麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2015年01月01日(木)
夏樹静子「訃報は午後二時に届く」読了。ゴルフ場経営者が殺害され工事を請け負った造園会社社長・大北に容疑がかかる。大北は彼のアリバイを証明できる事件当夜に間違い電話をかけてきた女を探すが一向に見付からない。やがて大北は失踪し後日、彼の留守宅に切断された彼の小指が速達小包で届く――。
タグ:
posted at 16:13:05
幻の女テーマに始まり、誘拐、死者の犯罪と次々と起きる不可解な事件が読者を惹き付けて離さない秀作。尤もラストに明かされるあるトリックに関しては同じトリックを使った国内作家Kの某作品を先に読んでいた為に驚きは全くなかったが、書かれたのは本作の方が先であり使い方もこちらの方が断然巧い。
タグ:
posted at 16:14:32
とはいえ、それを知らなかったとしても見せ方が丁寧なせいか真相の大半が途中で読めてしまうのが難だが、完全に黒な状況をどうひっくり返すかという点では大いに見所がある。そして同時に、その部分においてコンゲーム的見応えもある作品である。
タグ:
posted at 16:19:44
2015年01月02日(金)
多岐川恭「宿命と雷雨」読了。社長・堀野の秘書として入社した坂出に与えられた最初の仕事は美人占い師・泉の調査だった。堀野は泉から「八月中旬の雷雨の夜に死ぬ宿命にある」と予言されていたのだ。坂出が調査を進める一方で度々かかってくる謎の電話が堀野を脅かす。果たして予言は実現するのか?
タグ:
posted at 16:01:23
占い師の予告した死の瞬間までを描いた、所謂「ゼロ時間」形式の作品。占い師の能力が本物か否か調査する一方で、堀野を取り巻く愛憎の人間関係を巧みに描き出し、その瞬間までのサスペンスをギリギリまで高めていく。
タグ:
posted at 16:01:33
ミステリとしてみるとある人物の正体を暴き出す手腕もなかなかだが、特に秀逸なのはさりげない伏線の中に隠された犯罪計画とそれが齎す皮肉な結果だろう。とはいえ仕掛けありきの作品というわけではないので若干の物足りなさは否めないものの、設定を巧く活かした良質なサスペンス小説ではあると思う。
タグ:
posted at 16:02:09
2015年01月03日(土)
夏樹静子「蒸発 ある愛の終わり」読了。新聞記者・冬木と不倫関係にあった人妻・美那子が謎の失踪を遂げた。冬木は彼女の行方を追ううちに密室状態の旅客機からの美那子らしき女が消失するという不可解な事件に遭遇、更に彼女をかつて愛した男の蒸発とそれに端を発する殺人事件に巻き込まれていく。
タグ:
posted at 16:01:02
第26回日本推理作家協会賞受賞作。密室状態の旅客機からの人間消失、鉄壁のアリバイ、走行中の列車から突き落とされた男など次々と畳み掛ける謎が魅力的で、しかもそれらの謎に振り回されることが真相の絶妙なミスディレクションにもなっている点が素晴らしい。
タグ:
posted at 16:02:25
ただその反面、展開上仕方ないのかもしれないが、重要な手掛かりが全て後出しになってしまっているのが残念。しかしながらタイトルにもなっている「ある愛の終わり」の切なくも美しい余韻が何とも忘れ難い秀作である。
タグ:
posted at 16:02:51
2015年01月04日(日)
陳舜臣「黒いヒマラヤ」読了。ヒマラヤの霊峰カンチェンジュンガの麓にある町カムドンでカメラマンの長谷川がジープと共に崖から転落して死んだ。最初は事故死と思われたが長谷川の親友である毛利が調べるにつれ不審な点が次々と見付かり、毛利自身も危うく殺されかける。やがて第二の殺人事件が――。
タグ:
posted at 16:27:55
ヒマラヤにある架空の町を舞台に、秘宝を巡る連続殺人を描いたミステリ。本作が優れているのは緻密なフーダニットとコンゲームを両立させたところであり、前者は何気ない描写の数々が犯人を絞り込む重要な手掛かりとして機能する点が素晴らしい。
タグ:
posted at 16:28:34
特に秀逸なのは犯人のアリバイを崩す決め手で、トリック自体は大したものではないが、この伏線の隠蔽テクニックはかなりのもの。一方、後者でいえば最後の最後まで気が抜けない構成が○。
タグ:
posted at 16:29:03
2015年01月07日(水)
井上真偽「恋と禁忌の述語論理」読了。大学生の詠彦は既に解決した殺人事件の真相を証明してもらうために天才数理論理学者の叔母・硯さんを訪ねる。「料理に入っていた毒は故意か偶然か」「容疑者が多すぎる事件」「双子のどちらが殺したのか」果たして硯さんは数理論理学で全ての謎を証明できるのか?
タグ:
posted at 22:22:16
第51回メフィスト賞受賞作。本作の趣旨を簡単に説明すると、数理論理学を駆使することにより、普通のミステリとして解決した事件の真相を覆すこと……なのだけど、ぶっちゃけ作中で展開される述語論理とやらがちんぷんかんぷん過ぎて「はあ、そうですか」以外の感想しか出てこないのがかなりアレ。
タグ:
posted at 22:22:37
まあこれに関しては自分の頭の悪さも多分にあるのだけど(爆)それを差し引いたとしても、真相がどれもしょぼ過ぎるのはいかがなものか。それでいてどうでもいい設定や描写が多く、正直そんなところに凝るならもっと他のところに凝ってくれよと何度思ったか分からない。
タグ:
posted at 22:22:56
そんな中、唯一見るべきところがあったのは連作としての纏め部分くらいで、これで個々の事件が面白ければかなり評価していたかもしれない。とはいえ、終わりだけが良くてもそこに至るまでの過程でやらかしまくっているので、何とも反応に困る作品である。
タグ:
posted at 22:26:36
2015年01月08日(木)
鳥飼否宇「死と砂時計」読了。なぜ死刑囚は密室状態の独房で殺されたのか。なぜ囚人は満月の夜に脱獄したのか。なぜ監査官は退官間近に死んだのか。なぜ墓守は死体を掘り返し解体したのか。なぜ女囚は男がいない状況で身籠ったのか……終末監獄で死刑囚の青年と老人が遭遇する摩訶不思議な事件の数々。
タグ:
posted at 23:25:37
世界各国から集められた死刑囚のみを収容する終末監獄を舞台にした連作ミステリ。一編目は死刑執行前夜の死刑囚が殺されるという魅力的な謎を扱っている反面、真相が途中で読めてしまうのが難だが、丁寧に仕上げられているのは好印象。
タグ:
posted at 23:25:48
続く二編目は脱獄方法もさることながら意外かつ皮肉な着地が素晴らしい。三編目はシンプルなネタだが定番の論理を使って巧く料理している。四編目は個人的なベストで、カニバリズムを匂わせる猟奇的な事件を異形の論理と細やかな伏線で解体してみせる手際が実に秀逸。
タグ:
posted at 23:26:10
五編目はやや強引だがこの苦笑してしまうオチは嫌いではない。六編目はある描写と話の方向性から真相が読めてしまうものの連作としての伏線を活かして手堅く纏めている点は○。そこかしこに見られる「法月綸太郎の冒険」要素にニヤリとしつつも全体的に謎を通して描かれる人間たちが鮮烈な秀作である。
タグ:
posted at 23:26:32
2015年01月10日(土)
戸松淳矩「名探偵は千秋楽に謎を解く」読了。弱小相撲部屋に大砲の弾が撃ち込まれ、牛乳に石見銀山が混入され、将軍家拝領の弓に血がベットリと付着し……次々とオレたちの町で起きる奇怪な事件は、なんとある連載小説の内容と酷似していた。更に親方の娘が誘拐され、犯人からは前代未聞の要求が――。
タグ:
posted at 18:11:44
作者の長編デビュー作にして名探偵シリーズの一作目。次々と起こる奇怪な事件に対し解決がいたってシンプルなのはある意味ミステリの理想と言ってもいいかもしれないが、個人的にこの真相は結果論であって確実性に欠けるのが些か気になる。とはいえ細かいことを気にしなければ充分楽しめる作品である。
タグ:
posted at 18:12:16
2015年01月12日(月)
橘雨璃「放課後の魔女」読了。結末を語ったら死ぬ――曰く付きの戯曲を文化祭で演じることになった2年A組。だが文化祭が近づくにつれ校内では「マ女」を名乗る人物による劇をなぞったかのような事件が続発。魔女は燃やす。魔女は沈める。魔女は埋める。そして、迎えた文化祭当日――粛清が始まる。
タグ:
posted at 12:52:56
ジャンプ小説新人賞銀賞受賞作。内容紹介にはホラーサスペンスとあるが、実際にはホラー風味の青春小説でしかなく、ガチホラーを期待するとかなり肩透かしを覚えることになる。この感覚はちょうど「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」をミステリとして読んでしまった時のそれと似ているかもしれない。
タグ:
posted at 12:53:05
今邑彩「よもつひらさか」読了。一人で歩いていると死者に会うことがあるという不気味な言い伝えのある坂を巡る表題作を始め、寺の天井に染み出してきた不気味な影の正体に迫る「双頭の影」、日に日に変化していく不思議な絵の虜になる少女を描いた「遠い窓」などバラエティ豊かな十二編を収録。
タグ:
posted at 16:35:27
今邑彩の短編というと基本的に短編の見本のような切れ味鋭いなものが多いが、本作はその中でも選りすぐりを集めた短編集に仕上がっている。収録作のジャンルは多種多様だが、ホラーやファンタジーでもさりげなくミステリ的手法が使われているのが何ともこの作者らしい。
タグ:
posted at 16:35:42
そういったハイブリッド作品では「双頭の影」が最もお気に入りで高額の箱を売る怪しい店の導入部から推理の積み重ねを経て辿り着く意外な解決とゾクリとさせるラスト一行が実に秀逸。そしてこのラスト一行の秀逸さは全編共通であり、中にはありがちなオチでさえもこの一行により化けるのが素晴らしい。
タグ:
posted at 16:36:10