麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2019年09月28日(土)
収録作中この話に出てくる悪党の計画が最も人を食っており、かつ便利屋が担った役割が大胆不敵の一言に尽きる(大胆不敵という点では第四話「悪花繚乱」もなかなかのものだが)。本作は作者の策士ぶりが存分に発揮された良作であると共にシリーズ化を是非とも期待したい。
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posted at 16:59:29
言うなれば本作は「便利屋が何の役割を担っているのか?」という謎をメインとした本格ミステリであり、完全に読めたと高をくくっていると足を掬われるのが何ともプロットの捻りに定評のある作者らしい。収録作はどれも良くできているが、ベストを挙げるなら第三話「死体が入用」だろう。
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謎めいた便利屋が関わる四つの事件を収録する連作ミステリ。「悪と悪とが共喰い祭り」とは本作の帯にある謳い文句だが、その言葉通り本作は悪党たちが熾烈な騙し合いを繰り広げており、その中でも一際重要な役割を担っている便利屋の存在が読む者に強烈な印象を残す。
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深木章子「極上の罠をあなたに」読了。背徳の町で繰り広げられる悪事の数々。政治家や葬儀屋、医師、弁護士、捜査一課の刑事……登場人物たちはみな悪知恵を働かす悪党ばかり。そんな彼らにするりと近付き、いとも華麗に知力で騙す、得体が知れない便利屋は一体何者なのか?
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その一方で今回の特殊設定は近年話題の某作を彷彿とさせる面もあり、もしかしたら実際多少は意識しているかもしれない。とまれそのおかげで白井作品の中では最も受け入れられやすい(?)特殊設定となっており、恐らく白井初心者にもお勧めしやすいのではないかと個人的には思う傑作である。
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本作もまたこれまでの白井作品同様、多重推理がこれでもかとばかりに詰め込まれているが、特筆すべきは本作で展開される推理はどれも面白く、しかも人を人とも思わない(誉め言葉)奇想に満ちている点だろう。それでいて最終的な真相はきっちりそれらを上回る超絶技巧が炸裂するのだから堪らない。
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白井智之版「そして誰もいなくなった」と言うべき長編ミステリ。あらすじだけ見ると「鬼畜系特殊設定パズラー」((C)綾辻行人)の書き手らしからぬ印象を受けるかもしれないが、さにあらず。あらすじにある通り島から誰もいなくなった時、作者らしさ全開の本当の「事件」の幕が開くのだ。
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白井智之「そして誰も死ななかった」読了。覆面作家・天城菖蒲から絶海の孤島に建つ天城館に招待された五人の推理作家。しかし館に招待主の姿はなく、食堂には不気味な泥人形が並べられていた。やがて作家たちは次々と奇怪な死を遂げ、そして誰もいなくなった時、本当の「事件」の幕が開く――。
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posted at 16:56:34
また現在と過去それぞれで事件を起こす意味がさほど感じられないのも難で、むしろ過去の事件一本に絞った方がキャラの掘り下げが巧くできたのではないかとすら思える。見るべきところはあるものの、盛り込んだ要素をきっちり活かしきれてるとは言い難い作品である。
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謎めいた使用人・栗花落静(ツユリシズカ)が探偵役を務めるシリーズの三作目。奇妙な儀式の最中に起きた三重密室殺人の謎を動機と密接に結び付けて解き明かしていく点はなかなか興味深い反面、動機に説得力を与えるほどキャラが深く掘り下げられていないのが気になる。
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月原渉「犬神館の殺人」読了。犬神館では奇怪な《犬の儀式》が行われていた。密室の全ての戸にギロチンが仕込まれ、儀式の参加者は自分の首を賭けて“人間鍵”となる。その状況下で起きた不可能犯罪と消えた犯人。そして三重の密室の最奥に立っていた氷結死体。これは三年前に発生した事件の再現なのか。
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2019年09月26日(木)
個々の短編のミステリとしての難易度はそれほど高くはないものの、最終的に見えてくるあるミステリ的な趣向と、この作者らしい動機の苦味のブレンドが実に秀逸。本作は社会派要素と本格ミステリ、そして作者らしさが程よく溶け込んだ連作ミステリの秀作である。
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一度死んだ村に人を呼び戻す「甦り課」の面々が様々な事件に遭遇する連作ミステリ。日常の謎を得意とする作者が本作ならではの日常を描きつつ、その日常にふさわしい小道具を駆使してミステリではお馴染みの密室やアリバイ、毒殺ネタといった謎を作り出しているのがまず面白い。
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米澤穂信「Iの悲劇」読了。六年前に滅びた山間の小さな集落・簑石に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。彼らが向き合うことになったのは一癖ある「移住者」たちと次々と発生する「謎」だった。
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2019年09月24日(火)
……と、ここまでは良いこと尽くめで書いてきたが、それも謎解きの段になって失速する。というのも犯人がとった一部の行動に対する説得力がまるでないのだ。これが本作にとって大きなマイナスなのは間違いないが、一方で犯人を導き出す手段に関してはさすがクイーンと思わせるものもある。
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クイーン最後の長編ミステリ。後期クイーン作品にしては珍しく(?)テンポ良く人が死ぬし、被害者となるある人物の異常な拘りとそれが齎す展開も面白い。更に事件が起こる過程を妊娠から出産に見立てた構成もなかなか洒落ている。
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エラリー・クイーン「心地よく秘密めいた場所」読了。巨大なコングロマリットを一代で築き上げた経営者ニーノに公金横領の証拠を握られた監査役のウォレスは刑務所送りとなる代わりに娘と結婚させろという要求を飲まされた。だが娘が生贄となった時、一方では凶悪な犯罪計画がひそかに芽生えていた。
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2019年09月23日(月)
しかしながら肝心の真相が特殊知識に依存し過ぎて正直ピンとこない上に、途中で明らかになるある事実の伏線が皆無なのもいただけない。何よりここまで引っ張るほどの事件なのかというと大いに疑問と言わざるを得ないし、全体的に釈然としない作品である。
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クイーン後期の長編ミステリ。事件の発端から半世紀にわたる壮大な構成、クリスマスの夜から毎晩届けられる謎の贈り物と身元不明の他殺体、そして極めつけは読者への挑戦と、本作はミステリ的に盛り上がる要素が結構揃っていると言っていいだろう(但し贈り物の数が多すぎて些かだれるが)。
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posted at 19:12:38
エラリー・クイーン「最後の一撃」読了。1905年に起きた事故は双子の赤ん坊の運命を分けることとなった。それから二十五年後の1930年、「ローマ帽子の謎」を出版したばかりの若きエラリーは双子の長男を巡る奇妙な殺人事件に遭遇する。だがこの殺人は1957年を待たねば解決をみないほどの難事件だった。
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posted at 19:12:25
ミステリとしてみるとある気付きをきっかけにサイコスリラー的状況の意味がロジックの綱渡りによって徐々に紐解かれていく点と、そこから導かれた犯人の条件によって某ミステリ作品を彷彿とさせる意外な犯人が明らかになる点が秀逸な反面、その後に続くある謎解きが伏線に乏しすぎて無理があるのが難。
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posted at 00:20:24
作者初のノンシリーズ物の長編ミステリ。本作を一言で例えるとポリティカル要素のある「ソウ」みたいな話(?)であり、左翼右翼それぞれの政治団体で活動する男女が事件に巻き込まれたのをきっかけに推理を通して「民主主義」を実現していく過程がまず面白い。
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市川憂人「神とさざなみの密室」読了。政権打倒を標榜する若者団体で活動する凛は気付くと薄暗い部屋にいた。両手首を縛られ動けない。一方隣の部屋では外国人排斥をうたう「AFPU」のメンバー大輝が目を覚ましていた。二人に直前の記憶はなく眼前には横たわる人体。一体、誰が、何のために?
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2019年09月22日(日)
本作を読んでまず思うのは多重解決の難しさだ。基本的に辻褄合わせに終始するため作者の苦労の割に謎解きのカタルシスや意外性がどうしてもイマイチになってしまう。それらを得るためにはやはり唯一無二の真相が必要なのかもしれない。とはいえ本作が今の時代だからこそ生まれた労作なのは間違いない。
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「ミステリー・アリーナ」以来の多重解決物。ネット投票で犯人を「決めて」もらうという本作の趣向はユーザー投票で物語の展開を決める「Fate/Grand Order」のミステリーイベントに近いものを感じる(実際あとがきによると当初は最多投票の選択肢のみを解決篇として出す予定だったらしい)。
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深水黎一郎「犯人選挙」読了。築30年の「大泰荘」で起こった密室殺人。住人の誰もが怪しく、誰にも動機があった……。問題篇を1ヵ月間ウェブサイトや電子書店で無料公開し、読者に「7つの選択肢」から、犯人を「当てる」のではなく「決めて」もらった新形式の多重解決ミステリ。
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2019年09月21日(土)
「HELLO WORLD」観了。『ラスト1秒でひっくり返る』が売り文句のSF映画。確かにひっくり返りはしたものの、このオチは正直評価が分かれると思う。とりあえず過程を面白がれる人なら楽しめるかもしれない(あといい加減挿入歌を流すシーンのワンパターンな見せ方はやめてほしい)。
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表題作は国名を冠した作品では初の倒叙物で、作中に「スイス時計の謎」の話が出てくるところからロジック物として期待する人もいるかもしれないが、あいにくミステリ的にはそこまでの出来ではない。とはいえ今風の犯人の動機や火村と犯人の心理戦など倒叙物ならではの見所が印象深い一編である。
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一方ミステリとしてみるならベストは「船長が死んだ夜」で、作者が「ストレートな犯人当てを書いてみた」とあとがきで語る通り、些細な気付きからのシンプルなロジックが巧く決まっている。また有名なトロッコ問題と絡めた「トロッコの行方」はある事実からの火村の推理と作者が狙った幕切れが○。
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国名シリーズ十作目にあたる中短編集。本作は中編三編の間に短編二編「エア・キャット」「あるトリックの蹉跌」が挟まれる構成になっているが、「エア・キャット」ではお馴染みの火村の猫好きっぷりが、「あるトリックの蹉跌」ではアリスと火村の出会いのエピソードが語られるのが何とも微笑ましい。
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有栖川有栖「カナダ金貨の謎」読了。民家で発見された男性の絞殺体――殺害現場から持ち去られていたのは一枚の「金貨」だった。“完全犯罪”を計画していた犯人を臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖がロジックで追い詰めていく表題作のほか四編収録。
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