麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年11月01日(火)
折原一「黄色館の秘密」読了。虹子の助けを求める電話で駆け付けた黒星警部を待っていたのは、実業家一家が住む「黄色館」という名の人里離れた山荘だった。折しも犯罪集団・爆盗団から家宝である「黄金仮面」を盗むとの予告がされており、黒星は話の流れで館の警備を引き受けることになるが……。
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posted at 19:22:29
これはいいエロバカミス。黄金仮面が宙を舞い、密室で次々と人が死ぬ怪事件に挑むのは、三度の飯より密室が大好きな愛すべき迷探偵・黒星警部。当然、まともなミステリになるはずがないとある程度覚悟(?)はしていたが、正直ここまでかっ飛ばしてくれるとは思わなかった(笑)。
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posted at 19:24:33
と言っても本作は別にトンデモというわけではない。きちんと計算された(?)バカミスであり、トリック、凶器、そして犯人と様々な趣向で驚かせてくれる。特に犯人の正体に関しては唖然とすること必至。本作は折原一がアレ系だけの作家ではないことを知るにはうってつけの作品である。
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2011年11月02日(水)
嵯峨島昭「深海恐竜殺人事件」読了。幻の怪獣ニューネッシーに強い興味を持つルポライターの本間逸男は、怪獣を見たという学生・信一に接触を試みるが彼は何故か真相を語りたがらない。続いて本間は信一が乗っていたヨットの持ち主・テイラーを訪ねるが、その直後にテイラーは謎の墜落死を遂げる。
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posted at 22:47:03
全三部構成の本作は、以前読んだ「猛獣狩殺人事件」よりはミステリ寄りの作品だが、ミステリらしい展開なのは第一部までで第二部からは一転、ある人物の壮絶な復讐譚になる。とはいえ第二部を通して事件の構図が見えてくる構成はなかなか秀逸で、それだけでも満足度はかなり高い。
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posted at 22:48:08
そして第三部からは復讐譚に怪獣探しが本格的に絡んできて冒険小説の雰囲気が色濃くなっていく。こういった何でもありの自由奔放な物語こそ、この作者の本領だろう。他にも小粒ながらアリバイトリックも用意されており、色々な要素で楽しませてくれる作品に仕上がっていると思う。
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2011年11月04日(金)
水流添秀哉「午前零時の恐怖」読了。新米刑事の二階堂薫は大学時代の友人・吉美の誕生パーティーに招待され、山奥にある別荘に赴く。パーティーは盛況に終わるが、その夜、午前零時に吉美が何者かに殺される。更に追い討ちをかけるように地震が発生、陸の孤島と化した別荘で第二の惨劇が――。
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posted at 17:05:29
十四歳が書いた推理小説、しかも自費出版ということである程度の覚悟(?)はしていたつもりだったが、蓋を開けてみたら予想以上にアレだった。文章が作文の域を出ていないのはまだ目を瞑るとしても、無駄な描写が多いわりにミステリとして肝心な部分が一切説明されていないのはさすがにいただけない。
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posted at 17:06:21
また犯人が午前零時に殺すことに拘る理由にしても、もう少し何とかならなかったのだろうか……。どんなに小粒でもいいから、本格ミステリっぽいものを目指すのであれば、せめて押さえるべきところは押さえてもらいたかった。
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2011年11月08日(火)
梶龍雄「鎌倉XYZの悲劇」読了。まず最初に断っておくと本作は数ある梶作品の中でも異色作の部類に入る作品である。その理由は幾つかあるが、一番の理由は被害者が天国にある探偵局から捜査の過程を見物するという風変わりな設定だろう。しかし、だからと言って本作がキワモノというわけではない。
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posted at 09:39:39
それどころか、本作の設定は全て計算したものであるのだから恐れ入る。些か詰め込みすぎなきらいはあるものの、作者の企みはかなり成功していると言ってもいいだろう。また本作で起こる事件が、クィーンの「悲劇四部作」と何かしら符合しているのも、ミステリ好きの心を擽らずにはいられない。
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posted at 09:40:21
それにしても本作を含めたこの時期の梶作品を読むと初期の新本格に通じるものを感じてしまうのは何故だろう。仮に作者がまだ生きていたとしたら、そういった作品を未だ書き続けていた可能性も充分あり、もしかしたら今とはまた違った評価を得ていたかもしれない。そう思うと色々と感慨深いものがある。
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posted at 09:41:10
石崎幸二「第四の男」読了。櫻藍女子学院高校の生徒で大手食品メーカー会長の孫娘・星山玲奈が何者かに拉致された。だが彼女は犯人グループの隙を見て逃走、無事保護される。それから数日後、玲奈を攫ったのと同じ犯人グループから今度は警視総監宛に「別の女子高生を誘拐した」との脅迫状が届く。
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posted at 16:56:45
惜しい。前半の誘拐劇からお馴染みのあのネタを使って過去の事件へと繋げる手順は申し分ないのに、最後の最後でやってしまった印象。確かに本格ミステリである以上、手掛かりとしてその事実を出さなくてはいけないとはいえ、伏線があからさま過ぎて最後のサプライズが見事に失敗してしまっている。
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posted at 16:58:51
2011年11月09日(水)
折原一「帝王、死すべし」読了。野原実は息子・輝久の日記を読んで、息子がクラスメイトからいじめを受けていることを知る。どうやらそのクラスメイトを裏で操っているのは『帝王』と呼ばれる、車椅子の人物らしい。息子をいじめの狂気から守るため、実は帝王の正体を突き止めることを決意する。
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posted at 16:07:07
良作。「てるくはのる」事件を題材にした本作は、この作者らしい日記を織り交ぜた構成が実に秀逸。前半から中盤にかけて静かに増幅させてきた緊張感を、後半でタイムリミットを取り入れることにより一気に加速。そしてラストで待ち受けるのは思いもよらぬ逆転の構図……これぞ折原マジックである。
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posted at 16:07:23
また本作は複雑になりがちだった近年の作品と異なり、原点に帰ったようなシンプルな構造なのもいい。もしこれから折原一を読もうとしている人がいるならば、まず最初に本作から読んでみてもいいかもしれない。
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posted at 16:07:42
乾くるみ「嫉妬事件」読了。「この部室……臭くないか?」城林大ミステリ研究会で年末恒例の犯人当てイベントが行われるその日。部室の本の上にそれが置かれていたのが全ての始まりだった――今年度のエロミス一位早くも決定(爆)。というかこれを超える作品はなかなか出てこないのではないだろうか。
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posted at 22:30:27
表紙の爽やかさとは裏腹に内容はとてつもなく酷い。だって本の上に置かれたウンコ(あ、言っちゃった)を巡って延々と推理合戦を展開してるんだもの。多分「イニシエーション・ラブ」しか知らない読者は作者の頭を心配するだろうが「Jの神話」からのファンにとっては、これはこの上ない御褒美である。
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posted at 22:32:12
そして「あの乾くるみが帰ってきた!」と感動に胸を熱くするに違いない。また本作は伏線フェチの自分をびっしょり濡れされるくらい(爆)伏線が巧みな点も見逃せない。まさかアレがこういう形でイカされるとは……エロばかり目がいきがちだが、本格としてもきっちり作り込まれているのだから恐れ入る。
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posted at 22:33:37
作り込まれているといえば、同時収録の犯人当て短編「三つの質疑」も実に秀逸。ネタとしては何てことないものだが、それに気付くかどうかで事件の構図がガラリと変わってしまう点が素晴らしい。本作は変態作家・乾くるみと本格ミステリ作家・乾くるみが同時に堪能できる贅沢な作品である。
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2011年11月10日(木)
柚月裕子「検事の本懐」読了。前作「最後の証人」で活躍したヤメ検弁護士・佐方貞人の検事時代を描いた短編集である本作は、ミステリとして見ると後出しの情報が多いなどの不満はあるものの、一方で事件を通して人間を描くという点では前作から一貫している。
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posted at 18:30:07
事件を通して描かれるのは何も事件関係者だけに留まらない。決して条件やデータだけで判断せず、あくまで事件を起こす人間を見る探偵役である佐方のひたむきな姿が何とも胸を打つ。そんな本作の個人的なベストは、親から子へと受け継がれた想いが印象的な最終話「本懐を知る」。
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東川篤哉「謎解きはディナーのあとで2」読了。お嬢様刑事が遭遇した事件の謎を毒舌執事の影山が解き明かすシリーズの第二弾。前作よりも明らかに影山の活躍の場が増えたのはドラマの影響かどうかはさておき、本格として見ると難易度の低かった前作に比べ、本作は一捻り加えてあるものが多くて好印象。
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posted at 22:18:23
また二作目になり作者もキャラの特徴を掴んできたのか、前作以上にキャラの掛け合いが楽しい。第三話「殺意のパーティにようこそ」では「本格ミステリ大賞」なんて単語も出てくるが、本作の読者の何割がそれを知ってるのかと思うとかなり胸熱(爆)。個人的なベストは「髪は殺人犯の命でございます」。
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2011年11月11日(金)
相村英輔「偽装」読了。密室殺人の容疑者は過去に三度も莫大な保険金を入手していた。しかも彼には鉄壁のアリバイが……前作「不確定性原理殺人事件」に引き続き、詩人の亜門くんが探偵役を務める本作は、アリバイ物のダメなところを凝縮したような作品である。
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posted at 12:53:06
(自分含む)アリバイ物に苦手意識のある人が一番嫌がる時刻表を使った分刻みのアリバイ崩しをこれでもかとやってみせるその様子は正に拷問以外の何物でもない。それに加えて、前作にもあった詳細過ぎる死体描写と亜門くんの無駄に難解な謎解きが読者のげんなり感に拍車をかけている。
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posted at 12:53:28
これで真相が面白ければまだ救いなのだが、残念ながら前作以上に真相がつまらないので、読み終わっても何も報われるものがない。とりあえず本作を読むくらいなら他のミステリを読んだ方が有意義な時間を過ごせそうな気がする……。
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posted at 12:54:05
2011年11月13日(日)
平山夢明「SINKER 沈むもの」読了。三件の幼女誘拐殺人が起きた。ある被害者は頭部を口部で水平に切断、続いて頸部、臍部、上腕、下腕、手首、指が切り離され、並べられていた。捜査は混迷を極め、キタガミ警部は事件解明のため、他人の内部に沈み、操る能力を持つビトーに協力を依頼する。
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posted at 19:01:08
本作はサイコ・キラーのことを知り尽くした作者が満を持して贈るホラーだけあって、かなり毒性の強い内容となっている。途中、心暖まるシーンはあれど、それは後々読者を効果的に奈落へと突き落とすための絶妙な演出に過ぎない。
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posted at 19:01:43
静かに、しかし着実に火薬を仕込んできた作者は終盤に至るなり、嬉々として導火線に火を点ける。その焦燥感に追い立てられるようにページをめくることになる読者を待ち受けるのは、思わず目を逸らしたくなるような残酷な結末である。
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posted at 19:02:04
人によっては間違いなくトラウマになりかねない作品だが、一方で人を惹き付けてやまない、黒い魅力に満ちているのも事実。これから本作を読もうとしている人は、くれぐれも取り扱い注意で。
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posted at 19:02:25