麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2020年03月01日(日)
三田千恵「トリア・ルーセントが人間になるまで」読了。病に伏した父を治す秘薬を手に入れるためサルバドールとの取引に臨んだ小国ジンドランの第二王子ランス。そこに現れたのは自らを「薬」と名乗る美しい少女トリア・ルーセントだった。彼女と共に王都マキシムを目指すランスを待ち受けるものとは?
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posted at 13:32:27
ファンタジー世界を舞台にしたボーイミーツガール物。タイトルからも察しがつくように基本的には「薬」として育てられた感情の起伏に乏しい少女トリアが主人公との触れ合いによって徐々に人間らしい感情を取り戻していくというのが本作の大まかな流れになる。
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posted at 13:32:47
その一方でミステリ的仕掛けに定評がある作者らしく主人公やトリアに隠された秘密を物語を盛り上げるアクセントとして巧く取り込んでいるのは○。だがその反面、主人公の幼馴染が殆どいる意味がないのが何とも勿体ない。幾つか欠点はあるものの、大筋の物語だけ追う分には問題なく楽しめる作品である。
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劇場版「SHIROBAKO」観了。TVシリーズから四年後の武蔵野アニメーションが劇場アニメを作る話。ハッピーエンドで終わったTVシリーズを知っていると前半がツラ過ぎるが、逆を言えばそのツラさがあるからこそ武蔵野アニメーション復活の物語が引き立つのがいい。
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posted at 22:13:42
特に秀逸だったのは何と言っても劇中劇のクライマックスが今の武蔵野アニメーションの足掻きとシンクロしている点で、それを踏まえた後に待つラストシーン(ホワイトボードに書かれていたあれを見た瞬間の安心感と言ったら!)のカタルシスを一層高めている。
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その他、宮森が四年の時を経て確実に成長した姿をTVシリーズでの木下監督の例のシーンとの対比で見せてくれるのが良かった。TVシリーズのファンは勿論のこと、創作関係で行き詰まっている人ほど是非見てほしい作品である。
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2020年03月05日(木)
朝永理人「幽霊たちの不在証明」読了。高校の文化祭のお化け屋敷で、首吊り幽霊に扮していたクラス委員の絞殺死体が発見された。果たして、彼女はいつ「本物の死体」になったのか。被害者に想いを寄せていたクラスメイトたちが、分刻みの“時間当て"で犯人を絞り込んでいく。
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第18回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。まずはっきり言えるのは本作は付け焼き刃のキャラクター造形と寒いやり取りのせいでラブコメとして失敗している。そう書くと別にミステリなんだからラブコメ的にどうこうなんて関係ないじゃんと思う人もいるかもしれない。
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posted at 21:43:33
だが本作の場合、それができているか否かで仕掛けに対する衝撃度がまるで違うのだ。そして本作はそれが全くできていないせいでせっかくのミスディレクションが機能していないし、キャラが立っていないから売りである分刻みのアリバイも誰が誰だか区別がつきづらく至極どうでもよくなってくる。
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posted at 21:43:43
加えて○○○の存在が不可能興味に思いっきり水を差してくれるし、動機もぶっちゃけ取って付けたものなのも痛い。好みは人それぞれだから本作が良かったという人もいるかもしれないが、少なくとも自分には合わなかった。
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2020年03月06日(金)
浦賀和宏「地球平面委員会」読了。大学に入学した僕が賑わう校内で見たのは「新委員募集中。あなたも信じてみませんか――。地球が平面であることを」と書かれたビラを校舎の屋上から撒く女の子。その子に惹かれる僕の周囲で事件が起き始める。放火、盗難、そして殺人。一体僕は何に巻き込まれたのか?
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posted at 11:08:47
某ライトノベル作品を彷彿とさせるあらすじから一時期話題になった長編ミステリ。次々と不可解な事件が起きるその内容はホワットダニットというべきものだが、終わってみればミステリというより小粋なジョーク小説という印象を受ける(ラストの一ページがまたその印象に拍車をかけている)。
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とはいえ一方で本作はノスタルジック小説でもあると思う。本作のネタであるアレについてはもはや通じない読者もいることだろう。当時は普遍的なネタと思われたかもしれないが、ジャンルの多様化が進んだ今となっては、それもニッチなものに過ぎない。
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posted at 11:09:14
自分を含めそのネタが分かる世代のみが共感できるという点で本作は紛れもなくノスタルジック小説であり、故に読む人によって感想が大きく異なる不思議な魅力を秘めた作品と言えるだろう。
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posted at 11:09:25
片里鴎「異世界の名探偵2 帰らずの地下迷宮」読了。「パンゲアの七探偵の一人」に選ばれたヴァンは八人の名だたる冒険者達と共に攻略不可能と名高い「帰らずの地下迷宮」に挑むことになる。攻略は順調に見えたが一人また一人と不可能状況下で殺されていく事態に……「犯人は間違いなく近くにいる!」
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posted at 20:05:37
剣と魔法の世界に転生した主人公ヴァンがロジックで不可能犯罪に挑むシリーズの二作目。今回は地下ダンジョンで起きる連続殺人と不可能犯罪の謎を扱っており、前作に引き続き「誰が犯人なのか?」を問う読者への挑戦も健在。しかしながら本作の見所は犯人当て以外の部分にあるように思う。
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posted at 20:05:54
特筆すべきはやはり「帰らずの地下迷宮」に纏わる秘密であり、その島荘的とも言える大胆不敵な発想には唖然とするしかない。また前作と同じくダンジョンの攻略など一見無関係に思われる場面が後に重要な伏線として機能している点や第三の事件における壮絶な死体に隠されたある趣向も見逃せない。
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posted at 20:06:22
本作に寄せられた千街晶之氏の推薦文「本書の登場人物の複雑な思惑を解きほぐすのは、地下迷宮の攻略より困難だ」とは正にその通りであり、前作とはまた違った意味でファンタジー設定を使った仕掛けの巧さが光る佳作と言っていいだろう。
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2020年03月08日(日)
「白い肌に狂う鞭」観了。勘当された放蕩息子が帰ってきたのをきっかけに次々と起こる惨劇の数々。怪奇映画的雰囲気が濃厚だが怪奇映画と思ってみるとちょっとした意外性がある点、また役者がある意味ミスディレクションになっている点が面白い。古きよきゴシック好きならお勧めできる作品である。
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posted at 23:48:24
2020年03月09日(月)
「殺人の追憶」観了。連続猟奇殺人犯を追う話ながらミステリと思って観ると結末に唖然となる作品。尤も所々の展開からしてそれを想定して作られている感があり故にタイトルの意味が分かる結末のやるせなさには何とも言えないものがある。とぼけた味わいとシリアスが浮き彫りにする現実の苦さが秀逸。
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2020年03月12日(木)
二階堂黎人編「御城の事件 東日本編」読了。江戸城大奥に出没する赤子の幽霊、密室状況の死と河童の目撃談、駿河国のとある城で見付かる首のないイタチの死骸と人間の生首……東日本各地の城を舞台にした事件を高橋由太、山田彩人、松尾由美、門前典之、霞流一の五人のミステリ作家が描く。
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posted at 23:49:14
タイトルにある通り、城で起きる事件をテーマにした五人のミステリ作家による全編書下ろしの時代ミステリアンソロジー。本格ミステリとして評価するか、それとも時代小説として評価するかでベストは変わってくるが、とりあえず本格として推すなら、やはり霞流一「富士に射す影」になるだろう。
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posted at 23:50:28
「落日のコンドル」や「夕陽はかえる」とリンクした設定で首のないイタチの死骸と人間の生首、天守と相撲(!)を取ったとしか思えない死体などやりすぎと言わんばかりに謎を詰め込んだ本作はバカミストリックの連打と奇想もさることながら、意外と犯人を絞り込むロジックが巧く決まっているのが○。
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posted at 23:50:49
一方、時代小説として選ぶなら山田彩人「安土の幻」で、一人の絵師が今はなき安土城が建てられた意図に迫るというロマンに満ちた物語をベースに兵糧攻めの城からのスリリングな脱出劇や魅力的な姫とのやり取り、そして歴史物ならではの外連味ある意外性など読んでいて楽しいエンタメ特化な内容がいい。
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posted at 23:50:58
そして、この本格ミステリと時代小説をバランスよく融合させているのが高橋由太「大奥の幽霊」で、大奥という舞台設定を活かした捻りのきいたプロットと時代小説を最も書き慣れている作者だからこその情感が実に素晴らしい。
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posted at 23:51:27
その他、松尾由美「紙の舟が運ぶもの」は時代小説ならではの日常の謎とファンタジー要素の組み合わせが不思議な余韻を生み出している佳品。門前典之「猿坂城の怪」は密室殺人と河童(?)の謎を扱った、良くも悪くも作者の近作「エンデンジャード・トリック」と同じ感想を抱かせる一編である。
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2020年03月15日(日)
綿世景「遊川夕妃の実験手記(エクスペリメントノーツ)彼女が孔雀の箱に落ちたわけ」読了。発明家・遊川夕妃とその助手の千代倉和は遊川の母校・堀泉女子学園で授業を受け持つことになったが、そのクラスでは確執のあった担任と生徒が二人とも行方不明になっているという怪事件が発生していた。
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posted at 16:08:40
星海社FICTIONS新人賞受賞作。作中でクロフツやルルー、天城一の名前が出てくるところを見るに作者はある程度ミステリ好きなのかもしれないが(その一方で吉川晃司や聖飢魔IIネタが出てくるのでもしかしたら意外と作者の年齢は上なのかもしれない)本作をミステリとして推すにはやや躊躇われる。
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posted at 16:08:58
というのも本作は事件の構図を悟らせないようにするあまりキャラの内面描写にいまいち踏み込みきれておらず、そのせいで構図のひっくり返しに対するキャラのギャップ感に説得力が伴っていないのだ。故に終盤の展開がただの安っぽいサイコパス小説になってしまっているのが残念。
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posted at 16:09:25
また事件の構造上仕方がないとはいえ物語の展開の遅さと事件の魅力のなさはいかんともしがたいし、伏線によってやや雑なものがあるのも気になる。帯には「この女探偵、めちゃくちゃでカッコいい!!」とあるが、個人的にはあまりピンとこなかった。
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posted at 16:09:42