麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年06月16日(月)
笹沢左保「十九歳の葬式」読了。ボーイフレンドと共に裕福な養父母の殺害を企てていた十九歳の女子大生・美和。ところがその美和自身が佐賀県の武雄で何者かに毒殺されてしまう。捜査は難航し、事件は迷宮入りとなるが、15年後の時効直前になって三人の刑事たちの執念が新たな事実を見付け出した。
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posted at 02:52:19
これといった仕掛けがなくてもプロット次第で面白いものが書けるという見本のような作品。加えて三人の刑事たちの一人が取調室シリーズでお馴染みの水木警部補ということもあり、終盤では取調室シリーズらしい水木警部補と被疑者の攻防で魅せてくれる。
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他にも時効寸前というシチュエーションや人物描写を活かした切り札などこの作者ならではの要素がそこかしこに盛り込まれているのも○。作者のストーリーテラーとしての才が存分に発揮された作品である。
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柏枝真郷「貴族デザイナーの華麗な事件簿 ロンドンの魔女」読了。19世紀末のロンドン。仕立て屋を営むジェレミーと貴族でありながらデザイナーの仕事をしているエドガーはある日、17世紀のセイラムで魔女狩りにあったと主張するメイドの話を聞く。一方、巷では謎の人体発火事件が続発していた。
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ただのミステリ風キャラ小説。本作には幾つかミステリ的ガジェットが盛り込まれているが、残念ながらどれも有機的に繋がっているとは言えず、雑な印象を受ける。それは単にミステリで最も重視しなければいけない「何故こうしなければいけなかったのか」という必然性に欠けているからだろう。
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またキャラのエピソードとミステリパートが見事に解離している点もいただけない。あくまで本作のメインはキャラ小説であり、少なくともミステリとしては間違っても手を出すべきではない作品である。
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2014年06月17日(火)
加藤元浩「Q.E.D.」48巻読了。人気作家・世見一夏のエージェントが殺された。世見は犯人を捕まえたら原稿を渡すと言うが……「代理人」、アランに頼まれ、燈馬と可奈はスペイン・バルセロナの街で密航船から消えた麻薬と少女を探す「ファイハの画集」の二編収録。
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「代理人」は犯人当ての裏に隠された構図に唖然とさせられる一編。本作のメインは「誰がやったのか」ではなく「何故やったのか」でありそれが明かされると同時にタイトルの真の意味が分かる趣向が実に秀逸。ラストでの可奈が言った言葉に対する犯人の反応にぞくりとさせられる黒さに満ちた秀作である。
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一方「ファイハの画集」は事件そのものよりもそれに絡んで描かれる不法移民の少女が目指した夢の結末が印象的で、恐らく大半の読者が読み終わった後に忘れていた何かを思い起こすのではないだろうか。また今回収録された二編が何気に絶妙な対比になっている点も○。
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加藤元浩「C.M.B.」26巻読了。マサイの戦士は本当にライオンに襲われて死んだのか? 唯一の目撃者である少年は過去のトラウマから一切の供述ができない「ライオンランド」他、倒叙ミステリの「ゴンドラ」、魔除けのお守りに纏わる激動の中国史と悪夢の記憶「兆し」の二編を収録。
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今回収録された三編のうちベストは「ライオンランド」で、犯人の正体よりもむしろそれに絡んで導き出されるある人物の動機が胸を打つ。またベタではあるが、それまで足を引っ張っていたキャラが終盤で思わぬ活躍を見せる点もいい。
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長沢樹「リップステイン」読了。映像系の学校に通う夏目行人はある日、渋谷で制服姿の不思議な少女・香砂と知り合う。ある時は「武者修行中」と笑い、またある時は傷だらけで電話してくる彼女は何故か世間を騒がせている連続暴行事件の現場で度々姿を目撃されていた。彼女は一体何者なのか?
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posted at 23:56:14
以前、飛鳥部勝則「フィフス」を読んで飛鳥部版灼眼のシャナと称したことがあったが、本作は差し詰め、長沢樹版灼眼のシャナと言ったところだろうか。故にミステリと思って読むと確実に何人かは怒る人がいそうだが、一応ミステリ的仕掛けも用意されてはいる。
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posted at 23:56:25
但しこのタイブで仕掛けるのはそこしかないだろうなと思うところでモロにやってしまっているため、ある程度ミステリを読み慣れていると意外性はあまりないのではないだろうか(しかも前例あり)。とはいえ所々にこの作者らしい要素は窺えるので、ファンならば読んで損はないと思う。
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2014年06月18日(水)
森川智喜「半導体探偵マキナの未定義な冒険」読了。17歳の男子高校生・坂巻正行の祖父が開発した四体の人間そっくりのAI搭載探偵ロボット。ある日、そのうちの三体が深刻なエラーを起こし勝手に町へ出て「探偵」活動を始めてしまう。正行は残った一体・マキナと共に早速探偵探しに乗り出すが……。
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posted at 22:33:07
内容紹介には探偵探しとある本作だが、正確にはちょっと違う。本作のメインは不可解な行動を取る探偵の行動原理当てであり、故に探偵を見付けてからが本番なのである。そして何より秀逸なのはその探偵をロボットに設定することで、どんな無茶な行動原理でも可能にしてしまった点だろう。
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posted at 22:33:25
それを見事に体現したのが一体目の探偵の話であり、ミステリ読みにはお馴染みのアレからどうしたらこんな話が作れるのか、つくづく作者の頭の中を覗いてみたいと思ってしまう。
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posted at 22:34:07
ちなみに本作はこれまでの作者の作品同様、連作形式を採用しているが、連作らしい仕掛けを期待すると些か物足りないかもしれない。とはいえ本作もまたこの作者にしか書けない独特の本格ミステリであり、見方によっては「一つ屋根の下の探偵たち」の変奏曲と捉えられなくもない良作である。
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2014年06月20日(金)
友成純一「肉の儀式」読了。その村では禁忌の子であるシュラを産んだ罪で若い女が拷問にかけられていた。一方、長老は不老不死成就のため、次々と若い娘を残虐な儀式の生け贄にしていく――。表題作他、妄想に取り憑かれた一人の変質者がモーゼル片手に殺戮と凌辱の限りを尽くす「猟人日記」を収録。
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posted at 00:06:29
作者のデビュー作にして、どこを切っても殺戮と凌辱しかない純度百パーセントの友成小説。ストーリー要素など微塵もなく、ただひたすら凌辱とスプラッター描写で頁が埋まっていく様は正に狂気としか思えないが、そんな作品ですらぐいぐいと読ませてしまうところにこの作者の凄さがある。
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posted at 00:06:47
収録作二編はそれぞれ舞台が全く正反対ながらどちらも一人の人物の狂った思想が惨劇を引き起こす点で共通しており、しかも物語はその人物の願いを叶える形で幕を閉じる。言うなれば本作は○チガイ万歳小説であり、野放し状態の○チガイが何をしでかすか見てみたい奇特な読者にのみ本作をお勧めしたい。
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2014年06月22日(日)
笹沢左保「真犯人(ホンボシ)」読了。これまでに五回自殺を図った女。その原因を調べる刑事たちが辿り着いた意外な真実とは?(「死にたがる女」)深夜に起きた強盗傷害事件。その手口から浮かび上がった容疑者には完璧なアリバイがあった(「アリバイ成立」)。その他三編を収録した警察小説集。
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posted at 18:34:52
収録作はいずれも警察小説に比重が置かれているためか、ミステリ的な仕掛けには乏しいものの、熟練したプロットで読ませてくれる。ベストを選ぶなら「アリバイ成立」で、作者が得意とする人物描写から導き出される皮肉な真相が○。
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posted at 18:35:04
皮肉なオチといえば、どこか間抜けな連続強盗事件の顛末を描いた「尻を叩く女」も捨て難い。また警察小説として一番完成度が高いのは「死にたがる女」で、刑事たちの捜査から浮かび上がる意外な事実とそれに対する女の人間臭い台詞が実に印象的である。
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posted at 18:35:21
笹沢左保「異常者」読了。若い女に赤ペンキを噴き付け暴行した挙げ句、絞殺。局所には現場付近で見付けた異物を挿入するという残酷な手口から〈残虐魔〉と名付けられた連続殺人鬼の第五の被害者に自分の妹が選ばれたことから、新進弁護士の波多野丈二は独自の捜査を開始する。
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posted at 18:35:31
ミッシング・リンクテーマの力作。一応読者が容易に真相に辿り着けないよう展開に工夫が凝らされてはいるが、今となっては真相だけではなくその展開すらも予測の範囲なのが少々残念。とはいえ丁寧に物語を描いている点は好印象であり終盤の岬シリーズを思わせるロマン溢れる展開も忘れ難い作品である。
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2014年06月24日(火)
笹沢左保「死人狩り」読了。突然撃ち込まれた凶弾により下田から沼津に向かうバスが二十七人の乗客もろとも絶壁から海に消えた。犯人は二十七人のうち誰を何の目的で狙ったのか? 犯人に愛する妻子を奪われた県警警部補・浦上は犯人をいぶり出すために犠牲者を一人ずつ洗う『死人狩り』を開始する。
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本作は一応長編ではあるが、刑事の捜査によって犠牲者たちの様々な人生模様が浮かび上がる様はどちらかというとオムニバス作品に近い。勿論、最終的にはミステリとして着地はするけれど、その真相は設定から容易に読めてしまうのが残念。とはいえ前述した人生模様だけでも充分元が取れる作品である。
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2014年06月26日(木)
間宮夏生「推定未来―白きサイネリアの福音―」読了。多様な情報を元に予測した犯罪を未然に防ぐという警視庁捜査一課犯罪未然防止対策係――通称「ミゼン」に転属となった巡査部長の君島透。彼は「人の不幸を呼ぶ女」と呼ばれる女係長・如月美姫の下で事件を追ううちに彼女の過去を知ることになる。
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倒叙ミステリと恋愛小説を融合した「月光」などで知られる作者の新作は犯罪予報というシステムを扱った警察小説。その発想自体は悪くないものの、いかんせんそれを活かしきれていないのが難で、しかも物語が美姫の過去にシフトしていくにつれ、そこから完全に解離してしまっているのが痛い。
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posted at 22:37:46
また美姫の過去にしてもその設定を出した時点で真っ先に疑われる可能性がまんま真相なのには拍子抜けと言わざるを得ない。その他にも使い切れていないと感じる部分(一部のキャラやヒロインの特異体質など)が多々あり何というか全体的に中途半端な印象を受けてしまった。久々の新作だけにかなり残念。
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posted at 22:37:55