麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年02月09日(土)
柳田狐狗狸「エーコと【トオル】と部活の時間。」読了。ある事件のせいでクラスから孤立した【エーコ】は入部した化学部の部室で喋る人体模型の【トオル】君と知り合う。最初は戸惑いつつも【トオル】との奇妙な部活動に馴染んでいく【エーコ】だったがそんな中、校内で人体発火事件が発生し――。
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posted at 18:44:58
第19回電撃小説大賞金賞受賞作である本作は、ひねくれ少女と喋る人体模型が織り成す学園ミステリ。しかしながらミステリとしてみると、メインとなる人体発火事件のトリックや犯人、動機に関してはベタ過ぎて本作ならではのオリジナリティは全く感じられない。
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posted at 18:45:45
一応最後にちょっとした捻りを入れてはいるものの、後付けと伏線の甘さが目立ち、やられた感を読者に与えるまでには至っていない。故に本作はあくまでミステリ風味のキャラ小説として楽しむのが吉だろう
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posted at 18:46:19
乙野四方字「ミニッツ4 ~スマイルリンクの歌姫~」読了。生徒会長の琴宮遥は来る学園祭を盛り上げるために企画の人気投票を提案。上位に選ばれた企画には大量の生徒ポイントが与えられることを知った相上櫻はクラス企画として「スマイルリンク」という一般客を巻き込んだ壮大なトリックを考案する。
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posted at 18:46:49
「ロジックとトリックが交錯する学園騙し合いストーリー」第四弾のテーマは、学園祭と歌姫。ちなみに本作のキャッチコピーは「科学と魔術が交差する」某人気ラノベにあやかったと思われるが、近々公開するその某作の映画がもろに歌姫物なのはわざと狙ったのか、はたまた偶然なのかが気になる。
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posted at 18:47:31
それはさておき本作の内容だが、まず最初に断っておくと、ウリであるはずの「ロジックとトリック」が今回は殆どないに等しい。正確には一応トリックはあるけれど、そこにミステリ的面白さを期待すると、間違いなく肩透かしを覚えるだろう。
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posted at 18:48:46
しかしながら学園祭小説として読めばなかなか面白く、特にラストの見せ場はそれまでの過程を踏まえて感動的に演出することに成功している。故に本作に限っては「ロジックとトリック」は抜きにして(!)読むことをお勧めしたい。
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posted at 18:49:28
2013年02月11日(月)
辻真先「紺碧は殺しの色」読了。漫画原作者の大日方は作画担当の城と共に取材で訪れた沖縄の島で初恋の人・響子と再会したのも束の間、殺人事件に遭遇する。奇妙なことに現場には神事に使うパーント神の面が落ちていた。翌年、大日方が解決に乗り出すも第二の事件が発生。現場には再びあの面が……。
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posted at 11:34:35
この作者らしい一人三役の構成に、かつての初恋の女性との恋愛模様を絡めた作品。一見バレバレの真相と思って油断していると見事に足下をすくわれることになるだろう。特に秀逸なのは犯人を示す伏線であり、その大胆な隠し場所には唖然とさせられるに違いない。
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友成純一「魔族創世紀」読了。夢の中で異形の者達に犯され続けた女の胎内に命が宿った。それは次第に意志を持ち始め女を操っていく。新鮮な肉を欲した女は自らの手足を食べ尽くした。――お食べ、たんとお食べ。大きくなるんだよ。そうして遂に女の腹を食い破り生まれた悪魔の子は世界に何を齎すのか?
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posted at 14:34:25
一言でいえば、魔族が人間に子供を産ませ、その子供を人間制圧の先兵にする話。友成作品にしては死者の数は少なめだが、その代わり一章につき一人ずつ丹念に(!)殺していくので、実にねっとりとしたスプラッターが楽しめる。
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posted at 14:34:47
しかしながら肝心のオチはギャグ以外の何物でもなく、その脱力ぶりは土竜の聖杯三部作のオチにも通じるものがある。エピローグで登場人物の一人が「なんだ結局、ただの○○○○をしたかっただけなんじゃないか」とぼやいているが、それも致し方ない話だろう。
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2013年02月12日(火)
井沢元彦「欲のない犯罪者」読了。古美術研究家の名探偵・南条圭が解き明かす事件の数々。不思議な猟銃強盗事件、密室から消えた犯人、鉄壁のアリバイを持つ誘拐犯、列車事故に仕組まれた奸計、身代金を受け取らない奇妙な誘拐、空き巣を妻の敵として殺害した夫の真意、不可解な人間消失の七編収録。
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posted at 17:44:31
「名探偵・南条圭推理ノート」と銘打たれている本作は、骨董屋を営む名探偵の許に毎回難事件が持ち込まれるというオーソドックスな形式を採用しているが、持ち込まれる事件の方はオーソドックスには留まらない、なかなか大胆な着想のものが多いのが面白い。
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posted at 17:45:36
特に秀逸なのは「極東銀行の殺人」と「不運な乗客たち」の二編で、いずれも古典的トリックを下敷きにしつつも、それと気付かせないアレンジの仕方に唸らされる。一部手掛かりが古びていたり、反則気味に感じる点もあるものの、全体的にみれば良作揃いの短編集と言っていいと思う。
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2013年02月13日(水)
西村京太郎「イヴが死んだ夜」読了。婚約者である妙子の過去のあやまちに苦悩する十津川警部はある日、浅草寺境内で若い女の全裸死体が発見された事件を担当する。だが女の身許を示すものは一切なく唯一の手掛かりは太股に彫られたバラの刺青だけ。そんな中、十津川宛の書き置きを残し妙子が失踪する。
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posted at 19:21:15
「本格ミステリ・フラッシュバック」で取り上げられていた作品……なのだけど、個人的な見解としては本格ミステリとは言えないと思う。一応ホワイダニットものとしてみることもできるが、手掛かりが出揃うのが遅すぎるし、何より謎解きとは関係のない無駄な設定が多すぎる。
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posted at 19:21:52
フーダニットに至っては完全な後付けで、本格を期待すると肩透かしを覚えることになるだろう。むしろ本作は謎解きよりも、普段あまり見ることのできない十津川警部の苦悩と二転三転するサスペンスストーリーを楽しむのが吉である。
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posted at 19:22:07
夏寿司「マ・オー2 ―魔王、日本が舞台のオンラインゲームで勇者と戦う―」読了。ひょんなことから魔王の少女・真緒と共に日本が舞台のオンラインゲーム『ガクエン』をやる羽目になった孝助。そんな二人の前に勇者を名乗るフルフェイスのヘルメットにセーラー服という出で立ちの怪人物が現れて……。
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posted at 22:17:36
ツンデレ魔王と始める学園MMOラブコメ第二弾にして最終作。基本的な構成は前作と同じだが、本作で完結ともあってかなり詰め込んだ内容となっている。前作にもあった異世界設定を使ったコンゲーム要素は本作でも健在。しかも今回はそれに加え勇者の正体を当てるフーダニット要素まで盛り込んでいる。
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posted at 22:17:57
相変わらず伏線の張り方は手慣れているが、特に今回は日常シーンへの違和感のない織り込み方が秀逸。最後に明かされる、ある趣向も地味に巧い。些か詰め込みすぎのきらいもあるが、ラブコメとミステリを両立させたという点では「修羅場な俺と乙女禁猟区」と並ぶ近年の収穫と言っていいだろう。
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posted at 22:18:20
2013年02月14日(木)
西村京太郎「消えたなでしこ」読了。女子日本代表サッカーチームのメンバー22名が五輪の直前に誘拐された。犯人グループが要求してきた身代金は百億円。十津川警部は一人誘拐を免れた澤穂希選手に捜査協力を依頼。果たして十津川警部と澤選手は無事なでしこジャパンを救い出すことができるだろうか?
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posted at 22:44:16
かつて作者は「消えた巨人軍」という画期的な誘拐ミステリを手掛けているが、本作もまたある意味、斬新な誘拐ものに仕上がっている。誘拐といえば基本的に人質は監禁、拘束されているはずなのだが本作に関しては例外で、何故かチームなでしこは誘拐先で普通に(!)練習メニューをこなしている。
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posted at 22:45:02
ちなみにこういったツッコミどころはまだ序の口で、事件の構図が明らかになるにつれて、破綻はどんどん酷くなっていく。例えば百億という莫大な身代金を要求してきた理由に着目したのはいいが、ただの○○○が誘拐に加担するとは到底思えない。
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posted at 22:45:34
またいくら解決を急いでいるとはいえ、何も知らない民間人を巻き込んでまで嘘の事件をでっち上げるとか完全に意味不明としか言いようがない。それでも作者なりに意外な結末を用意しようとした点は評価するが、アンフェアな記述と肝心な手掛かりが後出しのせいでお世辞にも成功しているとは言い難い。
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2013年02月15日(金)
石持浅海「届け物はまだ手の中に」読了。恩師の仇である江藤を殺した楡井は親友であり復讐から逃げ出した裏切り者・設楽にその事実を告げるべく設楽邸を訪れる。折しも設楽邸では彼の息子の誕生パーティーの真っ最中だった。歓待される楡井だったが、何故か設楽はいつまで経っても姿を見せない……。
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posted at 21:58:59
本作の主人公は親友がいつまで経っても姿を見せないことに不審を抱き、何かを隠しているらしい家人の言動や行動から何が起こっているのかを推理する。普通のミステリならさらりと流して終わる場面を引き伸ばして長編にしてしまった本作は同じ作者の「扉は閉ざされたまま」を彷彿とさせるものがある。
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posted at 21:59:25
仮に本作の主人公を碓氷優佳に替えたとしても全く違和感はないだろう。そうして探り合いと騙し合いの果てに明らかになる真相は普通ならかなりびっくりするところだろうが、石持ミステリに毒されている読者なら(!)もしかしたら途中で気付いてしまうかもしれない(現に自分は気付いた)。
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posted at 22:00:21
とはいえ本作の真相はこの作者にしか書けないし、仮に思い付いたとしても絶対にこんな形で書こうとは思わないだろう。それくらい本作は数ある石持ミステリの中でも際立った怪作と呼ぶに相応しい作品である。
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posted at 22:00:45