麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2018年11月18日(日)
山崎洋子「ホテル・ルージュ」読了。パリ―サンジェルマンの裏通りにひっそりと佇むホテル・ルージュ。「毎年五月のこの日、ここで待っている」と言った彼がもしかしたら……。愛のさめた八歳年下の裕二とパリに来た衿子。彼女の胸に切ない想いがこみ上げて――。表題作含む八編収録。
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posted at 16:55:45
本作の内容紹介には瀟洒な都会のホテルを舞台に男と女の愛の結末を描くホラー・ミステリー集とあるけれど、厳密にホラーと言えるのは最初の三編くらいで残りの五編はミステリ、もしくはサスペンスの範疇に入るだろう。
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posted at 16:56:15
そんな中からホラーとして一編選ぶなら、かつて一人の女を無残に殺害し、画家の男を自殺に追いやった女が男と馴染みのあるホテルを訪れる「青い髪の人魚」で、定番ながら男女の関係を逆手にとった捻りをそつなく用いているのがいい。
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posted at 16:56:24
一方ミステリとして選ぶなら「孤独な妖精」で、自分のことを妖精だと主張する少女との童話的とも言える不思議な触れ合いから一転、ミステリに様変わりする意外な展開と読者の想像に委ねた結末が○。またかつて主人公を虐待していた継母の意外な素顔が明らかになる「匂い袋」も滋味深い好編である。
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2018年11月21日(水)
天祢涼「境内ではお静かに 縁結び神社の事件帖」読了。源神社で働くことになった信心ゼロの壮馬の指導役は思わず見惚れてしまう美少女だった。境内での心霊騒動に脅迫者探し、神社の移転を拒む宮司の説得等々、次々と巻き起こるトラブルに壮馬が体当たりし、指導役の美少女――久遠雫が謎を解き明かす。
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posted at 20:14:56
神社で巻き起こる問題の数々を参拝者の前以外では笑わない美少女巫女が解決する連作ミステリ。若干推理の弱さを感じる部分もなくはないが、そこは伏線でフォローしつつ、あくまで日常の範囲内で意外性を出そうとしている点はさすがといったところだろう。
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だがその反面、ヒロインに纏わるあるエピソードを最後まで伏せていたために第五話における連作としての仕掛けが巧く機能していないのが難で、悪い意味で急転直下という印象を受けてしまった。そこさえ目を瞑れば、キャラミスとして一定の水準は満たしている作品と言っていいだろう。
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2018年11月23日(金)
るーすぼーい/古屋庵「無能なナナ」1~4巻読了。人類の敵に対抗すべく集められた若き能力者たちが訓練に明け暮れる絶海の孤島の学園を舞台にした倒叙ミステリ。原作者のるーずぼーいは過去に「白蝶記」の1巻でも倒叙形式を採用しているが、本作ではそれを特殊設定ミステリで試みているのが面白い。
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posted at 22:24:57
殺人者の視点から描くことで「どうやって被害者となる能力者を殺害するか?」と「どうやって自分を探る探偵役を出し抜くか?」を巧く両立させており、前者では2巻の未来予知の能力者を巡る話が、後者では3巻のゾンビ設定を活かしたあるトリックが素晴らしい。
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posted at 22:25:37
そして現時点の最新刊である4巻ではいよいよ主人公の内面及び、この世界の謎に迫る話へとシフトしており、今後の展開が非常に気になるところだ。見方によっては現代本格らしい要素が凝縮された、実に興味深い作品である。
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2018年11月27日(火)
柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」読了。探偵の迅人は美少女のストーカー・朝比奈うさぎに悩まされている。彼女は「迅人は私が好き」ということを証明する時にだけ驚異的な推理力を発揮、迅人と共に遭遇した四つの殺人事件の謎を彼女は妄想錬愛術で解き明かしてしまう――。
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posted at 23:15:32
メフィスト賞受賞作「NO推理、NO探偵?」の作者による美少女ストーカーが探偵役を務めるラブコメ本格ミステリの連作。前作「NO推理、NO探偵?」を読んだ人間であれば作者にラブコメなんて書けっこないのは分かりきった話なのでその滑りっぷりは割愛するとして、問題はミステリとしての出来だ。
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posted at 23:16:02
前作はわざとミステリらしい展開をしなかった故のつまらなさと捉えることもできたが、本作は真っ当なミステリをやっているはずなのに事件が本当に盛り上がらなくて違う意味でびっくりする。しかも伏線はあからさまで作者がどういう風に推理を持っていきたいのかだいたい読めてしまうのが難。
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posted at 23:16:15
その推理にしても些か強引な感が否めず、読んでいて凄くモヤモヤすることがしばしばであり、更に連作としてのまとめ方に至ってはあまりのこじつけっぷりに呆れてしまった。正直もう少し何とかならなかったのかと苦言を呈したくなる作品である。
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posted at 23:16:50
2018年11月28日(水)
山田彩人「皆殺しの家」読了。夏の海に浮かぶ氷付けの死体、真っ白な雪原に浮かぶ妖精の足跡、開けた採石場跡地で発見された奇妙な転落死体……警視庁の刑事である亜季が話す不可思議な事件の数々を亡き兄の親友であり家族三人を殺害した容疑で指名手配中の久能が亜季の双子の妹・羽瑠と共に推理する。
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posted at 22:46:12
亡き兄の意志を継いで匿っている殺人犯かもしれない男が探偵役を務める連作ミステリ。帯には「不可能犯罪連発の奇想ミステリー劇場開幕」とあるが、本作は基本的にトリックよりもロジック、ハウダニットよりもホワイダニットに拘った作品であり、その真相は地に足が着いた現実的なものが多い。
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posted at 22:46:41
故に奇想や大トリックを期待すると肩透かしを覚えるかもしれないが逆を言うと不可能犯罪を扱っていない第五話や第六話こそが作者の本領と言える。それを考えると本作の大半を占める不可能犯罪という題材そのものが作者には合っていないような気がしてならず、ある意味損をしている作品と言えるだろう。
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posted at 22:47:06
2018年11月30日(金)
伊吹亜門「刀と傘」読了。維新志士の怪死、密室状況で発見される刺殺体、処刑直前に監獄舎で毒殺された囚人、奇妙な暗殺事件、そして再び監獄舎で起こる殺人――幕末から明治初頭の動乱期の陰で生まれた不可解な五つの謎を通して、若き尾張藩士・鹿野師光と後に初代司法卿となる江藤新平の物語を描く。
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posted at 07:58:15
第十二回ミステリーズ!新人賞受賞作「監獄舎の殺人」含む時代ミステリの連作。法月綸太郎「死刑囚パズル」などでお馴染みの謎に明治という時代だからこそ成立する動機と政治劇を絡めた「監獄舎の殺人」も良いが、ベストを選ぶならやはり最初の一編「佐賀から来た男」になるだろう。
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posted at 07:58:35
オーソドックスな犯人当てと思わせてからの意外な構図とそこから見えてくる被害者や犯人の心情が秀逸で、この時代の小道具の使い方もいい。しかしながらその二編以外の短編になると事件そのものよりも史実や連作としての物語に関わる企みに比重が置かれた内容になっていて、やや物足りなさがある。
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posted at 07:58:52
また受賞作から四年かけて完成させたせいか短編によって人物描写にばらつきがあり、例えば最初の二編を読んだ後に三編目の一番古い受賞作を読むと違和感があるのが気になる。とはいえ時代ミステリとしては高いレベルを維持している作品である。
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posted at 07:59:38