麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2016年05月01日(日)
北山猛邦「廃線上のアリア」読了。十字架に串刺しにされた死体の謎を巡るハウダニット一発技が光る作品。トリックの仕組みだけ見れば目新しさはないが、それをあるものと組み合わせることでスケールの大きな島田荘司ばりの奇想に仕上がっている点がまず秀逸。
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posted at 12:15:48
2016年05月04日(水)
北山猛邦「糸の森の姫君」読了。屋敷のあらゆる場所に糸を張り巡らせる少女の話。正直ミステリとしてみるとトリックは微妙だし、オチも予想通り過ぎて物足りなさが否めない。むしろ本作はミステリの枠組みを使った百合要素のある青春小説として読んだ方が楽しめるかもしれない。
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法月綸太郎「法月綸太郎の新冒険」再読了。推理作家で名探偵の法月綸太郎が乗っていた特急の車内で奇妙な毒死事件に遭遇する「背信の交点」、若い女の飛び降り未遂に端を発する殺人事件「身投げ女のブルース」、破綻した交換殺人に隠された真相に迫る「リターン・ザ・ギフト」など六編収録。
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posted at 17:09:01
名探偵・法月綸太郎シリーズの連作ミステリ第二弾。「イントロダクション」を除き収録作はどれも構成がよく練られているが、その中でも際立っているのはやはり「背信の交点」「身投げ女のブルース」「リターン・ザ・ギフト」の三編だろう。
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posted at 17:09:24
「背信の交点」は作者自身が会心の出来というだけあって鉄道を使ったあるアイディアがとにかく秀逸で、本作のことを有栖川有栖が「笹沢左保のオマージュ」と称したのも実によく分かる。またユーモアたっぷりの展開と謎解きの際に探偵に向けられる毒のギャップも○。
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posted at 17:09:46
「身投げ女のブルース」は法月綸太郎が登場しない異色作で、作品全体に漂うハードボイルド的雰囲気もさることながら、「パズル崩壊」を読んでいる読者であればより引っ掛かるであろう仕掛けが堪らない。
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posted at 17:09:55
そして「リターン・ザ・ギフト」は作者が得意とする交換殺人物で、凝りに凝った犯罪計画と完全犯罪になりきれない皮肉な理由が素晴らしい。ベストは「背信の交点」だが、好みでいえば交換殺人が描き出す人間の業が印象的な「リターン・ザ・ギフト」を挙げたい。
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原進一「アムステルダムの詭計」読了。昭和四十年に起きたアムステルダム運河バラバラ事件の被害者は、私の知るあの先輩なのか? 事件から二十年以上経過してアムステルダムに駐在することになった私は、そこで松本清張の深謀と先輩の「死」の真相を知ることになる。
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posted at 17:10:49
第8回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。本作は昭和四十年に実際に起きたアムステルダム運河バラバラ事件の真相に迫りつつ、松本清張「アムステルダム運河殺人事件」に隠された意図も明らかにするという意欲的趣向が盛り込まれた作品だが、ミステリとして読むと正直肩透かし感が否めない。
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posted at 17:11:02
真相に目新しい要素は何一つなく、そもそも作者自身ミステリとして本作を書いたのかどうか疑問が残る。どちらかというとミステリというより過ぎ去った青春物、昭和という時代を美術と共に振り返る私小説風味の作品として読んだ方がいいかもしれない。
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2016年05月05日(木)
十階堂一系「赤村崎葵子の分析はデタラメ」読了。下駄箱に入っていたラブレター、一万円を募金する男、消えた財布、小屋の中に捨てられていたタバコの吸い殻……日常の中で起きたあらゆる事象を分析部部長・赤村崎葵子が勝手に分析し、驚愕と脱力の結論を導き出す連作短編集。
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posted at 20:49:37
日常の謎に対し、こねくりまわされるロジックを楽しむ作品。タイトルにある通り、まずヒロインの分析もとい推理がデタラメであることが前提となっているが、そのデタラメもそれなりに説得力を持っているところが面白い。
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posted at 20:50:12
しかもそのデタラメの後に再び推理によって真相が示される二段構造となっており、そこからただの投げっぱなしでは終わらせないという本作にかける作者の意気込みのほどが窺える。
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posted at 20:50:30
ベストを選ぶなら第三話で、消えた財布を巡る探偵部との推理対決という趣向もさることながら連作を活かした意外な伏線と何気ないやり取りに隠された決め手が素晴らしい(次点はミステリでしか表現できない青春小説をやってのけてくれる第四話)。本作はロジックと青春小説を巧く融合させた良作である。
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2016年05月07日(土)
小杉健治「死者の威嚇」読了。昭和57年9月、東京・荒川の河川敷で関東大震災直後に故なく虐殺された朝鮮人を慰霊する為の遺骨発掘作業が行われたが遺骨を見付かることはできなかった。それから三年後、墨田公園の工事現場で白骨死体が発見されるが死体の身元は朝鮮人ではなく元盛岡署の刑事だった。
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posted at 16:44:26
関東大震災に端を発する、壮大な犯罪パズルを描いた社会派ミステリ。本作の見所は幾つかあるが、中でも特に目を惹くのは関東大震災の裏で行われた朝鮮人虐殺事件という重いテーマを扱いつつも、それを隠れ蓑にした様々な仕掛けをやってのけている点だろう。
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posted at 16:44:52
中盤で明らかになるある仕掛けにも唸らされたが、それ以上に秀逸なのは物語の死角に隠された意外な犯人とその構図であり、そこに秘められた恋愛劇を始めとした人間ドラマが、探偵役が事件を追う動機と相俟って深く読む者の胸を打つ。
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2016年05月08日(日)
遅れ馳せながら「謎解きLIVE[四角館の密室]殺人事件」観了。途中の仕掛けと動機に綾辻らしさを感じて思わずニヤリ。犯人が密室にした理由にアレを絡めた点は巧いと思うものの、そこからの絞り込みがあっさり気味だし、あまり四角館という設定が活かされていないのが気になったが、概ね満足した。
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posted at 23:19:26
辻村七子「螺旋時空のラビリンス」読了。時間遡行機アリスの鏡が開発された近未来。喪われた美術品を過去から盗み出す泥棒のルフは至宝の一つを盗み19世紀パリに逃亡したフォースを連れ戻すことに。だが再会したフォースは高級娼婦となり不治の病に冒されつつも頑なに帰還を拒否する。彼女の真意は?
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posted at 23:57:36
ループ物に歴史ロマンと恋愛劇、それにコンゲーム要素を盛り込んだ作品。ループ物としてみるとやっていることは差ほど目新しくはないが、それを活かした盛り上げ方が巧く、特に真実を知った後、不治の病にかかったヒロインに尽くそうとする主人公の姿が圧巻。
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posted at 23:57:51
2016年05月14日(土)
長沢樹「St.ルーピーズ」読了。トンネルに現れた幽霊と密室からの人間消失、校舎の屋上から墜落するも姿を消したゴスロリ女、雪の夜に目の前で消えた女とピアノ……超セレブたちが集う超常現象研究サークル「SL&S」の面々が、三つの怪現象を巡りホンモノかトリックかを解明する中編集。
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posted at 00:26:28
一言でいうなら有閑倶楽部+探偵ガリレオ。キャラたちのコミカルな掛け合いは相変わらずこなれているものの、肝心のトリックがバレバレ、もしくは技術の進歩をただ見せ付けてくれるだけなのでお世辞にも面白いとは言い難い。
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posted at 00:27:04
唯一面白かったのが三編目に出てくるアルジェントネタもといシャドーネタくらいだが、それだけのために読む価値があるかと言われると微妙なところ。いっそのことミステリ部分は端からオマケと割り切って読んでしまった方が楽しめるかもしれない。
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posted at 00:27:29
円居挽「コクラセ」読了。架空の求人募集に絡めた告白計画、閉ざされた校舎を徘徊する謎の怪物、そして破局の暴君との対決……叶わぬ恋に身を焦がす依頼人の想いを遂げるため、あらゆる手段を駆使して告白の舞台を整えるグループ「コクラセ」が持ち込まれる突飛な依頼の数々に立ち向かう。
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posted at 14:36:52
同名フリーゲームを完全オリジナルストーリーでノベライズ化したもの。本作もまた最近の円居作品同様、三話構成+αとなっており、加えてその内容もいつも通りのコンゲーム要素てんこ盛りなので、ノベライズ化作品と言えどファンは安心して物語に入っていけるだろう。
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posted at 14:37:21
収録作のうちベストを選ぶなら第一話で、あとがきで作者が語っている通り某作のオマージュは巧くいっていると思う。その一方で作者は読者の裏をかきすぎたとも言っているが逆に第三話は読者の裏をかかなすぎで折角総力戦の様相を示しているにも拘わらず予定調和で終わってしまっているのが物足りない。
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posted at 14:37:56
せめて依頼者と告白相手の接点を描いていれば、もう少し意外性を出せたかもしれない。あと第二話は強引ぶりがかなり目立つ話で、これで強烈なオチがあればまだ良かったのだけど、結局キャラの顔見せに留まってしまったのが残念。
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posted at 14:38:16
山田正紀「長靴をはいた犬」読了。犬男が『女を襲え』といったんだ――劭疝犬神通り魔殺人事件で起訴された男は法廷でそう呟いた。弁護人も無罪を主張。更にその公判中に同じ手口の第二の殺人が起きる。股の犬の噛み痕、長靴の足跡はこの街に澱む「犬神伝説」と関係するものなのか?
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posted at 19:17:40
「神曲法廷」に続く佐伯神一郎シリーズの二作目。前作を読んでいる読者であれば、まず探偵役である佐伯の変貌ぶりに驚かされるが、それ以上に目を惹くのはやはり真犯人を前半部分で明らかにしてしまうという破格な趣向(?)だろう。
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posted at 19:17:51
しかし、だからといって真相まで容易に割れてしまうなんてことは絶対にないと断言できる。というのも目次を見れば分かる通り本作には三つの結末が用意されているのだが、後になればなるほど本格ミステリから解離してホラーとしか思えない構図が立ち現れるようになっている。
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posted at 19:18:10