麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年11月03日(日)
日下圭介「罪の女の涙は青」読了。奥飛騨の山荘が全焼し三人の娘が死傷した事件から六年後、南紀白浜の三段壁から男が墜死し、房総の別荘で女が絞殺された。それから間もなく、自分が過去と現在の事件の犯人であると告白した遺書を残して自殺した女の疑いを晴らそうと、男二人が捜査に乗り出すが……。
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posted at 21:23:59
過去の事件が現在に暗い影を落とす、アリバイ崩し物。尤も読みどころはアリバイトリックよりもむしろ登場人物のほとんどが罪人というコンセプトと最後の一ページまで拘ったどんでん返しの連打だろう。些か苦しい部分も見受けられるが、この試み自体は評価したいと思う。
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posted at 21:24:07
岡田秀文「源助悪漢(わる)十手」読了。強請たかり上等の悪漢岡っ引き・源助が関わった謎に満ちた事件の数々。女房殺しに隠された意外な構図「山谷堀女殺し」、呪いの画に纏わる伝説通りに死んだ乾物屋の妻「井筒屋呪いの画」、降霊会で浮かぶ首と霊媒師の首なし死体「元吉町の浮かぶ首」等七編収録。
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posted at 21:24:47
構図の反転、伝説通りの死、衆人環視状況での人間消失、首なし死体に倒叙ミステリ……本作を読んでまず驚かされるのは、タイトルから受ける印象とは裏腹な、コテコテの本格ミステリであることだろう。しかも全編ハズレなしの粒揃いな内容に仕上がっている。
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posted at 21:25:16
「山谷堀女殺し」は一見ありふれた女房殺しが意外な真相に着地するところが見物で、ミスディレクションの巧さと鮮やかな構図の反転は梶龍雄を彷彿させる。「井筒屋呪いの画」は構図の反転もさることながら、ある伏線に唖然とさせられる。
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posted at 21:25:42
「猿屋町うっかり夫婦」はタイトル通りうっかり夫婦が巻き起こす事件で、とぼけた味わいとオチが楽しい。「下谷町神隠し三人娘」は設定を活かした消失トリックが爆笑物。「元吉町の浮かび首」は大胆な犯行方法とホラー的なオチが上手く決まっている。
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posted at 21:25:54
「富次郎の金壺」はミステリというよりブラックユーモア色が強く、愛人が他の男たちに寝盗られているのを覗き見するのが趣味という老人の変態ぶりが忘れ難い印象を残す。「茅町伊勢屋の藤十郎」は伊勢屋の跡取りの偽者と源助のコンゲーム……と見せかけて予想外のところからくるツイストが素晴らしい。
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2013年11月06日(水)
倉知淳「シュークリーム・パニック Wクリーム」読了。体質改善セミナーに参加したメタボな中年男四人が絶食を強いられている中、インストラクターがおやつにとっていた冷蔵庫のシュークリームが盗まれる「限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件」など三編収録。
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posted at 22:20:38
タイトルや内容紹介とは裏腹に、本気の倉知淳が垣間見える(!)切れ味鋭い中編集。まず「限定(以下略)」はびっくりするほど端正なフーダニットで、緻密なロジックの積み重ねとさりげない伏線の巧さに加え、なんと論理のアクロバットまで見せてくれる大盤振る舞いぶりである。
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posted at 22:21:05
しかしながら、そこまでやって作者に照れが生まれたのか(?)脱力のオチをつけて読者を苦笑いさせる。とはいえ、それはそれで初期の某短編を彷彿とさせてくれるのがいい。
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posted at 22:21:35
続く「通い猫ぐるぐる」は一匹の猫に隠されたメッセージを刑事とその彼女が読み解こうとする話で、ほのぼのとした雰囲気の中、読者を翻弄させる展開から一気に盲点をついてみせる構成が実に上手く決まっている。
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最後の「名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状」はいかにもなタイトルに反してオタク趣味丸出しの話で出だしから読者をずっこけさせてくれるが、実はそれこそが作者の罠とも言える。仕掛けとしては前例があるものだが、それをパロディ的に演出してみせた点が秀逸。
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posted at 22:22:11
先に出た姉妹編「シュークリーム・パニック 生チョコレート」とは一体何だったのか(失礼)と戸惑うくらいミステリに対する姿勢に差がある本作だが、もしかしたらそのギャップこそが狙いだったのかもしれない。
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2013年11月07日(木)
石崎幸二「鏡の城の美女」読了。大手美容チェーンから3D身体データを盗み出し、その持ち主である女性を次々と襲う謎の通り魔「パーツキラー」。事件はやがて孤島に建つ鏡の城で、七枚の堅牢な扉に阻まれた奇妙な密室殺人を引き起こすことに……。女子高生ミリア&ユリと顧問の石崎の推理が冴える。
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posted at 21:44:58
謎の通り魔事件に風変わりな建物で起こる奇妙な密室と、今回はいつになく本格ミステリを意識したあらすじだが、個人的には何よりもあのうんざりするくらい使い回されていた○○○トリックが使われていないのが好印象。
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posted at 21:45:14
とはいえ密室に関しては一番つまらない真相であるのに加え、別になくてもいいのではと思ってしまうのが少々アレ。むしろ本作で評価すべきは鏡の城が作られた理由と通り魔事件を有機的に繋げた点だろう。また左手首からの犯人の絞り込みも○。目新しさこそないが、様々なネタを巧く纏めた意欲作である。
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posted at 21:45:25
2013年11月09日(土)
岬鷺宮「失恋探偵ももせ3」読了。ミステリ研の部室を根城に、恋に破れた人のために失恋の真実を調べる学校非公認の探偵活動――失恋探偵。初恋の人に隠された真相、幽霊からのラブレターと密室の謎、そして探偵自身の過去に纏わる最後の事件が解かれた時、待ち受ける結末とは?
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posted at 16:47:22
シリーズ完結編。ミステリとしてみた場合、ベストは密室の謎を扱った「恋の幽霊」になるだろう。とはいえ注目すべきはハウよりもむしろホワイの方であり、そこから展開されるロジックが秀逸。一方「初恋」は目の付け所は悪くないが、明かされる真相は些か苦しいと言わざるを得ない。
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posted at 16:47:36
しかしながら「初恋」の本領は、最後の事件まで読んだところで初めて発揮されるものであり、全体を通して見えてくる構成の妙は圧巻の一言に尽きる。物語の集大成という意味では歌野晶午「コモリと子守り」に近いカタルシスがあり、シリーズ読者にとってはこれ以上ない傑作と言っていいだろう。
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posted at 16:47:44
森晶麿「黒猫の刹那あるいは卒論指導」読了。大学の美学科に在籍する「私」がゼミで一人の男子学生と出会う。いつも黒いスーツを着て無愛想な彼――「黒猫」だが、時折見せるその猫のような論理の歩みと鋭い観察眼で六つのポオ短編に纏わる事件の謎を解き明かしてみせる。
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posted at 16:47:53
デビュー作「黒猫の遊歩あるいは美学講義」の三年前、大学生だった黒猫と付き人の出会いを描くシリーズの四作目。今回は連作形式とポオ作品の解釈という原点に帰ったような内容ながら、その出来はデビュー作に負けずとも劣らない。むしろ物語の深みが増したという点では本作の方が優れていると言える。
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posted at 16:48:03
全体的に事件とモチーフとなるポオ短編の重ね合わせが巧いが、ベストは「時鶏館」という風変わりな博物館で消えた黒猫と「誰にも見えない部屋」の謎を描いた「複製は赤く色づく」で、謎自体は大したものではないが、モチーフとなる「赤死病の仮面」によって浮かび上がる美しいドラマが実に秀逸。
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posted at 16:48:12
次点は「私」の祖母が入居した老人ホームでかつてのストーカーと出会ったことから端を発する「追憶と追尾」で、ポオの短編「ウィリアム・ウィルソン」が浮き彫りにする見えざる悪意は醜悪の一言に尽きる。
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posted at 16:48:24
その他、コメディアンがコント終了後に飛び降りを図る「象られた心臓」の心理戦や肝臓癌の女性シンガーに酒を飲ませ続けたバーテンダーの真意に迫る「最期の一壜」のある行為で全てを説明してしまう鮮やかな演出など、見るべきところの多い作品である。
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posted at 16:48:34
2013年11月10日(日)
「劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語」観了。これはいい異世界本格ミステリ。但しTV版を見ていないとフェアとは言えないあたりは野崎まど「2」に近い。そして全ての真相が明かされ、普通の映画ならここで終わるというところで更にツイストを加えた点が虚淵ならでは。(続く)
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posted at 19:33:20
(続き)これを大喜びで見られた人は自分を含め歪んでいると言えるかもしれない(暗黒微笑)。またアクションでは、ほむらとまみの銃撃戦が自分の中二マインドを大いに滾らせてくれて○。少々詰め込みすぎのきらいはあるが、実によくできた○○○○映画だと思う。
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posted at 19:34:10
2013年11月11日(月)
岡田秀文「刺客 どくろ中納言 天下盗り、最後の密謀」読了。時は天正十七年、一人の間者が死ぬ間際に言い残した「どくろ中納言」なる謎の言葉を豊臣家の家臣・富田一白が探る一方で、秀吉による小田原合戦の準備が着々と進められていく。様々な思惑が渦巻く中、最後に笑う者は誰なのか?
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posted at 23:05:45
小田原合戦を巡る陰謀の数々を描いたコンゲーム小説。複雑に入り乱れた人間関係を見事に描ききった手腕もさることながら、それまで見えていた構図が次々とひっくり返されていく様は圧巻の一言に尽きる。
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posted at 23:06:07
だがその一方でこの手の小説の欠点がもろに出てしまっており、後半になるにつれて何でもあり感が否めなくなってくるのが難。特に「どくろ中納言」の真相は散々引っ張っておいて「こんなの分かるわけがない」とあっては納得できない人も少なくないだろう。途中まで良かっただけに些か残念な作品である。
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posted at 23:06:29