麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2021年01月06日(水)
古宮九時「死を視る僕と、明日死ぬ君の事件録」読了。僕には人の死を予告する幻影を見る力がある。かつて幻影が見えた人間を助けようとしたこともあったが今はそれを後悔していた。ある日、幻影が見えた女子大生・瀬崎鈴子に思わず声を掛けてしまったことから彼女と共に再び人助けをする羽目に――。
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posted at 20:18:25
タイトルにある通り、人の死を視る能力がある主人公が何らかの理由で近い未来に死ぬことが分かっているヒロインと共に死の運命にある人々を助けようとする特殊設定ミステリ。しかしながらその特殊設定がミステリとしての仕掛けに一切関わっていないのは正直かなり頂けない。
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posted at 20:18:42
そのミステリとしての仕掛けに関しても主人公にやたらとイライラさせられることが伏線であると好意的に受け取ったとしてもさすがにミスディレクションのためとはいえ明らかにアンフェアな記述があるのまでは看過できない。
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posted at 20:19:03
加えて一番の見せ場である最後の事件に何一つ意外性がないのも期待ハズレと言わざるを得ず、折角この手の仕掛けを使うなら、もう少し使い方というものを考えてほしかった。
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posted at 20:19:32
2021年01月08日(金)
宇佐美まこと「羊は安らかに草を食み」読了。アイと富士子は認知症を患い、日ごと記憶が失われていく友人・益恵を “最後の旅" に連れ出すことにした。それは益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。大津、松山、五島列島……八十六年の人生を遡る最後の旅が図らずも浮かび上がらせる壮絶な真実とは?
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posted at 15:36:28
認知症の老女に隠された秘密に迫る長編ミステリ。本作は認知症の老女・益恵の人生を遡る最後の旅を描く現代パートと彼女が満州から引き揚げた時のエピソードが語られる過去パートが平行して進む構成となっているが、その過去パートを読むことで益恵が残した俳句の意味が初めて分かる趣向がまず面白い。
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posted at 15:36:47
尤もミステリとして本作をみると、益恵に隠された秘密自体はミステリをある程度読んでいる読者であれば容易に見当がつくかもしれない。だがそこからの急展開はそれまでの物語の丁寧な積み重ねがあるからこそグッと読ませてくれるし、ある意味作者の出世作である「愚者の毒」を思わせるものがある。
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posted at 15:37:10
しかしながら帯に書いてあるような「愚者の毒」を超える作品とは言い難いし、オチにしてもややご都合主義な感が否めないものの、人間である限りいつかは避けられない老いというテーマを戦争の悲惨さと絡めて真摯に描いた良作ではあると思う。
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posted at 15:37:45
2021年01月11日(月)
「死霊の罠」観了。アルジェント風ジャーロみたいな雰囲気で始まったかと思いきやオカルト展開を経て謎のモンスター(?)物へと辿り着く怪作。話は二の次でとりあえずやりたかったことを全てやりきったような熱量が素晴らしい。あとテーマ曲が結構好みだけど、さすがにサントラは出てないだろうなあ。
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posted at 22:39:16
2021年01月12日(火)
「死霊の罠2 ヒデキ」観了。2と銘打たれているものの前作との繋がりは殆どないばかりか同じホラーでもこちらは妙に幻想寄りでそのせいもあってか後半のわけわからなさも前作よりアップ。個人的にはいい意味で勢いのあった前作の方が好みだが佐野史郎の怪演や血みどろキャットファイトなど見所あり。
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2021年01月15日(金)
渡辺静「魔女に捧げるトリック」2巻読了。主人公がマジックを駆使して魔女狩りの被害者達を助けていく本作は1巻の時点で倒叙ミステリのような趣があったが2巻ではよりそれが加速。更に敵の教会側も高度なマジックを使うようになりそのトリック当ての趣向も加わって一層ミステリ度が上がったのも○。
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posted at 09:20:23
折原一「倒錯のロンド 完成版」読了。作家志望の山本安雄が推理小説新人賞に応募しようとした自信作「幻の女」が何者かに盗まれた。やがて山本は「幻の女」が別の人間の作品として受賞していることを知る。いくら盗作を主張しても誰も信じてくれないことから山本は執念で盗作者を追いつめていく。
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posted at 21:39:51
第34回江戸川乱歩賞最終候補作である作者の代表作の完全版もとい完成版。オリジナル版からエピローグが変更され、本来作者が意図していた形に限りなく近いものとなった。実際、変更された新しいエピローグは虚実入り交じったこの物語に相応しいように思う。
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posted at 21:40:27
今となっては仕掛けは分かりやすいかもしれないが、構成の妙に関しては今読んでも全く色褪せてはおらず、今回の再読でも初読の時と変わらず楽しむことができた。また作中の某選評を読んで、やはりこの作家は某作に対する選評の時といい見る目があるなあと感じた次第である。
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posted at 21:40:47
2021年01月16日(土)
森村誠一他「棟居刑事と七つの事件簿」読了。内田康夫、赤川次郎に続く大御所推理作家と俊英作家の競作短編集企画第三弾。今回は第一回論創ミステリ選賞入選作七編に森村誠一の短編「殺意の演出」 と小説家志望者への特別指南エッセイ「作家の条件」を収録。
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posted at 18:27:10
なお第一回論創ミステリ選賞入選作といっても、その半数以上がプロ作家の作品であり(青木知己、安萬純一、獅子宮敏彦の名前は勿論知っていたが、羽衣乙次郎=三咲光郎だったのにはちょっとビックリした)、何とも世知辛いものを感じてしまった。
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posted at 18:29:17
また森村誠一の短編と一緒に収録されると事前に告知されていたためか入選作はいずれも森村誠一の作風に合わせたものが多い印象を受けた。収録作中ベストを挙げるなら青木知己「運転代行」で、タイトル通り運転代行という設定を活かした仕掛けと立場が逆転した構成の妙が実に素晴らしい。
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posted at 18:29:46
加えてある何気ないエピソードが後に伏線として効いてくる点も秀逸でミステリとして切れ味鋭い傑作と言っていいだろう。次点は安萬純一「相方無用」で殺し屋に復帰した男の話ながら作者の近年の忍者物に近い緊張感溢れる展開をテンポ良く読ませつつさりげなくミステリ的意外性を忍ばせているのがいい。
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posted at 18:31:44
その他、井上順一(米寿の作品!)「遠い日、幻の街で」、羽衣乙次郎「売国奴スタア」はそれぞれ違った持ち味の戦争小説として読ませてくれるし有咲結「守りたい」の皮肉なオチとタイトルの意味も○。惜しむらくはトリを飾る森村短編が一番微妙な点だがそれを差し引いても読み応えのある短編集である。
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posted at 18:32:08
2021年01月20日(水)
千澤のり子「少女ティック 下弦の月は謎を照らす」読了。目的不明の誘拐、女性ばかりの奇妙な町、運動会に現れる死神、そして不審な凍死体……春夏秋冬、季節が巡るごとに巻き起こる事件を通じて、少女は一歩ずつ成長していく――。
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posted at 21:01:44
少女が一年を通して出会った四つの事件を描いた連作ミステリ。帯の新井素子の推薦文にある通りイヤな事件のはずなのに童話のようにスラスラ読めてしまうという特徴があるものの、これまでの作者の作風からするといまいち素直すぎるし、タイトルの意味がさっぱり分からないのも気になる。
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posted at 21:02:11
……と、そんなことを思いながら読んでいたらエピローグで本来やりたかったことの設計図みたいなものを見せられて何とも言えない気持ちになってしまった。作者がどういう意図でこのエピローグを書いたのかは不明だがこういう中途半端な形にするくらいならもっとちゃんとしたものを読ませてほしかった。
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posted at 21:02:37
2021年01月21日(木)
矢庭優日「エゴに捧げるトリック」読了。催眠術士の養成校に通う僕こと吾妻福太郎は怪物EGOとの戦いに向け、仲間たちと共に卒業試験に臨んだ。だがその最中、仲間の一人が何者かに殺されてしまう。しかも皆はなぜか「福太郎が犯人」と証言、僕は自分の無実を証明するために捜査を続けるが……。
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posted at 21:27:24
第10回アガサ・クリスティー賞最終候補作。ミステリと催眠術の組み合わせは下手な書き手が扱うと何でもありになりかねないものだが、本作に関してはその条件を徹底しており、きちんと催眠術が使われた可能性を考慮した推理を作中で展開させているのがまず好印象。
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posted at 21:27:54
ただ一方で特殊設定ミステリがよく陥る設定の段階で仕掛けの一部に気付きやすい欠点もあるが本作が巧いのはそこから更にもう一歩踏み込んで犯人当てのロジックに組み込んでみせた点だろう。しかもそれだけでなく仕掛けの必然性として用意されていたのがまさかのあの趣向だったのには素直に驚かされた。
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posted at 21:28:16
言うなれば本作が早川書房から出版されたことが最大のトリックであり、できることなら余計な情報を仕入れずに読むことをお勧めしたい、SF本格ミステリの秀作である。
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posted at 21:28:36
2021年01月22日(金)
安萬純一「星空にパレット」読了。二度に渡って現れた黒マスク姿の男を巡る殺人事件、夏の避暑地での不可解な連続殺人、ミステリ小説として書かれた殺人事件が実際の事件と重なっていることに気付いた作家の推理、大学病院での転落死の真相。鮎川哲也賞作家が贈る純度百パーセントのミステリ四編収録。
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posted at 11:59:19
連作ではない短編ミステリ四編を収録した作品集。純度百パーセントを謳うだけあって収録作はいずれもガチガチの本格なのが嬉しい反面、意外性を追求するあまり一編目を除き、仕掛けが不自然に浮いていたり必然性に乏しかったりするのが気になる。
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posted at 12:00:14
作者曰く犯人当てとトリックが密接に絡まり合っている点に拘ったとのことだが、個人的にはもう少し他の部分にも気を遣ってほしかった。あくまで意外性があればいい、トリックのためのトリックでも構わないと割り切れる人であれば楽しめる作品集である。
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posted at 12:00:38
古宮九時「彼女は僕の「顔」を知らない。」読了。死者複数名を出した凄惨なキャンプ場放火事件から十年。僕の前に同じ事件の生存者・静葉が転校生として現れる。彼女は人の顔が認知できない病だった。そして十年の時を経て再び事件は動き出す。差出人不明の脅迫状、黒服の男、不審火の記録――。
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posted at 15:27:40
「死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録」以来の現代青春ミステリ。しかしながら物語としてもミステリとしても前作より更に出来は粗い。サプライズが完全にアンフェアな点は前作と同じながら何よりも今回はわざわざ導入した相貌失認設定があまりにも都合よく使われている点が興醒めの一言に尽きる。
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posted at 15:27:53
またメインの事件の雑な扱いも前作に輪をかけて酷いし、ただでさえ少ない登場人物で無理に意外性を出そうとしたせいか後付けに次ぐ後付けがミステリとしても物語としても更に破綻させてしまっている。雰囲気だけミステリっぽいものを狙った結果、明後日の所に着地してしまった感が否めない作品である。
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三津田信三「死相学探偵最後の事件」読了。黒術師の居所を探し候補地である孤島に渡った黒捜課のメンバーと俊一郎と祖父母たち。そこで待ち受けていたのは、どこか奇妙な言動のスタッフたちと次々と発生する不可解な連続殺人事件だった。死相学探偵の最後にして、究極の闘いが今幕を開ける――。
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posted at 20:27:30
死相学探偵シリーズの最終作。三津田ファンに向けたサービスシーン(読めば分かる)から始まる本作は粗筋を見る限りだとクローズド・サークル物のミステリのように思えるが、その気になって読んでいるといきなり死相学探偵シリーズのカルトクイズ(?)的なノリになるのでかなり困惑することになる。
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posted at 20:27:55
更にそこからRPGのラストバトルみたいな展開になる点に関してはお約束と取るか安直と取るかで評価が分かれるところかもしれないが最後に明らかになる黒術師の正体を考えるとある意味その展開は正しいのかもしれない。少なくともシリーズ全作の内容を覚えているうちに読んだ方が楽しめる作品である。
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posted at 20:28:53