麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2018年04月03日(火)
酒井田寛太郎「ジャナ研の憂鬱な事件簿3」読了。「自画像・メロス」という奇妙な絵画に秘められた謎、山に入っていった少女と鬼の伝説の関連性、子供の頃に経験した怖い記憶の正体……ジャナ研所属の工藤啓介が解き明かす三つの謎の真相とは? そして、気になる先輩・白鳥真冬との関係に変化が……。
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posted at 11:36:59
海新高校ジャーナリズム研究会――通称ジャナ研に所属する工藤啓介が日常の謎を解き明かす連作ミステリシリーズの三作目。収録作はいずれも何気ないエピソードとの繋がりが抜群に巧く、それらが浮き彫りにする隠れた人間ドラマが実に秀逸。
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posted at 11:37:16
ミステリとして選ぶなら気付きのポイントと反転する構図が堪らない第1話「自画像・メロス」と第2話「鬼の貌」だが、物語としてはやはり主人公の過去との対峙と成長に友人の窮地をどう救うかというタイムリミットサスペンス的シチュエーションを絡めた第3話「怖いもの」が最も読み応えがある。
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2018年04月05日(木)
秋保水菓「コンビニなしでは生きられない」読了。大学を中退した白秋にとって唯一の居場所はバイト先のコンビニだった。そこに女子高生の黒葉深咲が研修でやってきた日から起きる不可解な事件の数々。二人が謎を解いていくにつれ、事態はやがて店の誰もが口を閉ざす過去の盗難事件へと繋がっていく。
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posted at 09:40:50
第56回メフィスト賞受賞作。コンビニを舞台にした日常の謎連作である本作は第一話からツッコミどころが半端ない。というのも登場人物全員が普通に考えたら絶対にとらない行動をとる上に悉く推理が机上の空論で説得力がないのだ(特に第一話はツッコミどころが多すぎて、もはや意味不明なレベル)。
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そのため主人公とヒロインによる決まり文句的なやり取り(「せんぱい、このコンビニにまた新しいお客さん(ミステリー)がお越しになりましたねっ!」「ミステリーはお客さんじゃない」)がものすごい勢いで滑っているのが、かなり痛々しい。
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もっともそのツッコミどころは後半に伏線として一応回収されるものの、それでもトリックのためのトリックというか全体的に作者の都合で物語(及び登場人物)が動きすぎな印象が否めない。例えるなら悪い意味で「こんなコンビニはイヤだ」と全力で言いたくなる作品である。
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2018年04月07日(土)
エイドリアン・マッキンティ「コールド・コールド・グラウンド」読了。混迷を極める80年代の北アイルランドで起きた奇怪な事件。被害者の体内からはオペラの楽譜が発見され現場には切断された別人の右手が残されていた。やがて事件を追う刑事ショーンの許に「迷宮」と記された犯人からの手紙が……。
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〈刑事ショーン・ダフィ〉シリーズの一作目。猟奇殺人を扱った警察小説ながら時折妙に詩的な雰囲気が漂う本作は、事件の捜査と共に度々激化していく当時の紛争の模様が描かれるが、それは本作にとって必要不可欠なものであり、本作を異色の警察小説たらしめている。
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では具体的にはどこが異色なのかといえば本作は本来謎を解くことで秩序を齎す筈のミステリでいながら事件の構図はもとより、物語全体を当時の社会情勢を反映したような混迷で塗り固めており、故に真相が明かされても霧の中にいるような読後感が付き纏う。好みは分かれるが一読の価値はある作品である。
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2018年04月10日(火)
久米康之「猫の尻尾も借りてきて」読了。1995年7月20日――東林工学の中央研究所に勤める史郎が想いを寄せていた同僚の祥子が何者かに殺された。祥子の面影が忘れられない史郎は研究室長の林と飲んでいる時に「タイムマシンが欲しい」と思わず呟く。それは叶わぬ願い事のはずだった。だが……。
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posted at 22:09:02
殺人事件を巡るタイムパラドックスを扱ったジュブナイルSF。殺人事件の真相そのものは構図の面白さこそあるものの、作者にあまり隠す意図がないのか手掛かりの出し方がかなりストレートで謎解きの醍醐味はほとんど感じられない。
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posted at 22:09:35
むしろ本作の見所は真相が明らかになったあと、複雑に入り組んだ事態をどう収束させるかという点であり、ページ数の関係でかなり慌ただしいながらもハッピーエンドに向かって次々と物語の伏線が回収されていく手際はなかなか目を見張るものがある。
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posted at 22:09:47
後半の展開が駆け足過ぎるところと一部の冷たすぎる主人公の行動など気になる点もなくはないが、それさえ目を瞑ればコンパクトに纏まった時間SFの良作として楽しめる作品である。
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2018年04月14日(土)
伽古屋圭市「幻影館へようこそ 推理バトル・ロワイアル」読了。幼なじみ・喬子の誘いを受け新作の体験型ゲームに参加することにした高校生の加奈。集まった九人はARが用いられた館で謎解きやバトルに挑んでいく。加奈は喬子と連絡をとりながらゲームを進めるが、次第にある違和感を覚え始める……。
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posted at 17:34:28
女子高生のヒロインが幼なじみの助けを借りながらARを使った様々なゲームを勝ち進んでいく本作は「推理バトル・ロワイアル」というタイトルとは裏腹に殺伐とした雰囲気は一切なく、どちらかというとユーモラスに物語が進行していく。
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posted at 17:34:47
言うなればそれが本作の持ち味であるわけだが、この緩みきった展開は正直かなり好みが分かれるところだろう。またゲームの内容に関してもバリエーション豊かにしたのが災いして全部が全部面白いとは限らないのが難。
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posted at 17:34:56
とはいえ前者に限って言えばゲームに隠された意図とのギャップのためというのは理解できるし、それを踏まえた結末もなかなか意外性があって面白い。些かバランスの悪さが気になるものの、最後まで読めば異色のゲームミステリとして楽しめる作品である。
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2018年04月17日(火)
長井彬「白馬岳の失踪」読了。白馬岳に向かった婚約者が下山予定日を過ぎても戻らなかった。遭難届けを出そうとした矢先、白馬山荘で同室だったという男から婚約者の山日記が送られてくる。しかし、そこには今回の登山のことは何も書かれていなかった……表題作含む六編を収録。
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posted at 23:20:38
山岳ミステリを得意とする作者による、全編山岳ミステリの短編集。もっとも一編目の表題作はあまりにも捻りがない内容で正直肩透かしを覚えるかもしれないが、作者の本領発揮と言えるのは二編目以降からであり、表題作を除けばなかなか読み応えのある作品が揃っている。
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posted at 23:20:55
ベストを挙げるなら、ある遭難事件に隠された真相に迫る「ある遭難美談」で、遭難者と捜索者の視点を交互が描くことで生み出される緊迫感からのギャップと犯人の思い切ったトリックが実に面白い。
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posted at 23:21:18
次点は「遠見二人山行」で仕掛け自体は単純なものながら作者がトリック味の一番濃いものと言うだけあって伏線や騙りが収録作中最も凝っている(特に探偵役の使い方が○)。個人的には全編山での遭難を扱いつつも同じパターンが一切ない点が好印象でバリエーションに富んだ謀殺が楽しめる作品集である。
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2018年04月18日(水)
七月鏡一/杉山鉄兵「探偵ゼノと7つの殺人密室 」1巻読了。トリックはいずれもこれしかないという単純なものながら、怪人対名探偵をベースにしたハッタリのきいた展開と島荘的豪快な演出が楽しい。掴みとしては悪くないので今後はもっとこちらの予想を裏切ってくれるようなトリックに期待したい。
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posted at 09:09:42
長井彬「殺人連結のささやき」読了。私立探偵の狩野泰彦が浮気調査の依頼を受けた小山多津子が熊本の竜田山で死体となって発見された。容疑者として離婚調停中の夫・伸一が浮かぶが、彼には鉄壁のアリバイがあった。それから数日後、伸一が自分が何者なのか尋ねて回るという奇行をとり始めて……。
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posted at 22:50:13
人妻の変死体が発見され、険悪の仲だった夫が疑われるが、彼には鉄壁のアリバイがあった――そんなアリバイ物にはよくある展開で始まる本作だが、それも序盤を過ぎたあたりから一変する。
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posted at 22:50:54
自分が何者なのか尋ねて回る夫の奇行、謎の放火未遂、川に流される大量の一万円札、繋がりが全く分からない怪死事件……読み進めれば進めるほど訳が分からなくなっていく物語はホワットダニット物としての面白さを秘めており、作者に言いように翻弄される感覚が何とも心地いい。
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posted at 22:51:13
そして終盤、明確なロジックによって崩されるアリバイもさることながら、それ以上にちょっと見方を変えることでここまで錯綜したプロットを作り上げてみせた作者に大いに唸らされた。本作はプロットの捻り方に見るべきところがある佳作である。
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2018年04月20日(金)
鳥飼否宇「隠蔽人類」読了。形質人類学者の日谷隆一率いる調査団がアマゾン奥地の未接触民族キズキ族の村で世紀の大発見をした。DNA分析から彼らがホモ・サピエンスではない別種の人類、隠蔽種の可能性が見つかったのだ。だがその興奮も束の間、調査団の一人が首を切断された死体で発見されて――。
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posted at 23:37:14
タイトルにある通り隠蔽人類をテーマにした全五話構成の連作ミステリ。特殊設定ミステリを得意とする作者だけあって、三話目までは目新しい仕掛けこそないものの巧く辻褄を合わせたそつのない作りで読ませてくれる。
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posted at 23:37:38
問題は四話目以降でそこから本格ミステリではなくトンデモ科学へと舵を切ってしまうので、人によってはコレジャナイ感を覚えるかもしれない。良くも悪くもB級感溢れる作品である。
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posted at 23:37:51