麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2021年04月20日(火)
横溝正史「魔女の暦」読了。浅草のレビュー小屋・紅薔薇座で出演していた三人の魔女役が次々と惨殺された。不敵な予告をする犯人レビュー小屋の狙いは何か? 表題作の他、トランクの中から発見された全裸美女と塩酸で顔を溶かされた死体という猟奇的な謎が目を牽く中編「火の十字架」を収録。
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posted at 19:41:51
レビュー小屋で起きた二つの事件に名探偵・金田一耕助が挑む作品集。表題作は謎に包まれた犯人「魔女の暦」によって繰り広げられる吹き矢、鎖、メジューサの首などの道具立てを駆使した連続殺人劇で読ませるものの、かなりきわどいアリバイ工作と一部のシチュエーションの意味のなさがやや気になる。
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posted at 19:42:11
むしろシチュエーションにきちんと意味があるという点では併録の「火の十字架」の方が巧くやっており、ある証拠品に隠された何気ない気付きもさることながら、詰め込まれたトリックの数々が事件の中に自然に溶け込んでいるのも○。
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posted at 19:42:32
2021年04月22日(木)
横溝正史「幽霊座」読了。かつて人気随一の若手歌舞伎俳優が芝居中に失踪した芝居小屋でまたしても惨劇が起こる表題作の他、美しい人妻を残して密室から消失した夫と逆さ吊りにされた鴉の死体の謎を扱った「鴉」と生首のみを残し胴体を隠すという犯人の不可解な行動に迫る「トランプ台上の首」を収録。
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posted at 20:24:01
名探偵・金田一耕助がかつて解けなかった因縁の事件を扱った表題作含む三編を収録した中編集。表題作と「鴉」は人間消失の謎が出てくる点で共通しているものの、表題作はどちらかというと陰険な毒殺トリックとそれが象徴する凶悪な犯人像の方が印象に残るだろう。
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posted at 20:24:19
また何気にある人物に犯人の正体を気付かせないよう、あえてあのような設定にした点も巧い。一方「鴉」は人間消失のトリックこそ他愛ないものだが、むしろドロドロの事件の背景の方に見るべきものがある。
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posted at 20:24:39
そして収録作中ベストを挙げるなら「トランプ台上の首」で、タイトル通りの強烈なシチュエーションもさることながら、捜査が進むにつれ謎が解けていくどころか逆に増えていく展開と、終盤で金田一が犯人の名を告げた途端、謎と思われた出来事が一転して絶妙な伏線になる点が素晴らしい。
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posted at 20:25:00
また作中に登場するおかず屋の憎めないキャラも○で、彼の存在が陰惨な事件の救いになっている部分も少なからずあるだろう。総じて作者のストーリーテラーぶりと、奇怪な謎に相応しい真相が堪能できる作品集である。
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posted at 20:25:16
2021年04月23日(金)
天樹征丸/さとうふみや「金田一37歳の事件簿」9巻読了。「騒霊館殺人事件」完結。トリックこそ既存の組み合わせながら、犯人を追い詰める決め手にちょっとした工夫があるのは○。むしろ今回から始まった「綾瀬連続殺人事件」の方がこれまでのシリーズでは珍しいシリアルキラー物なので今後に期待。
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浅倉秋成「フラッガーの方程式」読了。高校生・涼一は日常をドラマに変える《フラッガーシステム》のモニターになる。意中の同級生・佐藤さんとのロマンスはどこへやら、ツンデレお嬢様の偽彼氏になったり悪の組織と対決したりと生活は激変。やがてシステムはある意味、感動的な結末へと暴走を始める。
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posted at 18:57:33
現実世界で深夜アニメのような物語が体験できる画期的な装置が巻き起こす騒動を描いたメタラブコメ小説。その装置のモニターとなった主人公が意中の同級生・佐藤さんとお近づきになりたいために次々と登場する美少女キャラとのフラグをへし折っていく展開はラブコメのお約束を知っていると実に痛快。
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posted at 18:57:58
しかしながらラブコメにハマりすぎたあまりラブコメに愛憎半ばの感情を抱く(文庫版あとがき参照)作者らしく、物語はやがてある不穏な展開を迎えることになる。そしてそれを回避すべく主人公が奮闘することになるのだが、そこからが伏線の狙撃手の異名を持つ作者の本領発揮である。
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posted at 18:58:16
ここぞという場面で次々と回収される伏線がとにかく圧巻で、特に終盤で分かるある人物が『ストーリー除外対象者』になった理由と最後の最後に回収される『心当たり』が秀逸の一言に尽きる。それでいて今後を予感させる結末も巧く、ラブコメを知り尽くした作者だからこそ書けた佳作と言っていいだろう。
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posted at 18:58:46
2021年04月30日(金)
エラリー・クイーン「ギリシャ棺の秘密」読了。急逝した盲目の絵画商ゲオルグ・ハルキスの遺言状が収められた鋼鉄の箱が消えた。事件に関わることになった大学卒業後まもないエラリーの推理に従いハルキスの棺が再び掘り返されるが、その棺の中にあったのはハルキスの死体と絞殺された男の死骸だった。
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posted at 13:42:30
名探偵エラリー・クイーン最初の事件を描いた国名シリーズの四作目。国名シリーズ最長の作品であるにも拘わらず構成に無駄がない点もさることながら特筆すべきは中期以降のクイーン作品を思わせる偽の手がかりを扱っている点であり、それを駆使する犯人とエラリーの攻防や幾度にも渡る多重解決が熱い。
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posted at 13:42:46
そしてそんな偽の手がかりを逆手にとったエラリーの罠とそれを踏まえたロジックが秀逸な反面、一方で「読者への挑戦」が挿入されるタイミングにはやや疑問。サプライズ的に仕方ないのかもしれないが現代の日本人には分からない知識が前提にあることを考えるともう少し後の方がフェアだったように思う。
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posted at 13:43:00
とはいえ、それを差し引いても第一の事件に関するエラリーの推理や第三の事件における矛盾点の演出など見るべきところも多く、エラリー・クイーン・ファンクラブの長編ランキングで1位に選ばれることはある傑作と言っていいだろう。
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posted at 13:43:18
天野明「鴨乃橋ロンの禁断推理」2巻読了。「生放送殺人事件」は毒殺トリックこそよくあるものながら被害者の操りに工夫が凝らされている点は○。また問題編のみ収録の「孤島天文台殺人事件」はこれまでにない長編らしい盛り上げ方が好印象で何となくトリックは推察されるものの解決編にも期待したい。
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posted at 15:35:02