麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年09月16日(日)
内田庶「人類のあけぼの号」読了。二〇二六年、冷凍冬眠から目覚めた加藤真琴にはある秘密があった。五十一年前、彼は自分が発明したロボット「人類のあけぼの号」に父親を殺させたとして追われる身だったのだ。父親殺しの汚名を晴らすため、彼は五十一年前の世界にタイムトラベルすることを決意する。
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ロボット三原則とタイムトラベルを融合させたSFミステリ。本作もまた例に漏れずロボット三原則と言えばお馴染みの謎「人間を襲うはずのないロボットが、どうやって殺人を犯したのか?」を扱っているが、その真相は単純ながらもよく考えられている。
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posted at 00:58:33
その一方で犯人や動機がまんま過ぎるのが少々残念だが、ジュブナイルにそこまで求めるのは酷というものだろう。とはいえ、ミステリファンが読んでも楽しめる作品には仕上がっていると思う。
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2012年09月17日(月)
横山秀夫「臨場」読了。倉石義男。五十二歳。頬肉の削げたやくざ顔で、体の線は槍のように細い。巡査を拝命以来、鑑識畑一筋。その眼力の鋭さは伝説化しており、死体の目利きにかけても歴代検視官の中でずば抜けている。そんな彼についた渾名は『終身検視官』――。
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捜査一課調査官・倉石が活躍する本作は一見すると警察小説のように見えるが、さにあらず。というのも作中で倉石が些細な気付きから展開する推理は神の如き名探偵そのものであり、事件の方もまた視線による密室やダイイング・メッセージなど本格ミステリの定番を扱っていたりする。
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本作に収録された八編のうち個人的に良かったのは「赤い名刺」「眼前の密室」「鉢植えの女」で「赤い名刺」は手掛かりの書き方が、「眼前の密室」は設定を活かした犯行方法が、「鉢植えの女」は構図の反転が秀逸。本格ミステリと警察小説が融合した幸せな形がここにあると言っても過言ではないと思う。
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横山秀夫「動機」読了。署内で一括保管されていた三十冊の警察手帳の紛失事件を扱がった表題作ほか、女子高生殺しの前科を持つ男が匿名の人物から殺人の依頼を受けて苦悩する「逆転の夏」、地方紙の女性記者の悲哀を描いた「ネタ元」、公判中の居眠りで失脚する裁判官「密室の人」の四編収録。
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どこか古処誠二「UNKNOWN」を彷彿とさせる表題作はミステリの定番ともいえるネタを真相にしつつも、それを巧く活かした設定が秀逸。だが個人的に最も感心したのは「密室の人」で、罠を仕掛けた動機には完全にしてやられた。全編何らかの意外性が用意された良質な短編集である。
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2012年09月18日(火)
横山秀夫「第三の時効」読了。殺人事件の真の時効に罠を仕掛けた表題作ほか法廷で突然アリバイを主張した被疑者「沈黙のアリバイ」監視の密室から逃れた容疑者の謎「密室の抜け穴」過去に起きた青酸カリ毒殺事件を追う「ペルソナの微笑」一家三人刺殺事件を巡る「モノクロームの反転」の全六編収録。
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全編ハズレなしの傑作。本作は基本的にF県警強行犯係の三人の班長――朽木、楠見、村瀬が何らかの形で事件を解決する警察小説だが、一方でその三人の班長をそれぞれタイプの違う名探偵としてみることも可能である(朽木は「理詰め型」、楠見は「搦手・謀略型」、村瀬は「閃き・天才型」)。
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故に本作では様々な捜査(推理)を堪能することができる。そして極めつけは「モノクロームの反転」における、朽木率いる一班と村瀬率いる三班の競演だ。正に至れり尽くせりの短編集と言えるだろう。収録作はどれも秀逸だが、個人的なベストを選ぶなら「ペルソナの微笑」。
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2012年09月19日(水)
横山秀夫「臨場スペシャルブック」読了。単行本未収録短編「罪つくり」「墓標」「未来の花」「カウントダウン」の四編が収録されたドラマ版「臨場」のガイドブック。「罪つくり」はラブホテルで若い女が変死した事件が、意外な繋がりを見せる一編。
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相変わらず『終身検視官』倉石の名探偵ぶりが著しいが、その一方でミステリとしてのさりげない伏線の巧さと、タイトルの意味が分かった瞬間、切実に胸に迫る人間ドラマが堪能できる。だが手放しで褒められるのはそこまでで、残りの三編に関しては一段落ちる印象。
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posted at 18:56:42
それでも「墓標」のセルフパロディ的要素は嫌いではないが「未来の花」の方は50という縛り(初出は光文社50周年記念アンソロジー)が却って作品の出来を損ねているように思う。そして「カウントダウン」に至ってはわざわざ倉石が登場する必然性が感じられずどうにもすっきりしない読後感となった。
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石持浅海「煽動者」読了。そのテロ組織の名は「V」。流血によらず現政府への不信感を国民に抱かせることを目的とし、普段は一般人を装い週末だけミッションを実行する。その「V」の、外部から閉ざされた兵器製造施設でメンバーの一人が扼殺される事件が発生した。犯人は残された七人の中にいる――。
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posted at 22:04:36
本作は、テロリストmeets日常の謎と言うべき異色作「攪乱者」の流れを汲んではいるものの、その内容は「攪乱者」とは打って変わって閉鎖状況下で起こった殺人事件を扱っている。といっても所謂クローズド・サークルテーマのミステリというより、どちらかというと異世界ミステリに近い。
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posted at 22:04:49
特筆すべきは犯人の動機であり、この状況設定だからこそ可能な逆説が非常に面白い。また登場人物の設定もなかなかよく考えられており、それを踏まえてストーリーが展開していたことが読了後に分かって思わず唸らされる。
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posted at 22:05:04
しかしながら本作は物語の構成に難があり、殺人事件が起こってもミステリらしい展開はとことんスカされ、ようやくそれらしい盛り上がりを見せるのは第九章に入ってからというのはさすがに遅すぎると言わざるを得ない。とはいえ、そこまで我慢して(?)読むだけの価値はある作品だとは思う。
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2012年09月20日(木)
道尾秀介「ノエル」読了。少年と少女は絵本を作り始めた。醜悪な現実を振り払うために。そうして作られた物語が五人の運命を変えていく――。「最も美しく、最も劇的な道尾マジック!」とは本作の帯の謳い文句だが、個人的には別段、技巧的な作品だとは思わなかった。
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posted at 18:52:32
一応非ミステリながら所々にミステリ的技法を用いてはいるものの、それがあまり物語とうまく噛み合っていない。設定もいつも通りで目新しさはなく、中にはただ話を盛り上げるために出しただけで消化しきれていないものもある。
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posted at 18:53:02
各登場人物のリンクの仕方も凡庸の域を出ておらず、どうせなら東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」のように、あざといのだけど巧いと思わせるくらいのことはやってほしかった。
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posted at 18:53:42
山田彩人「幽霊もしらない」読了。乗り過ごした常磐線の車内に残されていた詞集をうっかり手にしてしまった為に俺はドSな幽霊に取り憑かれる羽目になった。音楽ユニット「ルナティカン」の美人ボーカル・広瀬琉奈を名乗るその幽霊は呪われたくなければ自分を殺した犯人を探しなさいと喚き散らす――。
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「眼鏡屋は消えた」で第21回鮎川哲也賞を受賞した作者の二作目。前作同様、最初こそ面白いものの事件の調査が始まって以降はひたすら聞き込み→推理の繰り返しで退屈の一言に尽きる。折角の幽霊キャラの設定もほとんど活かされておらず、正直これでユーモア本格を謳うのは厳しいと言わざるを得ない。
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posted at 22:06:43
しかしながら、メインの仕掛けにはしてやられた。問題そのものを読者にミスリードさせる点に関しては成功していると思うが、だからこそ尚更、構成をもう少し練り込んでほしかった。
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2012年09月24日(月)
島田荘司「アルカトラズ幻想」読了。ワシントンDCで女性器を抉り取る猟奇事件が発生。一時、捜査は混迷を極めると思われたが、ある論文をきっかけに急転直下、事件は解決し、犯人として逮捕された男はアルカトラズ刑務所に収監される。やがて心ならずも脱獄した男は、奇妙な地下世界に迷い込む――。
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豪腕炸裂。アイディアとしては完全な一発ネタだが、そこからここまで壮大な物語を導き出してしまう手腕はこの作者ならではのものだろう。正直言えば第四章の段階で作者がやろうとしていることに関してはある程度見当がついていたのだが、さすがにアレとアレを結び付ける発想には至らなかった。
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posted at 22:03:40
本作を本格ミステリとしてみた場合、明らかに不親切な部分が見受けられるし、まるまる論文を入れる必要があったのかなど疑問は残るが、一方で「そんな細けえことはいいんだよ!」という気分にさせられるのも事実(爆)。久々に作者の豪腕に捩じ伏せられた力作である。
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2012年09月25日(火)
河合莞爾「デッドマン」読了。都内で身体の一部が持ち去られた6つの死体が次々と発見される連続猟奇殺人事件が発生。鏑木率いる特別捜査班が捜査に当たる中「デッドマン」と名乗る人物から一通のメールが届く。曰く、彼は6つの死体のパーツを繋ぎ合わせて蘇った死人で、捜査に協力したいという……。
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第32回横溝賞受賞作。本作は粗筋からも察しがつくように島田荘司「占星術殺人事件」に挑んだ作品だが、最後まで読むと「占星術殺人事件」だけではなく島田荘司の他の作品の要素も取り込んでいることに気付く。
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posted at 19:42:56
ただ生憎ネタバレになるため、具体的なタイトルを挙げることはできないが、それらを違和感なく融合させた手腕には感心した。リーダビリティが高いのもさることながら、個人的にはある大胆な伏線が秀逸。島田荘司の提唱する21世紀本格の収穫と言っていい作品だと思う。
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鳥飼否宇「妄想女刑事」読了。天然で妄想癖のある女刑事・宮藤希美。彼女が一度「やだっ、解けちゃった!」という台詞を口にした途端、どんな難事件もたちどころに解決!? ラッシュ時の通勤電車で見付かったバラバラ死体、秋葉原にて女装コスプレをして死んでいた外人の謎など五つの事件を収録。
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何とも捻くれた連作短編集。最初の事件から意外な犯人に目が点になるが、本作で最も唖然とさせられるのは何と言ってもラッシュ時の通勤電車で見付かったバラバラ死体の謎を扱った「通勤電車バラバラ殺人事件」だろう。
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posted at 23:04:25
ある意味、盲点をついたこの真相はバカミス作家の本領発揮であると共に、連作ミステリの新たな方向性を示してくれる。ただ作を重ねるごとに段々法則が見えてきて、メタ視点から犯人を指摘することが可能になってしまうのが欠点といえば欠点か。
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posted at 23:04:56
とはいえこれを続けていくのはなかなか至難の業であり、しかもこれに加えて毎回どんでん返しと謎の横溝縛り(?)まで入れるというサービスぶり。とりあえず作者には心からお疲れ様でしたと言いたい(何だか倉阪作品に対する感想みたいだw)。
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posted at 23:05:27