麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年02月14日(火)
東川篤哉「中途半端な密室」読了。デビュー前の「本格推理」掲載の四編+デビュー後に書かれた一編が収録されたミステリ短編集。初期作四編に関しては文章に固さがある、ユーモアがまだこなれていないなどの欠点はあるが、本格としての切れ味はこれまで出た東川作品の中ではベストと言っていいだろう。
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posted at 13:16:21
特に良かったのは「南の島の殺人」で、ただトリックを盛り込んだだけでは終わらずきちんと犯人限定ロジックにも活かされてるのは好印象。それは家屋消失を扱った「十年の密室・十分の密室」にも同じことが言える。惜しむらくはデビュー後の短編がデビュー前に比べるとイマイチ劣るということだろうか。
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posted at 13:17:01
本作について作者は「最近出た東川作品の中ではダントツで面白いな」と自虐的なコメントを寄せているが、その言葉に偽りなし。あと光原百合の解説にネタバレは一切ないのでご安心を(爆)。
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posted at 13:17:30
2012年02月15日(水)
梶龍雄「殺しのメッセージ」読了。「女名刺殺人事件」に続く探偵姉妹トリオシリーズの短編集第二弾。収録作四編のうちベストは好奇心から参加したAV撮影現場で殺人事件に巻き込まれる「アダルトな殺人」だが、真相の捻り方は面白いと思うものの、そこまでやる必然性があまり感じられないのが難か。
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posted at 16:30:27
何より「女名刺殺人事件」に収録されていた「母なる殺人」や「ちぐはぐな情事」に比べると、今一歩劣る印象は否めない。また四編中、三編が動機が同じなのも気になる。駄作とまでは言わないまでも、些か書き急いだ感があるのが残念。
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posted at 16:30:58
一田和樹「サイバーテロ 漂流少女」読了。前作「檻の中の少女」で活躍したサイバートラブル解決屋の君島が、ツイッタースパム騒動に端を発するサイバーテロ事件に巻き込まれる本作は、作者の専門分野を活かしたリーダビリティの高い作品に仕上がっている。
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posted at 22:55:59
本作について恐らく大半の読者がネット社会に警鐘を鳴らしたパニック物、あるいはタイムリミット・サスペンスとして読むのだろうが、自分は本作をあくまでハードボイルド小説として読んだ。そうでなければ、あのような結末にはならないだろう。
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posted at 22:56:48
そしてその一方でデジタルな物語の中にさりげなくアナログな本格ミステリ的仕掛けが盛り込まれているのが新鮮で、ある意味これは新しい見せ方かもしれないと妙に感心してしまった。……何だか随分と捻くれた読み方をしているようだが(汗)とりあえず本作が良質なエンタメ小説であることは間違いない。
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posted at 22:57:11
2012年02月17日(金)
「Q.E.D.」41巻読了。「バルキアの特使」「カフの追憶」の二編収録。メインは国際司法裁判所で燈馬と森羅が対決する前者だろうが、個人的には燈馬が囚人から射殺事件の顛末を聞く後者を推したい。ネタ的には過去作で既にやってるものだが事件の真相が明かされた後にもう一捻りしている点は○。
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posted at 11:05:57
むしろ、こちらの一捻りこそが一番やりたかったことなのかもしれない。この話を読んで何となく島田荘司の某短編を思い出した。決して後味のいい話とは言えないが、可奈とのエピソードが真相の救いのなさを幾分和らげてくれている。
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posted at 11:06:23
「C.M.B.」19巻読了。収録作はどれも話としては面白いが、ネタが小粒なものばかりなのが物足りない。ベストは「Q.E.D.」とコラボした「大統領逮捕事件」で同じ事件を扱った「Q.E.D.」41巻収録「バルキアの特使」よりこちらの方が好み。コンゲーム的味わいの良作である。
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posted at 11:20:16
梶龍雄「殺人者にダイアルを」読了。軽井沢で死んだエリート銀行マンと、その彼を追って自殺をしたというホステス。その二つの死には頻発する金融強盗に関する陰謀が絡んでいた――。シリーズ前作にあたる「天才は善人を殺す」では社会派+密室だったのに対し、本作では社会派+アリバイを扱っている。
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posted at 16:53:05
だが前作に比べると、お世辞にもその融合は上手くいっていないし(その前作にしても上手いとは言えなかったが)何より問題なのはミステリとしての興味を全く抱かせないことだろう。また前作にはあった青春小説要素が綺麗さっぱりなくなってしまっているのも個人的にはかなりマイナス。
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posted at 16:53:43
詠坂雄二「インサート・コイン(ズ)」読了。スーパーマリオ、ぷよぷよ、ストII、ゼビウス、ドラクエという五つのゲームをテーマにした日常の謎系連作ミステリ短編集……といっても本格ミステリとして評価できるのは、ぷよぷよを題材にした「残響ばよえ~ん」くらいだろう。
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posted at 21:27:29
それにしたところで、仕掛けの目新しさはあまりない。むしろ本作は、ミステリではなく、過ぎ去った青春小説として読むのが相応しいような気がする。特に本作はファミコン世代であれば、共感できる部分が多々あることだろう。
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posted at 21:28:39
ちなみに最終話「そしてまわりこまれなかった」の著者注にて、作者は「『ドラクエI・II・III』のネタバレがあるため、未プレイの人は読まないでください(中略)そんな奴がこの宇宙にいるとは思えませんが、念のため」と書いているが、実を言えば自分はその未プレイの人間だったりする(爆)。
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posted at 21:30:08
2012年02月19日(日)
飛鳥部勝則「花切り」読了。小林美樹(ミキ)という女のような名前を持つ美少年は、今日も薄笑いを浮かべて主人公を誘惑する。「おしゃべりとかじゃなくてさ、特別なこと、ちょっと大人っぽいことをしてみようよ」――かつて美樹の母親は、男と浮気して植木職人である父親から制裁を受けたという。
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posted at 12:46:10
そして美樹もまた、主人公を誘惑したことにより凄惨な制裁を受ける。その制裁こそ、タイトルにある「花切り」だ。読了後、「花切り」の意味を知って慄然とすると共に、グロテスクな美しさをそこに見出だすことができる、そんな一編である。
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posted at 12:47:02
2012年02月21日(火)
飛鳥高「青いリボンの誘惑」読了。三谷裕は死期の近い父の健三から、昔長野の加荘市にある工場で一緒に働いていた同僚の家族が今どんな風に暮らしているか調べてほしいと頼まれる。時を同じくして、その加荘市の河原で、女教師が首を絞められて殺されているのが発見される。
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posted at 18:53:33
本作については作者のあとがきが端的に言い表している。『過去に他人を犠牲にしてうまく世の中を渡ってきた男が、死期を迎えて昔のことが気になり、自分の犠牲になった人たちのその後を調べ出す。するとその「過去」がまだ生きていて、新しい悲劇を引き起こしてくるという話です』
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posted at 18:53:55
一応トリックらしきものはあるものの、前に読んだ「細い赤い糸」に比べるとミステリ的な見所はほとんどない。しかしながら作者が描きたいことは一貫しているように感じた。「青いリボン」が象徴する過ちがその後どのような結果を齎すことになるのか。その皮肉な構図が色々と感慨深い作品である。
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posted at 18:54:47
2012年02月22日(水)
井上ほのか「アイドルは名探偵」読了。大作映画「帝王の館」の主役が事故死し、急遽代役を決めることになった。だがそれを妨害するかのように関係者の間に脅迫状が舞い込み、遂には代役候補の一人が撮影中に殺害される事件が発生。人気アイドルの真名子と新人歌手の克樹のコンビが犯人探しに乗り出す。
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posted at 18:36:34
うーん……島田荘司推薦でデビューした作家ということで少なからず期待していたのだけど、正直ミステリの出来としては厳しい。犯人特定の根拠が弱い、トリックに捻りがない、ダイイング・メッセージがあからさま過ぎるなど、欠点を挙げたらキリがない。
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posted at 18:37:02
井上ほのか「それはKISSから始まった」読了。人気アイドル・真名子と新人歌手の克樹のコンビが活躍するシリーズの第二弾。今回は宝石探しに暗号、そしてギャングに誘拐されたマネージャーの救出劇と見所は多い反面、前作に比べるとミステリ要素は低い。
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posted at 18:38:20
また、ある程度ご都合主義なのは少女小説だから目を瞑るにしても、話の纏め方が強引なのが些か気になる。できることなら頁数を増やしてでも、もう少し丁寧に仕上げてほしかった。しかし二作目が暗号&宝探しなのは、風見潤「スキー場幽霊事件」や有栖川有栖「孤島パズル」とダブって仕方がない……。
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posted at 18:38:51
2012年02月23日(木)
小島正樹「綺譚の島」読了。風もないのに木が揺れ、魚は死に絶え、海は赤く染まり、土中からは鈴の音が聞こえる……「よそもの殺し」の島で続発する、現実とは思えない奇怪な現象の数々。更に「贄の式」に参加した者たちが、次々と不可解な状況で殺されていく。
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posted at 13:28:31
小島正樹といえば島田荘司のフォロワーとして名前が挙がることが多い作家だが、本作はその小島正樹が島田荘司とは決定的に違うことを初めてアピールした記念すべき作品である。確かに本作で起こる奇怪な現象の数々とその解決の仕方だけ取り出せば島田荘司的と言えるかもしれない。
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posted at 13:28:56
だが一番注目すべきポイントはそこではなく、犯人に関わる仕掛けにある。全てはここから逆算して作られており、それ以外のトリックはこの仕掛けから目をそらすための煙幕に過ぎない。この構造は島田荘司作品には見られないものだ。
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posted at 13:29:30
また従来の小島作品というと謎の詰め込み過ぎが災いしてどこか散漫な印象が否めなかったが、本作ではちゃんとこれといったインパクトのある大仕掛けがあるのがいい。若干、三津田信三の某作を彷彿とさせるものの、個人的には作者が新しい一歩を踏み出した作品として評価したい。
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posted at 13:30:08