麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年06月01日(土)
井沢元彦「本廟寺焼亡」読了。京都にある親鸞聖人直系の浄土真宗黒谷派総本山・本廟寺では次期教王の座を巡り骨肉の争いが繰り広げられていた。そんな中、現教王夫妻溺愛の四男が毒殺され、続いてその葬儀の席で第二の事件が発生。古寺を舞台にした連続殺人事件の謎に古美術商で名探偵の南条圭が迫る。
タグ:
posted at 16:21:18
古美術商で名探偵の南条圭が活躍するシリーズの一作目。毒殺トリックにダイイング・メッセージ、密室とミステリ的に目を惹く要素は多々あるものの、それ以上に印象的なのは利権に塗れた宗教団体に対する作者の痛烈な批判だろう。
タグ:
posted at 16:23:15
とはいえ、その批判が物語と解離することなく巧く溶け込んでいる点はさすがであり、それがラストの悲劇的なシーンをより際立たせている。個々のトリックは必ずしも優れているわけではないが、何よりテーマを見事に描き切ったところは評価したい作品である。
タグ:
posted at 16:24:32
2013年06月03日(月)
井沢元彦「マダム・ロスタンの伝言」読了。留守番電話に残されたメッセージを聞いて駆け付けた宝探し人・永源寺峻を待っていたのは人生の先輩・楽田の無残な刺殺体だった。それから間もなく峻は楽田の娘・ユリから紛失した名画の捜索を依頼され、残された暗号を推理することになる。表題作他六編収録。
タグ:
posted at 18:21:43
宝探し人(トレジャー・ハンター)永源寺峻が様々な宝物に纏わる事件を解決する連作ミステリ。永源寺峻のキャラに関しては南条圭をアクティブにした感じという印象を受けた。基本的にどの短編も宝物に関する蘊蓄が興味深いが、ミステリとしては表題作と徳川の埋蔵金を巡る「沈船の秘宝」を推したい。
タグ:
posted at 18:22:13
この作者がよくやる手法ではあるが、二編とも逆転の発想が実に巧く決まっている。その他、最初の短編「幻の蘭奢待」で登場以降、峻のワトソン役を務める香道家元代理の真実子とのやり取りが楽しい短編集である。
タグ:
posted at 18:22:34
2013年06月05日(水)
井沢元彦「魔鏡の女王」読了。森原考古学研究所の所員が自宅で殺されているのが発見された。発見時、死体は銅鏡を抱いていたが、第一発見者が現場を離れた僅かな隙に奪い去られていた。それから数日後、所長の森原に轢き逃げの嫌疑がかかるが同時刻、森原は何百キロも離れた別の場所で目撃されていた。
タグ:
posted at 17:50:14
宝探し人(トレジャー・ハンター)永源寺峻が活躍するシリーズの三作目。先の読めないストーリー展開でぐいぐい読ませてくれる反面、トリックや犯人当てを期待すると些か肩透かしを覚えるかもしれない。むしろ本作のメインは事件の構図の方であり、その点に関しては作者らしい大胆な着想が楽しめる。
タグ:
posted at 17:50:51
2013年06月06日(木)
井沢元彦「卑弥呼伝説」読了。宝探し人(トレジャー・ハンター)永源寺峻の友人である古代史研究家・日向が「ヒミコは殺された」という謎の言葉を残して密室で殺された。奇妙なことに事件当時、現場周辺では踊り狂う五人の男女の姿が目撃されていた。峻は事件の鍵となる邪馬台国と卑弥呼を調べ始める。
タグ:
posted at 16:21:06
宝探し人(トレジャー・ハンター)永源寺峻シリーズの二作目。「ヒミコは殺された」という謎の言葉から始まる殺人事件に古代史の新解釈を絡めた構成は同じ作者の「義経はここにいる」とよく似ているが、その辺の匙加減が絶妙だった「義経」に比べると本作のミステリ部分は完全にオマケ扱いなのがアレ。
タグ:
posted at 16:21:30
しかしながらこの作品でしか成立しない密室作製動機はなかなか面白く、作中でさらりとやられてしまっているのが非常に勿体ない。個人的には古代史の新解釈なんてどうでもいいので(爆)この辺をもっとじっくりやってほしかった。
タグ:
posted at 16:22:19
2013年06月07日(金)
似鳥鶏「ダチョウは軽車両に該当します」読了。県民マラソン大会に突如乱入したダチョウを捕獲して以降、獣医の鴇先生は何者かに付け狙われることになる。その挙げ句に拉致され、監禁されていた密室状態のプレハブ小屋からは謎の焼死体が――。捕獲したダチョウと被害者を繋ぐものとは?
タグ:
posted at 11:52:00
「午後からはワニ日和」に続く、楓ヶ丘動物園シリーズの二作目。次々と不可解な事件が起こるのは面白いが、その一方でメインとなる動機に関してはヒントを出しすぎて早いうちに見当がついてしまうのが難。
タグ:
posted at 11:52:29
密室トリックにしても犯人の特徴を活かしたと言えば聞こえはいいが、必然性に乏しい上に、読者が解けるように書かれていないのが気になる。どちらかといえば本作はミステリ部分より、キャラメインで読んだ方が楽しめるかもしれない。
タグ:
posted at 11:52:50
2013年06月09日(日)
西村京太郎「失踪計画」読了。自尊心の強い男が職場から大金を盗み、その嫌疑を同僚に着せようとする表題作を始め、殺人犯が紛れ込んだ船で新たに殺人事件が起こる犯人当て小説「第六太平丸の殺人」、病弱で何をやっても様にならない不器用な男が成功の道を辿っていく「うらなり出世譚」など七編収録。
タグ:
posted at 21:34:33
ミステリだけに留まらない、幅広いジャンルの作品を取り揃えた短編集。倒叙物の表題作が一番微妙ではあるが(肝心の伏線に大いに不満あり)、それ以外の収録作はなかなかの出来であり、ミステリとしては「第六太平丸の殺人」における推理のポイントのずらしが秀逸。
タグ:
posted at 21:34:57
その他、当時の社会情勢を巧く活かしたサクセスストーリーが痛快な「うらなり出世譚」や、この作者には珍しい怪奇大作戦(!)的な味わいの「夜にうごめく」も個人的には嫌いではない。
タグ:
posted at 21:35:19
西村京太郎「歪んだ朝」読了。浅草署の刑事・田島が隅田川に浮かんでいるところを発見した十歳くらいの少女の他殺体は、奇妙なことに真っ赤な口紅を塗っていた。少女の身に何が起こったのか? 「オール讀物」推理小説新人賞受賞作の表題作や作者のデビュー作「黒の記憶」など五編収録。
タグ:
posted at 21:35:35
表題作は謎解きの醍醐味こそないものの警察の地道な捜査が明らかにする少女の心理が印象深い一編。精神分析をテーマにした「黒の記憶」は展開は悪くない反面、オチが苦笑物なのがアレ。雑誌記者が見知らぬ女に刺される「蘇る過去」は今日ではありふれた話だが、当時はまだ目新しかったのかもしれない。
タグ:
posted at 21:36:26
六人のパトロンと五十一人の男に囲まれた生活を送っていた女が殺される「夜の密戯」は実際にあった事件をモチーフにしている為かミステリとしては消化不良のきらいがあるのが難。エラリィ・クィーンがアンソロジーに採用したという「優しい脅迫者」は赤川次郎のサスペンスを彷彿とさせる味わいがある。
タグ:
posted at 21:37:26
山田風太郎「誰にでもできる殺人」読了。アパート「人間荘」十二号室の押し入れから発見された一冊のノートには、その部屋の代々の住人に纏わる事件の数々が記されていた。錯覚による殺人、出来心による殺人、善意による犯罪、怠慢による犯罪、正当防衛による殺人――その背後にある恐るべき真実とは?
タグ:
posted at 21:37:38
本作は連作ミステリ形式で綴られてはいるものの、個々の事件で見ればブラックユーモア色の方が強く(但し「殺人保険のすすめ」は除く)、ミステリとしては最後の一編「淫らな死神」に入ってからが本番だろう。
タグ:
posted at 21:38:10
とはいえ、事件の黒幕が誰かという点ではほぼバレバレであり、どちらかといえば伏線と動機に見るべきところがある。個人的には黒幕の某人物の素性とラストのホラー的な味わいが自分の偏愛する飛鳥部勝則に通じるものがあり、好感度高し。
タグ:
posted at 21:38:33
2013年06月10日(月)
伴野朗「密室球場」読了。夏の全国高校野球大会決勝戦。五万人を超える観衆が観戦する甲子園球場のネット裏で、敗れたチームの投手の姉が心不全で急死する。犯人はどうやって被害者に近付くことなく殺害したのか? 表題作含む六編収録。
タグ:
posted at 18:12:26
「“現代の死角”に挑んだ」と内容紹介にある通り、収録作はいずれも何らかの盲点を扱っているが、その中でも最も成功しているのは何と言っても表題作だろう。あらゆる可能性を徹底的に潰していった末に明かされる解答はシンプルだが、舞台設定と人間心理の両面から支えられた盲点が実に秀逸。
タグ:
posted at 18:12:43
収録作でベストを選ぶなら文句なくこの作品だが、その他の短編で良作を挙げるなら血の涙を流すブロンズ像の謎とコンゲームが融合した「兵士像の涙」と地方都市の市長選挙に絡んだ騙し合いを新聞記者の視点から描く「やねこい奴」。
タグ:
posted at 18:12:58
西澤保彦「ぬいぐるみ警部の帰還」読了。「赤い糸の呻き」収録の「お弁当ぐるぐる」で初登場した大のぬいぐるみ好きであるイケメン警部・音無が活躍するユーモアミステリ短編集。令嬢の全裸死体と開かずの金庫が開いていた謎を巡る「ウサギの寝床」含む五編収録。
タグ:
posted at 21:35:53
うーん……。あとがきで作者も語っているようにユーモアという割りにシリアス色が強すぎるのも気になるが、それ以上に気になったのは作者が得意としているはずの論理のアクロバットが不発気味であることで、その結果、全体的に説得力に欠けるのが難。
タグ:
posted at 21:36:01
他にも作者の都合よく展開し過ぎだったり、無駄に複雑にしただけだったりと欠点が多く、もしかしてあまり練り込む時間がなかったのかしらとつい勘ぐってしまう。また探偵役のぬいぐるみ好きという設定が却って足枷になっている印象もあり、何となくシリーズの今後に不安を覚えてしまった。
タグ:
posted at 21:36:29