麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2018年06月02日(土)
山田正紀「篠婆 骨の街の殺人」読了。忘れられた街・篠婆に伝わる正体不明の名陶。鹿頭勇作(しがしらゆうさく)はここを舞台にミステリを書こうとローカル線に乗った。ところが出入り不可能な走行中の列車内に男の死体が……。乗客は被害者と勇作のみ。更に陶芸の窯の中から突如人骨が出現して――。
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山田正紀流トラベルミステリシリーズの一作目。しかしながらシリーズは未だに本作以降出ていないのが悔やまれる。それはさておき本作はトラベルミステリといっても架空の街を舞台にした幻想ミステリの趣が強く、登場人物に見られるオズの魔法使いモチーフや解明されない謎がそれに拍車をかけている。
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posted at 16:42:12
ミステリとしては被害者の性格を巧く活かした謎の見せ方とその真相に面白さはある反面、その他の真相に関してはさらりと語られすぎて事件自体の印象が薄すぎたり伏線は張ってあるものの想像をかなり逞しくしないと真相に到達できなかったりするのが難。傑作とは言い難いが独特な魅力のある作品である。
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2018年06月03日(日)
「ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛」観了。ブードゥー呪術で殺された愛する女を剥製にした男の狂気を描いた話。人間剥製の製作過程や硫酸バスタブなどの生々しさやゴブリンの耳に残るエレクトロな劇伴など見所が多い反面、物語のオチが唐突かつあさっての方向にいってしまったのがやや残念。
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2018年06月04日(月)
「ドールズ」観了。嵐の夜、迷いこんだ屋敷で人形たちに襲われる話。手作り感溢れる特撮で描かれる猟奇シーンが実に味わい深く、一部のシーンはジョジョ四部を彷彿とさせる。基本的には悪い大人ばかりが狙われる道徳映画であり、お約束のオチも含め寓話的ホラーと言うべき何とも愛らしい作品である。
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楓牙「ふしだらな兄妹」読了。エロ漫画としては安定したクオリティーだがミステリとしてみるとかなり微妙。犯人が完全に後付けなのもさることながらそもそも何故少女誘拐殺人犯が保険金殺人の共犯になっているのかが謎。各キャラの物語は悪くないだけにミステリとしてもきちんと完成させてほしかった。
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2018年06月10日(日)
織守きょうや「世界の終わりと始まりの不完全な処遇」読了。九年前に一度会ったきりの美少女を想い続ける、大学生の花村遠野。 彼が通う大学の近辺では人外の仕業とも噂される血まみれの惨殺事件が起きていた。サークルの仲間と現場を訪れた遠野はそこで記憶の中の美少女にそっくりな姉妹と出会う。
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初恋の行方を描いた恋愛物語と吸血鬼探しのフーダニットを主軸にした青春ミステリ。吸血鬼設定はどちらかというと、ゆうきまさみ「白暮のクロニクル」に近いが、「白暮~」と比べて本作は少女漫画風のテイストで主人公の初恋を時に甘く、時に切なく演出しているのがいい。
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一方ミステリとしてみると伏線はあからさまながらも推理小説ではお馴染みのあるテクニックとシンプルかつ巧い盲点を活かして、真相においそれと辿り着けないように工夫を凝らしているのは○。また本作は実にいいところで終わっており、読了後、思わず続きが読みたくなること請け合いの快作である。
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2018年06月15日(金)
加藤元浩「Q.E.D.iff」10巻読了。豪華客船の上で6組の「アウトロー」が集められ、お互いを出し抜いてカギを奪い合うゲームを描く「アウトローズ」、南の島にある廃墟ホテルで見付かった白骨死体。事件を追う探偵もまた密室で倒れているのが発見される「ダイイングメッセージ」の二編収録。
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「アウトローズ」は作者が得意とするコンゲーム物であり、不動点定理を使ったロジックで次々と参加者たちの手口を暴いていくのが面白い。尤もそのロジック自体はそういう風にも捉えることができるという厳密性に欠けたものではあるが、それでも派手などんでん返しの連続が見ていて楽しい快作である。
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一方ロジックで言えば「ダイイングメッセージ」の方が良くできていて廃墟のホテルという舞台を活かしたロジックと密室トリックが秀逸。またタイトルにもなっているダイイングメッセージにしてもある事実を曖昧にしたことで大胆なミスディレクションが巧く決まっており全体的に完成度が高い作品である。
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2018年06月16日(土)
山崎洋子「吸血鬼たちの聖夜(イブ)」読了。テレビドラマの撮影現場で女優の卵の焼死体が見つかった。数ヵ月前までは33歳の平凡な主婦だった彼女を憎んでいた奴はヤマほどいる。わたしは、わたしを醜い焼死体にした人物を、決して許さない――。被害者が犯人探しに乗り出す表題作ほか、四編を収録。
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posted at 12:48:22
女たちの様々な計算違いをテーマにしたミステリ短編集。収録作はミステリ系とサスペンス系の二つに分けられるが、ベストを選ぶなら前者は表題作、後者はあるスター女優が夫と寝た若く有望な女優を亡き者にしようとする「妖女狂演」になるだろう。
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表題作は設定そのものが巧いミスディレクションとして機能しており、それを活かしたサプライズもさることながら容疑者たちの駆け引きを丹念に描くことでブラックなオチを際立たせているのがいい。一方「妖女狂演」は展開自体はありがちなものながら、そこまでするかという女の執念にぞっとさせられる。
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posted at 12:49:14
その他の短編も記憶喪失の女が陥る恐怖を描く「メランコリーは危険」は某長編ミステリを彷彿とさせる真相ながら、そこに至るまでのサスペンス的展開で読ませるし、「愛する人に、きらめく死を」「やさしいだけでは生きられない」の皮肉なオチが何とも味わい深い。全体的に快作揃いの作品集である。
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posted at 12:49:24
「デッドプール2」観了。前作に比べると中二病バトルが減ったのは残念だが代わりに予算と愉快な友達が増え、ギャグのキレも増したのは○(特にくまのプーさん)。また綺麗に話を纏めた後のご都合主義なオチは普通なら賛否分かれる所だろうがこの作品なら問題ないと思う(恐らくそれも織り込み済み)。
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「ニンジャバットマン」観了。戦国時代でバットマンとジョーカーが対決する話。基本的にはオールスター総出演的お祭り映画であり、次々と出てくる日本のオタク趣味を凝縮したような面白ギミックが◎。終盤のタイトルを回収した展開も実に熱く、細かいことさえ気にしなければ大いに楽しめる映画である。
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2018年06月17日(日)
狩久「不必要な犯罪」読了。若く美しい雨宮姉妹の妹・杏子をモデルにした中杉画伯の傑作「叢林の女」が盗まれた。絵は一週間後に戻ってくるが絵の中の裸婦には何故か緻密な恥部が描き加えられていた。それから間もなく男たちを魅了する姉・葉子の許に殺人を予告する脅迫状が届き、遂に殺人事件が――。
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posted at 15:14:43
作者の最初にして最後の長編ミステリ。本作で殺人事件が起こるのは中盤になってからであり、それまでは主に美しい姉妹の姉・葉子の性遍歴が、匂い立つような官能描写と共に描かれていくが、これが後に巧みなミスディレクションとして機能する点が実に秀逸。
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posted at 15:15:02
加えて事件が起きて以降、登場人物たちによって展開される幾つかの仮説もそれぞれ見所があるが、それ以上に素晴らしいのが逆説に満ちた真相であり、タイトルに込められた意味には大いに唸らされた。また結末もひと夏の幻のような切なさがあり、読者の心に何かしら残すであろう傑作と言っていいだろう。
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posted at 15:15:13
ここからは余談だが、個人的には解説が梶龍雄なのも良かった。あとシチュエーション的には妖艶な年上ヒロインがまだ幼さの残る童貞高校生を導く展開が良かったが、今思えば梶龍雄が解説を引き受けたのはそれが理由だったのだろうか?←
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2018年06月18日(月)
香納諒一「完全犯罪の死角 刑事花房京子」読了。父親から引き継いだ会社を守るため、沢渡留理は兄とその愛人を痴情のもつれを装って殺した。翌朝、留理は家政婦から家に強盗が入って兄が殺されたという連絡を受ける。一体何が起きたのか? 困惑する留理の前に花房京子という女刑事が現れて――。
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posted at 23:18:22
ハードボイルドや警察小説の書き手として知られる作者初の倒叙ミステリ。犯人が予期せぬ強盗犯の介入というハプニングが事件をやや複雑にさせているものの、基本的にはオーソドックスな倒叙物の展開で、女刑事が現場などに残された些細な手掛かりから徐々に犯人を追い詰めていく。
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posted at 23:18:56
だがそこには手堅いながらも意外性はあまり見られず、少々物足りないかなと思っていたら最後の最後に女刑事が犯人に突き付ける決め手で成る程、だから作者はわざわざこういう構成にしたのかと唸らされた。少々手掛かりが後出し気味なのが気になるが、それを差し引けば構成そのものは面白い快作である。
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2018年06月19日(火)
折原一「ポストカプセル」読了。ラブレターが、遺書が、脅迫状が、礼状が、文学賞の受賞通知が、15年遅れで届いたら――? 15年遅れで届いた手紙が思いもよらない騒動を引き起こす。そして、心温まるはずの善意の企画(?)の裏に隠された、驚愕の真相とは?
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タイムカプセルならぬポストカプセルという企画によって15年遅れで届いた手紙をテーマにした連作ミステリ。短編ミステリとしてみた場合、収録作はいずれも手堅い出来で、何かしらの捻りを用意してこちらの予測を巧く外してくるのがいい。
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特に「受賞作なし」が作者の某作のセルフパロディと言うべき内容となっており某作を読んでいるとブラックユーモアなオチも含め思わずニヤリとなるだろう。一方連作としてみた場合、最終的な真相が辻褄合わせに終始してイマイチ意外性に欠けるのが難。とはいえレベルの高い連作ミステリではあると思う。
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posted at 21:50:01