麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2012年11月01日(木)
長沢樹「夏服パースペクティヴ」読了。新進気鋭の女性作家・真壁梓が行うビデオクリップ制作のスタッフとして撮影合宿に参加することになった私立都筑台高校の映研部長・遊佐渉はそこで現実と虚構が入り交じった美少女クロスボウ連続殺人事件に巻き込まれることになる。果たして殺人劇の行方は……。
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posted at 00:04:38
「消失グラデーション」で横溝賞を受賞した作者の二作目である本作は、密室に推理劇、クローズドサークル、そして首切りまで盛り込んだ前作以上に本格度の高い作品に仕上がっている。
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posted at 00:05:30
前作でも思ったことだが、この作者の持ち味はミスディレクションの巧さであり、それは本作にも遺憾なく発揮されている。特にそれが顕著なのは第一の事件(?)であり、ネタだけ取り出せば手垢のついたトリックでもこういう見せ方があるのかと至極、感心した。
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posted at 00:06:18
メインの仕掛けに関しては、文章だけだとピンとこない部分があるのが難点ではあるものの、緻密な伏線がそれを見事に補っている。本作は前作以上に技巧的な作品であると共に、作者の本格ミステリ作家としての資質を知る上で見逃せない作品である。
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posted at 00:06:54
円居挽「今出川ルヴォワール」読了。京都・河原町今出川にある大恩寺で起きた密室殺人事件の容疑者とされ、私的裁判「双龍会」にかけられることになった龍樹家の若き龍師・御堂達也。だが、それは壮絶な騙し合いのゲーム「権々会」への序章に過ぎなかった――。
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posted at 22:24:11
ミステリだと思って読んでたらギャンブル小説だった。何を言ってるのか分からないと思うが(以下略)。言うなれば本作は円居版「カイジ」であり、「鳳」というゲームを使った騙し合いがメインになる。故に「丸太町」のような「双龍会」でのロジックの応酬を期待すると些か肩透かしを覚えるだろう。
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posted at 22:24:41
しかしながら、そんな騙し合いの中にもギャンブル小説では決して出てこないようなミステリ的仕掛けを盛り込むなど見るべきところはある。また家系図に纏わるアレはどこか清涼院流水を彷彿とさせて思わず苦笑。
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2012年11月02日(金)
幾瀬勝彬「私立医大殺人事件」読了。私立医大生が大学に隣接する雑木林の中で撲殺されているのが発見された。地面には被害者が残したと思しき不可解なXの文字が……。被害者の恋人からの依頼を受けて事件に取り組む「推理実験室」の面々だったが、それを嘲笑うかのように第二、第三の事件が発生する。
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posted at 18:21:32
年齢も職業もまちまちな推理小説愛好家のグループ「推理実験室」が実際に起こった事件に挑むシリーズの二作目。第一の事件は推理の始めこそロジカルだが、そこからまさかあんなバカトリックに繋がるとは思わなかった(爆)。
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posted at 18:21:58
些か強引に感じる部分もなくはないが、この発想自体は悪くない。但し、被害者があのダイイング・メッセージを残すのには無理があり、どちらかと言えば作者がヒントとして入れたと考えるべきだろう。
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posted at 18:22:23
また「Xの悲劇」からの趣向は嫌いではないが、それほど効果を上げているかと言われると疑問。ラストの駆け足ぶりも気になるものの全体的に見れば良作と言っても差し支えない出来だと思う。それと余談だが、梶龍雄作品以外で初めて作中にホワイトキックが出てきたのが色々な意味で衝撃的だった(爆)。
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posted at 18:23:21
真梨幸子「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」読了。男女五人を壮絶なリンチの果てに殺した罪で起訴された男の母・茂子が独占取材に応じるとの電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。死刑になった稀代の殺人鬼フジコの育ての親でもある茂子の許に向かった取材陣を待つものは……?
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posted at 22:35:38
「殺人鬼フジコの衝動」まさかの続編。正直言えば前作の結末が結末だっただけに読む前は期待以上に不安の方が大きかったのだが、結論から言えば見事にしてやられた。但し、この「やられた」は前作を読んでいること前提であり、ある意味この感覚は「アルバトロスは羽ばたかない」にも似ている。
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posted at 22:36:07
特に秀逸なのは本作が前作の対になっていることで、○○の構図自体は同じであるにも関わらず、本作は前作とは真逆の○○の物語になっている。どこまでが作者の計算かは分からないが、とりあえず本作によって殺人鬼フジコの物語は綺麗に完結したと言ってもいいだろう。
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posted at 22:37:03
2012年11月06日(火)
釣巻礼公「奇術師のパズル」読了。中学校のカウンセラー・志保子宛てに死んだはずの女生徒・新庄朋恵からメッセージが届いてから間もなくして、密室状態の体育館に置かれた立体モザイクの中から一人の女生徒が死体となって発見される。その傍らには『新庄朋恵は私が殺しました』と書かれた遺書が……。
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posted at 19:34:33
作者は本作を本格ミステリのつもりで書いたとのことだが、それが当てはまるのは密室におけるハウダニットのみだろう。フーダニットとしてみると明らかに手掛かり不足であり、犯人を特定するのは不可能と言わざるを得ない。
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posted at 19:34:59
その密室トリックに関して言えば、見る人が見ればバレバレなのかもしれないが、幸いその手の知識に疎い自分は普通に楽しむことができた。というか、よくよく考えたらこのトリック、国内作家Nの某作品で見た覚えが……(ちなみにその某作品は本作の後に発表されている)。
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posted at 19:35:18
御坂真之「火獣」読了。1991年、噴火の恐怖に晒された雲仙普賢岳周辺で天翔ける船が目撃される中、男の刺殺体が火砕流の上に忽然と出現し、瞬く間に消失するという不可解な事件が起きた。それから二年後、事件の鍵を握る男が密室状態の空中回廊から墜落死する。
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posted at 19:36:35
本格ミステリにおいてテーマが被るのはよくあることだが、本作もまた国内作家Uの某作品と被っている事実にまず驚いた(ちなみに発表は本作の方が先)。とはいえトリック自体は某作品とは異なるものであり、そのトリックを成立させるために火山という舞台設定を持ってきたことに本作の巧さがある。
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posted at 19:37:02
但し密室トリックの方は手掛かりの出し方があからさま過ぎてバレバレだし、犯人の特定の仕方も唐突かつ雑で、折角のアリバイトリックがそれほど効果を挙げられていない。とはいえメインの大胆なトリックや前述したテーマなど見るべきものはあると思う。
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posted at 19:37:32
2012年11月07日(水)
別役実「探偵X氏の事件」読了。はた迷惑な探偵・X氏の活躍(?)を描いたショートショート集。某ブログでは本作のことをバカミス・ショートショート集と紹介していたが、個人的にはむしろ皮肉のきいたユーモア・ショートショート集という印象を受けた。
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posted at 19:43:52
少なくとも本作はミステリを期待して読むものではないだろう。収録作の中からお勧めを挙げるとするなら一際ブラックな味わいの「死体盗難事件」、ミステリ読みなら共感を覚えそうな「真犯人殺人事件」、某古典ミステリのパロディっぽい「ハイキング事件」の三編。
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posted at 19:44:20
2012年11月08日(木)
赤城毅「書物審問」読了。世間を脅かす秘密を孕んだ本をあらゆる手段を用いて入手する書物狩人。彼と三人の客「指揮者」「将軍」「実業家」が「書物城」に招かれた翌朝、城に架かる唯一の橋が爆破され次いで「指揮者」の所持する稀覯本が奪われ絞首刑さながらに屋根の上に吊るされた状態で発見される。
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posted at 14:57:13
クローズドサークルで起こる稀覯本連続殺人(殺本?)事件という粗筋は一見すると本格ミステリのように思えるが、結論から言うと本作は本格ミステリではない。あくまで本作は本格のガジェットを用いた伝奇冒険小説であり、そういう意味では「開かせていただき光栄です」に近いものがある。
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posted at 14:57:37
しかしながら雰囲気作りとしては申し分ないし、本格ミステリではないとはいえ、レッドヘリングを盛り込み、真相を悟らせないように工夫を凝らしているのは○。あと本作は書物シリーズの六作目に当たる作品だが、いきなり本作から読んでも問題なく楽しめることを最後に付け加えておく。
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posted at 14:58:00
2012年11月09日(金)
野崎まど「野崎まど劇場」読了。野崎まど初の短編集。死体を探しに行く検死官、対局にペットを連れてくるプロ棋士、勇者を何とかしたい魔王、色々とツッコミどころ満載の森の音楽団、密室を舞台に活躍するアイドルグループ、アンドロイド対人間のビームサーベル戦記などバラエティ豊かな24編収録。
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posted at 21:45:52
本作を一言で例えるならば、小説版「ギャグマンガ日和」。全編シュールとしか言いようのないギャグ物で統一されており、「パーフェクトフレンド」のトムなどのギャグが好きだった人にはうってつけの作品と言えるだろう。
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posted at 21:46:27
だがその一方で単なるギャグ物には留まらない、この作者ならではの文章実験が炸裂しており、例えば最初の短編「Gunfight at The Deadman city」では小説の常識を打ち砕くような衝撃(笑撃?)の超絶技巧を見せてくれる。
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posted at 21:47:23
また文章表現だけではなくイラストを多様する構成はある意味、蘇部健一作品にも通じるものがある。基本的には非ミステリ作品ではあるが、唯一例外なのが「首狩島容疑者十七万人殺人事件」で、首を切らなかった理由という逆説的なロジックを扱っているのが素晴らしい。
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posted at 21:47:49
尤も担当編集者は「ミステリーとしてどうよ」と苦言を呈しているが、はなからバカミスとして書かれている以上、個人的には充分アリだと思う。野崎まどの入門編としてはお勧めできないが、野崎まどファンであればニヤニヤできること請け合いの短編集である。
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posted at 21:48:20