麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年02月01日(水)
清水義範「ABO殺人事件」読了。依頼人である女子大生・高瀬美紀の入っている寮で最近寮生が立て続けに亡くなった。一人は事故死、もう一人は自殺として処理されたが依頼人はそれを巧妙に偽装された殺人事件だと主張する。しかもあろうことか犯人は血液型の順に人を殺しているとまで言い出して――。
タグ:
posted at 18:09:24
オカルト的な怪事件ばかり舞い込む「幻想探偵社シリーズ」の第二弾。自称名探偵の所長・真下による迷推理が炸裂するミステリパートと真相のオカルトパートの二段構造は前作と変わらないが、本作ではもう一人探偵役が加わったことにより、ミステリパートが一層凝ったものになっている。
タグ:
posted at 18:11:14
二人の探偵の推理合戦、特にオカルト探偵・黒川が披露した推理は捨てネタとはいえ、なかなか意表をついていて面白い。しかし、この表紙(ソノラマ文庫版)はちょっとネタばれし過ぎな気がする……。
タグ:
posted at 18:11:41
2012年02月02日(木)
梶龍雄「真夏の夜の黄金殺人」読了。安房小湊にある夥しい金で飾り立てた屋敷――金御殿。その金御殿に用心棒として四人の早大生が雇われることになった。だが、間もなく金御殿で凄惨な殺人事件が発生。しかもひょんなことから、偶然合宿に来ていた慶大美術研究会の面々と推理を競うことになる。
タグ:
posted at 19:56:33
伏線とミスディレクションの巧さに定評がある作者の技巧が遺憾なく発揮された好例の一つ。意表をついた展開の連続で読者を翻弄する手腕もさることながら、何よりも事件の動機を示す伏線の張り方が素晴らしい。このさりげなさこそ理想の伏線の張り方だと思う。
タグ:
posted at 19:59:29
また風変わりな屋敷で起こった殺人事件について早大生と慶大生が推理を競うという趣向も楽しいが、一方で金御殿の主人・政吉の愛娘で女優のゆかりを巡る恋の行方も見逃せない。本作は青春本格ミステリの秀作である。
タグ:
posted at 19:59:56
2012年02月03日(金)
海渡英祐「突込んだ首」読了。スパイ物から犯人探しまでバラエティ豊かな八つのミステリ短編が収録された本作は、作者の自選傑作短編集だけあって完成度の高い作品が揃っている。そんな中から自分がベストを選ぶとするなら「告白の輪舞」と「天国の活人」になるだろう。
タグ:
posted at 19:42:57
前者は作者が嵐の山荘という古典的なスタイルをあえて試みた作品で一度否定された仮説を意外な切り口からひっくり返してみせる点が実に秀逸。あとがきの作者の言葉(「昔風の探偵小説を安易に書くことは大いに疑問を覚える。やはり新しいスタイルを創造しなければならない」)にも非常に共感を覚える。
タグ:
posted at 19:43:20
後者は天国を舞台にデュパン、ホームズ、明智、ブラウン神父といった往年の名探偵たちの中から犯人を見付け出す異色作で作者が推理作家協会の新年会で行われる「犯人当て」用に書き下ろしただけあってなかなか凝った内容となっている。設定の盲点を上手く活かした異世界本格の秀作と言っていいだろう。
タグ:
posted at 19:43:50
次点は初めから終わりまで一度もベッドから降りない官能ミステリ「ベッドの上のルフラン」で、ラストは綾辻行人の某作品を彷彿とさせるものがある。基本的にハズレはないので、海渡英祐入門編として読んでみるのもいいかもしれない。
タグ:
posted at 19:44:45
2012年02月06日(月)
依井貴裕「緑の密室」読了。キャンプの最中に密室で女生徒が殺された事件を当時、高校生だった名探偵・多根井理が解き明かす。一応、密室物と謳ってはいるものの、注目すべきポイントは「どのように密室にしたか?」ではなく、むしろ「何故密室にしたか?」にある。
タグ:
posted at 11:17:51
読者への挑戦にて、作者は「犯人の意外性もないし、短編では伏線の数もたかが知れている」と謙遜しているが、ミスディレクションの技巧はなかなかだと思う。何故作者が事件以降よりも事件以前に筆を費やしたのか。その理由に気付いた時、あっと驚かされること請け合いの良作である。
タグ:
posted at 11:18:44
梶龍雄「殺人者は道化師」読了。次期総裁有力候補が別荘で殺された。第一発見者である長男は死体を発見する直前に現場から立ち去る道化師の姿を目撃する。やがて警察の調べで被害者の次男が現場から差ほど離れていない場所で道化師の格好で働いていたことが明らかになる。果たして殺人者は次男なのか。
タグ:
posted at 18:58:08
リラ荘の美しい女主人・通称リラ夫人の推理が冴えるミステリ短編集。本作に収録された七編のうち、前半の三編――目の前で起こった宝石消失劇の謎「消失の闇」、人気女優が巻き込まれた銃殺事件「女優エリカの悪夢」、そして表題作が良質のパズラーであるのに対し、後半は些か失速しているのが残念。
タグ:
posted at 18:58:49
だが最後の短編「後家蜘蛛の死」で再び盛り返す。宝石マニアで知られる夫人の放蕩息子に後家蜘蛛と渾名される未亡人を殺害した嫌疑がかかるこの短編は序盤に挿入される三つのエピソードに巧妙に隠された伏線が実に秀逸。個人的に伏線の妙なら「消失の闇」と表題作、「後家蜘蛛の死」の三作を推したい。
タグ:
posted at 18:59:20
2012年02月07日(火)
二階堂黎人「覇王の死 二階堂蘭子の帰還」読了。資産家・邑知家の後継者になりすまして能登半島にある眞塊村へとやって来た青木俊治を待っていたのは血も凍るような惨劇だった。村を襲う怪物、狂気にかられる村人、猟奇殺人、殺人予告、密室殺人……果たして名探偵・二階堂蘭子は真相に辿り着けるか?
タグ:
posted at 17:30:17
「悪魔のラビリンス」以降、四作に渡って続けられてきた「名探偵・二階堂蘭子 VS 魔王ラビリンス」の最終章……なのだが、正直これは微妙。というのも本作に出てくる謎のほとんどが特殊知識に依存するものなのがまずいただけない。
タグ:
posted at 17:30:51
特に酷いのがニューホリー村で起こった事件で、作者曰く本作は「島田荘司流奇想ミステリーの手法を大胆に取り入れ」たとのことだが、どうも島田荘司流奇想ミステリーを勘違いしているとしか思えない。実は○○でしたというオチをたまに使うのはいいが、それを何回も用いるのはさすがにどうかと思う。
タグ:
posted at 17:31:27
一応ミステリらしいトリックもあるにはあるが、バレバレだったり、必然性に疑問だったりとお世辞にも上手いとは言い難い。また肝心のラビリンスとの決着の仕方に関しても、腰砕けもいいところで、読み終わった時はガッカリ感しかなかった。
タグ:
posted at 17:32:20
唯一面白かったのはヨーロッパから帰ってきた蘭子が○○○だった点だが、それだけのために本作を読むのはあまりお勧めできない。個人的に期待していた作品だけにこの結果は非常に残念だった。
タグ:
posted at 17:32:45
2012年02月09日(木)
梶龍雄「浅草殺人ラプソディ」読了。浅草パリ座のストリッパー・チエカの妹分のマドカが何者かに暴行された。その犯人はマドカの証言により、人気タレントの川津浩一であることが明らかになる。一方、チエカと親交のある飛田刑事が担当した若い女の自殺事件は一転して密室殺人の様相を示し始める――。
タグ:
posted at 17:26:54
ストリッパー探偵チエカシリーズ初の長編である本作は、凝りに凝った長編が多い作者にしては珍しく、肩の力を抜いて楽しめる軽い作品に仕上がっている。伏線の巧さもさることながら特に作者が力を入れたと思われるのはプロットで、これで解決と思っていたらもう一波乱あったのには驚かされた。
タグ:
posted at 17:27:56
そして、その真相のヒントにしても実に大胆な形で示されていたことに二度びっくり。確かに他のカジタツ長編に比べると小粒感は否めないが、その代わり、生き生きと描かれた浅草の様子や探偵チエカの活躍が堪能できる作品である。
タグ:
posted at 17:29:22
2012年02月10日(金)
梶龍雄「女はベッドで推理する」読了。独身警部補・黒沢龍介と人妻探偵・エリ子の不倫コンビが活躍するシリーズの第一弾短編集。九編も収録されているのはいいが、一編一編の長さが短い、しかも毎回濡れ場を入れなければいけないという縛りのため、作者がかなり苦労しているのが窺える。
タグ:
posted at 18:58:22
故に収録作の中には微妙なものも幾つかあるが、個人的にベストを選ぶなら「女とパンティ」だろうか。「ケンちゃん、裸の女の人が走ってるのを見たよ」という五歳の男児の発言が殺人事件の解決の糸口になるというこの短編の粗筋だけ見るとかなりぶっ飛んでいるが意外にもパズラーとしての出来はまとも。
タグ:
posted at 18:58:57
2012年02月13日(月)
梶龍雄「青春迷路殺人事件」読了。昭和十一年五月。東京の下宿先で京都の老舗問屋の御曹子・亀富修一が何者かに殺された。容疑者は二人の弟……高校浪人でモボ少年の浩二と第一高等学校のエース投手である守人。だが二人には鉄壁のアリバイがあった。様々な思惑が絡んだこの事件に二人の探偵役が挑む。
タグ:
posted at 16:54:07
本作は「出切るだけ図式風に、きまり良い骨組みにまとめた」と作者が語るように、内容としては堅実なフーダニット物に仕上がっている。二人の探偵役が登場するに至った背景には、高校野球での二校の対立が絡んでいるのだが、それが物語の盛り上げにも一役買っている。
タグ:
posted at 16:54:40
ミステリ的には目を惹くようなトリックこそないものの、この作者らしい伏線の上手さは健在で、あれも伏線、これも伏線と明かされていくだけでも充分驚きが味わえる。また二人の探偵役が別々の方法で犯人を指摘してみせる趣向も面白い。動機に少々不満はあるが、良作と言っていい出来だと思う。
タグ:
posted at 16:55:10
佐竹彬「開かれた密室」読了。夏休みに情報学研究船〈ポルターレ・アクアム〉を見学することになった朝倉渚の研究クラス。だが洋上での合宿に浮かれるのも束の間、乗員の一人が船体の上部に磔にされた姿で殺されているのが発見される。更に船は外部との連絡手段が断たれ、孤立状態に陥ってしまう。
タグ:
posted at 19:17:36
森ミステリィを彷彿とさせるφシリーズの三作目にして最終作。これまで出たシリーズの中では一番ミステリをやっているが、一方でシリーズ中一番真相が分かりやすいという欠点も抱えている。というか、作者に真相を隠す気があまりないのではないかとすら思える。
タグ:
posted at 19:18:18
また最終作であるものの実質打ち切り扱いのため、これまでの事件の黒幕の正体が明らかになって終わりという何とも消化不良な内容になってしまっている。本シリーズと同時期に始まった「トリックスターズ」シリーズ程ではないにしろ、徐々にミステリとしての出来は良くなっていただけに残念でならない。
タグ:
posted at 19:18:59