麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年02月01日(金)
梶龍雄「紅い蛾は死の予告」読了。紅蛾が乱舞する山深い平家谷で旧家の一人娘が密室と化した蔵で死に、使用人まで含めた一族が入水心中するという悲劇が起きた。そして十八年後、一連の事件を題材にした映画を撮るため撮影隊と共に平家谷を訪れた女優は持ち前の好奇心から事件の調査を始めるが――。
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posted at 01:40:27
豪快な構図の反転が炸裂する傑作。細かいところを見れば密室の謎が差ほど意味がなかったり、脚本が度々挿入される構成が少々読みにくかったりと気になる部分もなくはないが、この驚きの構図と怒濤の伏線回収がそれを見事に帳消しにしてくれる。
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謎解きでは一人娘の死に隠された真相にも驚いたが、その直後にまさか蝶に纏わるある手掛かりからあんな大胆な企みが導き出されるとは思わなかった。個人的に本作を読んで思い浮かんだのは三津田信三の刀城シリーズであり、仮にこのネタで刀城物の長編を書いたとしても全く違和感はないだろう。
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森川智喜「スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ」読了。「なんでも知ることのできる鏡」を使って事件を解決する女子中学生探偵・襟音ママエは、とある事件をきっかけにズル賢い天才探偵・三途川理に付け狙われる羽目に。更にそこに彼女を亡き者にしようとする者の思惑も絡み――。
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化け猫たちとのコンゲーム小説「キャットフード」でデビューした作者の二作目。二部構成の本作は一部で、本格ミステリにおいて反則技ともいえる「なんでも知ることのできる鏡」の能力を見せ付けると同時に、推理の過程の重要性を説いているのが面白い。
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そして二部に入ると一転して物語は森川版デスノートとも言うべき内容になる。デスノートを「なんでも知ることのできる鏡」に置き換えて、命を狙う側と狙われた側がそれぞれ鏡の能力を踏まえた熾烈な頭脳戦を繰り広げるのだ。
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とはいえ鏡の能力を駆使するのはもっぱらズル賢い天才探偵・三途川理の方であり、彼が次々と繰り出す奇策のオンパレードにはほとほと感心させられる。特にラストの策に至っては登場人物の一人が語るように「狂気の発明」以外の何物でもないだろう。
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2013年02月03日(日)
梶龍雄「殺人回廊」読了。第二次世界大戦末期、東京目白にある新田公爵家の周囲に不審な男たちが出没しているという通報を受け警視庁強力犯刑事・堀川は張り込みを開始する。間もなく男たちはある人物をスパイ容疑で内偵する特高と判明、そしてその矢先に新田家の三男・俊三が死体となって発見される。
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梶龍雄の書くミステリは過去が非常によく似合う。しかしそれが単なるノスタルジアだけで設定されたものでないことは一読すれば明らかだ。本作で描かれる事件のシチュエーションもさることながら、その真相も戦争が暗い陰を落とすこの時代だからこそ成立したものと言っていいだろう。
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作者らしい構図の反転の先に待ち受ける犯人と動機。それを示す伏線の張り方は相変わらず巧妙だが、それ以上にその戦争を背負った意外性が何とも言えない気分にさせる。決して派手な作品ではないが、戦時中という「灰色の季節」ならではの本格ミステリを扱った良作である。
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2013年02月04日(月)
司城志朗「神様の誘拐」読了。妻と別居して離婚交渉中の鳥井啓介の五歳になる息子・一弘が何者かに誘拐された。犯人から一千万円の身代金を要求された啓介だったが、今の彼にそんな大金は払えない。悩んだ末、啓介は身代金目当てによその家の子供を誘拐することを思い付くが……。
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本作は誘拐ミステリのカテゴリに入る作品だが、どちらかというと三谷幸喜作品を彷彿させるシチュエーションコメディに近い。事実、仲の悪い夫婦が子供を取り合って誘拐犯に身代金の入札(!)を提案したり、誘拐した子供が犯人に同情してやたらと協力してくれたりと笑えるシーンはかなりある。
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とはいえ一応ミステリとして見ると、最初の誘拐犯が誰なのかといった謎はあるものの、伏線があからさまなので勘のいい人なら途中で読めてしまうことだろう。むしろ本作はミステリとしては考えず、凝ったプロットのコメディ作品として読んだ方が楽しめるかもしれない。
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2013年02月05日(火)
加納一朗「ふくろうが死を歌う」読了。鬼ヶ沢へ向かう山道で佐川京介が奇怪な老婆に遭遇した翌日、大地主の辺見家の娘・辺見安子がふくろう婆の伝説通りに寺の境内にある柿の木の下で殺される表題作の他、銀座で行方不明となった義兄を探すうちに密室殺人に巻き込まれる「はなやかな追跡者」を収録。
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横溝ガジェットを使った名探偵物と大都会を舞台にしたサスペンス物という、全く異なるタイプの二編を収録した中編集。どちらも雰囲気作りは申し分ないものの、肝心のミステリとして見ると伏線がほとんどないのが非常に気になる。
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2013年02月06日(水)
島田一男「犯罪待避線」読了。シベリア抑留生活を経て帰国した都野医師が遭遇した怪事件の数々。堕胎させられた赤子を瓶詰めにされた院長夫人の死、アパートの一室に転がる首切り死体、小金持ちと洗濯屋の諍いに端を発する殺人、生まれながらにして女として育てられた男に仕掛けられた罠など八編収録。
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収録作はいずれも登場人物の少なさ故に犯人の意外性こそないが、その代わりにハウダニットと丁寧に張られた伏線の妙が楽しめるようになっている。特にそれが優れているのは「或る暴走記録」で、犯人の特徴を巧く活かした手掛かりもさることながら何よりアレの隠し場所を示す大胆な伏線が素晴らしい。
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posted at 18:08:25
その他の短編も短い頁数の割に伏線が細かく、且つさりげなく張られているのは好印象。また首切り殺人を扱った「首を縮める男」や妊娠した女学生の轢死事件を巡る「機関車は偽らず」のように思わぬ発想の転換で魅せてくれるのも○。解説が意味不明なことを除けば、良作揃いの短編集と言っていいと思う。
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posted at 18:08:59
法条遥「404 Not Found」読了。まるで戦国時代のお姫様みたいな美少女・九条晶にフられた俺は放課後、ビルの屋上から飛び降りて死んだ。……だが、目覚めると何故か自室のベッドの上にいた。しかも時間が今朝に巻き戻された状態で。繰り返されるリセットの果てに待ち受ける真実とは?
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posted at 22:40:24
本作はタイムリープミステリと銘打たれているが、「タイムリープ」というより、どちらかと言えば「左巻キ式ラストリゾート」(!)に近い、ブラックユーモアに満ちた何とも捻くれた内容になっている。
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posted at 22:40:43
故に本作はタイムパラドックス物が好きな人よりもエロゲ好き、それも寝盗り/寝盗られ嗜好のある人にこそ強くお勧めしたい。ちなみに寝盗られ嗜好のある自分は大いに楽しみました(爆)。
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2013年02月07日(木)
赤川次郎「幻の四重奏」読了。〈ユミ四重奏団〉のメンバーの一人、ヴィオラの美沙子が死んだ。遺書があることから自殺と思われたがその一週間後、美沙子に恋人がいたこと、死の当日に駆け落ちしようとしていたことが発覚。しかも残されたメンバー三人のもとに死んだはずの美沙子から手紙が届いて――。
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posted at 20:45:58
友人の死の謎を解き明かそうと奮闘する三人の女子高生の活躍を描いたユーモアミステリ。相変わらず展開はドタバタ調なのに事件の真相はどんよりイヤミスなのが赤川クオリティ(爆)。ただミステリとしてみると犯人を示す最低限の伏線は張ってあるものの、かなりあからさまなので意外性は殆どない。
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posted at 20:46:34
そのため物語後半にとある登場人物の行動によって読者をミスリードさせようとするもあまり巧くいっていない。また死者からの手紙の真相も取って付けた感が否めずイマイチすっきりしない等々、不満も多いが、細かいことは気にせずさらりと読む分にはそれなりに楽しめると思う。
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2013年02月08日(金)
西村京太郎「七人の証人」読了。クロロホルムを嗅がされ気を失ったところを、どこかの町の一部が再現された奇妙な無人島に連れてこられた十津川警部と七人の男女。そこで彼らは一年前に起こったある殺人事件の洗い直しを強制されることになる。そんな中、新たな殺人が……。
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posted at 22:52:07
私設法廷物にクローズドサークルテーマを融合させた秀作。本作でまず凄いのは過去の事件を再検証するためにわざわざ無人島にまるまる町の一部を作ってしまったことで、この着想はそうそうできるものではない。
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posted at 22:52:33
そして十津川以外の七人が実はタイトルにもなっているその問題の事件の証人なのだが、物語が進むにつれて彼らの証言が何気ない手掛かりから次々と覆されていく様は正に圧巻の一言である(特に秀逸なのはリンゴと所持金からのひっくり返し)。
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posted at 22:53:00
更にその証言が後に起こる殺人事件とリンクし、犯人を示す重要なヒントとして生きてくるという徹底ぶりには脱帽と言うしかない。唯一ラストの犯人に対する追い込みに作り込みの甘さが見えるのが残念だが、それを差し引いても本作がハイレベルなプロット型本格であるのは間違いない。
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posted at 22:53:21