麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2017年03月06日(月)
風見潤「五十の殺意幽霊事件」読了。大阪の大財閥・高科コンツェルンが造った美術館のオープンの日、この敷地の裏にある洞窟に入った人物が首を斬られて殺された。しかもあろうことか洞窟内から首も犯人も消えてしまい……事件は首なし武者の伝説の再来なのか?
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posted at 17:14:03
京都探偵局シリーズの一作。首なし殺人の真相に関しては舞台や登場人物を限定しすぎているせいですぐ読めてしまうし伝説の使い方も雑。また動機となるものが無駄に壮大なので悪い意味で作品としてのアンバランスさが際立ってしまっている。タイトルの意味もこじつけ感が否めず全体的にいまいちな出来。
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posted at 17:15:05
2017年03月10日(金)
風見潤「軽井沢高原鉄道幽霊事件」読了。四十二年前、今は廃線となっている軽井沢電鉄で元華族の婚約者を乗せたまま客車が消失するという事件が起きた。そして今、復活した鉄道で再び車両が消失したばかりか過去の事件を調べていた男が神社の石段で殺されているのが見付かる。麻衣子の推理やいかに?
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posted at 23:13:16
京都探偵局シリーズの一作。今回は客車消失という大掛かりな謎を扱っているが、トリックよりもどうやって消したか? のホワイに注力された作品であり事実、作中で起きた二つの消失に関しては現在と過去、それぞれの状況を生かした説得力の高い理由が用意されている。
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posted at 23:13:44
その一方でフーダニット部分もさりげない伏線の妙と不可解な行動から見えてくる人間心理が光っており、全体的に派手な仕掛けこそないが、無駄なく綺麗に纏まった良作である。
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posted at 23:14:33
2017年03月11日(土)
風見潤「名古屋わらべうた幽霊事件」読了。名古屋のテレビ塔の下で殺された男の最期の言葉は「さいた、さいた」――現場周辺には色とりどりのチューリップの花が撒き散らされていた。そして事件の発見者の一人である女子高生の身辺では兄が行方不明に。しかしこれは童謡連続殺人の序章に過ぎなかった。
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posted at 17:33:54
京都探偵局シリーズの一作。本作はシリーズ初の童謡見立て殺人ということもあってか、いつも以上に盛り沢山な内容に仕上がっており、特にある登場人物の行方を追ううちに横溝色溢れる孤島ものへとシフトしていく展開にはさすがに笑ってしまったw
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posted at 17:34:36
ミステリとしては前作「軽井沢電鉄幽霊事件」同様、作者は見立てのホワイ部分に力を入れており、前例のある理由を基にしつつも大胆なミスディレクションが凝らされているのがいい。また最終的に犯人が自分の策に追い詰められる点も○。トリックは勿論のこと、プロット的にも読み応えのある秀作である。
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posted at 17:35:02
風見潤「南紀火の蛇幽霊事件」読了。別れて暮らす父親が三歳の息子を連れ出しただけのはずが、一転して本当の誘拐事件に――犯人が要求した身代金は三千万。次々と意外な方法で出される犯人の指示に従い京都を出て大阪、和歌山、伊勢神宮へ。だが尾行をする麻衣子たちの前で身代金が消えてしまい……。
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posted at 18:19:23
京都探偵局シリーズの一作。本作は、前半は誘拐のサスペンス、後半は殺人事件という二段構成となっているが、前半部分だけでもパソコンやネット関連の知識に詳しい作者ならではの方法で読者を翻弄してくれるので、かなり読み応えがある。
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posted at 18:20:53
一方、殺人事件に纏わる謎に関してはページ数の関係でやや駆け足気味なのが惜しまれるが、それでも設定と巧く結び付けて誘拐の動機の異常性に説得力を与えている。またある登場人物の関わり方に意外性があり、かつ後味のいい読後感に繋げているのが○。本作は誘拐ミステリの隠れた秀作である。
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posted at 18:21:23
2017年03月12日(日)
風見潤「殺人特急〈日の出〉幽霊事件」読了。謎の調査依頼に誘われて、鹿児島から北海道までを走る寝台特急〈日の出〉に乗り込んだ麻衣子と美奈子の前で列車の爆破予告と密室殺人が発生。一方、別行動の千尋も出雲で死体を発見してしまうが、その容疑者は〈日の出〉に乗っていた。
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posted at 16:58:21
京都探偵局シリーズの一作。列車の爆破予告に密室殺人と一見本作は派手な内容に思えるが、それらは全て終盤に集中してしまっているため、些か物語としてのバランスの悪さを感じるきらいはあるだろう。加えてトリックに関してもミステリを読み慣れている人であれば、すぐに気付いてしまうかもしれない。
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posted at 16:58:42
しかしながら事件に必要な要素は過不足なく詰め込まれているし、平行して進む二つの捜査パートが隠された人間関係を少しずつ暴いていく様はサスペンス小説としてみれば申し分ない。本格ミステリとして過度な期待をしなければ充分楽しめる作品である。
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posted at 16:59:01
風見潤「魔界京都幽霊事件」読了。女子大生・佐伯孝子は京都魔界めぐりの途中、少女の幽霊と出会った。それは同じマンションに住む宗像理江の、三年前に事故死した姉なのか? そして調査に乗り出した麻衣子たちの前で、密室殺人が……。
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posted at 17:34:12
京都探偵局シリーズの一作。幽霊のトリックに関しては前例のあるものをベースにしつつも京都という舞台ならではの要素を取り入れているのは好印象。また密室トリックの方は仕掛けそのものよりもその伏線の張り方に面白さがある。全体的にこじんまりとした感は否めないが見るべきものはある作品である。
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posted at 17:35:04
「肉の蝋人形」観了。エロい、グロい、胡散臭いの三拍子揃ったゴシック・ホラー。ルチオ・フルチが脚本を手掛けただけあって、お話としては「細けえことはいいんだよ!」の一言に尽きるが全編に溢れる胡散臭さが収束したようなオチには大爆笑w ただ猿の惑星級のネタバレジャケットはアウトだと思う。
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posted at 21:17:17
2017年03月14日(火)
深水黎一郎「少年時代」読了。ある少年は町を歩くチンドン屋が吹くサキソフォンの音色に惹かれて付いていき、ある少年はアクの強い両親のもとで犬を飼い始め、またある少年は柔道部での上下関係に揉まれる………大人の世界の理不尽さにさらされながらもひたむきに生きる少年たちの成長を描く連作小説。
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posted at 23:55:45
少年が主人公の青春小説三編にエピローグを加えた本作は基本的には非ミステリ作品ながら、所々に作者らしいミステリ的手法が窺える。特にそれを活かし作品世界に奥行きを与えたエピローグが秀逸で、タイトルに象徴されるノスタルジックな雰囲気と相俟って読む者に何かしらの感慨をもたらす作品である。
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posted at 23:56:10
2017年03月15日(水)
田代裕彦「先生とわたしのお弁当 二人の秘密と放課後レシピ」読了。親の入院を機に壊滅的な食生活を送ることになってしまった女子高生のちとせを見かねて学校の小匣先生がお弁当を作ってくれることに。だが喜んだのも束の間、それが思いがけないトラブルを呼び、更にある秘密まで掘り起こして――。
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posted at 00:42:21
お弁当をテーマにした日常の謎を扱った連作ミステリ。テーマがテーマだけに突飛な謎こそないものの(と言いつつ第二話では密室でお弁当が滅茶苦茶にされるという不可能犯罪(?)を扱っているが)ロジックを駆使してお弁当に込められた登場人物たちの心情を浮き彫りにしていく過程は実にスリリング。
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posted at 00:43:02
特に秀逸なのは第二話で、前述した不可能興味もさることながら巧みなミスディレクションと何気ない言葉に隠された伏線の妙で魅せてくれる(個人的には西澤的黒い真相にしてくれても良かったのだけど、さすがにそれは作品内容にそぐわないか)。全体的に物語と謎が程よくブレンドされた良作である。
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posted at 00:43:47
2017年03月16日(木)
北山猛邦「ダンガンロンパ霧切5」読了。難攻不落の「密室十二宮」、遂に陥落。探偵たちの屍と裏切りを乗り越えた先に待つ、衝撃の真実――最強の探偵が仕掛ける最終試験を霧切響子と五月雨結は突破できるのか?
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posted at 01:29:21
十二の密室事件で構成されている「密室十二宮」編完結。本作で扱っている三つの密室のうち一番見応えがあるのはやはりリブラ女子学院の事件だろう。北山作品を読み慣れている読者であれば途中で気付いてしまう可能性は否めないものの、大掛かりなバカトリックを真面目にやっているところは好印象。
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posted at 01:30:01
むしろ本作で感心したのはトリックよりも暗躍するある人物の思惑であり、後期クイーン問題に対する作者ならではのアプローチとしても見ることができてなかなか興味深い。「ダンガンロンパ霧切2」の完成度に比べると物足りないかもしれないが、物語のターニングポイントとして見逃せない作品である。
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posted at 01:31:05
風見潤「義経伝説幽霊事件」読了。名探偵・水谷麻衣子の後輩・高科啓一が親戚の静香の自宅で目を覚ますと、手には血まみれの包丁、隣には男の死体が……。自分の無実を信じる啓一は静香と共に奈良、石川、岩手と犯人の影を追うが、そのルートは奇しくも源義経の逃走経路と一致していた。
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posted at 21:26:23
京都探偵局シリーズの一作。今回は珍しく不可能犯罪が一切起こらない典型的な巻き込まれ型サスペンスが展開するが、だからといってトリックがないがしろにされているわけではない。むしろこの典型的な展開を採用したからこそ、作者の真の狙いを隠し通すことができたと言えるだろう。
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posted at 21:26:53
2017年03月19日(日)
家原英生「(仮)ヴィラ・アーク 設計主旨」読了。設計事務所を経営する川津らが招かれたのは断崖に建つ「二本の筒が載った家」だった。豪華な館訪問という楽しい旅にやがて暗雲が漂い始め、事件が起こる。消えた黒猫を捜すうちに一人、また一人と行方不明者が……。この建物に隠された秘密とは何か?
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posted at 20:06:36
第62回江戸川乱歩賞最終候補作。本作は作者が一級建築士だけあって舞台となる館の描写が非常に凝っている反面、肝心の事件部分がただ人や猫が消えるだけなので些か地味な印象が否めない。
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posted at 20:06:51
しかしながらタイトルにもなっているこの館の設計主旨に込められた島田荘司的奇想と社会派要素はなかなかのもので、これだけでも大いに本作を読む価値はあるだろう。本作はこの時代だからこそ生まれた館ミステリの意欲作である。
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posted at 20:07:08
風見潤「夜叉ヶ池幽霊事件」読了。京都探偵局の三人がそれぞれ向かった先――夜叉ヶ池、五箇山、白穂高原で、相次いで殺人事件が発生。足跡なき殺人、人間消失、クローズド・サークル状況下での見立て殺人……巧妙なトリックが散りばめられた三つの不可能犯罪に七つの解決をつけるシリーズ最終作。
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posted at 20:51:03
京都探偵局シリーズの最終作。本作はシリーズの掉尾を飾る作品だけあっていつも以上に事件が凝っており、京都探偵局の三人がそれぞれ推理力を発揮する展開もさることながら、この展開だからこそできる仕掛けが盛り込まれているのが非常に熱い。
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posted at 20:52:52
更にその裏に隠された構図に至っては思わず作者にお疲れ様と言いたくなるほどの複雑さであり、前述した仕掛けと相俟ってこれ以上ないくらいシリーズの探偵役である水谷麻衣子の名探偵ぶりが際立つ事件に仕上がっている。本作はシリーズ最終作に相応しい傑作と言っていいだろう。
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posted at 20:53:24