麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年08月14日(木)
多宇部貞人「封神裁判」読了。神界の首都「神々の庭」にある弥勒法律事務所に所属する弁護神・伏羲はある日、巷を騒がせる「イザナミさま殺神事件」の弁護を引き受けることになる。弁護する相手はオカマバーを経営する炎神イフリート。しかも捜査が進むにつれ密室とアリバイの壁が立ちはだかり……。
タグ:
posted at 19:54:39
物語の展開からキャラ、手掛かりの出し方に至るまで、まんま逆転裁判(これで逆転裁判のBGMを流せば完璧)。故にパロディとして読めばそれなりに楽しめるが、逆にこの作品ならではのオリジナリティを求めるとかなり不満が残る。
タグ:
posted at 19:55:03
一応トリックだけ取り出せばバカミスの部類に入るが、伏線があからさま過ぎて意外性はない。また所々、手掛かりが後出しなのも気になる。とはいえ神々の法廷という設定は展開次第では面白くなりそうなので今後に期待したい。
タグ:
posted at 19:55:30
2014年08月19日(火)
岡田秀文「黒龍荘の惨劇」読了。その異様な大量殺人はあまりの奇怪さゆえ明治の闇に葬り去られた……。舞台は山縣有朋の影の側近と囁かれる漆原安之丞の屋敷・黒龍荘。そこでまず主人自身の首なし死体が発見されたのを皮切りに住人たちが次々とわらべ唄通りに殺されていく。探偵・月輪の推理やいかに。
タグ:
posted at 23:25:32
傑作。まず本作は「伊藤博文邸の怪事件」に続くシリーズ二作目だが、密室殺人を扱いつつも歴史ミステリの趣が強く比較的展開が緩やかだった前作に対し、本作は本格ミステリの王道とも言える内容で、畳み掛けるように事件が起きていく。
タグ:
posted at 23:25:49
しかもその謎の盛り方は半端なく、頁数が五十を切ってもまだ止まるどころか更に謎が増えていく展開に読んでいるこちらが却って不安になるくらいだ。しかしながらそこは完全に作者の計算通りであり、残り僅かな解決編で一気にけりをつけてしまうその手際は、さながら刀城シリーズを彷彿とさせる。
タグ:
posted at 23:26:15
前作でも怒濤の伏線回収と構図の反転で魅せてくれた作者だが本作ではそれに輪をかけた鮮やかさに加え悪魔的奇想で読者を打ちのめしてくれる。前作よりも歴史ミステリ要素が減ったのが少々残念だが、その代わり本格としての完成度は前作以上かつ今年度を代表する本格と言っても差し支えない作品である。
タグ:
posted at 23:26:24
2014年08月20日(水)
芦辺拓「異次元の館の殺人」読了。冤罪が疑われる殺人事件の追加捜査のため放射光による鑑定を兼ねて関係者が集った洋館ホテル〈悠聖館〉に赴いた菊園検事と森江春策。だが放射光鑑定をするはずの研究機関で暴走事故が発生、更に〈悠聖館〉で密室殺人が起こり菊園検事は異次元へと迷い込む羽目に……。
タグ:
posted at 12:31:47
SF設定を用いた多重推理物。といっても、そこで展開される推理の一つ一つは別段大したものではない。むしろ本作で注目すべきは「何故、こういった構成を採用したのか?」であり、それにきっちり意味を持たせた点が実に秀逸。
タグ:
posted at 12:32:07
ちなみに本作のあとがきで作者が執筆の苦労を語っているものの、残念ながら読者側にはあまりピンとこない。だがそれは裏を返せば、奇天烈な話を自然に読ませようとした作者の苦労が報われた結果とも言えるだろう。本作は多重推理に見せかけたプロット本格の良作である。
タグ:
posted at 12:32:38
鯨統一郎「オペラ座の美女 女子大生桜川東子の推理」読了。毎週金曜日にバー〈森へ抜ける道〉を訪れる女子大生・桜川東子が安楽椅子探偵形式で難事件を解き明かすシリーズの五作目。今回のお題はオペラで、「カルメン」「椿姫」「蝶々夫人」「フィガロの結婚」「サロメ」を扱った五編を収録。
タグ:
posted at 22:43:59
事件とは全く関係ないビール談義と懐メロ話、そこから一転オペラになぞらえたような事件の話になり、探偵役がオペラの新解釈を披露しつつ、それを突破口にして事件も解決する――その完成された流れは相変わらず手堅いものの、さすがに何作も続けられると飽きがくる。
タグ:
posted at 22:44:25
多分それを避けるための新キャラ投入なのかもしれないが、そういったものよりも個人的には一作目「九つの殺人メルヘン」のような不可能犯罪縛り+連作ならではの仕掛けでまたあっと言わせてほしいと思う。
タグ:
posted at 22:45:45
2014年08月21日(木)
東野圭吾「マスカレード・イブ」読了。東京で発生した大学教授殺人事件の捜査にあたる新田浩介は一人の男に目をつけた。事件の夜、男は大阪にいたと主張するが何故かホテル名を言わない。殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのか? 表題作他、三編収録。
タグ:
posted at 21:41:28
「マスカレード・ホテル」に続くシリーズ二作目は主役の二人――大胆な発想で犯人を暴く敏腕刑事・新田浩介と並外れた観察力を持つホテルウーマン・山岸尚美が出会う以前を描いた短編集。特筆すべきは何と言っても事件の気付きのポイントにそれぞれのキャラの持ち味が活かされていることだろう。
タグ:
posted at 21:41:50
そこを丁寧に描くことで、何てことない真相でもぐっと引き立つところが素晴らしい。中でも表題作は間接的に二人が同じ事件に関わるという趣向もさることながら、定番のネタを巧く捻っている点が秀逸で、いささか飛躍し過ぎなところもなくはないが昨今の東野作品では珍しくミステリ度が高いのは好印象。
タグ:
posted at 21:42:22
2014年08月23日(土)
乾緑郎「機巧のイヴ」読了。牛山藩の武士・江川仁左衛門は幕府配下の機巧師・釘宮久蔵に、自身が想いを寄せている遊女・羽鳥に似せた機巧人形の作製を依頼する。やがて羽鳥そっくりの機巧人形は完成するが、ある時、仁左衛門は久蔵に謀られたことを知り――表題作他、機巧人形を巡る四編収録。
タグ:
posted at 16:12:45
時代小説をベースに「精巧に作られた機巧人形に魂は宿るのか?」というお馴染みのSF的テーマに挑んだ連作長編。表題作はその世界観を説明するのに打ってつけの一編で、連城作品を思わせる鮮やかな構図の反転は本格ミステリとして見ることも充分可能だろう。
タグ:
posted at 16:13:12
それ以降の収録作はどちらかといえばエンタメ寄りだが「神代のテセウス」や「制外のジェペット」は時代小説ならではの殺陣シーンを盛り込みつつ、優れたコンゲームで魅せてくれる。
タグ:
posted at 16:13:28
特に圧巻なのはラストの「終天のプシュケー」で、それまでの展開を絶妙な伏線として活かし久蔵の物語に終止符を打つと共に、機巧人形を通じて想いが受け継がれていく様には思わず胸が熱くなる。帯には「異形の本格ミステリー」とあるが、個人的には時代SFの傑作として本作を推したい。
タグ:
posted at 16:13:55
2014年08月24日(日)
長江俊和「出版禁止」読了。カリスマ・ドキュメンタリー作家が不倫中の女と心中し女だけが生き残った。本当は誰かに殺されたのではないか。不穏な噂はあったが女は頑なに取材を拒否。七年後、一人のルポライターが女のインタビューに成功し記事を書き上げる。しかし、そのルポは封印された。一体何故?
タグ:
posted at 13:18:39
出版禁止処分を受けた、ある心中事件のルポをたまたま入手した作者が紹介する、折原一風ミステリ。メインの心中事件の真相は二転三転するものの、最終的には被害者の人物像と人間関係を考えればこれしかないというところに着地してしまうため、些か物足りなさを覚える。
タグ:
posted at 13:19:01
ただどちらかというと本領発揮はその後の展開の方であり、よくある仕掛けではあるものの映像作家らしい演出を施し、それなりに魅せてくれる。コアなミステリ読みには受けが悪いかもしれないが、ミステリ初心者から中級者あたりには楽しめるかもしれない。
タグ:
posted at 13:19:18
山田彩人「今宵、喫茶店メリエスで上映会を」読了。仕事を辞め、幼い頃に暮らした街に帰ってきた亜樹が見たものはシャッター通りと化した商店街とかつての輝きを失った思い出の喫茶店「メリウス」だった。亜樹は「メリウス」と商店街を昔のように戻そうと決意、そこに映画と日常の謎が絡み合って……。
タグ:
posted at 16:17:24
本作は鮎川賞作家の手による日常の謎もの連作ミステリだが、ぶっちゃけミステリ的に見れば大した作品ではない。しかしながら小説としては作者の作品中一番面白かった。これまでの作者の作品はキャラや掴みは良くてもミステリパートに入った途端一気に作業的になり、正直いえばかなり退屈だった。
タグ:
posted at 16:17:48
だが本作ではミステリ部分に力を入れず、あえて添え物程度にしたことにより、物語がミステリに邪魔されることなく生き生きと描けている。それが作者にとって良いことかどうかは分からないが、少なくともこの作品にとってその判断は正解だったと思う。
タグ:
posted at 16:18:10
2014年08月26日(火)
黒田研二「青鬼 異形編」読了。化け物屋敷と噂される〈ジェイルハウス〉から帰ってこない卓郎の父を探しに館を訪れたひろし、卓郎、美香、たけしの四人はまたして青い肌の怪物に襲われる。更にシュンが〈ジェイルハウス〉をモデルに作り上げたゲームをバージョンアップしたことで怪物に異変が……。
タグ:
posted at 15:27:03
黒田研二による同名の人気フリーゲームを基にしたオリジナル小説第三弾。今回の見所は異形編というタイトルに象徴される、ある新設定で、それをミステリ的手法を用いてラストのホラーらしいサプライズに繋げている点が○。
タグ:
posted at 15:27:12
またシリーズとしてみると謎の存在だった青鬼の正体に迫ったり、これまではひたすらイヤな性格だったキャラが一転、映画版のジャイアンさながらにいいヤツになってたりするのが面白い。ただ欲をいえば、そろそろクロケンならではの大仕掛けを見てみたいところではある。
タグ:
posted at 15:27:38
島田荘司「幻肢」読了。医大生・糸永遥は交通事故で大怪我をし一過性全健忘により記憶を失った。体と記憶は徐々に回復していくが事故当時のことだけがどうしても思い出せない。不安と焦りで鬱病を発症し自殺未遂を起こした遥は治療のためTMSを受けるがその直後から恋人・雅人の幻を見るようになる。
タグ:
posted at 23:30:10
タイトルにもなっている幻肢という現象から得た着想は面白いものの、それを活かした物語になっているかと言われるとかなり微妙。一応ラブストーリー+ミステリとのことだが恋愛物としてはいたって普通。ミステリとしても誰もが最初に思い付くオチなので正直コメントに困る(汗)。
タグ:
posted at 23:30:21