麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2019年03月17日(日)
ガストン・ルルー「ガストン・ルルーの恐怖夜話」読了。片腕の老船長が語る奇怪な話「胸像たちの晩餐」、コルシカの復讐譚に材をとった「ビロードの首飾りの女」、結婚相手が次々と怪死を遂げる娘の物語「ノトランプ」など、いずれ劣らず生々しく人間心理の闇を描いた八編を収録。
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「黄色い部屋の謎」「オペラ座の怪人」の作者による怪奇小説集。特筆すべきは収録作のほとんどがいわゆる超常現象を扱っておらず、あくまで人間心理の闇を主軸にしている点だろう。それでいて魅力的な謎で読者を惹き付け、意外な真相(オチ)がきちんと用意されている所にミステリ作家らしさが窺える。
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posted at 14:35:12
ベストは「胸像たちの晩餐」で国内作家Kの某ミステリ短編を更に悪乗りさせたようなフリークス趣味全開の展開とオチが堪らない。また「ノトランプ」や「金の斧」のミスディレクションがきいた物語と盲点をついた真相も○。一編一編が短く訳も読みやすいので翻訳が苦手な人にもお勧めできる良作である。
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「PSYCHO-PASS SS Case.3恩讐の彼方に__」観了。傭兵となった狡噛慎也がひょんなことから両親の復讐を誓う少女と師弟関係になる話。かつての狡噛と少女を重ね合わせることで狡噛の心境の変化を巧く描いており、三部作中最も出来がいいように感じた。またいい意味で三期の展開を匂わせる結末も○。
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2019年03月18日(月)
酒本歩「幻の彼女」読了。ドッグシッターの風太に、元カノ・美咲の訃報が届く。まだ32歳なのにと驚く風太。ほかの別れた恋人、蘭、エミリのことも思い出し、連絡を取ろうとするが、三人はまるで存在しなかったかのように、一切の痕跡が消えてしまっていた……。三人の元カノに一体何が起きたのか?
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第11回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。本作は小説としてみると文章はかなり粗削り、一部の登場人物がイタイ、ドッグシッターの話が本筋とは全く関係ないなどの欠点を抱えているものの、それらを全て帳消しにしてしまう真相の衝撃度が半端ない。
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感動は落差とは言うが、本作もまた三人の元カノが失踪しただけという昨今のミステリとしてはいたって地味な謎だからこそ真相の衝撃がより効果的になっているように思う。ちなみに選者の島田荘司氏は本作を21世紀本格として評価しているが、個人的には本格というには些か手掛かりが不充分な気がする。
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しかしながらこのネタを読みやすくコンパクトに纏めあげた点は充分評価すべきであり、本格かどうかさえ気にしなければ21世紀版「幻の女」とも言うべき秀作と言っていいだろう。
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2019年03月20日(水)
西澤保彦「夢の迷い路」読了。ダイイングメッセージに纏わるクイズ、ワインが証明する奇妙なアリバイ、昔住んでいたアパートで発見された死体、その日に限って遭遇する不思議な出来事の数々……本好き美少女・エミールとジャンク映画フリークの少年・ユキサキが四つの追憶の謎に挑む連作ミステリ。
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「さよならは明日の約束」に続く、過去に起きた事件の謎を現代の高校生コンビが解決するシリーズの二作目。前作にはまだあった青春ミステリ要素はすっかりなりをひそめ、ほとんどいつもの複雑な人間関係に隠された真相に迫る西澤ミステリと化している。
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しかしながらその複雑な人間関係も前半二編はあまり巧く機能しておらず、三編目にしてようやく巧くハマった感がある。四編目の表題作に関しては収録作中最もミステリ度が低いもののキャラの掘り下げと締めの話としては良かったと思う(あと作中でボロクソに言われている「ゼイリブ」が観たくなった)。
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2019年03月21日(木)
宇佐美まこと「いきぢこく」読了。友人と旅行代理店を経営している四十二歳の鞠子は亡き父から相続することになった元遍路宿の古民家を訪れた際、古い遍路日記を見つける。四国遍路で果てる覚悟の女遍路が戦前に書いたと思われる旅の記録。女の生と性に揺れる鞠子はこの遍路日記にのめり込んでいく――。
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人間の業を描いた「愚者の毒」を彷彿とさせる女の情念と怨念をテーマにした長編ミステリ。「愚者の毒」では三つの時間軸において仕組まれた三つの犯罪とそれに関わってしまった二人の男女の破滅を描いていたが、本作では主人公を女一人に限定し彼女が犯罪に手を染めるまでの過程をじっくり描いていく。
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一見するとそこには何も仕掛けられていないように思えるが、今回もまた作者はサスペンスフルな物語の中にあるミステリ的趣向を実にさりげなく盛り込んでおり、終盤における怒濤の伏線回収と共に突き付けられるある企みは物語の根底を覆す破壊力を秘めていると言っても決して過言ではないだろう。
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それを最後まで隠し通した作者には脱帽の一言であり、文字通り「いきぢごく」を経験した後に主人公を待ち受ける結末もとい涅槃の光景がいつまでも心を捉えて放さない傑作である。
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2019年03月23日(土)
北村薫「中野のお父さんは謎を解くか」読了。松本清張を打ちのめした評論家の怒りのわけ、ブルーレイから消えた特典映像、「100万回生きたねこ」を絶望の書と言う理由、泉鏡花が秋声を殴った話の出所……出版界を舞台に父と娘の名探偵コンビが日常と文豪の謎に挑む八編収録。
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体育会系な文芸編集者の娘が持ち込む謎の数々を、定年間際の国語教師の父が解き明かすシリーズの二作目。但し前作よりもミステリ要素はだいぶ薄くなり、謎というより他愛のないなぞなぞに近いものがほとんどなのでミステリと思って読むと肩透かしを覚えるかもしれない。
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posted at 10:37:52
むしろ読むどころとしては謎に纏わる文豪や出版界の逸話や蘊蓄であり、それらを彩る登場人物たちのドラマと併せて、本好きであれば楽しい一時が味わえる作品である。
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乾くるみ「ジグソーパズル48」読了。生死を賭けた頭脳カードゲーム、カラオケ中に高級イチゴを食べた犯人探し、非売品のスマホケースが引き起こす騒動、部活棟の十字路で起きた暴行事件、落としたスマホの奪取計画……私立曙女子高等学院の生徒たちが日常で起きる事件を解決する七編収録。
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「セブン」にも収録された「ラッキーセブン」を含む、AKB48を元ネタにした女子高生たちが登場する連作ミステリ。タイトルに「ジグソーパズル」と謳っている通り、収録作は比較的パズラー要素が高めのものが半数以上を占めており「六つの手掛り」を彷彿とさせる、ねちっこいロジックが堪能できる。
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posted at 19:44:33
ベストを挙げるなら「偶然の十字路」で、緻密な犯人当てかと思いきや、「嫉妬事件」を書いた作者らしいトンデモない気付きに唖然とさせられる(そういう意味では「GIVE ME FIVE」も一見緻密な犯人当ての体裁をとっているが、ある検証が仄かに変態チックだったりする)。
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その他「ハチの巣ダンス」もまた狙いが成功しているかどうかはさておき、予想外のところからくるある仕掛けが別の意味でこの作者らしい。登場する女子高生たちが完全に駒的描き方なのでキャラミスとしてはお勧めしにくいものの、前述した「六つの手掛り」が好きな読者であれば楽しめる作品である。
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2019年03月25日(月)
「呪いの館」観了。馬車に轢き殺された少女の霊が次々と人を殺していく話。オカルト+ジャーロの雰囲気作りは申し分ないものの、肝心の殺害シーンが物足りないし、ストーリーも特に意外性がないまま終わってしまった印象が強い。あくまでオーソドックスな幽霊譚として楽しんだ方が吉な作品である。
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辻室翔「札幌市白石区みなすけ荘の事件簿 ココロアラウンド」読了。近年増加する超能力犯罪。札幌市白石区にあるみなすけ荘の住人たちは個性豊かな能力で平和に貢献していた。今日も新たな事件に臨むなか、「死ぬと生き返る」藤坂は新入居者・八野心の“隠された悩み”にも直面することに――。
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posted at 09:05:17
第31回ファンタジア大賞銀賞受賞作。「事件簿」というタイトルと帯にある謎解きという言葉からミステリかと思って読んだらミステリじゃなかった(爆)。それはさておきどこかで見た設定に何の捻りもない下ネタギャグを絡めた内容は大目に見るとしても作者の都合が透けて見える展開には正直辟易した。
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posted at 09:05:38
特にそれを感動的なシーンでやられると興醒め以外の何物でもなく、ただの感動の押し売りになってしまう。できることならその辺をもう少し気を付けて書いてほしかった。
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樺薫「藤井寺さんと平野くん 熱海のこと」読了。野球フリークの藤井寺さんは名投手・大鹿煙の孫娘。祖父を球史の闇に葬った「投手殺人事件」の真犯人を知るため彼女と僕は熱海へ向かう。妖しげな女連れの老警部・居古井、ホテルの若女将・伊勢崎九太夫に下品な探偵・巨勢羽華世との推理合戦の行方は?
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posted at 20:57:47
「投手殺人事件」を始めとした坂口安吾のミステリ作品を「跳訳」した作品。安吾ファンであればお馴染みのキャラがラノベアレンジされてどのように生まれ変わったのか原作とのギャップを楽しむこともできるだろうが原作未読の読者だとミステリパートとそれ以外が乖離し過ぎていて正直ツラいものがある。
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posted at 20:58:54
そのミステリパートにしても無駄に作者が野球好きであることが分かるだけで肝心の推理がどれも面白みに欠けるのが難(尤もこれに関しては原作からしてそうなのかもしれないが)。あくまでファン向け――それもどんな内容であれ笑って許せる人向けの作品である。
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2019年03月26日(火)
エラリー・クイーン「クイーンのフルハウス」読了。古典劇「ドン・ファンの死」の上演中にドン・ファン役の俳優が本当に殺される「ドン・ファンの死」、不正の証拠を掴んだ弁護士が殺され、一人の男が絶体絶命の状況に追い込まれる「キャロル事件」などクイーンの魅力いっぱいの五編を収録。
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posted at 23:49:24
三編の中短編に箸休め的な二編の掌編を加えた作品集。三編の中短編でベストを選ぶなら「キャロル事件」で、ネタそのものは先に某古典ミステリを読んでいたために気付いてしまったが、あえて窮地に陥った男の視点から事件を描くことで物語がどこに着地するか分からない不安感を作り出している点がいい。
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「ドン・ファンの死」はある手掛かりのせいで犯人が丸わかりなのが難だが、動機部分に見るべきものがある。また遺産相続物の「ライツヴィルの遺産」は、この手のお約束的展開に隠された犯人特定に繋がる意外な気付きが良かった。
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