麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2021年04月02日(金)
香吹茂之「女神家の一族」〈第1話〉読了。「雄鳴館殺人事件」「山比見村の殺人」に続くエロ漫画本格ミステリシリーズ最新作。女装男子が美女に責められるお馴染みの内容ながら相変わらず設定がしっかりしているのがいい。第1話は舞台及び登場人物の説明回で、ミステリ的には事件が起こる次回に期待。 pic.twitter.com/0Lz0f98jNE
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2021年04月03日(土)
横溝正史「本陣殺人事件」読了。婚礼の夜に響き渡った悲鳴と琴の音を聞いて離れ座敷に駆けつけた人々を待っていたのは密室で切り刻まれた新郎新婦の死体だった――。表題作他、ある名家で起きた殺人事件の顛末を兄と妹の往復書簡で綴った「車井戸はなぜ軋る」、顔のない死体を巡る「黒猫亭事件」を収録。
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posted at 13:47:44
のっけから私事で恐縮だが自分がまだ中学生だった頃、学校の図書室で角川文庫の「本陣殺人事件」を借りたことがあった。その時は貸出期限の関係で残念ながら表題作しか読めずに返してしまったのだけど、今回改めて表題作以外の二編を読んで、なぜ当時こちらも読まなかったのかと激しく後悔した。
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posted at 13:48:39
結論から言うと「車井戸はなぜ軋る」及び「黒猫亭事件」は表題作以上に傑作だった。特に「車井戸」は仕掛けこそ単純だが人物や舞台の設定、往復書簡という構成を巧みに活かしたミスディレクションが実に秀逸で、更に妹・鶴代が綴る恐怖や苦しみが何とも言えない苦い読後感を生んでいる点が素晴らしい。
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posted at 13:49:42
一方「黒猫亭事件」は作者が冒頭で「顔のない死体」テーマに対する並々ならぬ意気込みを語るだけあって実に企みに満ちた内容に仕上がっており、今読んでも充分通用する綱渡りな構図とこれでもかというどす黒い真相もさることながら、最後のぬけぬけとした作者の一文に唸らされる。
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また何気にポーの「黒猫」を知っていると更に作者の術中にハマるようになっている点も○。そして再読の表題作は仕掛けよりもむしろ真相からいかに読者の目を逸らせようかとする作者の苦心ぶりが興味深く、また某古典ミステリの変形と知ってから読むと所々に作者の工夫の跡が感じられる点も面白かった。
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2021年04月07日(水)
東野圭吾「白鳥とコウモリ」読了。2017年、東京・竹芝桟橋近くの路上に違法駐車されていた車の中から刺殺体で発見された善良な弁護士。やがて捜査線上に浮かんだ一人の男が殺害を自供し、事件は解決――のはずだった。私たちは未知なる迷宮に引き込まれる――。
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東野版「罪と罰」と称された長編ミステリ。帯には「白夜行」や「手紙」が引き合いに出されているが、どちらかというと犯人が逮捕されてからの動機探しが本番という本作の展開は「悪意」に近く、逮捕された男の息子や被害者の娘が小さな矛盾の数々から真の動機に迫っていく課程が丹念に描かれている。
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posted at 16:12:19
途中で示される仮説もなかなか面白いが最終的に明かされる構図は更にそれを上回る意外性があって○。だがその反面、情報の後出しや一部の伏線が明らかに不足しているのが気になるし、加えて「罪と罰」というには些かあっさり気味なのも人によって好みが分かれるところだろう。
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2021年04月08日(木)
平居紀一「甘美なる誘拐」読了。ヤクザの下っ端二人組・真二と悠人の冴えない日常はある日、他殺体を発見したことで変わり始める。一方、下町で自動車部品店を経営する植草父娘は地上げ屋による嫌がらせで廃業に追い込まれかけていた。更に宗教団体・ニルヴァーナでは教祖の孫娘が誘拐されて――。
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第19回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作。タイトルと帯の「誘拐ミステリーの新機軸」という謳い文句から誘拐がメインの作品と思うかもしれないが、その誘拐が起きるまでが長く、しかも誘拐以外の要素の方が多いので正しくは誘拐要素もある作品と考えた方がいいかもしれない。
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posted at 20:17:00
誘拐部分はそれなりに練られてはいるものの、作者がやろうとしているのが端からあるものを狙ったコンゲーム小説なのが明白かつ他のエピソードがどう繋がるのかが展開からある程度読めてしまうため、意外なはずの真相が「ああ、やっぱりそうなるよね」というただの辻褄の確認作業でしかないのが難。
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posted at 20:17:29
加えて本筋とは関係ない、明らかにいらない要素(仮にミスディレクションとして入れたとするなら雑と言わざるを得ない)があるのも気になる。キャラが立っていて小説としてはこなれている反面、ミステリとしての粗がかなり目立ってしまっているのが残念な作品である。
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posted at 20:17:51
2021年04月10日(土)
羽生飛鳥「蝶として死す 平家物語推理抄」読了。平清盛の配下である童子・禿髪はなぜ惨殺されたのか? 首のない五つの死体からどうすれば探している人物を特定できるのか? 帝の庇護下にあった寵姫をどのようにして毒殺したのか? ……第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛」含む五編を収録。
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posted at 13:48:22
源平の争乱を背景に平清盛の異母弟にして一族の裏切り者・平頼盛が不可思議な謎に挑む連作歴史ミステリ。タイトルにもなっている「蝶として死す」は探偵役である平頼盛が目指す生き方であり、それが事件を通して丹念に描かれている。
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posted at 13:48:42
収録作はいずれもこの時代ならではの謎を扱っていて興味深いが、一番の見所はその謎よりもそれらが解かれたことにより初めて見えてくる企みに満ちた背景にあり、謎解きよりもむしろコンゲームの要素が強い。しかしながら策謀が当たり前の時代背景を考えると、そうなるのは必然なのかもしれない。
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posted at 13:49:03
ベストを挙げるなら「葵前哀れ」でシンプルながらも盲点をついた毒殺トリックと史実を絡めてその後の展開を予感させる結末が○。またそれまで探偵役だった頼盛のある企みに迫る「六代秘話」も連作の纏めとして申し分ない。本作は事件から見えてくる様々な策謀を通して頼盛の生き様を描いた秀作である。
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2021年04月11日(日)
「ザ・スイッチ」観了。殺人鬼と女子高生の体が入れ替わってしまってさあ大変という話。「13日の金曜日」を基にしつつもカラッとした痛快スプラッターコメディに仕上がっておりスプラッター物のお約束を活かした笑いとパワフルな殺し方、それにヒロインの成長ぶりも楽しめる一粒で三度美味しい快作。
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posted at 21:38:03
2021年04月14日(水)
太田忠司「麻倉玲一は信頼できない語り手」読了。フリーライターの熊沢は日本に生存する最後の死刑囚・麻倉に関する本を執筆するため無人島だった離島に設けられた民間経営の刑務所に向かう。インタビューで「僕は人の命をジャッジする審判なんだよ」とうそぶく麻倉。そして、遂に恐ろしい事件が……。
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posted at 14:03:37
死刑が廃止された日本に生存する最後の死刑囚との奇妙なインタビューと事件を描いた長編ミステリ。タイトルにある通りミステリにおける「信頼できない語り手」を匂わせた麻倉のインタビューは謎めいた魅力があり読ませるものの、いかんせん最後の着地で失敗してしまっている。
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posted at 14:04:13
というのも肝心の真相が幾つか前例があるのもさることながら、それをやる必然性及び計画性にかなり疑問があり、むしろこの真相を明かさない方が良かったのではないかとすら思ってしまう。少なくとも自分は残念ながら本作に対し帯や内容紹介にある奇想も驚愕の真相も全く感じることはできなかった。
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posted at 14:04:39
2021年04月15日(木)
宇佐楢春「忘れえぬ魔女の物語2」読了。理不尽な世界に幾度も抗った十月五日は過ぎ、わたしと未散が望んだ日々がようやく訪れた。未散との心地よくももどかしい関係を変えようとしていた頃、友達の深安さんから演劇部の助っ人を頼まれる。だがその依頼はこれから起こる事件の前触れで――。
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posted at 09:26:54
百合要素のあるループ物の二作目。前作のループ地獄を経て主人公・綾香の心境がどう変わったのかが最大の読みどころではあるが、いかんせん前作に比べると物語のスケール及び展開に物足りなさが否めず、どうしても蛇足感が否めない。
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posted at 09:27:15
加えて登場人物たちに割り振られた能力に関して特にこれといった理由付けがあるわけでもなく前作同様あまりにも都合よく使われる点にも引っ掛かる。あくまで扱われる特殊な状況が綾香と未散の関係性を描くための演出に過ぎないと分かってはいても、何かしらの理由付けはほしいと思う。
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posted at 09:27:31
青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス3」読了。〈牙の森〉の謎を追いドイツへ向かった〈怪物事件専門の探偵〉真打津軽たち、鳥籠使い一行が遭遇したのは、村の少女が連れ去られ次々と喰い殺される事件だった。怪物たち〈夜宴〉と保険機構〈ロイズ〉も介入し、やがて舞台は人狼の隠れ里へ――。
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posted at 22:47:02
前作から約四年半ぶりのファンタジー本格ミステリシリーズ三作目。今回のテーマは人狼ということでミステリは勿論のこと、伝奇バトル部分でもその要素を活かしつつ、更に前作からの因縁ある対決なども盛り込み、シリーズ最長のエンタメ作品に仕上げている。
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posted at 22:47:45
ミステリとしてみると構図こそ前例があるものの冒険活劇の中に巧みに織り込んだ伏線と人狼の特徴を活かしたロジックによる犯人の絞り込みはさすがの出来で、特に誘拐現場におけるある矛盾から展開されるロジックが秀逸。総じて手に汗握るバトルと切れ味鋭いロジックがバランスよく纏まった佳作である。
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2021年04月16日(金)
渡辺静「魔女に捧げるトリック」3巻読了。主人公側が使う大掛かりなトリックも面白いが前巻で謎だった敵側のトリックも蓋を明けてみればいい意味でこの時代を逆手に取った仕掛けが使われていて○。加えて終盤では更に驚きの事実が明かされてますます先が気になるのに次巻で完結なのが残念でならない。
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2021年04月17日(土)
横溝正史「貸しボート十三号」読了。貸しボートの中に横たわる首を途中まで挽き切られ血まみれになった男女の惨死体、義眼が抜き取られた美女の死体を家に隠していた男、次々と若い女を殺して石膏像の中に塗り込める怪人……表題作の他、「湖泥」「堕ちた天女」の二編を収録。
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名探偵・金田一耕助が活躍する三つの事件を収録した中編集。収録作はいずれも一つの小さな気付きから一気に謎が解かれるのが特徴で、表題作は作中で「生首半斬り擬装心中事件」と称される収録作中最も魅力的な謎もさることながら単純かつ盲点をついた真相と陰惨な事件とは裏腹な後味の良い結末がいい。
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一方「湖泥」は作者らしい村社会を背景にした異様な犯人像とそれに相応しい異様なロジックが秀逸。また「堕ちた天女」は乱歩を彷彿とさせる怪人が暗躍する展開を逆手に取った真相と「湖泥」とはまた違った異様な犯人像が印象深い佳編である。
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