麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2018年06月20日(水)
稲羽白兎「合邦の密室」読了。子供に毒を盛る母親、虚空に浮かぶ生首と崩れた顔、消えた三味線引き……。それらは全て四十四年前、文楽の巡業の最中に孤島で起きた凄惨な殺人事件に繋がっていく。そして四十四年ぶりに文楽の巡業が訪れた孤島で再び事件が――。
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posted at 21:07:11
第9回島田荘司選ばらまち福山ミステリー文学新人賞準優秀作。粗筋だけ見ると一見本格ミステリのように思えるが、個人的には本格に似た別のものを読まされた感覚が否めない。一応不可解な謎は幾つも用意されているが、その真相はどれも面白みに欠けるのもさることながら何より統一感のなさが気になる。
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posted at 21:07:31
もしかしたら作者的には作中に出てくるある社会派要素が一番書きたかったのかもしれない。しかしながらそれをやるには描写が極めて不足していると言わざるを得ないし、過去の事件はまだしも現在で事件が起きる必然性が弱すぎるのも難。個人的には期待していただけに残念な出来だった。
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posted at 21:08:26
2018年06月21日(木)
山崎洋子「緋色の真珠」読了。雑誌連載で人気が出てきた真珠占い師・高原野衣の客の一人・野々宮久美が、まるで野衣に殺されたかのような嘘をつき絶命した。警察の追及を逃れ、編集者の笠木と事件の真相を探り出す野衣。ところが見つけたのは、無残に変わり果てた野衣と瓜二つの死体だった。
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posted at 20:05:50
巻き込まれ型の長編サスペンスミステリー。主人公の身の回りで次々と起こる事件はジャーロ映画を思わせる怪奇性に満ちており、読者をいい感じで翻弄してくれることだろう。但しミステリとしてみると物語として必要な伏線はあるが謎解きに必要な伏線はあまりなく、やや物足りなさを覚えるかもしれない。
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posted at 20:06:04
しかしながら、さりげなくミステリではお馴染みの手法を使って真相の意外性を演出している点は○で、ガチガチのミステリさえ求めなければ気軽に楽しめる作品である。
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posted at 20:06:19
2018年06月24日(日)
山崎洋子「禁じられた吐息」読了。女画家の家に突然やって来た青年の正体、今までなついていた義理の娘が一転して憎悪を向けてくるようになった理由、SMショーで知り合った調教師の男と怪しい一夜を過ごした女を待ち受ける罠、教え子を監禁する女教師の真意……エロスとサスペンスに満ちた四編収録。
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posted at 16:17:13
女たちのエロスをテーマにしたミステリ作品集。収録作はどちらかというとサスペンス寄りのものが多いがその中でミステリ度が高いものを挙げるとするなら「月の吐息」だろう。義理の娘の心変わりの理由を探るこの短編は一見するとスリラー物のようだが終盤、思わぬ構図の反転であっと驚かせてくれる。
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posted at 16:17:35
その他「熱い闇」は教え子を監禁する女教師の幻想ホラーのような異常な告白に引き込まれるしSMショーの何とも言えないいかがわしい魅力が気が付くと物語全体を覆っている「甘い血」も忘れ難い印象を残す。唯一「蜜の肌」がオチにやや物足りなさがあるものの語りの巧さがそれを補っているように思う。
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2018年06月26日(火)
三津田信三「碆霊の如き祀るもの」読了。断崖に閉ざされた海辺の村に纏わる四つの怪談。その怪談の内容をなぞるように起こる連続殺人事件。一人目は竹林の迷路の中で餓死、そして二人目は物見櫓から墜落し海中に消えた。どこか辻褄が合わないもどかしさの中で刀城言耶がたどり着いた「解釈」とは?
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posted at 13:39:04
刀城言耶シリーズの長編七作目。四つの怪談をなぞるような連続殺人事件の謎に刀城言耶が挑む本作は事件が起こるのが二百頁過ぎてからというスローペースながら、一度事件が起こってからはそれまでの展開が嘘のように矢継ぎ早に不可能犯罪が発生し、読者をいいように翻弄してくれる。
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posted at 13:39:25
ミステリとしては事件の構図が村の秘密と有機的に繋がっている点もさることながら何より最後に明かされる壮大かつ人間性を無視した動機に空恐ろしさを覚える。また個々の事件としては何気ないエピソードが第一の事件の意外なヒントとなる点、第二の事件のミステリ読みならニヤリとする伏線などがいい。
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posted at 13:39:42
シリーズではお馴染みの、次々と容疑者が浮かんでは消える怒濤の推理のビルド&スクラップも健在で、ミステリ読みがこの刀城言耶シリーズに求める高いハードルを軽々と超えてみせた傑作と言っていいだろう。
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posted at 13:40:11
2018年06月27日(水)
宇佐美まこと「骨を弔う」読了。骨格標本が発掘されたことを報じる地元紙の小さな記事を見つけた家具職人・豊は数十年前の小学生時代、仲間数人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。だがそれは記事の発掘場所とは明らかに異なっていた。あの時、自分たちが埋めたのは本当に標本だったのだろうか?
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posted at 22:13:41
映画「スタンド・バイ・ミー」のその後を描いたような雰囲気が漂う回想の殺人物。骨の持ち主探しという設定は魅力的だが、その謎解き自体はそれほど難易度は高くなく、パズルのピースが大方の予想通り収まるところに収まってしまった印象があるが、あいにく本作のキモはそこではない。
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posted at 22:15:32
かつて骨を埋めた子供たちは大人になって様々な苦境に立たされており、事件は言わば彼らが新たな人生に踏み出すための通過儀礼に過ぎないのだ。とはいえその新たな人生の門出に作者は単純ながら絶妙な仕掛けを最後に用意しており、そこにやられた感と深い感動を同時に味わうことができる傑作である。
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posted at 22:16:15
2018年06月29日(金)
天祢涼「罪びとの手」読了。遺体となって発見された葬儀屋の父と「俺の葬式はあげないでくれ」と言っていた父の遺志に反して葬儀を強行しようとする次男、遺体は父ではないと断言する長男、そしてその遺体の謎を追う刑事……様々な要素が絡み合う中、やがて意外な犯人と動機が明らかになる。
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posted at 21:19:36
「葬式組曲」に続く葬式シリーズ第二弾……というのは半分冗談だが、本作と「葬式組曲」は葬式というモチーフの他に構成がよく似ている。連作形式で葬式に纏わる小道具とミステリ的仕掛けを効果的に用いることで、登場人物の人間性を浮き彫りにしていく過程は実に見事と言わざるを得ない。
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posted at 21:19:47
しかしながら本作は一番肝心なメインの事件の真相に些か問題があり、それまでの仕掛けの丁寧さに比べると色々安直なきらいが否めない。加えて本来なら感動に直結するはずのホワイにしても確実性に欠けるため、イマイチすっきりしないのも難。途中までは良かっただけに、かなり勿体ない作品である。
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posted at 21:20:06