麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年09月10日(土)
今邑彩「大蛇伝説殺人事件」読了。島根県松江市のホテルに泊まっていた画家が失踪し、それから間もなくバラバラ死体となって島根県各地のスサノオを祭る神社から発見される。何故、犯人はヤマタノオロチに見立てて死体を解体したのか。探偵・大道寺綸子が事件の真相を追う。
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posted at 16:02:10
伝説に見立てたバラバラ殺人と鉄壁のアリバイ崩しが見所の本作。トリックに関しては残念ながら国内作家の某作品を先に読んでいたために早々と見当がついてしまったのだけど、その某作品よりもトリックのカモフラージュの仕方は巧かったと思う。
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posted at 16:02:59
「トリックと神話を見事に融合」という内容紹介には概ね同意。ただそれ以外の事件になると、些か取って付けた感があるのが何とも惜しい。また欲を言えば、作者が得意とするホラー風味があれば尚良かった。
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posted at 16:03:54
2011年09月11日(日)
草野唯雄「殺意の焦点(フォーカス)」読了。警察に届けられた遺失物のカバンの中に入っていたのは、裏面に日付の書かれた五枚のモノクロの風景写真。そのうち三枚の写真の現場では裏に記された日に、既に三件の殺人事件が起こっていた。そして残りの二枚の写真の日付もすぐ近くまで迫っていた――。
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posted at 03:48:54
次の殺人の現場はどこか? 何故、犯人はこのような写真を残したのか? 被害者たちの繋がりは? ……この謎が謎を呼ぶサスペンス展開こそ、正に草野唯雄である。途中、謎のエロシーン(?)もあるが、基本的には疾走感のある内容で、ぐいぐいと最後まで引っ張ってくれる。
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posted at 03:49:35
そして草野作品にはお馴染みの意外性も健在で、二転三転した末に待ち受ける真相はある古典的作品を巧く捻ったものになっている。本作はこの作者らしいトリッキーな仕掛けが堪能できる、ミッシング・リンク・テーマの秀作である。
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posted at 03:54:23
2011年09月12日(月)
戸川昌子「深い失速」読了。精神科医の私が受け持った患者・丹野明夫は一貫して大和田緋那子という人妻を長い武器で殺したと主張していた。だが殺した筈の緋那子は生きており、明夫に襲われた覚えはないと言う。果たして死体なき殺人事件の真相は……?
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posted at 22:48:14
これは現か幻か。不可思議な事件の内容もさることながら、この作者ならではの妖艶なる官能描写が入り乱れ、物語の混迷ぶりに拍車をかけている。それはある種、幻想ミステリのようでもあり、この地に足がつかない不安定さが堪らない人もいることだろう。
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posted at 22:49:02
2011年09月14日(水)
友成純一「魔王降臨」読了。超能力を持つ青年・村雨正人はひょんなことから美人記者・額田希美子が企画する「東京怪奇スポット探訪」なる記事に協力することになる。幸い記事は好評を博すが、その過程で正人たちは極東支配を目論む〈地獄の炎〉教団の陰謀を突き止めてしまう。
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posted at 17:05:15
エロありグロありアクションありの伝奇バイオレンス。一番の見所はなんと言っても中盤、テレビ収録中の降霊会で呼び出された使い魔が巻き起こす阿鼻叫喚の地獄絵図だろう。特にリポーターの美女が使い魔に襲われるシーンは「狂鬼降臨」を彷彿とさせて○。
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posted at 17:06:25
ただ問題なのはここが話のピークであり、以降はかなりやっつけ感が目立つ残念な展開になってしまっていることである。個人的にはラスボスとのバトルより使い魔とのバトルの方が盛り上がるってどうなのよ? と思わなくはないが、まあ細かいことを気にしなければ、これはこれで楽しめる作品である。
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posted at 17:07:14
有栖川有栖「真夜中の探偵」読了。探偵行為が禁止された日本で探偵をしていた純の両親のうち、父は逮捕され母は四年前から行方不明になっていた。そんなある日、純は両親に仕事を仲介していた押井照雅と知り合うがその矢先に押井と親交のあった元探偵が水の入った木箱の中で溺死体となって発見される。
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posted at 22:58:03
まず作者に問いたい。本格ミステリを書きたいのか、それとも探偵がテーマの小説を書きたいのか。前作を読んだ時も感じたことだが、本作もまた事件にこの世界観で起こる必然性は全くない。元も子もない言い方をするならば、探偵の障害になりさえすれば、どんな事件でも構いやしないのだ。
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posted at 22:58:31
作者は前作に引き続き世界観の作り込みに力を入れているが、謎のための世界観ではない時点で本格ミステリとしては評価しにくいと思う。言うなれば、謎のためではなく探偵のための世界観。どうも本作を読んでいると作者が探偵というものに求め過ぎているような気がしてならない。
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posted at 22:59:27
2011年09月16日(金)
東川篤哉「早く名探偵になりたい」読了。烏賊川市シリーズ初の短編集。東川篤哉・光文社・短編というと今はなき公募ミステリ・アンソロジー「本格推理」を思い出す人も少なからずいるかもしれないが、本作は正にその「本格推理」を彷彿とさせる、ミステリ度の高い内容となっている。
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posted at 22:47:44
収録作は倒叙物「藤枝邸の完全なる密室」、衆人監視の走る密室で起きた殺人事件「時速四十キロの密室」、盗まれたビールケースという日常の謎物「七つのビールケースの問題」、深夜に目撃した殺人の光景「雀の森の異常な夜」、宝石盗難事件に仕掛けられた思いもよらぬ罠「宝石泥棒と母の悲しみ」。
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posted at 22:48:38
このうち最もお勧めしたいのは「宝石泥棒と母の悲しみ」だろう。もともと自分がこの手のものに弱いというのもあるが、まさかアレを使ってこんな仕掛けを思い付いてしまう作者に脱帽。シリーズでお馴染みのキャラがあまり出てこないという不満はあるが、ミステリとしては満足度の高い短編集である。
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posted at 22:49:10
2011年09月19日(月)
吉村達也「妖精鬼殺人事件」読了。精神分析医・氷室想介の許に奇抜な服装で陰謀論をまくし立てる主婦・高柳良恵が相談にやってきてから二ヶ月後、彼女の幼い息子がマンションの十四階にある自宅から転落死した。最初は単純な事故と思われたが、やがて氷室は裏に隠された意外な真相を突き止める。
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posted at 18:43:54
名探偵・氷室想介と殺人狂・QAZの対決を描いた全百巻構想の「魔界百物語」シリーズ第一弾。本作を読んで真っ先に思い出したのは「金田一少年の事件簿」における、犯人に知恵を授け事件を裏からプロデュースする地獄の傀儡師 対 金田一少年の構図だ。恐らくノリ的には一番それが近いと思われる。
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posted at 18:44:39
ただし本格ミステリとして本作を見た場合、残念ながら難ありと言わざるを得ない。本作のあらすじには〈ミステリーの王道をいく「意外なヒント」と「意外なトリック」と「意外な犯人」〉とあるけれど、肝心の伏線が全く張られていない時点で「意外」もへったくれもない。
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posted at 18:45:39
2011年09月22日(木)
水野泰治「奥多摩殺人3Wの逆転」読了。かつて才能の片鱗を感じた作家の卵・彼方霞を追って奥多摩の鍾乳洞へやってきた編集者の見越以知郎は、そこで不可解な殺人事件に巻き込まれる。しかも事件は霞が今書いている推理小説と何故か内容が酷似していて……。
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posted at 18:57:15
タイトルにある「3W」とはWhy(なぜ?)When(いつ?)Who(だれが?)のことである。事件が起きる度にこの「3W」が逆転する、と粗筋にはあるけれど、残念ながらこの試みはあまく上手くいっていない。というか、この粗筋の段階でネタバレしているというのはどうなんだろう(汗)。
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posted at 18:57:47
とはいえ仮に粗筋を見てなかったとしても犯人は容易に見当がつくことだろう。まあその見当のつく部分が相変わらずエロに直結しているのが何ともこの作者らしい。作者のこだわる「逆転」に関しては不発に終わった感のある本作だが、最後に明かされるイヤ感たっぷりなWhyだけは個人的には評価したい。
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posted at 18:58:12
2011年09月23日(金)
遠藤武文「デッド・リミット」読了。事の始まりはシングルマザーの智子の許に届いた切断された息子の指だった。その直後に電話をかけてきた山田浅右衛門と名乗る男は息子の命と引き換えに身代金五千万円を要求する。……事件に巻き込まれた五人の事情が判明した時、驚愕な真相が明らかになる。
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posted at 10:23:14
驚愕な真相というと聞こえはいいが、ぶっちゃけ本作の真相は「クルーザー殺人事件」並に分からないと思う。一応誘拐ミステリを謳っているけれど間違っても心理的駆け引きや計画の緻密さを求めてはいけない。真相が明かされた時その行き当たりばったりな内容に開いた口が塞がらなくなること必至である。
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posted at 10:23:58
その他、登場人物の行動にも問題ありすぎでツッコミ始めたらキリがない。また文章面でもかなり難あり(擬音や台詞がおかしい、鵺の鳴き声のようなという表現は誰もが思う表現なのか?等)。ただ複数視点の割には「プリズン・トリック」よりは読みやすいので、ダメミス入門としてはいいかもしれない。
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posted at 10:24:30
山口雅也「狩場最悪の航海記」読了。タイトルにもなっている『最悪の航海』について登場人物の一人はこう語っている。「『最悪の』航海だったからこそ(中略)普通の人なら経験できないような数奇な冒険に巡り合えたということなのじゃないですか」本作は正にそんな体験ができる冒険小説の傑作である。
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posted at 20:51:01
2001年に発見された「ガリヴァー旅行記」の続編という設定である本作の雰囲気に一番近いのは、作者が古本屋で見付けた一冊ペーパーバックを翻訳したという設定の「日本殺人事件」だろう。但し「日本殺人事件」が徹頭徹尾本格ミステリであるのに対し、本作はあくまで旅行記の体裁を取っている。
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posted at 20:51:25
とはいえ、そこは山口雅也。サムライやニンジャ、海賊にドラゴンが入り乱れる中、ハラキリ殺人や密室殺人をさらりとやってのけてくれるのが素晴らしい。本作はミステリ要素は勿論のこと、蘊蓄や緻密に作り込んだ世界観が魅力の、山口雅也にしか書けない超絶冒険譚である。
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posted at 20:51:48