麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年08月12日(金)
これぞ西澤保彦と言うべき妄想推理の果てに明かされる黒い真相には背筋がゾクリとせずにはいられない。というか、これはもはやホラーである。西澤保彦が久々に真正面から本格ミステリに挑んだ本作は、同時に西澤保彦の完全復活作と言ってもいいかもしれない。
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posted at 20:14:38
だが本作で何よりお勧めしたいのは表題作の「赤い糸の呻き」だ。あとがきで作者が石持浅海「暗い箱の中で」に触発されて書いたと語るこの短編は、地震による停電で停止し、真っ暗になったエレベーター内で発生した殺人劇を扱っているのだが、これの真相がとにかく凄い。
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posted at 20:13:55
西澤保彦「赤い糸の呻き」読了。本作は「パズラー」「動機、そして沈黙」に続くノンシリーズ短編集の第三弾だが、構成的には「パズラー」に近い。それは作者も意識しているのか「パズラー」では「贋作『退職刑事』」をやっていたのに対し、本作では贋作『物部太郎』(「墓標の庭」)をやっている。
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posted at 20:13:30
2011年08月11日(木)
コミカルなやり取りの中にも一応の説得力を持たせ、そつなく纏めあげているあたりに相変わらずの巧さを感じさせる。加えて本作にはデビュー作「月光」のキャラが登場するというファンサービスが用意されているのも嬉しい。但し本作は、完全に前作のネタバレ前提の作品なので前作未読の人はご注意を。
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posted at 20:48:22
前作でちょっとしたミステリ的サプライズを仕掛けた作者が今回用意したのは、まさかの私設裁判物。とはいえ議題が議題なので些か緊迫感には欠けるものの、ライトノベルらしい、ゆるいコン・ゲーム的展開を楽しむことができる。
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間宮夏生「変愛サイケデリック2」読了。変人・彩家亭理子の親友・円馬佐那の秘密を知った千光生徒会の原犀斗。執拗なまでに正義に拘る彼は佐那の退学の是非を全生徒が参加する「千光大会議」にかけることで気に食わない理子を陥れることを画策。かくして佐那の退学を賭けた「千光大会議」が始まった。
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posted at 20:47:12
2011年08月10日(水)
凶助の失われた過去とか誘拐計画の行方とか、そんなのは些細な問題に過ぎない。余計なことは何も考えず、ただひたすらこの狂乱の宴を楽しむことこそ、本作の正しい読み方である。
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ノリに乗ったエロス&バイオレンス。そして最後の取って付けたような結末と、本作は勢いだけで書かれた友成小説の見本のような作品である。ちなみにこの「勢いだけで書かれたような」という言葉は基本的に欠点として使われることが多いが、友成小説の場合むしろそれは誉め言葉だ。
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posted at 19:40:05
友成純一「獣欲の系図」読了。関東一円に君臨する天龍家の娘として生まれるも勘当された身である武闘暴走集団「メデューサ」のボス・鬼子はある時積年の恨みを晴らすべく天龍家の嫡子誘拐を計画。その計画には記憶喪失の殺人マシーン・凶助も組み込まれていた。果たして血で血を洗う抗争の行方は……?
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posted at 19:39:04
本格ミステリ作家という説明の割りにミステリ的なことに関しては一切触れず、ただ作品内容を部分的に紹介するだけで魅力を読者に分かってくれというのはさすがに無理がある。作者が不向きな話を無理やり書いた結果、微妙な出来になってしまったとしか思えなかった。
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posted at 01:22:57
それは勿論真相も含めてであり、最初に自分がこういう真相だったら嫌だなと思っていたのと正にどんぴしゃだったのには正直脱力してしまった。何より本作の一番の失敗は物語の根幹を担っている謎のミステリ作家に全く魅力がないことだろう。
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posted at 01:22:06
日常の謎物だった前作「ひぐらしふる」とは百八十度方向性の違う本作だが、残念ながら自分はあまり楽しめなかった。というのも本作は「ひぐらしふる」に比べると、ただそのシチュエーションをやってみました感が強く、どこまでいってもこの手の良くある展開を上回ることがないのだ。
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posted at 01:15:53
彩坂美月「夏の王国で目覚めない」読了。高校生の美咲はある時、偏愛しているミステリ作家・三島加深のファンサイトを通じて「架空遊戯」と名付けられた推理劇に参加することになる。見事事件を解決すれば三島加深の未発表作が贈られるという。だがその推理劇の最中、参加者の一人が消えてしまい――。
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posted at 01:15:18
2011年08月07日(日)
最後の短編に至るまでのエピソードの積み重ねは、言わば事件を成立させるための長い前奏だ。事件の真相が明かされた時、読者は初めてそこに巧みに伏線が隠されていたことを知ることになるだろう。本作は今年度本格ミステリのダークホースである。
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まさか本作の「不可能」というタイトルが不可能犯罪のことを指しているとは思わなかった。連作短編集の形式を取っている本作は最後の短編「不可能」に入るまで本格ミステリであることをおくびにも出さない。一見ミステリとは関係ない幻想色の強い純文学としか思えないが、それこそが作者の狙いである。
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posted at 17:48:41
松浦寿輝「不可能」読了。人嫌いで知られる金持ちの老人の生首が自宅の地下室で発見された。奇妙なことにその首は、首なしの石膏像の上に置かれていた。それから間もなくして、今度は胴体が西伊豆にある塔の最上階から発見される。ただ一つはっきりしているのは、この犯行が「不可能」であること――。
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posted at 17:47:41
2011年08月06日(土)
ただ、書き方のせいなのか、その某作品に比べると、本作からはあまり狂気めいたものは感じない。これまでの作品同様、後に引くような陰惨さがないのが個人的には大いに不満だが、気軽な作品を求めている読者にとってはこれくらいの重さが丁度いいのかもしれない。
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posted at 20:02:05
一方、事件の方は粗筋や目次からも分かるように密室を全面に押し出してはいるものの、そのトリックには前例があり、差ほど目新しいとは言い難い。むしろ本作は、そういったトリックよりも事件の構図の方に注力しているように思える。本作を読んで、自分が思い出したのは国内作家Kの某作品だ。
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posted at 20:01:41
天祢涼「空想探偵と密室メイカー」読了。密室状態の部屋から発見された女優の死体。並外れた空想力を持つミステリ偏愛少女が事件に挑む――探偵役の設定はこの作者らしいが、共感覚探偵の音宮美夜と違い、それがあまり事件に関わることなく終わってしまっている点が非常に惜しい。
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2011年08月05日(金)
そして、そのまま突っ走ってくれるのかと思っていたら……うーん。作者としては一捻り入れたつもりなのかもしれないが、個人的には何か最後の最後で方向性を誤ってしまったような気がしてならない。それとこのタイトルは内容と合っていないように思う。
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posted at 20:04:51
本作を読んでまず思ったのは「これ、何て真梨幸子?」――本作は一言で言えば順風満帆と思われた主人公が、翠という自己チュー極まりない女によって振り回され、滅茶苦茶にされていく物語である。その過程は全てにおいて予定調和ではあるが、ある種の痛快感がある。
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posted at 20:04:15
水生大海「善人マニア」読了。真面目で努力家の珊瑚には人には言えない過去があった。中学生の時、同級生の翠と共に修学旅行先で一人の男を死なせていたのだ。翠とは卒業以来疎遠になり、二度と会わないはずだった。だが十七年後、結婚を間近に控えた珊瑚の前にその翠が婚約者の妹として再び姿を現す。
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posted at 20:01:48
2011年08月04日(木)
その他近未来設定なのにそんな感じが一切伝わってこない。事件は色々起こってるのに話が全く盛り上がらない。帯の煽り文句(「愚かもの~」云々)の意味が読み終わっても分からないなど欠点を挙げたらキリがないが、この作者が初めてミステリっぽいことをやろうとしたという点だけは評価したいと思う。
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posted at 22:35:44
だが、伏線があからさま過ぎてやろうとしていることがバレバレなのが辛い。加えて構成が一部非常に分かり辛く、読んでいて何故いきなりこんな話になるんだと一瞬、混乱してしまった。またメインのパワードスーツにしてもやたらと目に付く割りに肝心な所が説明不足でイマイチぴんとこないのもまた辛い。
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posted at 22:34:52
まず本作は次のような挑発的な一文から始まっている。「本書には、ある仕掛けがあります。注意してお読み下さい」――うん、確かに仕掛けはあった。あったけど……個人的にはかなり微妙。いやまあ確かにこういった趣向をやるだけあって本作はこれまでの作品の中では一番ミステリをやっているとは思う。
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posted at 22:34:27
遠藤武文「パワードスーツ」読了。絶望感漂う近未来の地方都市で頻発する老人たちの連続失踪事件。そんな中、老人を救うはずの最先端機器「パワードスーツ」が殺人現場に残されていた。――愚か者と笑えばいい。だが、この国を救うのは私だ。
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posted at 22:34:07
但し本作の場合それは単なるシチュエーションとしてではなくロジックとしてきちんと活かされている。また本作の帯には「論理×狂気」とあるがこの作者の手にかかると狂気も不思議と理知的に感じてしまうのが面白い。作者が「石持館」と称する通り本作は石持浅海らしさ全開のロジック本格の良作である。
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posted at 18:22:36
本作は石持浅海にしては珍しい館ものだが、蓋を開けてみれば警察が介入しない状況下でのディスカッションという極めてこの作者らしい作品に仕上がっている。そして、これまた近年の石持作品にはお馴染みの「お漏らし」は本作でも健在(爆)。
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posted at 18:22:14
石持浅海「人面屋敷の惨劇」読了。白い塀に顔のような汚れのある不気味な館――通称「人面屋敷」。そこに十年前に失踪した我が子がいるかもしれないと聞き付けた美菜子ら六人は取材と称して館内に潜入することに成功。だがそれも束の間、館の異様な雰囲気に呑まれた一人が館の主を刺し殺してしまう。
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posted at 18:21:52
本格ミステリという観点ではなくホラー要素のあるイヤミスとしてなら、本作はなかなか面白い。「鬼畜の家」「檻の中の少女」、そして本作と、どうやら今年の福ミスは鬼畜作品(?)に恵まれていたようである。
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posted at 02:39:13
むしろあまりにもあからさま過ぎて逆にミスリードなんじゃないかと疑ってしまった程だし、過去の犯罪にしても成立するのかどうかかなり微妙な気がする。それ以外にも引っ掛かる点は多々あるが、だからと言って決して本作がつまらなかったというわけではない。
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posted at 02:38:42
嶋戸悠祐「キョウダイ」読了。作者は本作について「本格ミステリーとホラーの融合」と語っているが、その融合が成功しているか言われると正直自分は首を傾げる。一応本作にはミステリ的な仕掛けはあるものの、お世辞にも上手くいっているとは言い難い。
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posted at 02:38:10