーライフ ゼロ」観了。全体的に設定絡みの説明が端折られているため、TVアニメ版を観ているだけだとかなり分かりづらいかもしれない。とはいえ大まかな流れを追うだけなら何とかなるし見応えのあるシーンも多々あるので、ノゲラが好きという人なら一見の価値はあると思う。
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posted at 22:55:08
2017年07月19日(水)
詠坂雄二「T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか」読了。月島前線企画に持ち込まれた既解決事件。孤島に渡った六人が全員死体で発見されたが当人たちによって撮影された渡島から全員死亡までの克明な録画テープが残っていた。何が起こったかはほぼ明確だ。ところが依頼人は不満のようで――。
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posted at 22:46:49
作者久々の長編本格ミステリ。しかしながら本作を本格ミステリと言い切ってしまっていいものかどうか正直躊躇っている。というのも本作を所謂クローズドサークルテーマの本格ミステリだと思って読んだ場合、間違いなくつまらないからだ。
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posted at 22:47:30
だが困ったことにこのつまらなさは作者の計算通りであり、作者の狙いは本来のクローズドサークル物とは全く別のところにある。というか普通こんなネタで長編を一本書こうとは思わないだろうが、それをあえてやってしまうところが作者のひねくれものたる所以だろう。
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posted at 22:48:05
言うなれば本作は作者が小説という媒体で作り上げたフェイクドキュメンタリーであり、その出来の悪さに思わず読者が苦笑いするところまでが計算通りという何ともタチの悪い問題作である。
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posted at 22:48:26
2017年07月20日(木)
井上真偽「探偵が早すぎる(下)」読了。父から莫大な遺産を相続した女子高生の一華。四十九日の法要で彼女を暗殺するチャンスは寺での読経時、墓での納骨時、ホテルでの会食時の三回――犯人たちは今度こそ彼女を亡き者にできるのか? 完全犯罪トリックvs.事件を起こさせない探偵の結末やいかに?
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posted at 20:54:41
事件が発生する前に探偵が犯人やトリックを突き止め、事件を未然に防ぐ倒叙形式連作ミステリの完結編。犯人たちが文字通り束になってかかってくる総力戦とも言える内容を考えると仕方ないのかもしれないが上巻の時に比べるとトリックが質より量になっているのがまず気になった。
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posted at 20:54:55
他にも気付きが気付きになっていない部分がある、一部のトリックに前例がある、ラストのトリックへの対応がスマートではないなど気になる点が多々あるが、どちらかというとミステリとしての出来より細かいことは気にせず漫画的ノリを楽しんだ方が吉な作品である。
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2017年07月21日(金)
菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」読了。ツアーで訪れた無人島で死んだ最愛の人・美紀。好奇心旺盛で優しい彼女は事故に遭ったのだ。僕は生きる意味を喪い自堕落な生活を送っていたが美紀と一緒に島にいた女と偶然出会いある疑いを抱く。美紀は誰かに殺されてしまったのではないか――。
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posted at 09:32:59
恋人の死の真相を探る青年の捜査行と孤島で起きた殺人事件の顛末が交互に描かれる本作は、メインの仕掛けだけ見ればそれほど新鮮味はないかもしれない。むしろミステリ読みが本作で注目すべきは作中からひしひしと感じられる殊能将之リスペクトだろう。
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posted at 09:33:09
以前作者は好きな作品に「ハサミ男」を挙げていたが、本作を読めばその殊能将之の某作をかなり意識しているのがよく分かる。それでいて作者ならではの血と暴力で彩ることにより、ただのオマージュ作品では終わっていないあたりが好印象の良作である。
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posted at 09:33:36