麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2020年01月02日(木)
辻真先「平和な殺人者」読了。昭和二十五年の名古屋。黒ずんだ時計塔・星辰楼と流線型をイメージした講堂・天穹堂を擁する名門私学・銀星学園の周辺で起こった怪奇現象と連続殺人。容疑者として逮捕された母を救おうと雛子とその同級生・那智聡が事件の真相を追うが、彼らの前には新たな死体が……。
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posted at 18:36:27
戦後復興期の名古屋を舞台にした本格ミステリ。冒頭から消える建物と顔のない軍人、度重なる怪奇現象と古きよき探偵小説らしい雰囲気が濃厚だが、それに加えて母親が父殺しの容疑者として逮捕され奮闘する雛子とその雛子を助けつつ想いを寄せる聡の恋の行方が青春小説として物語に彩りを添えている。
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posted at 18:37:12
ミステリとしてみると盛り込まれたトリックそのものは新鮮味がほとんどないが、どちらかと言えばトリックが解かれた先に見えてくる動機部分に重点が置かれており、その点では第一の殺人における盲点をついたある事実が秀逸。
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posted at 18:37:46
そしてそれ以上に徹底した動機への拘りが絶妙な真相の隠蔽に繋がっている点が素晴らしく、終盤の力の入った謎解きも含めたそのサプライズの演出にはやられたと言わざるを得ない。またこの作者にしては珍しく(?)戦争の陰惨さを描きつつも後味が決して悪くないのも好印象な青春ミステリの佳作である。
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2020年01月04日(土)
「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」観了。三部作完結。それなりに楽しめたものの、便利キャラとしてどこにでも現れる名ばかりの最高指導者と足を引っ張るだけの暴走主人公、その他矛盾とご都合展開の連続が気になってしまい残念ながら終わり良ければ全て良しという気分にはならなかった。
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2020年01月05日(日)
似鳥鶏「七丁目まで空が象色」読了。山西市動物園へ「研修」に来た楓ケ丘動物園のメンバーたち。その時、園内でなんと飼育している象が脱走してしまった。どうして脱走したのか? そして遂に脱走した象に射殺命令が。タイムリミットが迫る中、楓ヶ丘動物メンバーは事件解決に奮闘する。
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楓ヶ丘動物園シリーズの五作目にあたる長編作品。今回は像の脱走事件をメインに扱っており、主人公の桃本と山西市動物園の職員である彼の従弟・誠一郎の二つの視点を用意することで事件の捜査と脱走した像の様子を現在進行形で描き、その相互作用によって物語に常に緊迫感を与えているのがいい。
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posted at 13:47:13
それでいて物語が進むにつれ新たな謎が増えていく展開も○。尤も一部の真相に関しては完全に見抜くのは難しいものの、それでも丁寧に伏線を張り、きちんと意外な犯人や動機を演出している点は好印象で、軽い読み口ながら像という動物ならではの練りに練られた事件の構図を見せてくれる良作である。
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2020年01月08日(水)
三田千恵「太陽のシズク~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~」読了。死に至る「宝石病」を患う理奈は海の見える高校に転校してきた。残された時間で「素晴らしい青春」を送らなければと頑張る彼女は運命の恋人と無二の親友と出会う。全ての秘密が明かされる時、物語は究極のハッピーエンドへ――。
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恋愛小説とミステリのハイブリッド作品。恋人同士である理奈と翔太の二つの視点によって進行する本作について、まず冒頭で理奈がハッピーエンドの物語であると、翔太はバッドエンドの物語であると異なった宣言をするのが面白い。
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posted at 23:04:52
つまり本作をミステリとしてみた場合、読者はなぜ恋人同士である二人の見解がそれぞれ食い違っているのかという謎に挑むというわけだ。そして、その謎が解き明かされた時、なぜ本作がこのような構成になっているのか腑に落ちることだろう。
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もっとも本作の仕掛けだけ取り出せばそこまで目新しいとはいえないかもしれない。しかしながら要所要所で巧くミスディレクションが盛り込まれているし何より重要なのはこの仕掛けを使ったことにちゃんと意味がある点だろう。本作はミステリ的仕掛けによって物語を際立たせることに成功した良作である。
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2020年01月11日(土)
辻真先「風雪殺人警報」読了。雪の夜、中央アルプス山間のホテルで麓の町とを繁ぐゴンドラ乗り場から従業員が次々に墜死した。更に乗り場も時を同じく崩壊。当夜の宿泊客は恩地一家四人のみ。墜死を目撃した娘の遙香は疑心暗鬼にかられつつ、妹の真澄と推理を繰り広げる。
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作者の作品では珍しい雪の山荘物。しかしながらこの作者だけにただの雪の山荘物で終わるはずがない。本作について作者は「ひたすら騙そうというアイディアだけで読者に奉仕するミステリー」であるとあとがきで語っているが、確かに中盤からの展開は読者を翻弄してやろうという意気込みを感じさせる。
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posted at 00:23:13
だがその一方で騙そうというアイディアだけが先行しすぎて悪い意味でリレー小説を読まされているような錯覚に陥ってしまい、最後に明かされるある仕掛けに関してもお世辞にも成功しているとは言い難い。とはいえ作者らしい企みに満ちた意欲作であるのは間違いないだろう。
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posted at 00:23:23
2020年01月13日(月)
エラリー・クイーン「チャイナ・オレンジの秘密」読了。死体の着衣や絨緞は裏返し、本棚は壁を向いている……男が殺されていたホテルの密室状態となった一室では動かせるものが全てあべこべになっていた。エラリーは調査を始めるが被害者の身元は不明のまま。わざわざ面倒な細工をした犯人の意図とは?
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posted at 20:31:59
国名シリーズの一作。本作のメインである現場にあるもの全てがあべこべになっている謎に関しては日本人には馴染みのないネタのため自力で解くのは些か厳しいと言わざるを得ないが、最初からそういうものと割り切って読めばなかなか面白い着想と言えるだろう。
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posted at 20:32:17
一方フーダニットとしてはあべこべの謎が解けなくても一応成立はしているが、その謎が巧い目眩ましとなって、おいそれと犯人に辿り着けないようになっているのは○(ちなみに本作の電子書籍版の内容紹介が致命的なネタバレをしているので要注意)。
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posted at 20:32:32
2020年01月18日(土)
「劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明」観了。宿敵黎明卿との対決を描いたTVシリーズの続編。R15+に相応しい劇場クオリティーのグロさと、やっぱり作者は鬼畜だなあ……としみじみと思わせるエグさを存分に堪能した(あと迫力のバトルとコンゲーム)。個人的には満足度高し。
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手代木正太郎「むしめづる姫宮さん2」読了。虫の魂が漂う浦上町では死んだ虫の魂が人に取り憑くことがあるという。ある日クラスから孤立したギャル。やる気が持続しない女子サッカー部員。そして夜に一人星と会話する少女――虫を引き寄せる少年少女たちの悩みが、彼らをちょっぴり大人にしていく。
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posted at 19:28:13
卑屈な少年・有吉羽汰と昆虫マニアの少女・姫宮凪が少年少女に取り憑いた妖怪ならぬ虫の魂を落とす連作シリーズの二作目。本作もまた前作同様「なぜ取り憑かれることになったのか?」を物語の主軸にしており、その見せ方はある種の日常の謎物としても楽しむことができるだろう。
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posted at 19:28:31
また本作でも虫の蘊蓄が巧く少年少女たちの悩みを引き立たせており「虫と青春」がテーマという作者の言葉に偽りなしである。その一方で連作という構成を活かしつつ虫の魂が憑く条件の盲点を絶妙についた最終話での意外性も○。ラストの一文に凝縮された主人公の心の変化が沁みる青春小説の良作である。
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2020年01月19日(日)
エラリー・クイーン「スペイン岬の秘密」読了。北大西洋に突き出したスペイン岬にあるゴドフリー家の別荘で殺人事件が起きた。殺された男はマントにステッキという出で立ちで発見されたが、マントの下はなぜか全裸だった。そして同時に起きていたゴドフリー家の娘・ローザの誘拐事件との関係とは?
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posted at 22:12:39
国内シリーズの一作。クイーン作品というと基本的にシンプルなロジックと徹底したミスディレクションで構成されているものが多いが、本作に関してはそのミスディレクションとロジックのバランスが悪く、ミステリとしてはだいぶ遠回りさせられている印象を受けてしまうのが難。
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posted at 22:13:51
またクイーン作品を読み慣れているとかなり早い段階で犯人が読めてしまうかもしれない。しかしながらこのロジックを成立させるための設定作りは相変わらず巧妙だし、ミスディレクションを盛り込んだ人間ドラマ部分が後にメインとなって中期以降の作品へと引き継がれていくのが分かるのが興味深い。
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posted at 22:14:20
有栖川有栖/市川友章「おろしてください」読了。裏山を探検していた「ぼく」は、道に迷って歩きまわるうちに、小さな駅を見つけた。そこへやってきた列車に乗り込んだ「ぼく」の目に飛びこんで来たものは……。
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posted at 22:41:03
東雅夫編「怪談えほん」シリーズの一作。ホラーを意識したおどろおどろしいイラストがまずインパクト抜群で人ならざるものと出会ってしまった主人公のその時その時の心境を実に巧く表現している。そして何よりタイトルの意味が分かる結末とラストのカットが絶妙で、正に怪談えほんの見本的作品である。
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posted at 22:41:23
2020年01月24日(金)
久住四季「怪盗の後継者」読了。平凡な大学生の因幡はある日、謎多き美貌の青年・嵐崎から生き別れの父が大怪盗であり、自分はその後継者だと告げられる。嵐崎の今度の標的は政界の大物。そして因幡の父をはめた男。因幡は嵐崎と共に不可能に近い盗みを仕掛けることになる――。
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作者初の怪盗ミステリ。といっても本作はルパンみたいな怪盗が単独で活躍する外連味のあるタイプではなく、「オーシャンズ11」のようなリアル寄りのチームで盗みを働くタイプであり、タイトルから前者のような内容を期待すると少々がっかりするかもしれない。
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posted at 18:27:41
とはいえ物語としてはベタながらツボを押さえた展開で、仕掛けられたトリックにしても既存のネタを巧く組み合わせており、特に演出の一環と思われたあるシーンが実は巧みなミスディレクションとして機能した後、絶妙な伏線となって回収される点が素晴らしい。本作は作者の新境地というべき良作である。
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posted at 18:27:54