麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年09月06日(木)
竹本健治「汎虚学研究会」読了。前にミステリーランドの一冊として刊行された「闇のなかの赤い馬」に、新たに登場人物が共通の短編四編を加えた本作。内容紹介には「衝撃と翻弄の本格ミステリ」とあるが、追加した短編四編の方は本格と言えるかどうかは微妙なところだと思う。
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posted at 20:23:03
とはいえ「開かずのドア」「世界征服同好会」の意外性はかなり好みで、特に前者の奈落感は堪らないものがある。「闇のなかの赤い馬」に関しては前にも感想を書いたので詳細は省くが、アルジェントに是非とも映像化してもらいたいゴシック系イヤミスの逸品である。
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posted at 20:23:31
真梨幸子「プライベートフィクション」読了。「更年期少女」改め「みんな邪魔」とリンクする表題作含む五編が収録された作品集。とはいえ表題作は初出が「群像」だった為か変に純文系を意識したきらいがあり、その結果何がやりたかったのかよく分からない中途半端な内容になってしまっているのが残念。
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posted at 20:24:41
どちらかというと表題作以外の三編「一九九九年の同窓会」「いつまでも、仲良く。」「小田原市ランタン町の惨劇」の方が作者の本来の持ち味が活かされているように思う。あとこの作者の作品でまさか「ももいろクローバーZ」の名前を見ることになるとは思わなかった……。
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posted at 20:25:08
三津田信三「ついてくるもの」読了。「赫眼」に続くホラー短編集第二弾。「赫眼」や本作を読むとホラーとは割りきれないもの、得体の知れないものへの恐怖という作者のスタンスがよく分かる。収録作はどれもその割りきれなさ加減が絶妙で、異界への扉が開きっぱなしになったような余韻が実に秀逸。
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posted at 20:26:16
但し最後の短編「椅人の如き座るもの」は例外で、タイトルからも分かるように人間消失の謎を扱った刀城物の本格ミステリである。恐らくボーナストラック的な意味合いで収録したのだろうが、ホラー度は他の短編に比べると極めて低い。
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posted at 20:26:40
倉阪鬼一郎「不可能楽園〈蒼色館〉」読了。若くして引退し、山形県に隠棲していた往年の名女優・美里織絵の告別式が葬祭式場〈蒼色館〉で行われる最中、織絵が住んでいた屋敷に賊が押し入り見習いの執事と家政婦を殺害、織絵の妹である浪江の孫を誘拐する。だが関係者全員には鉄壁のアリバイが……。
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posted at 20:28:49
毎年恒例となりつつある倉阪バカミス最新作の本作は同時に「紙の碑に泪を」「新世界崩壊」と探偵役を務めてきた上小野田警部の最後の舞台でもある。本作の見所は二つ、一つは粗筋にある不可解な誘拐殺人事件の謎。そしてもう一つは作者がどう名探偵を退場させるか、である。
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posted at 20:29:45
ただ前者に限って言えば、名探偵コナンの某事件を彷彿とさせる無茶さはあるものの、これまでの倉阪バカミスの中では最もオーソドックスに感じた。むしろバカミスとしてはっちゃけていたのは後者の方で、特にあの人物が意外なヒントと共に登場したのには思わず爆笑してしまったw
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posted at 20:30:36
相変わらずお疲れ様と言いたくなる手の込んだ仕掛けだが、さすがにこの退場の仕方はちょっと可哀想な気も……。個人的には本作のMVP賞は是非とも作者に贈りたいと思う(爆)。
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posted at 20:31:26
2012年09月07日(金)
嵯峨島昭「愛と死の幕営(ビバーク)」読了。男が熊に食い殺された事件の裏には、ある三角関係が隠されていた――表題作含む五つの事件に酒島警視が挑むミステリ短編集。本作に収録されている短編はいずれも、作者の長編(連作長編含む)作品を短編化したような趣がある。
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posted at 17:26:35
故に作者の作品を多く読んでいればいるほど、色々と楽しむことができるだろう。また毎回必ず酒島警視の見せ場があるのが特徴で、熊と対決したり荒ぶるサイを撃ち取ったり通訳を依頼されたりと、その活躍ぶりは実に多彩である。但しミステリとしては一編を除き、些か弱いと言わざるを得ない。
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posted at 17:27:30
その唯一の例外が「満漢全席殺人事件」で正直こんな作品を書ける(書いてしまう)のは後にも先にもこの作者くらいだろう。ネタバレになるので具体的な言及は避けるが、満漢全席をここまでミステリの仕掛けとして活かした作品を自分は他に知らない。この怪作だけでも充分読む価値はあると思う。
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posted at 17:28:17
2012年09月08日(土)
佐野洋「一本の鉛」読了。札幌市内に初雪が降り積もった朝、女ばかりが住むアパート「白雪荘」でバーの女給・あかねが絞殺されているのが発見された。発見当時、密室状態だった現場には冷たくなったあかねと彼女に思慕を寄せていた学生・大田垣しかいなかったことから、警察は大田垣を疑うが……。
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posted at 16:12:06
短くまとまった良作。密室トリックに期待すると肩透かしを覚えるかもしれないが、本作のメインはそこではない。読み終わってみれば、本作で作者がやろうとしたことは設定の段階で明白であるが、それに最後まで気付かせなかったのはひとえに構成の妙だろう。
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posted at 16:12:31
「一本の鉛」という不思議なタイトルも最後まで読むと、事件の内容を端的に言い表しているのが分かる。但し、事件や展開はかなり地味なので、その辺は割り切って読んだ方がいいかもしれない。
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posted at 16:13:00
2012年09月09日(日)
玩具堂「子ひつじは迷わない 贈るひつじが6ぴき」読了。クリスマス直前に文芸部の元部長の頼みで雪に閉ざされた山荘に泊まることになった「迷わない子ひつじの会」の面々。だがそこで待っていたのは五年前に起こった密室殺人事件を再現し謎を解くことだった。かくして始まった奇妙な推理劇の行方は?
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posted at 17:07:03
雪の山荘を舞台にした推理劇というと、いかにも本格ミステリらしい設定だが、結論から言うと本作はそういった趣旨の作品ではない。正確にはミステリもどき小説であり、その手の謎解きを期待すると大いにがっかりさせられることだろう。
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posted at 17:07:20
2012年09月10日(月)
広瀬正「T型フォード殺人事件」読了。昭和二年のある朝、密室状態のT型フォードの中から撲殺死体が発見され、合鍵を作る機会のあった運転手が逮捕された。それから時を経て、その車を手に入れた泉は集まった人々に対し、密室トリックを見破ったと宣言、その解答を人々に推理させようとするが――。
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posted at 18:22:38
やられた。といっても密室トリックに、ではない。密室トリックに関して言えば、ありがちとまでは言わないまでも、別段大したものではない。むしろ秀逸なのは、もう一つの仕掛けの方だろう。
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posted at 18:23:16
ただ、もしかしたらこれをトリックのためのトリックと見る向きもあるかもしれないが、一応自然に見えるように処理がしてあるので、個人的にはアリだと思う。思わぬ仕掛けであっと驚きたい人にこそお勧めしたい良作である。
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posted at 18:23:41
似鳥鶏「戦力外捜査官 姫デカ・海月千波」読了。すぐ道に迷う、足は遅い、木に登ったら下りられない……配属されてからたった二日で戦力外通告を受けた海月千波警部はお守り役の設楽刑事と共に独自に連続放火事件を追ううちにある七年前の事件に辿り着く。全ての点が繋がった時に明らかになるものは?
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posted at 22:04:03
まず最初に断っておくと、本作は本格ミステリではない。ラノベ的なキャラによるユーモア警察小説というべきその内容は作者の新境地と言えなくはないが、所々悪い意味で「踊る大捜査線」を見ているような陳腐な展開、レッテル貼りが鼻に突く。
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posted at 22:04:17
何より某事件に対する認識が根本的に間違っているのがいただけない。冒頭の重々しい描写にはおっと思わせるものはあったものの、終わってみればありがちな主張の、ありがちなキャラ小説で終わってしまい、かなり残念。次回作に期待したい。
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posted at 22:04:52
2012年09月11日(火)
泡坂妻夫「弓形の月」読了。劇団の女優・五月は誤配された手紙を同じマンションに住む弓子に届けるが、弓子はその手紙を封も切らずに捨ててしまう。興味を惹かれた五月はその後ゴミ捨て場から問題の手紙を回収、中を開けてみると、そこには奇妙な暗号が書かれていた。
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posted at 18:18:53
暗号に端を発する、性と幻想の世界を描いた本作は一応、弓子の身辺に纏わる謎を解明するという体裁を取っているが、あまりミステリを読んでいるという感じはしない。とはいえ蘊蓄に裏打ちされた真相は、それなりのサプライズはあると思う。
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posted at 18:19:04
それ以外にも、ある事実誤認により、さりげなく読者を引っ掛けようとしているのは○。万人向けとは言い難い作品だが、ペダンティックな幻想ミステリを読みたい人にはお勧めしてもいいかもしれない。
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posted at 18:19:22
2012年09月13日(木)
大谷羊太郎「西麻布 紅の殺人」読了。建築設計事務所で残業中の社員二人は向かいに建つ鏑木商事の社長が銃撃される光景を目撃した。二人はすぐさま現場へ急行したが何故か鏑木の姿は見当たらない。首を傾げながら彼らは事務所へ引き返すが、そこで待っていたのは事務所に転がる鏑木の射殺死体だった。
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posted at 17:41:17
何とも惜しい作品。冒頭の不可解な死体移動の謎は魅力的だが、真相の方はそこまで大したものではない。むしろ本作で秀逸なのはプロットを活かした犯人のミスディレクションだろう。但し登場人物が少ないのと一部の伏線があからさまなために、ある程度途中で読めてしまうのが残念。
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posted at 17:41:54
また頁数が足りないのか、折角のどんでん返しが少々急すぎる印象。とはいえ、ある事件のために引き裂かれた男女の物語や作者の経験が生きたロックバンドの描写など読みどころは多く、全体的に見れば悪い作品ではないと思う。
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posted at 17:42:47