麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2019年09月01日(日)
エラリー・クイーン「災厄の町」読了。結婚式の前日に姿を消したジムが三年ぶりに突然戻ってきた。許婚のノーラはジムと結婚し晴れて夫婦となるがある日、ノーラは夫の奇妙な手紙を発見する。そこには妻の死を知らせる文面が……。そして遂に不可解な毒殺事件が発生し、ジムに殺人の嫌疑がかかる。
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posted at 19:13:22
架空の町ライツヴィルを舞台にした最初の作品。扱っている事件は砒素による殺人の一件のみだが、そこに至るまでのサスペンスや事件が起こってからの八方塞がりの状況に苦悩する探偵役の姿、所々に意外な展開を盛り込んだ法廷劇などによりだいぶ読み応えのある内容に仕上がっている。
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posted at 19:13:43
本作で最も秀逸なのは何と言っても終盤ある証拠物件に纏わるロジックをきっかけに事件の様相がガラリと一変する点であり、それまで見えていた光景が一瞬にして塗り替えられる驚きもさることながら、謎解きによって浮き彫りになる登場人物の心情には何とも言えないやるせなさがある。
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2019年09月04日(水)
マツキタツヤ/宇佐崎しろ「アクタージュ act-age」8巻読了。ダブルキャスト編開幕。かつての敵が味方になる展開も熱いがその逆もまたしかり。千世子らと舞台で敵対する中、一癖も二癖もある新キャラ(特に花子さんエロい)との出会いが夜凪をどう成長させていくか、ますます興味が尽きない。
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2019年09月07日(土)
エラリー・クイーン「フォックス家の殺人」読了。戦場帰りのデイヴィー・フォックス大尉はある夜、無意識のうちに妻の首を絞めようとした。戦争の異常体験が十二年前、大尉の父が母を毒殺した事件の記憶を呼び覚ましたのか? 思いあまった大尉と妻はエラリーに過去の事件の再調査を依頼する。
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架空の町ライツヴィルを舞台にした二作目。いわゆる回想の殺人を扱った本作はエラリーが出てこない序盤がやや退屈なきらいがあるものの、エラリーが再調査に乗り出して以降はかつて事件が起きた家で当時の再現をしたり新たな事件が起きたりとミステリ好きの興味を惹く展開が適度に起きるのがいい。
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posted at 20:39:50
とはいえ本作のミステリとしての最大の見所は過去の事件よりも現代で起きたある事件に纏わるロジックであり、特殊なシチュエーションを活かした人間心理と相俟ってその切れ味にはつくづく感心させられる。
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posted at 20:40:16
一方、過去の事件の真相に関しては前述のロジックを見せられた後だと若干見劣りがするかもしれないが、それでも註釈付きの一部の手がかりにはクイーンらしい巧さを見出だすことができるだろう。本作は前作「災厄の町」とはまた違った毒殺物の佳作である。
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2019年09月09日(月)
花林ソラ/百井一途「ゲソコン探偵」2巻読了。2巻で完結なのは残念だがその代わりミステリ的には1巻より切れ味を増しており「その趾、かく語りき」の足の指を切り落とした理由もさることながらトリを飾る「悪魔は三度現れる」の途中に出てくる奇妙な謎とそれを気付きにした解決からの一捻りがいい。
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posted at 10:30:26
個人的にはもっとシリーズが続いてほしかったが、むしろここは全2巻ということで人に勧めやすいと好意的に捉えたい。とまれ本作は徹頭徹尾タイトルにもなっているゲソコンに拘った一風変わった本格ミステリ連作の良作であると言っていいだろう。
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2019年09月10日(火)
田村由美「ミステリと言う勿れ」5巻読了。子供を虐待している家に次々と放火する天使の話。今回は動機だけでなく犯人も最初から分かっているため、どこに仕掛けがあるのかと思ったら……成る程、そうきたかと納得。これがフェアかどうかはさておき、少なくともサプライズとしては成功していると思う。
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2019年09月11日(水)
法月綸太郎「法月綸太郎の消息」読了。ホームズの異色作の裏に隠されたドイルを巡る意外な罠を突き止める「白面のたてがみ」。ポアロ最後の事件として名高い『カーテン』に仕組まれた企み「カーテンコール」、『退職刑事』シリーズの後継というべき「あべこべの遺書」「殺さぬ先の自首」の四編を収録。
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posted at 09:36:23
前作「犯罪ホロスコープⅡ 3人の女神の問題」から七年ぶりとなる法月綸太郎シリーズの中短編集。今回はいつもの安楽椅子探偵物の二編に加えて、ホームズとポワロという二大名探偵の晩年という主題を扱った、評論家・法月綸太郎の批評眼が冴え渡る中編二編が収録されている。
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posted at 09:37:38
安楽椅子探偵物二編「あべこべの遺書」「殺さぬ先の自首」に関して言えば前者は中盤で出てくるある事実におっと思わせられるものの、その後の展開は無駄に複雑にし過ぎた印象。後者は今流行りの(?)あるテーマとシリーズファンには感慨深いある要素を巧くミックスした快作である。
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posted at 09:37:47
一方、批評的中編二編「白面のたてがみ」は歴史ミステリさながらの史実の意外な絡ませ方もさることながら現実の話をいいアクセントとして使っている点が、また「カーテンコール」は北村薫「ニッポン硬貨の謎」を思わせる新たなエルキュール・ポワロ論と多重推理を活かしたスリリングな見せ方が秀逸。
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2019年09月13日(金)
「アス」観了。同じ顔の人間に襲われる家族の話。シチュエーションと途中までの展開は面白いが、無駄に壮大な割にザルな設定とこれしかないオチには正直肩透かし感が否めない。風呂敷を広げていく過程は悪くないだけに、きっちり納得がいくように巧く風呂敷を畳んでほしかった。
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posted at 19:26:03
エラリー・クイーン「十日間の不思議」読了。時折訪れる記憶喪失に悩む旧友のハワードはライツヴィルの実家へ同行してほしいとエラリイに懇願した。しかしエラリイが着くのも待たず、不吉な事件は幕を開ける。正体不明の男から二万五千ドルでハワードの秘密を買えという脅迫電話がかかってきたのだ。
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posted at 22:33:47
架空の町ライツヴィルを舞台にした三作目。本作はこれまでの三作中最も殺人事件が起きるまでが長いが、その間コンスタントに様々な事件やエラリーを巻き込んだアクシデントが起きるのでほとんど退屈することがないのに加え、後にそれらが全て無駄なく絶妙な伏線として機能する点が素晴らしい。
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posted at 22:34:13
また本作の真相は後に新本格のみならず今日発表されている現代本格にも多大な影響を与えているだけあって完成度はかなり高く、練りに練られた人物設定と二重三重にも考え抜かれた仕掛けには脱帽と言わざるを得ない(あと何気に二部構成の見出しも巧い)。
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posted at 22:34:45
ライツヴィル物は基本的に舞台や人物の関係性を理解するためにシリーズ順に読まなくてはいけないなどお勧めするには若干ハードルが高い面もあるが、本作はそこまでして読む価値がある傑作と言っていいだろう。なおハヤカワ・ミステリ文庫版の鮎川哲也解説は思いっきりネタバレがあるため要注意。
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posted at 22:34:58
エラリー・クイーン「ダブル・ダブル」読了。エラリーのもとへ届いた匿名の手紙にはライツヴィルのゴシップを知らせる新聞の切り抜き記事が数枚入っていた。”町の隠者”の病死、”大富豪”の自殺、”町の呑んだくれ”の失踪。更にライツヴィルを訪れた彼を嘲笑うかのように不可解な童謡殺人が続発する。
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架空の町ライツヴィルを舞台にした四作目。本作は「靴に棲む老婆」以来の童謡殺人をテーマにしている作品だが、童謡殺人物としてみるなら「靴に棲む老婆」より本作の方が完成度は上と言っていいだろう。
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本作の見所は何と言っても魅力的なヒロイン・リーマと犯人を犯行に駆り立てた異形の論理であり、特に後者に関してはクイーン作品を読み慣れた読者からするとクイーンが好んで使うあるパターンの変形だということに気が付くに違いない。
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posted at 22:35:45
またヒロイン・リーマに関してもただ魅力的に描くだけではなく、きちんとそれをミステリ的に活かしている点が秀逸。若干展開に地味さは否めないものの、それを補って余りある異形の論理に唸らされる秀作である。
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2019年09月14日(土)
エラリー・クイーン原案「ミステリの女王の冒険」読了。エレベーターで起きた不可能犯罪、黄金のこま犬が凶器に使われたライツヴィルでの殺人、主の消失と奇妙な贈り物、射殺事件の現場から消えた女、船上での殺人事件を巡る多重推理……TVドラマ『エラリー・クイーン』のシナリオ全五編を収録。
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posted at 19:08:39
一九七〇年代半ばに米国で放映されたTVドラマ『エラリー・クイーン』のシナリオ集。収録作五編のうち原作付きの「奇妙なお茶会の冒険」以外は全てクイーンの関わっていないドラマオリジナルだが『刑事コロンボ』のコンビ、R・レヴィンソンとW・リンクが製作総指揮だけあってその完成度はかなり高い。
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posted at 19:09:09
そんな中からベストを挙げるなら射殺事件の現場から消えた女を探す「慎重な証人の冒険」で、同様の趣向を扱ったクイーンの某短編よりも犯人の目論見と意外性の演出が巧く噛み合っており、更にそこからシンプルながらも隙のないロジックを展開させてみせる点も実に秀逸。
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posted at 19:09:18
次点はライツヴィルでの事件を扱った「黄金のこま犬の冒険」で凶器を巡るロジックと堂々と書かれながらも気付かせないある事実といったミステリ部分もいいが、それ以外にも鱒釣りに一喜一憂するクイーン警視の姿が何とも微笑ましい。本作は本家に勝るとも劣らない良くできたクイーン贋作物である。
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posted at 19:09:36