麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2019年05月01日(水)
手代木正太郎「魔法医師の診療記録」読了。魔法医師の少女・クリミアは幼なじみのヴィクターと共に旅を続けていた。その旅の中で二人は数多の病人を治療していく。 時に魔法医師を異端と迫害する教会と戦いながら。 時に病人を魔物と称する人々と戦いながら。 そして、病そのものと戦いながら――。
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魔法医師シリーズの一作目。タイトルからファンタジーの医療物かと思う人がいるかもしれないが、どちらかというとファンタジー版甲賀忍法帖といった方が正しいかもしれない。魔法医師と敵対する教会から送り込まれた刺客は肉体改造を受けており、次々とトンデモ忍法ならぬ術を繰り出してくるのだ。
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これに関しては作者が山田風太郎好きというのが多分に影響していると思われるが、故にその手が好きな人には堪らないものがあるだろう。とはいえ医療物らしいヒューマンドラマもきっちり用意されているので伝奇バトルの興奮とヒューマンドラマの感動で二度美味しい、先が楽しみなエンタメ作品である。
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2019年05月02日(木)
マツキタツヤ/宇佐崎しろ「アクタージュ act-age」6巻読了。舞台編完結。遂に化けたアキラと、巌との出会いと別れを対比させることによって虚構である芝居に血肉を与える絶妙な終盤の展開、そして迎えるカーテンコールは涙なくしては語れない。あとカバー裏のちょばんにとちよぱねるらが可愛い。
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手代木正太郎「魔法医師の診療記録2」読了。魔法医師のクリミアと看護師のヴィクターは「もう一人の自分」ドッペルゲンガーと会話する少女と出会う。更に少女は首無しの魔物デュラハンの元から逃げてきたと告げたのだった。 はたしてデュラハン、そして少女のドッペルゲンガーの正体とは?
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魔法医師シリーズの二作目。山田風太郎ばりの伝奇バトルと医療物のヒューマンドラマがバランス良く盛り込まれていた前作に対し、本作ではより伝奇バトルの色が強くなり、敵味方入り乱れた三つの勢力によるトンデモ忍術(?)の見本市の様相を示している。
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更に本作では怪奇ホラーの要素も加わったおかげで前作にも増して血と肉片と脳漿が飛び散る異形バトルが堪能できるのが嬉しい。その一方でデュラハンやドッペルゲンガーの真相では唖然とするような奇想が炸裂。キワモノ好き歓喜の見世物小屋的エログロナンセンスに満ちた秀作である。
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手代木正太郎「魔法医師の診療記録3」読了。謎の妖病に冒された魔法医学の権威・ガレノス。その彼が住まう〈悪夢館〉に五人の魔法医師が集う。ガレノスの妖病を治療したものに莫大な遺産が与えられるとあって技を競い合う魔法医師たち。 だが何者かの暗躍により一人また一人と犠牲者が――。
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魔法医師シリーズの三作目は遺産相続物の変形とも言うべき館ミステリ。これが普通のミステリであれば遺産相続の権利がある魔法医師たちは次々と奇怪な死を遂げていくところだが、そうはせずに伝奇バトル的展開に持っていく点が何ともこのシリーズらしい。
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ミステリとしては近作「不死人の検屍人」に比べるとやや物足りなさはあるもののシリーズ読者だからこそ陥りやすい思い込みを逆手に取った仕掛けやジェンダーを巧く隠れ蓑にしている点は面白い。またシリーズの鍵を握ると思われる人物が登場し、ますます今後が楽しみになること請け合いの良作である。
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2019年05月03日(金)
手代木正太郎「魔法医師の診療記録4」読了。スランプで魔術を使えなくなったクリミアはヴィクターを置いて一人旅に出る。その旅先の砂漠で現れる人魚の死体。街を取り巻く謎の病。片や残されたヴィクターもまたクリミアを求めて旅に出る。そんな彼らの陰で遂に最強の鉄鎚ラ・ピュセルが動き出して――。
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魔法医師シリーズの四作目。物語の舞台――古代インスマ文明の発祥の地・インスマ砂漠というネーミングからも分かる通り今回のテーマはクトゥルー神話であり、それを踏まえた奇っ怪な世界をキングのミストを思わせる演出で存分に魅せてくれる。
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更にそこに恒例の風太郎忍法帖とキワモノ好き歓喜のエロシーンがぶちこまれ、いよいよ闇鍋と化してきた事態をどう収拾つけるのかと思っていたら、まさかの壮大なSFへ――その2巻以来のやりたい放題ぶりが実に楽しい一方でシリーズとしての広げられた風呂敷をどう畳むのか大いに気になる秀作である。
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「名探偵ピカチュウ」観了。探偵の父が事件に巻き込まれた青年と記憶を失ったピカチュウのバディ物。ポケモンと人間が共存する世界観、キャラとギャグは◯だが肝心の物語が破綻だらけなのが気になる。最後に明かされる仕掛けだけは良くできているだけに過程の部分をしっかりと練り込んでほしかった。
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2019年05月04日(土)
「ヘルナイト」観了。かつて一家心中が起きた廃墟の館で肝試しをしていた学生たちが謎の殺人鬼に襲われる話。オーソドックスな内容ながらツボを押さえた丁寧な作りで、広大な邸内ならではのギミック――地下迷路や暗闇の庭園などを効果的に使ったホラー演出が楽しい作品である。
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「ハードカバー 黒衣の使者」観了。怪奇小説に登場する黒衣の殺人鬼が現実の世界にも現れて小説と全く同じ手口で殺人を繰り返す話。現実と虚構が徐々に交錯していく展開が秀逸で終盤、殺人鬼に追い詰められたヒロインが仕掛ける逆転の一手がなかなか面白い。意外性はないが愛すべき異形の物語である。
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2019年05月05日(日)
手代木正太郎「魔法医師の診療記録5」読了。クリミアとヴィクターが訪れた〈時計島〉――そこではコッホ社の従業員達が想像を絶するほど規則正しい生活を送っていた。そんな二人の前にヴィクターを付け狙う殺戮者たちが現れる。彼らは何故ヴィクターを狙うのか? そして島に蔓延する《妖病》の正体は?
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魔法医師シリーズの五作目。これまでのシリーズ同様、本作もまた様々な濃い要素が闇鍋のようにぶちこまれているが、今回の舞台となる〈時計島〉ではコッホ社の全従業員が生活リズムから発情時期(!)まで規則正しく管理されており、その様はある意味ブラック企業SFの一つの形と言っていいだろう。
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そこへ恒例の風太郎忍法帖は勿論のこと、ターミネーター的タイムリープネタが加わり、しまいにはスペースヴァンパイアの終盤のようなアポカリプスゾンビホラーさながらのカオスな状況と化するのが面白い。
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そして、それを母の愛で纏めあげてしまう豪腕ぶりにはなかなか痺れたが、一方でスマートな幕引きを期待した人にはやや微妙に思えるかもしれない。しかしながら、このカオスな内容だからこそ却って豪腕が引き立つわけで、人を選ぶかもしれないが刺さる人には刺さる愛すべき異形の佳作である。
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手代木正太郎「魔法医師の診療記録6」読了。クリミアとヴィクターの新たな旅先は魔境〈魔魅の大苗床〉と呼ばれる密林だった。二人はクセ者ぞろいの探検隊と共に密林の奥へと向かっていく。次々と降りかかる信じがたい大魔境の脅威に仲間たちを失いながらも最奥地へ辿り着いた彼らを待つものは……?
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魔法医師シリーズの六作目。本作について作者曰く小栗虫太郎の「人外魔境」や香山滋の「人見重吉シリーズ」「少年王者」を再読しながら執筆したとのことだが、その甲斐あって読む者を惹き付けてやまない、古き良きいかがわしさに満ちた一大冒険譚に仕上がっている。
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目次に並ぶ一眼一角巨人、岩鬼、女人族、樹人、龍といった異形たちが作者によって血肉を与えられ、奇想とスリルを存分に堪能させてくれるだけでも大満足だが、終盤にいたってはそれだけでなく本来の持ち味である風太郎忍法帖的伝奇バトルも意外性たっぷりの展開と共に披露してくれるのだから堪らない。
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2019年05月06日(月)
手代木正太郎「魔法医師の診療記録7」読了。エルフの奸計によって妖病が末期症状となったヴィクター。クリミアは一縷の望みをかけて最後のガマエ研究者ジゼラ・モルガーニを訪ねるべく聖庁へと旅に出る。だが二人の聖庁への道のりは血で血を洗う異能力戦の嵐が吹き荒れることとなるのだった。
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魔法医師シリーズの完結編。これまでシリーズを通して盛り込まれていた風太郎忍法帖的伝奇バトルだが、今回は最終巻だけあって文字通りの出血大サービス(!)で終始敵味方入り乱れた異能力戦の嵐を繰り広げているのが実に熱い。
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加えてシリーズを通して絡み合った様々な因縁の決着が物語の盛り上がりに一層拍車をかけてくれるのも○。ただその一方でオチに関しては安直ととるか否かで好みが分かれそうだが、シリーズの過去作を見ればこうなるのも作者の計算のうちと見るべきだろう。ひとまず無事迎えた大団円を喜びたい。
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2019年05月10日(金)
岬鷺宮「三角の距離は限りないゼロ3」読了。「秋玻」と恋に落ちた僕は、けれどもう一人の彼女「春珂」に告白された。文化祭の季節を前にして、真っ直ぐな二人の想いに困惑する僕に、過去を知る彼女は残酷に、告げる――。僕と「二重人格」の彼女たちが紡ぐ、三角関係恋物語第三章。
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二重人格の少女と僕の恋愛模様を描いたシリーズの三作目。前回の告白的に修羅場の始まりかと思いきや、そこはこのシリーズらしく誠実で静かな恋愛展開は維持しつつ主人公の過去を知る新キャラの登場を軸に文化祭という盛り上がりへ向けて突き進んでいく。
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作者がずっと書きたかった文化祭回というだけあって、トラブルをいいアクセントとして活かした文化祭描写は実に見応えがあって○。その一方でメインの恋愛の方も引き延ばしと感じさせない、理にかなった結末になっており、新たな局面を迎えた次回作を楽しみに待ちたい。
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手代木正太郎「柳生浪句剣」読了。将軍家兵法指南番・柳生家の門弟が宮本武蔵を名乗る者に次々と闇討ちされる事件が発生した。柳生一族のはみ出し者で浪句家(ロッカー)の柳生六丸は美少女剣士・舞花と共に六人の「武蔵」と戦う羽目になる。その裏では幕府をも巻き込んだ恐るべき陰謀が進行していた。
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第9回講談社BOX新人賞Talents受賞作。本作は宮本武蔵、佐々木小次郎、柳生十兵衛、荒木又右衛門といった名だたる剣豪が登場する時代小説にしてボーイミーツガール物の青春小説であり、更に剣戟にロック(!)の要素を取り入れた奇抜な音楽小説でもあるという三つの顔を持つ作品に仕上がっている。
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ロックのビートに乗せた本作独自の剣戟は終盤の御前試合こそ最大の見せ場であるが、そこに至るまでのボーイミーツガール物ならではの丁寧な物語と史実を活かした熱い設定の積み重ねも見逃せない。但しその反面、御前試合後の展開は完全にピークが過ぎ去った後の消化試合であり、些か物足りなさが残る。
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