麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年06月27日(月)
斎藤栄「京都瀬戸内殺人旅愁」読了。瀬戸内海に浮かぶ小豆島に住む、沢美鈴警部補の旧友の父親が自殺を仄めかす書き置きを残して失踪した。それから間もなく、横浜本牧で父親と思しき無惨な焼死体が発見される。早速美鈴は小豆島に飛ぶが、事件の背後には宝の在りかを記した古文書の存在が……。
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posted at 21:47:56
……という粗筋だけ見るとありがちな旅情ミステリだが、冒頭ニベージ目にいきなり出てくる「サイボーグ」という単語に大半の読者が度肝を抜かれることとなるだろう。……そう、本作はサイボーグ警官(!)の紫水警部が活躍する中編一本、短編ニ本から成る「旅愁」シリーズの作品集なのである。
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posted at 21:49:43
但し出来の方はかなりアレで、例えば粗筋にもある最初の短編「小豆島殺人旅愁」は紫水警部が何一つサイボーグらしい能力を発揮することなく普通に事件が解決、読者を違う意味で愕然とさせる(さすがに作者もこれはマズイと思ったのか続く中編「京都奈良殺人旅愁」では一転、紫水警部が大活躍するが)。
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posted at 21:50:49
またミステリ的にもかなりしょぼく、一つの作品集でまさか同じネタを全く同じパターンで二回見ることになるとは思わなかった(爆)。とはいえ「京都奈良殺人旅愁」でのイロモノバトル展開は結構好みではあるので、引き続きこのシリーズは追い掛けてみたいと思う。
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posted at 21:52:50
2011年06月28日(火)
赤川次郎「死者の学園祭」読了。「真知子、ねえ、真知子。――ここよ、ここよ!」校庭にいる真知子にそう声を掛けた後、クラスメイトの由子は校舎四階のベランダから飛び降りて命を絶った。その後、真知子は別の学校へ転校することになるが、その転校先で今度は謎の連続殺人に巻き込まれることに……。
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posted at 12:22:05
赤川次郎初期に書かれた学園長編ミステリである本作は、同じく初期に書かれた傑作「マリオネットの罠」と非常に構成が似通っている。三部構成で第一部は姿なき犯人によるショッキングな殺人シーンが目を引くサスペンス。
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posted at 12:24:11
それに対し第二部は一転、冒険色の強いヒロインの探偵パートになり、ここで作者はあっさりと犯人を明かして一応の決着をつける。そして、第三部は……それは各自が実際に読んで確かめてほしい。とりあえず一つだけはっきりしているのは、本作が学園ミステリの傑作ということである。
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posted at 12:25:43
赤川次郎「いつか誰かが殺される」読了。大財閥永山家の当主志津の70回目の誕生日を祝うべく続々と関係者が集まっていた。志津の家族は勿論のこと、脱獄した殺人犯やそれを追う警部、その警部の後を追う警部夫人までも……。そして全員が一堂に会した時、今年の賭けもとい殺人ゲームが幕を開ける。
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posted at 16:40:37
本作はタイトルにもある通り、「いつ」「誰が」殺されるのか?に主眼が置かれた作品である。といっても本作は推理してそれらを突き止めていくといった話ではない。きな臭い雰囲気が漂う中、運命の悪戯によって次々と人が死んでいくその展開はミステリというよりドタバタサスペンスといった方が正しい。
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posted at 16:42:08
とはいえ、これだけ入り乱れた物語をさらりと書いてしまうあたりはさすが赤川次郎と言うべきだろう。「死体は眠らない」などの作品が好きな人なら間違いなく気に入るであろう、ブラックユーモア溢れる逸品である。
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posted at 16:43:07
2011年06月30日(木)
橋本治「ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件」読了。テレビで見た横溝正史の金田一耕助物の影響で「我が家にも恐ろしいことが起こる」と怯えた鬼頭千満は優秀な探偵を呼ぶことを要請。かくして鬼頭家を訪れることになった僕だったが、その直後に千満は何者かに絞殺されてしまう。
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posted at 18:02:41
アンチミステリに似た何か。それが本作に対する率直な自分の感想だった。昭和軽薄体という変わった文体を採用した本作は一見、本格ミステリをパロディ化したユーモアミステリーのように思えるが、その真相はユーモアミステリーにしては極めて重く、どちらかと言えばアンチミステリに近い印象を受ける。
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posted at 18:03:32
しかし、あとがきと題した最終章がアンチミステリであることすらも拒否して、結果「アンチミステリに似た何か」というよく分からない評価に。ある意味「奇書」と呼ぶに相応しい作品かもしれない。
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posted at 18:06:58
2011年07月01日(金)
彩坂美月「ひぐらしふる」読了。夏の終わり、実家に帰省した千夏を待っていたのは地元の旧友たちとかつて自分の身の回りで起きた不思議な出来事だった。誰もいないさくらんぼ畑からの突き刺さる視線。山奥の霊場で失踪した親子連れ。UFOに攫われた幼馴染……そして千夏の前に度々現れる幻の正体は?
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posted at 22:56:30
本作は所謂日常の謎系連作ミステリだが、日常の謎物として見た場合、残念ながら微妙と言わざるを得ない。どこまでいっても予想の範疇を出ない真相にはいくら伏線が上手く張れていたとしても「ふーん」以外の感想が持てないのが辛いところ。
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posted at 22:57:38
では連作ミステリとしての仕掛けはどうかというと、これに関しては非常に惜しい。作者の狙いは決して悪くないと思うが、いかんせん伏線や状況説明が足りていないため、イマイチ説得力に欠ける印象。もう少し作り込んでいたならば、評価もまた違っていたと思う。
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posted at 22:58:25
2011年07月04日(月)
高柳芳夫「『ラインの薔薇城』殺人事件」読了。暗い伝説に彩られたライン河畔の古城に日本の財政界人たちが訪れたその日の夜に事件は起きた。有力代議士・伍東が密室状況の部屋で口内を弩の矢で貫かれるという伝説通りの方法で殺されたのだ。そうこうしているうちにまた一人命を落とす……。
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posted at 21:19:50
前作「『禿鷹城』の惨劇」の続編。故に前作が未読の方は、前作から読むことをお勧めしたい。前作の複雑極まりないトリックの凝りように比べると、本作のトリックは色々と物足りないかもしれないが、二転三転する展開がそれを補ってくれる。
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posted at 21:21:31
ややアンフェアなところもあるものの、この手の本格が好きな人であれば、ある程度の満足感を与えてくれる作品ではあると思う。とりあえず前作でモヤモヤした人は必読。
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posted at 21:22:37
2011年07月05日(火)
友成純一「電脳猟奇」読了。少年課の刑事である鏡子は担当していた少年が手足を縛られ嬲りものにされたあげく頭蓋骨に穴を開けられて様々な薬品を流し込まれるという陰惨な手口で殺されたことに衝撃を受ける。最初はリンチ殺人と思われたがやがてそれにスナッフビデオが関わっていることが分かり……。
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posted at 19:06:40
友成作品といえば良くも悪くも暴走したスプラッター小説ばかりというイメージがあるが、本作はというとグロ展開を盛り込みつつも(爆)基本は落ち着いた筆致で書かれた警察小説だったのでかなり面食らった。丹念に描かれたエピソードの積み重ねでぐいぐいと読ませる……が、最後の最後で大爆笑w
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posted at 19:08:16
それまで積み重ねてきたものをぶち壊しにしかねないギャグ展開に怒る人もいそうだが、これこそ友成純一の真髄(爆)。むしろ自分はこの渾身のギャグがやりたいがために書かれた作品なのではないかと思っているのだが、それは穿った見方過ぎるだろうかw 何にせよ、自分は大いに楽しませてもらった。
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posted at 19:09:30
2011年07月06日(水)
三津田信三「生霊の如き重るもの」読了。大学の先輩・谷生龍之介が幼い頃、疎開していた本宅で目撃したという『生霊』(ドッペルゲンガー)の謎。怪異譚に目がない言耶は早速その解明に乗り出すが、それがやがて不可解な復員兵殺人事件に発展することになろうとは、その時の言耶は知る由もなかった。
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posted at 22:42:51
刀城言耶シリーズの中・短編集第二弾。前作「密室の如き籠るもの」が微妙な出来だったので正直あまり期待していなかったのだけど、蓋を開けてみればなかなかどうして佳作クラスが幾つも収録された良質な作品集だった。
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posted at 22:44:49
怪異譚+脱力トリックで構成された前作と違い、本作は収録作の大半が刀城シリーズ長編のコンパクト版とも言える仕上がりで前作に感じられた物足りなさが見事に克服されている。特に表題作の読み応えは半端ではなく、これだけでも刀城長編に匹敵する満足感を得ることができる。
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posted at 22:46:34
ベストは断トツで表題作だが、「顔無の如き攫うもの」のゾクリとさせる真相と結末もいい。当初の予想を良い意味で裏切ってくれた本作は間違いなく今年度の収穫の一つと言っていいだろう。
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posted at 22:48:55
2011年07月09日(土)
倉野憲比古「墓地裏の家」読了。吸血鬼ストリゴイを崇拝する神霊壽血教。その教主の様子がおかしいとの相談を受け、教会を訪れた夷戸が見たものは憑かれたように観覧車に見入る教主の姿だった。やがて自傷癖のある教主の娘が密室で変死を遂げたのを機に、血塗られた惨劇の幕が切って落とされる。
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posted at 17:32:20
処女作「スノウブラインド」から約三年ぶりの第二作。「探偵小説とB級ホラー映画をこよなく愛する」という作者のプロフィールが物語るように本作は良くも悪くも古めかしい探偵小説とB級ホラー映画が融合した作品に仕上がっている。個人的には本作のような作品は嫌いではないが、不満点もかなり多い。
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posted at 17:36:17
まず物語の展開だけではなくトリックまでもが「古めかしい探偵小説」なところがいただけない。また真相がどこまでいってもB級ホラーの域を出ないために、意外性や突き抜けたものを求めると確実に肩透かしを覚えることになるだろう。
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posted at 17:39:32
むしろ自分としては某キャラに隠された秘密の方が衝撃的だったのだけど、それってミステリとしてはどうなのだろうと思わなくはなかったり(爆)。とはいえ作品の雰囲気は悪くはないので次回作にも期待したいと思う。個人的な評価としては「スノウブラインド」>「墓地裏の家」。
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posted at 17:41:01