麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2016年03月11日(金)
大谷羊太郎「その夜の三人」読了。かつて強盗犯が盗んだ大金を埋めた雑木林に中学校が新設されたのが全ての始まりだった。夜の校庭に忽然と現れた机で描かれた9の文字、その机に刻まれた怨の鏡文字、同じく怨の文字が記された脅迫状、そして穴に埋められた男の他殺体……これらは何を意味するのか?
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posted at 22:25:31
実際起きた事件をヒントに書かれた長編ミステリ。次々と起きる不可解な事件は面白いが、肝心の真相がかなり微妙。というか、これを推理してみろというのはさすがに無理があると思う。
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posted at 22:25:54
そしてそのことを作者も分かっているからこそ途中で倒叙パートに切り替えたのかもしれないが、それが却って真相の脱力感に拍車をかけてしまっているのが難。唯一面白かったのは短時間で9の文字を完成させたトリックで、最初からこれだけをメインに書いた方がまだ良かったような気がする。
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posted at 22:26:06
2016年03月13日(日)
仁木悦子「穴」読了。深夜、隣人の不審な行動を目撃した少年の恐怖体験を描いた表題作を始め、幽霊が出るという別荘で起きた連続殺人事件の謎を扱った「幽霊と月夜」、精神薄弱児を収用する私立養護施設で殺人事件が起こる「うさぎと豚と人間と」など六編収録。
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posted at 09:23:38
ミステリとしてみるなら本作は「幽霊と月夜」のためにあると言っても過言ではないだろう。一つ一つのネタはシンプルながらこれだけのネタを短い枚数の中で破綻なく詰め込んでいる点は驚愕に値する。
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posted at 09:23:48
その他「うさぎと豚と人間と」が舞台設定の特殊性に面白さがあるが、些か捻りすぎたせいか最終的にはその特殊性が薄れてしまった感が否めない。むしろ最初に明かされる動機をメインにした方が切れ味鋭い短編に仕上がったような気がする。
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posted at 09:23:59
仁木悦子「一匹や二匹」読了。小学生の櫟究介が子猫を拾ったことで殺人事件に巻き込まれる表題作を始め、幼稚園で行われたクリスマスの演し物の最中、男女の他殺体が発見される「サンタクロースと握手しよう」、長編「青じろい季節」の後日談的短編「縞模様のある手紙」など五編収録。
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posted at 20:17:53
仁木作品ではお馴染みの素人探偵たちが活躍する三編とノンシリーズ物の二編で構成された短編集。これといって際立った出来のものはないが、ジュブナイルミステリに誘拐、サスペンス物と全体的にバラエティに富んだ短編が揃っている。
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posted at 20:18:24
強いてベストを挙げるなら「サンタクロースと握手しよう」で、トリックこそ大したものではないが、それを成立させるための設定を違和感なく物語に組み込んでいるのは○。あと個人的には「青じろい季節」が好きだっただけに、その後日談が読めた点が良かった。
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posted at 20:18:42
2016年03月15日(火)
仁木悦子「銅の魚」読了。おばあちゃんちの倉の中で見付けた歪んだ矢立にぼく以外で興味を示したのは金貸しをしているおかつさんだった。そのおかつさんが何者かに殺され、死の間際に遺した言葉からぼくが秘かに想いを寄せていたアヤちゃんのお父さんが逮捕されてしまう――表題作含む六編収録。
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posted at 06:46:23
収録作は悦子ママが活躍する「二人の昌江」を除くと全てノンシリーズ物。ベストは何と言っても表題作で、主人公が田舎に遊びにきた小学生であることを活かした仕掛けが実に秀逸。人によってはアンフェアと捉えるかもしれないが、自分はギリギリありだと思う。
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posted at 06:46:41
次点は母が殺された事件と幼い頃に亡くなった父の遺した詩がリンクする「あかねを歌う」で、事件を通して描かれる主人公・あかねの心の変化がいい。その他、推理作家が滞在先で殺人事件に遭遇する「山峡の娘」がミステリ部分とは違うところで用意された意外性が印象的だった。
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posted at 06:46:51
仁木悦子「暗い日曜日」読了。日曜日の朝、私は偶然通りかかった八幡様の境内で老文学博士の死体を見付けた。死因や被害者の手帖に残された「紫式部」という言葉に引っ掛かるものを感じた私は単身事件を調べ始める――表題作を始め、万引きと殺人がリンクする「うす紫の午後」など六編収録。
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posted at 10:39:56
収録作は仁木兄妹物、三影物、悦子ママ物の三編にノンシリーズ物が三編。意外性で言えば表題作と「うす紫の午後」が突出しているが、前者は些か取って付けたような感が、後者はフェアな作者にしては珍しく肝心な伏線がないので釈然としないものがある。
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posted at 10:40:43
一番バランスがいいのは私立探偵の三影潤がダイイング・メッセージの謎に挑む「くれないの文字」で、ダイイング・メッセージの意味こそ脱力物だが、何故現場にしばらく残っていた犯人がダイイング・メッセージを放置したのか? という謎は面白いし、様々な思惑が絡む真相も作者らしさを感じて○。
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2016年03月16日(水)
天祢涼「銀髪少女は音を視る ニュクス事件ファイル」読了。恩人の元警官が毒殺され、仇を討とうとする道明寺一路巡査はひょんなことから銀髪の美少女探偵・音宮美夜とコンビを組むことになる。音に色が見え視える共感覚の持ち主である彼女はその能力を駆使して犯人が仕掛ける死のゲームに挑むが……。
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posted at 22:19:07
デビュー作「キョウカンカク」などに登場する共感覚探偵・音宮美夜の少女時代を描いた作品。シリーズとしては短編を除くと二作目の「闇ツキチルドレン」以来久々の登場となるが、内容的にはかなり微妙で徹頭徹尾どこかで見た設定、展開が繰り返される物語はお約束を通り越して陳腐の一言に尽きる。
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posted at 22:19:35
ミステリとしてみると前例のある真相に一応捻りを加えようとしているが、その捻りにしてもシリーズを読んでいる人からすると「またこの手か」と思ってしまうのがアレ。加えて結末も無理に続けようとしているのが見え見えで、個人的には残念な出来だった。
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2016年03月17日(木)
森川智喜「ワスレロモノ 名探偵三途川理 vs 思い出泥棒」読了。魔法の指輪で人の記憶を宝石にする青年・カギノは「思い出泥棒」として活動している。依頼に応じて記憶を盗むカギノの仕事は完璧。しかし、そんな彼の行く手に悪辣なる名探偵・三途川理のどす黒い影が!?
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posted at 10:16:36
名探偵三途川理シリーズの四作目。構成としては真実を知る鏡を巡る「スノーホワイト」に近く、前半は相手の記憶を奪える魔法の指輪の説明に費やし、後半でいよいよ魔法の指輪を巡るコンゲームに突入する。ただ「スノーホワイト」の時と比べると奇策のインパクトに欠けるのが少々物足りない。
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posted at 10:16:51
むしろ本作で圧巻なのは名探偵三途川理と思い出泥棒の最初の対決が描かれる第四章で、思い出泥棒に何度も記憶が消されているにも拘わらず三途川理が現場に残された毎回異なる手掛かりから同じ真相に至る様は倒叙ミステリの新機軸とも言えるもので実に面白い。本作もまたこの作者らしい良作である。
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posted at 10:17:02
天樹征丸/さとうふみや「金田一少年の事件簿R」9巻読了。人形島殺人事件完結。おどろおどろしいストーリー展開も良かったが、真相もそれに相応しいものがきちんと用意されていて満足度高し。何といっても設定からまず誰もが検討するであろうある可能性を逆手にとっている点が素晴らしい。
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posted at 22:25:49
また見立てが真相の巧い目眩ましになっているのもいいし、アリバイトリックもシンプルながら盲点をついたものに仕上がっているのは好印象。全体的に高水準なネタで纏められた秀作である。
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posted at 22:26:14
2016年03月18日(金)
中山七里「恩讐の鎮魂曲」読了。韓国船が沈没し251名が亡くなった事故で、女性から救命胴衣を奪った日本人男性が刑法の「緊急避難」が適用され無罪となった。一方、医療少年院時代の恩師・稲見が殺人容疑で逮捕されたため、御子柴は弁護人に名乗り出る。稲見は本当に殺人を犯したのか?
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posted at 17:08:56
悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズの三作目。前作「追憶の夜想曲」の内容が内容だっただけに続編が出たことにまず驚いた。但し前二作に比べるとミステリ度はぐっと落ちて、代わりに人間ドラマの方に比重が置かれている。
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posted at 17:09:10
そのためか、作者が得意とするどんでん返しも意外性はほとんどなく、予定調和のところに収まってしまった感が否めない。せっかく御子柴というキャラの特性を活かした捜査パートが面白かっただけに残念ではあるものの、それさえ気にしなければ問題なく楽しめる作品である。
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posted at 17:09:19
2016年03月19日(土)
吉田恭教「背律」読了。男性医師が自宅マンションで刺殺体となって発見され、死亡推定時刻に被害者宅を訪れていた同僚医師に容疑がかかる。一方、厚労省の医療事故調査チームが手術ミスの告発を受けて被害者のいた病院を調べていた。殺人事件と告発は関係しているのか、それとも……。
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posted at 21:37:04
厚労省の役人・向井俊介が探偵役を務めるシリーズの一作。本作もこれまでのシリーズ作同様、医療事故と殺人事件がリンクする構成となっているが、特に秀逸なのが動機部分で、その隠蔽方法もさることながら、気付きとしてある不可解な出来事と絡めた点が素晴らしい。
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posted at 21:37:12
ただその反面、トリックの一部が今更感たっぷりなのが気になるが(それは作者も分かっているのか作中で探偵役にツッコませている)そこから犯人を特定する証拠に巧く繋げてフォローしているのは○。本作もまた作者が得意とする医療サスペンスと本格ミステリの配分が絶妙な良作である。
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posted at 21:37:20