麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2022年10月22日(土)
矢樹純「不知火判事の比類なき被告人質問」読了。殺人事件の裁判を傍聴することになったフリーライターの和花は衝撃的な場面を目撃する。不知火判事が被告に「勇気を持って真実を答えて下さい」と前置きした後、投げかけた最後の質問をきっかけに今まで見えていた事件の構図が一変してしまったのだ――。
タグ:
posted at 15:56:45
異端の裁判官が結審直前に発した「比類なき被告人質問」によって起きる五つの逆転劇を収録した連作法廷ミステリ。「真・逆転裁判」という帯の文句に偽りはなく、極めて現実的な事件を扱ったリアルな法廷の中でゲームの逆転裁判さながらの豪快な構図の反転が起こる様は実に痛快の一言に尽きる。
タグ:
posted at 15:57:10
しかも本作が秀逸なのは「比類なき被告人質問」によって真相が齎される前に弁護人や被告人、時には語り手による珍推理(?)によって事件に幾つかの波乱を起こしている点であり、それを踏まえて読者にある程度真相を予想させてから、更にその上をいく真相を提示してみせる手腕が抜群に巧い。
タグ:
posted at 15:57:35
加えてその真相も決して突飛ではなくきちんと事件の設定から逆算して作られているのがいい。本作は法廷ミステリ好きは勿論のこと見方によっては裁判という形を借りた安楽椅子探偵物と捉えることもできるのでその手の話が好きな人にもお勧めできる傑作である(個人的なベストは第四章「沈黙と欺瞞」)。
タグ:
posted at 15:57:49
2022年10月23日(日)
「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-冥き夕闇のスケルツォ」観了。アルゴが口調と中の人のせいでナナチにしか聞こえなかった(爆)。個人的にはアスナの成長が分かるミト戦も良かったがそれ以上に5層のボス戦が圧巻の出来(ただこれ、ミトがいなかったらアウトだったような気が)。
タグ:
posted at 23:35:28
2022年10月25日(火)
てにをは「また殺されてしまったのですね、探偵様4」読了。一万人を超える受刑者とロボットの看守により構成された屈斜路刑務所でロボットと人間の心中事件が起きた。ロボット三原則により人間を殺せないロボットはいかにして心中を実現できたのか?その謎を探るため朔也は刑務所に潜入することに――。
タグ:
posted at 21:32:02
殺されても生き返る高校生探偵・追月朔也が事件の謎を解くシリーズの四作目。本作はこれまで出たシリーズの中では最上の出来で、ロボット三原則という定番の題材を巧く物語に組み込んでいる点もさることながら「殺されても生き返る」探偵の特性を四作目にしてようやく捜査に活かしているのも○。
タグ:
posted at 21:32:26
密室のハウダニットや犯人を追い詰める決め手の部分はそれなりに練られている反面ミステリとしてみるとロボット三原則に纏わる一番肝心な所が後出しなのがやや気になるものの、そこさえ目を瞑れば謎解きをきっかけに始まる終盤の怒涛の展開は見応えがあるしラストに登場する某キャラも気が利いている。
タグ:
posted at 21:32:46
2022年10月26日(水)
さがら総「恋と呪いとセカイを滅ぼす怪獣の話」読了。星墜ち島には特別で孤独な子どもたちが集められている。十数年前に太平洋に堕ちた星の影響で奇妙な『呪い』を宿す能力者たちだ。社会から隔離されたこの島に一人の転校生がやってきたのを機に、彼らの驚くべき真実が少しずつ明らかになっていく――。
タグ:
posted at 21:06:52
良い意味でラノベらしいジャンルミックス小説。本作がユニークなのは特殊設定の青春小説として幕を開けたかと思えば一章ごとに視点人物を変えることで意外な事実を突き付け読者の認識に揺さぶりをかけてみせる点であり、そこだけみればミステリかつアンチセカイ系として捉えることもできるだろう。
タグ:
posted at 21:07:21
だが終盤に近付くにつれ物語はそれとは異なるジャンルに踏み込み始め、終わってみればこれ以上ないほどラノベらしいハッピーエンドを迎えていることに驚かされる。軽妙な語り口に反してかなりテクニカルな構成であり、初期の野﨑まど作品のような軽々とジャンルを飛び越える体験が味わえる怪作である。
タグ:
posted at 21:07:54
2022年10月30日(日)
紺野天龍「幽世の薬剤師2」読了。幽世の薬師となり吸血鬼事件を解決した空洞淵霧瑚の許に一人の少女が助けを求めてくる。なんでも彼女の村では毎年神の子を身籠る花嫁が村の娘から選ばれるが、なぜか常に神の子は生まれてこないまま花嫁が衰弱死する悲劇を繰り返しているらしい。果たしてその真相は?
タグ:
posted at 12:31:55
現役薬剤師でもある作者による異世界召還×医療ミステリシリーズの二作目。花嫁を死に至らしめる「神の子が宿る」現象の正体は今回も察しがつきやすいものながら、本作が秀逸なのはそれだけでは終わらせず、人々の噂が現実化してしまうというこの世界のルールを巧くその現象と絡めている点だろう。
タグ:
posted at 12:32:35
それにより浮かび上がる異世界本格らしい異形のロジックもさることながら、このシリーズでお馴染みの黒幕の存在が最後に明かされる事件の構図の異様さを際立たせるのに一役買っているのも○。本作はこのシリーズの医療ミステリとしての弱点を巧く異世界本格要素でカバーしてみせた佳作である。
タグ:
posted at 12:32:55
2022年11月02日(水)
米澤穂信「栞と嘘の季節」読了。高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門はある時、図書室に返却された本の中に押し花の栞が挟まっているのを見つける。その花は猛毒のトリカブトだった。やがて男性教師が中毒で救急搬送される事件が発生。誰が教師を殺そうとしたのか。そして次は誰が狙われるのか。
タグ:
posted at 22:54:27
図書委員の堀川次郎と松倉詩門が日常の謎を解き明かす青春ミステリの連作「本と鍵の季節」の続編はトリカブトを巡る長編ミステリ。トリカブトといっても本作が扱うのはどうやって毒薬を飲ませたのかのハウダニットではなく、トリカブトを栞にしてばらまいている犯人もとい配り手を探すフーダニットだ。
タグ:
posted at 22:56:16
とはいえそこに辿り着くのはだいぶ先の話であり、物語のほとんどはトリカブトが齎す不穏な空気感を描くことに費やされているが、その一方で時折思い出したように本作のダブル探偵という特性を活かした意外性を入れることで物語に緩急をつけるのを忘れない姿勢は○。
タグ:
posted at 22:56:43
配り手を突き止めるロジック自体はそれほど凝ったものではないものの、さりげない伏線の張り方とストーリーテリングによるミスディレクションはこの作者らしい巧さを感じさせる。と同時にトリカブトを切り札と呼ぶしかなかった少女たちの切実な想いが印象深い良作である。
タグ:
posted at 22:57:23
2022年11月03日(木)
平石貴樹「フィリップ・マーロウよりも孤独」読了。大学の構内で発見された白骨死体。「犯人はあの人だ」天文学を愛好する女子大生エリコはそれまで書こうとしていた小説を中止し事件の調査を始める。かつて少女だったエリコの胸を熱くさせたあの人の物語は彼女のほろ苦い思い出から全共闘時代に遡る。
タグ:
posted at 17:54:29
異色長編ミステリと銘打たれた本作は一応身許不明の白骨死体の謎を女子大生のエリコが調べる体裁を取ってはいるものの、変わっているのはその調査の対象が「主として記憶。証人は想像、およびアドリナリン」である点で、そのため物語の殆どがエリコが犯人と信じる人物との思い出話に費やされている。
タグ:
posted at 17:55:03
どちらかというとミステリの枠を借りた少女小説の趣があり、タイトルにあるようなハードボイルド的展開や意外な真相を求めるとかなり肩透かしを覚えることだろう。とはいえ現在の醒めた主人公と対比して描かれる思春期という多感な時期ならではの複雑な乙女心はそれなりに読み応えのある作品である。
タグ:
posted at 17:56:41
ちなみに本作で一番印象に残ったのは思い出をちょうだいと懇願する主人公に男が切断した小指を渡すシーンもさることながら、それ以上に好きな女の子(主人公)から毎回体操服の洗濯を頼まれて悶々とするアオヤマ君のエピソードだったりする←
タグ:
posted at 17:58:11
2022年11月04日(金)
辺天使/津田穂波「ボクとキミの二重探偵」7巻読了。探偵たちの葛藤を挟んでから訪れた刑事との第二ラウンドは刑事からある言葉を引き出した巧さもさることながら、それをきっかけに明らかになったこのシリーズらしい事実が○。そして、そこからのモブキャラを意外な形で絡めたまさかの急展開に唖然w
タグ:
posted at 09:18:09
2022年11月05日(土)
笹沢左保「シェイクスピアの誘拐」読了。ハムレットを演じる名優・上杉夏也が舞台上から美貌の人妻・柏原絵美に投げた謎のメッセージが怪事件の幕開けだった――。暗号、安楽椅子、倒叙、不在証明、動機、人物消失、完全犯罪、そして怪奇と死体。一編ずつ異なる趣向を凝らした表題作含む八編を収録。
タグ:
posted at 15:45:58
ミステリの様々な趣向に作者独自の料理法で挑むという試みの連作ミステリ。その点を踏まえて読むと確かに一編一編定型に囚われないこの作者らしさが窺えるのが好印象で、例えば表題作は暗号の大胆な提示の仕方もさることながらそれに誘拐を絡めたスリリングな展開、そして予想外の黒いオチが実に秀逸。
タグ:
posted at 15:46:17
個人的にベストを挙げるとするなら倒叙をテーマにした「知る」で、末期癌に冒された主人公が偶然殺人の現場を目撃したことから自分の命を狙う何者かを推理するだけでなく、その人物に早く自分を殺すよう仕向けようとする展開がまず面白い。
タグ:
posted at 15:46:35
犯人を絞り込む推理に主人公の置かれた状況を活かしている点も○だが、何よりも更にそこから一捻りした真相が実に見事である。次点は人物消失がテーマの「現れない」で、理想の恋人に出逢ったと語る女が不幸な事故で命を落とすが何故か通夜や葬式にもそれらしい男が現れない不可解な謎が描かれる。
タグ:
posted at 15:46:51
これもまた読者にある程度着地点を予想させておいてからの急転直下の盲点をついた真相が素晴らしい。本作はバラエティーに富んだ趣向と作者の捻りのきいたプロットが楽しい、粒揃いの作品集である。
タグ:
posted at 15:47:12
2022年11月09日(水)
大谷羊太郎「恋愛迷宮殺人事件」読了。美奈子はある日、恋人の忽一に妻がいることを知る。早速、高崎の妻のいる家へ向かった美奈子はそこで殺人現場を目撃。怯える美奈子は悩んだ末、友人の綾子に相談するが、その行動がやがて密室殺人を引き起こすことに――。八木沢警部補の推理が冴える。
タグ:
posted at 20:40:01
大谷作品ではお馴染みの八木沢警部補が探偵役を務める長編ミステリ。とはいえ八木沢警部補が登場するのは物語の中盤以降であり、それまでは美奈子視点で次々と起こる不可解な事件の様子がサスペンスタッチで描かれる。
タグ:
posted at 20:40:33
特筆すべきは密室という状況もさることながら殺害手段や大小様々なものが消失している事実など細かい謎を積み上げることでタイトルにもある通り事件の迷宮ぶりを際立たせている点であり、何となく真相が読めたと思っても更にその先がある一筋縄ではいかない事件の構図が○。
タグ:
posted at 20:41:20
その一方で積み上げた細かい謎と共に複雑な人間関係を解き明かしていく八木沼の推理も見応えがあり、目新しいトリックこそないものの、熟練した作者の技巧が堪能できる良作である。
タグ:
posted at 20:41:42