麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年09月29日(木)
東川篤哉「仕掛島」読了。瀬戸内の孤島・斜島に建つ巨大な球形展望室を有する異形の館。そこへ遺言に従って岡山の名士の一族の面々が集まった翌朝、相続人の一人が凄惨な死体となって発見される。嵐によって島が外界から隔絶される中、続発する怪事の果てに探偵たちの眼前に現出する驚愕の真相とは?
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posted at 21:32:44
作者のデビュー20周年に合わせて刊行された「館島」の続編。前作同様、本作でもかなり大掛かりな仕掛けが用意されてはいるものの、前作に比べるとそれがほんの一部分しか活かされていないため、正直物足りなさが否めない。
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posted at 21:33:44
どちらかというとその後に語られる過去の事件の真相の方が読みどころが多く、特にある人物に隠された秘密に関しては時を隔てたことによるギャップ感が実に味わい深くて○。前作同様の仕掛けに期待するとやや肩透かしを覚えるかもしれないが、全体を通してみれば一定の満足感が得られる良作である。
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歌野晶午「首切り島の一夜」読了。濤海灘に浮かぶ弥陀華島で四十年ぶりに修学旅行を再現した同窓会が開催され参加者の一人である久我陽一郎が当時自分たちの高校をモデルにミステリを書いていたと告白する。その夜、宿泊先で久我の他殺体が発見されるが折悪しく荒天のため捜査員は来られない事態に――。
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posted at 21:35:11
問題作。あらすじだけみるといかにも王道なクローズド・サークル物っぽいが、これまで数々の問題作を手掛けてきた歌野晶午がそんな安易な展開をするわけもなく、ほぼ事件そっちのけで宿にとどまった関係者たちに隠された過去と現代それぞれの事情が事細かに描かれていく。
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posted at 21:35:47
彼らの隠された事情は小説として読み応えがある反面、果たしてこれはミステリとしてちゃんと着地するのか読めば読むほど不安になるかもしれないが、恐らくそれこそ作者の思うつぼなのかもしれない。やがて明らかになる作者の企みと真相に困惑すること請け合いの、実に人を食った作品である。
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2022年09月30日(金)
鵜林伸也「秘境駅のクローズド・サークル」読了。実在のスイッチバック駅を舞台に殺人の謎を描いた表題作、高校野球部の部員たちが推理で見付からないボールの行方を突きとめようとする「ボールがない」、天文部員が天体写真を添付したメールの謎の解明に挑む「宇宙倶楽部へようこそ」など全五編収録。
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ロックと犯人当てを融合した長編「ネクスト・ギグ」の作者によるミステリ短編集。収録された五編はいずれも個性的な謎をコミカルながらもロジカルに解き明かす内容になっており、作者があとがきで語っている「ミステリって楽しいな」と読者に感じてもらいたいという狙いは成功しているように思う。
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全編ハズレなしだが特に良かったものを挙げるならロマンティックな真相と収録作中唯一ホロリとさせる読後感の「宇宙倶楽部へようこそ」、シチュエーションコメディとこの設定ならではの意外な犯人が光る「ベッドの下でタップダンスを」だろうか。加えて全編短く纏まっているのも好印象な作品集である。
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2022年10月01日(土)
有栖川有栖「濱地健三郎の呪える事件簿」読了。リモート飲み会で現れた「小さな手」の正体。廃屋で手招きする「頭と手首のない霊」に隠された真実。歴史家志望の美男子を襲った心霊は古い邸宅のどこに巣食っていたのか……年齢不詳の探偵・濱地健三郎が助手のユリエと共に六つの謎と怪異に挑む。
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心霊探偵・濱地健三郎が探偵役を務める連作ホラーミステリシリーズの三作目。怪談のようでもありミステリのようでもあり……というのが作者の目指すこのシリーズのコンセプトだが、一作目はミステリ寄り、二作目は怪談寄りときて今回の三作目ではそのバランス配分が最も巧くいっているように思う。
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その一方で本作ならではの特徴として全編コロナ禍という状況を何らかの形で物語に活かしている点が挙げられる。中でも頭と手首のない霊に端を発する殺人事件の謎を描いた「戸口で招くもの」は、前述したコロナ禍ならではのロジックの飛躍が楽しい一編である。
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他にも「呪わしい波」が怪異をミステリ的手法で描いた点も興味深いが、それ以上に火村物の連作短編集「怪しい店」を彷彿とさせる古物商の日常描写がいい。また「囚われて」はオカルトをまるで信じていないからこそ成立する物語とタイトルが実にユニーク。
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2022年10月07日(金)
依空まつり「サイレント・ウィッチIV -after- 沈黙の魔女の事件簿」読了。学園祭を終え冬休みが迫るセレンディア学園。しかしモニカは盗み食い事件や迷子騒動、正体不明の火の玉、怪しいおまじないなど次々と難事件(?)に遭遇。モニカと探偵小説にハマり中の黒猫が事件の謎を解き明かす。
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posted at 22:05:08
最強の引きこもり天才魔女が正体を隠し王子に迫る悪を密かに裁く学園ファンタジーシリーズの番外編。四巻と五巻の間の日常エピソードを描いた本作は事件簿と銘打たれてはいるものの、その殆どはミステリと言うには他愛もない愉快なハプニングであり、それに巻き込まれるモニカたちの姿が普通に楽しい。
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posted at 22:05:26
しかしながらそれらの愉快なハプニングの中で描かれたさりげない出来事が後に意外な伏線となって思いがけない展開を引き起こしていく点はある種のミステリ的面白さと言ってもいいかもしれない。その一方で本編の内容をより深く掘り下げるサイドストーリー集としても良くできた作品である。
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2022年10月09日(日)
倉知淳「世界の望む静謐」読了。看板漫画家を殺してしまった週刊漫画誌編集者、悪徳芸能プロモーターを手にかけた歌謡界の元スター、部下の裏切りに報復する人気タレント文化人、過去を掘り返そうとする同僚の口を封じた美大予備校講師...…罪を犯した者達の前に死神めいた風貌の警部が立ちはだかる。
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死神めいた風貌の警部が犯人を追い詰める連作倒叙ミステリシリーズの二作目。今回収録された四編に共通しているのはいずれも犯人を追い詰める決め手の意外性を重視している点であり、それもオーソドックスなものから「そんなやり方ありか?」と読者の度肝を抜くものまで幅広く用意されているのがいい。
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ベストを挙げるなら歌謡界の元スターの犯罪を描いた「一等星かく輝けり」で犯人はもとより読者をもペテンにかける、被害者の人物像を絶妙に活かしたある事実が秀逸。また「そんなやり方ありか?」という点では反則スレスレの手段でこれ以上ない〝瞬間〟の決め手を犯人に突き付けてみせる表題作も○。
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2022年10月12日(水)
るーすぼーい/古屋庵「無能なナナ」10巻読了。管理キャンプ編開幕。前巻から三年の時を経たことによりこれまで積み重ねてきた物語が活きてくるのがいい。またタイムリープの能力者との対決に関しては予測の範囲内での決着ではあるもののより強くなった主人公を見せる展開としては申し分ないと思う。
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2022年10月13日(木)
森博嗣「オメガ城の惨劇」読了。「マガタ・シキ」の名前によって孤島に聳えるオメガ城へ集められた六人の天才と一人の雑誌記者。そこにはサイカワ・ソウヘイも含まれていた。執事すら主催者の顔を知らず招待の意図は誰にも分からない。そして深夜。高い叫び声のような音が響き、城は惨劇の場と化した。
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森作品ではお馴染みの探偵役の一人・犀川創平最後の事件と銘打たれた長編ミステリ。〈「F」の衝撃、再び〉と帯に書かれている通り本作は作者のデビュー作にして代表作である「すべてがFになる」を彷彿とさせる粗筋となっているが、正直それを期待すると良くも悪くも裏切られることになるだろう。
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言うなれば本作は「F」の展開を逆手にとって描いているところがあり、それが真相のミスディレクションになっている点は否定できないものの、その反面〈「F」の衝撃、再び〉という謳い文句を素直に信じてしまった読者からするとあまりにも俗っぽいこの真相はかなりガッカリするのではないだろうか。
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どちらかというと事件が終わった後のエピローグの方がそういったファンの期待に応えている感があり、そこで明かされるある意外な事実こそ最大の読みどころと言ってもいい作品である。
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2022年10月16日(日)
「ルチオ・フルチのクロック」観了。三人組の強盗が押し入った屋敷で遭遇する悪夢。フルチ晩年のテレビ映画で時間が巻き戻ることでなぜ死者だけが蘇るのかが謎だが割とやりたいことが明確なストーリーは嫌いではない。また殺害シーンの無駄に残虐な描写や死者の甦りシーンはいかにもフルチらしくて○。
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2022年10月19日(水)
朝倉亮介「四季崎姉妹はあばかれたい」3巻読了。ミステリとハーレムラブコメの見せ方に関しては今回が最も秀逸で主人公の鋭い推理に感心した後のエロハプニングもといどうしてこうなった感が実に面白い。そして終盤のオッパイ攻勢にもめげずいよいよ核心に迫った主人公に対する三姉妹の反応に要注目。
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江坂純/凸ノ高秀「she is beautiful」1巻読了。メメント系の記憶障害ネタに百合要素とSF風特殊設定を絡ませたミステリ。「この世界は一体何なのか?」「自分の身に何が起こったのか?」という二つの謎を軸にサスペンスフルに展開する物語もさることながらヒロインが可愛いのも好印象で続きが楽しみ。
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2022年10月20日(木)
竹町「スパイ教室 短編集03 ハネムーン・レイカー」読了。『飛禽』のヴィンドはフェンド連邦の地で窮地に立たされていた。『べリアス』による襲撃、世界最高峰の力を誇る『黒蟷螂』との対峙。次々と仲間が倒れゆく中、彼の脳裏にあったのは『灯』と過ごした日々だった……。
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「スパイ教室」シリーズの短編集第三弾。今回収録された短編はいずれもは本編では描かれなかった『灯』と『鳳』の交流の日々に焦点を当てており、それが忘れ難いものであればあるほど『鳳』が迎える結末の物悲しさが際立つ構成が実に心憎い。
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個人的に良かったエピソードを挙げるとするならアネットと猫のほのぼのした触れ合いと苦すぎる結末のギャップが印象的な3章、犯罪組織『堕落論』を巻き込んだドタバタ劇からのバカミス的切り札が痛快な5章あたりだが、基本的には全体を通して読んでこそ意味のある作品と言えるだろう。
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posted at 21:09:56