麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2016年03月20日(日)
大倉崇裕「天使の棲む部屋」読了。アメリカのアリゾナ州外れに建つ洋館の一室「天使の棲む部屋」では犯罪者ばかりが何人も拳銃自殺を遂げていた。そこで新たな惨劇が起きる表題作の他、問題物件に纏わる四つの怪事件を名探偵・犬頭光太郎が人間離れした能力で無理やり(?)解決する連作ミステリ。
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posted at 22:32:47
前作「問題物件」に続く、名探偵・犬頭光太郎シリーズの二作目。本作はミステリ度でいえば前作以上に高く、中でも表題作の出来が際立っている。一番の見所は名探偵・犬頭光太郎が活躍する前に行われる犯人探しで、このシリーズに似つかわしくない(?)緻密なロジックを見せてくれる。
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その後、犬頭光太郎が登場してからはいつもの破天荒なノリに戻るが、最後に明かされる「天使の棲む部屋」の真相もなかなかのもの。それ以外の収録作に関しては基本よくあるネタをベースにしているものの、それだけで終わることなく何かしらの捻りを入れているのは好印象。
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その中でも特に捻りがきいているのは老人ホームで不可解な死が連続する「終の部屋」で、ミステリ読みであればあるほどやられたと思わせる仕掛けが素晴らしい。引き続き、次回作にも期待したい。
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長沢樹「武蔵野アンダーワールド・セブン―意地悪な幽霊―」読了。夏のある日、女子高生探偵・七ツ森神子都が所属する地下世界研究室に女子大学の地下劇場「13シアター」で多発する不可解な転落事故の原因を調べてほしいとの依頼が舞い込む。しかし調査の最中、依頼人の一人が犠牲者に――。
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「武蔵野アンダーワールド・セブン」シリーズの二作目。ミステリ的にはバレバレなトリックと思わせて最後の最後で捻ったところは評価できるものの、その捻りにしても作者の作品を読み慣れている人間からするとまたこれかというものであまり進化が見られないのが難。
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加えて前作以上に作品の世界観が足枷になっている感が強く、正直これ以上続けるのは得策ではないように思えてならない。どちらかといえば本作はミステリというより演劇サークルを扱った青春小説として読んだ方が楽しめる作品である。ちなみに前作のネタバレありなので、前作未読の人は要注意。
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2016年03月22日(火)
仁木悦子「夢魔の爪」読了。私立探偵・三影潤は以前、家庭教師をしていた篠村家の長男・賢一郎が伯父・神野を殺してしまったと聞いて現場へと急行した。現場となった部屋は賢一郎と神野を閉じ込めた密室となっていたばかりか、賢一郎は何者かに催眠術をかけられていた……表題作の他、六編収録。
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収録作六編のうち、事件的に最も惹かれるのは表題作だが、謎の面白さとは裏腹に真相はいたって普通でイマイチ釣り合いがとれていないのが難。むしろ本作で推したいのは「ねむい季節」と「赤い痕」だろう。
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前者は仁木作品には珍しいSFミステリでSFとしては古臭さは否めないものの、意外な真相を成立させるために行き届いた計算の妙は今でも充分唸らされる。一方後者は仁木兄妹が奥秩父の村で起きた老婆殺しの真相に迫る話で、意外性もさることながら謎が解かれると同時に浮き彫りになる執念が凄まじい。
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2016年03月23日(水)
織守きょうや「301号室の聖者」読了。笹川総合病院の医療過誤訴訟を巡る損害賠償請求事件を担当することになった新米弁護士の木村は、亡くなった患者がいた病室で立て続けに他患者の急死や不自然な医療事故に遭遇する。原因を探る木村が目にした〈301号室〉の真実とは?
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連作短編集「黒野葉月は鳥籠で眠らない」に引き続き、新米弁護士・木村が登場する長編作品。前作が法律の盲点をついて事件をひっくり返してみせることをメインとしていたのに対し、本作ではそれをメインではなく、あるテーマを描く上での一つの例として扱っているのが特徴的。
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そして、それが後々もう一つの例を際立たせる絶妙な効果を上げており、加えて主人公だけが気付く真相も意外性と問題提起の両方を兼ね備えている点が秀逸。仕掛けとしての目新しさはないが、ミステリを使って描かれた人間ドラマが胸を打つ良作である。
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2016年03月24日(木)
仁木悦子「黒いリボン」読了。リサイタルの切符を売り歩いていた音楽大二年の仁木悦子は偶然かつての知り合いである社長夫人・国近絵美子と再会し、田園調布にある彼女の家まで同行することになる。だがそこで悦子を待っていたのは二歳半になる絵美子の息子の誘拐とそれに絡んだ殺人事件だった。
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仁木兄妹シリーズの長編四作目。探偵役がリアルタイムで誘拐に巻き込まれる展開はサスペンス満点で面白い反面、ある秘密を引っ張り過ぎたせいで犯人を特定する決め手が終盤ぎりぎりになってからでないと出てこないのが難。
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それを差し引いても全体的に伏線が不足気味で、推理だけでは分からない部分が少なからず見受けられるのが残念。作品の出来は悪くないものの、もう少しミステリとしての配慮がほしかった。
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2016年03月26日(土)
谺健二「ケムール・ミステリー」読了。石膏風呂での溺死、指輪を握りしめた焼死体、車によって首を切断された死体……ケムール人を生み出した孤高の天才作家に魅せられた男が建てた異形の館で不可解な密室死が続発する。生前人目を避けるようにケムール人のお面を被っていた彼らの身に何が起きたのか。
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前作「肺魚楼の夜」以来8年ぶりの本作はバルタン星人などの生みの親である孤高の天才芸術家・成田亨の作品をモチーフにした館ミステリ。探偵役もそれに合わせて成田ファンの黒衣の原型師を起用しているが、そのキャラ設定はどこか御手洗風味の京極堂を思わせる。
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posted at 11:54:31
ミステリとしてみると仕掛けはどれも定番のものながら、それを巧く組み合わせることで意外性を演出している。むしろ本作の一番の見所は事件の構図であり、探偵役の言う美術構造的推理法によって見えてくる歪んだ愛の形が忘れ難い印象を残す。
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ちなみに本作にはお馴染みの(?)震災要素はないものの、代わりにひきこもり問題が盛り込まれており、それがミステリ部分としっかり結び付いているのはさすが。個人的には「殉霊」が好きな人にお勧めしたい社会派本格の佳作である。
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るーすぼーい「白蝶記2」読了。施設からの脱走後、旭は謎の少女・朱里と金城という男の二人と行動を共にすることになる。一方、教団幹部たちは時任に旭を連れ戻すように指示する。教団による包囲網が狭まる中、旭はようやく目的地である川幌市へと辿り着くが……。
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posted at 15:24:26
完全なる蛇足。前作は倒叙ミステリ要素のある良い青春小説で書きたいことが一貫していた印象だったのに対し本作は正直何がやりたいのかさっぱり分からない。具体的に言うと本作は施設を抜け出した主人公の逃避行をメインに主人公側と教団側の駆け引きが描かれるのだが、何というか全体的に内容が薄い。
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posted at 15:24:55
その駆け引きは些か安直だし、度々説明が入る教団の実態もテンプレかつ時々妙にセコくなるので、読めば読むほど凄いのか凄くないのかわからなくなってくる。トドメは終盤の展開で、これには思わず呆れてしまった。
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2016年03月27日(日)
山形石雄「六花の勇者archive1」読了。ハンスの謎めいた殺し屋稼業、万天神殿でのモーラやチャモたちの日常、ナッシェタニアに恋人を作るよう画策されるゴルドフの青春、凶魔として生きるフレミーの家族への想い、少年時代のアドレットの夢……これは、勇者以前の物語。
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posted at 16:37:56
六花の勇者本編の前日譚にあたる短編五編と掌編七編を収録した作品集。収録作のほとんどは本編のようなミステリ要素は一切ないファン向けのサイドストーリーばかりだが、その中で唯一ハンスの謎めいた殺し屋稼業を描いた「密偵と猫」は広義のミステリとしても読むことができるだろう。
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殺し屋のハンスに六花の勇者になることを引き受けさせるためにはどうしたらいいかという命題に対し密偵が出す答えはそれまで描いてきた日常シーンに裏打ちされた逆説としてなかなか面白いものがある。それ以外だと「鼠は見ている」の本編からは想像がつかないモーラの意外な一面がちょっと面白かった。
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2016年03月28日(月)
森川智喜「トリモノート」読了。インスタントカメラ、指紋検出、ルミノール反応、ビデオカメラ……十八世紀のお侍さんの国を舞台に、齢十六のお星と幼馴染みの舟彦がひょんなことから手に入れた現代の技術を使って難事件に挑む連作ミステリ。
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posted at 21:16:44
以前、作者は未来からやってきた探偵が現代で活躍する作品を書いているが、本作は逆に現代のアイテムが過去にいき、探偵役の捜査の助けになっているのが面白い。但し収録作四編中良かったのは前半の二編までで、三編目からネタが尽きたのかあからさまにクオリティが落ちるのが残念。
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posted at 21:17:15
加えて後半になればなるほど、よほど急いで書いたのか文章がアレになっていくのが凄く気になった。とまれ面白かった二編に言及しておくと、一編目「一つ目小僧ノ巻」は単純な事件と見せかけて、カメラを活かした気付きから予想外の犯人を引っ張り出してくる点が秀逸。
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posted at 21:17:47