麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年06月12日(水)
辻真先「ユートピア計画殺人事件」読了。事のきっかけは、ある村の祈祷師が村の起死回生の策として言い残した「リゾート……」という言葉だった。それから数年後、キリコと克郎が遭遇したリゾート計画に纏わる二つの殺人事件は、やがて薩次をも巻き込んで、一つの意外な真実を導き出す。
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posted at 17:38:31
日経エコノミステリーという変わったレーベルから出た本作はリゾート計画に纏わる蘊蓄が少々鼻につくものの、作者らしいメタ的仕掛けと殺人トリックの両面から楽しませてくれる。但し前者に関してはそれをやる必然性に乏しく、ただ「読者を驚かせたかったから」だけで終わってしまっているのが残念。
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posted at 17:38:52
とはいえ仕掛け自体は凝っているので、驚きだけを求めるのであれば充分期待に応えてくれるだろう。また後者についても出来にばらつきはあるが、個人的には第一の事件のさらりと書かれた凶器の伏線には驚かされた。全体的な完成度としては決して高くはないものの、見るべきところは多い作品である。
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posted at 17:39:07
2013年06月13日(木)
井沢元彦「ダビデの星の暗号」読了。二十五歳の新進作家・芥川龍之介は伊達騒動の大悪人・原田甲斐の子孫である友人・原田宗助から先祖の恥をすすぐため、掛軸に隠された暗号解読を依頼される。だが程なくして宗助は、密室殺人の被害者となってしまい――。
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posted at 17:29:41
本作は暗号と密室という二つのミステリ的ガジェットを扱っているが、後者に関してはあくまでオマケに過ぎず、そこに期待すると確実に肩透かしを覚えるだろう。むしろ本作が秀逸なのは史実と物語の結び付きであり、伊達騒動の真相を暗号が引き立てるその構成は歴史ミステリ特有のロマンを感じさせる。
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posted at 17:30:19
他にも若かりし頃の江戸川乱歩が暗号解読に協力したりとミステリファンならニヤニヤできる要素があるのは○。尤もミステリとしてみると密室トリックのアレさもさることながら、犯人特定の仕方があんまり過ぎる点など気になるところはあるが、それさえ割り切れるのであれば、普通に楽しめる作品である。
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posted at 17:31:13
2013年06月15日(土)
清水義範「新・幻想探偵社」読了。オカルト系の事件ばかり舞い込む幻想探偵社シリーズの四作目。見えない覗き魔の謎「UWO現る!!」、結婚式の参加者全員が理由もなく泣き出す「涙なくしては語れない事件」、千の顔を持つ怪盗との対決「怪人千面鬼」、サイドストーリー「“冬の恋”」の四編収録。
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posted at 20:34:37
似非SFミステリであるこのシリーズの魅力の一つに、自称名探偵の所長・真下による迷推理があるが、そこを期待すると本作は非常に物足りないと言わざるを得ない。一応「UWO現る!!」でやってはいるものの、印象としては悪い意味でこぢんまりとしてしまっている。
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posted at 20:35:06
更に「涙なくしては語れない事件」では折角殺人事件まで起きているのに、真下の迷推理がないばかりか、それが一切物語に関わることなく終わってしまっていて残念の一言に尽きる。勿論、そこだけがこのシリーズの見所というわけではないものの、ミステリというからにはそちらにも力を入れてほしかった。
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posted at 20:37:13
2013年06月16日(日)
井沢元彦「五つの首」読了。将軍・足利義昭を織田家に招くため腐心する信長の許に首狩人と名乗る者から五つの首なし人形が届く。程なくして岐阜城下で瓜商人の首なし死体が発見され、残された白木の札には「一番首頂戴」の文字が――。一方、織田家に向かう義昭には、暗殺者の魔の手が忍び寄っていた。
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posted at 12:28:10
織田信長が探偵役を務めるシリーズの二作目。「策略の首」もそうだが、このシリーズの長編は首切りテーマとコンゲームの融合が非常に秀逸であり、それを違和感なく成立させるために戦国時代という舞台を持ってきた作者の判断には脱帽と言わざるを得ない。
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posted at 12:28:37
本作に関して作者は「短編(シリーズ一作目は短編集)と違って一段と困難な試みだった」と語っているが、確かに将軍暗殺計画と連続首切り殺人が同時に展開する本作の凝った構成をみると、その苦労が窺われる。
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posted at 12:28:59
2013年06月17日(月)
「金田一少年の事件簿」5巻読了。「ローゼンクロイツ」と名乗る者から異母妹を守ってほしい――高遠遥一からの依頼を受けて人里離れた山奥にある薔薇十字館にやって来た金田一と深雪。だが周囲を囲む薔薇の棘に毒が塗られたことで館に閉じ込められた挙げ句、恐怖の連続殺人に巻き込まれることに……。
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posted at 10:07:51
前巻から始まった「薔薇十字館殺人事件」完結。金田一少年ではしばしば心理トリックが用いられるが本作で使われた二つのトリック――薔薇密室とアリバイトリックはその中でも上位に入る出来と言っていいだろう。前者の串刺しの理由もさることながら特に後者の騙し絵を思わせる大胆な発想が素晴らしい。
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posted at 10:08:06
犯人の特定方法も特殊知識だけではなく、ちゃんと論理的にも絞り込めるようになっているのは○。本作はタイトルにもある薔薇と十字というガジェットが実に効果的に活かされた傑作である。
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posted at 10:08:24
「Q.E.D.」45巻読了。学生アパートで起こった密室殺人と宇宙冒険旅行を描いた童話がリンクする「金星」、校内屈指の美少女と付き合うことになった平凡な男子高校生が、自室のベランダで彼女に付きまとっていた男の墜落死体を発見、殺人犯として疑われる「初恋」の二編収録。
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posted at 11:42:56
今回収録された二編に共通して言えるのはミステリ部分よりもその裏にある物語性を重視している点であり、「金星」は思い込みの愚かさを、「初恋」は人が恋に落ちる過程をそれぞれ描いている。
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posted at 11:43:07
「金星」は漫画ならではのトリックの見せ方が秀逸だが、犯人がそれほど主張していないせいか童話のフォローがあるとはいえ動機にイマイチぴんとこない。対して「初恋」は読後感はいいが計画的というにはあまりに綱渡りすぎる犯行にどうしても引っ掛かってしまう。総じて今回は一長一短な印象を受けた。
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posted at 11:43:18
霞流一「落日のコンドル」読了。豪華客船のオーナーを暗殺するため、洋上の船に潜入した瀬見塚眠をリーダーとする暗殺チーム。だが、そこで待っていたのは仲間の他殺体と空中殺法を駆使するコンドル三兄弟の襲撃だった。更にオーナーも既に何者かに殺されており、死体からは手首が奪い去られていた。
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posted at 19:02:35
イロモノ暗殺者たちが繰り広げるバトルロワイヤルと推理劇を融合させた「夕陽はかえる」の流れを汲む快作。本作の設定は一見するとB級映画を彷彿とさせるバカバカしさだが、それらが後にある大ネタを成立させるために必要不可欠であることが分かり、仰天させられる。
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posted at 19:03:01
ただその反面、作品の性質上仕方ないとはいえ、誰がやったかという点がどうでもよくなってしまうのが難。またこれは好みによるのかもしれないが、バトル描写があまりこなれていないように感じた。
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posted at 19:03:35
2013年06月18日(火)
井沢元彦「信玄の呪縛」読了。諏訪湖の貸別荘に集まった典山大学歴史研究会の面々。だが呼びかけ人である新田は姿を見せず、代わりに鎧兜を身につけた新田が歴史研究会のメンバーに復讐を誓う内容のビデオが別荘に届けられる。そして翌朝、メンバーの一人が槍で刺し殺されているのが見付かって……。
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posted at 16:04:13
本作は武田信玄の死体の所在を巡る歴史上の謎に現代で起こる連続殺人を絡ませた歴史ミステリだが、この作者にしては珍しく現代の事件の方に比重が置かれた内容になっている。ある事実をごまかすために武田信玄をテーマに持ち出したのはいいが、それで本当にごまかせているかというとかなり疑問が残る。
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posted at 16:04:38
また作中で起こる事件にしても、前半はともかく後半になるにつれてページの水増しのために無理やり起こした感が否めないのがアレ。とはいえ伏線の張り方は意外にもフェアであり、その点に関しては評価できるかもしれない。
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posted at 16:04:57
2013年06月20日(木)
井沢元彦「降魔の帝王」読了。毎夜、夢の中で囁きかけてくる髑髏の正体はあなたに憑いている後醍醐天皇の霊である――そう霊能者から告げられたみずきは、吉野から南河内と旅した末に夢の中に現れる場所を発見、果たして髑髏も埋まっていた。だが、それは凄惨な連続殺人の幕開けでもあった。
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posted at 16:54:07
本作はほぼ半分の頁が後醍醐天皇を巡る、所謂「太平記」の話で占められているものの、それと後半のミステリ部分が繋がっているのかと言われるとかなり疑問と言わざるを得ない。またそのミステリ部分にしても基本的に後出しであり、推理する余地はほとんどないに等しい。
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posted at 16:54:54
貫井徳郎「ドミノ倒し」読了。ある日、探偵・十村は亡くなった恋人の妹から、「元彼の殺人容疑を晴らしてほしい」という依頼を受ける。しかし、いざ殺人事件の調査をすると別の事件に行き当たり、芋づる式に死体が掘り出される始末。一体何が起こっているのか?
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posted at 22:24:37
ユーモア・ハードボイルド調で展開する本作。帯を見ると「この真相、驚きをこえて大・大・大ショックだ」とあるが、ぶっちゃけある伏線が出てきた瞬間に大抵の人が真相には気付くと思う。むしろショックなのは本作の真相が今年出た某作品と被ってしまっている点だろうか。
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posted at 22:24:53
勿論、この真相は某作品以外にも前例があるし、見せ方自体まで同じというつもりはないが、もう少し出版時期をずらしても良かったのではないかという気がしないでもない。とはいえ、それさえ目を瞑れば展開とオチの落差がいかにもこの作者らしい作品である。
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posted at 22:25:20