麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年06月06日(月)
東野圭吾「真夏の方程式」読了。美しい海辺の町で夏休みを過ごすことになった少年。その少年が滞在する旅館には物理学者の湯川もいた。やがて一人の男が変死体となって発見される。最初は単純な事故と思われたが被害者が元警視庁の刑事であることが明らかになった途端、事件は思わぬ方向へ動き始める。
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posted at 19:45:18
シリーズ前作「聖女の救済」が毒殺ものの傑作だったこともあり個人的には大いに期待していたのだけど……結論から言うと湯川長編と言うより「麒麟の翼」を読んだような印象だった。これまでの湯川長編と言うと「天才型犯人対名探偵」というスタイルだったが、本作ではそれを大きく崩している。
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posted at 19:46:13
というか、そもそも子供嫌いであるはずの湯川がたまたま知り合った少年のことを何かと気にかけるというストーリー展開からしておかしいのだけど、それよりも納得がいかなかったのは前二作に比べてミステリ部分にそれほど重点が置かれていないことだった。
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posted at 19:49:20
まあ今回は天才型犯人が相手ではないからそれでも良かったのかもしれないが、従来のスタイルを崩してまでやりたかったことが「麒麟の翼」と丸被りなのはいただけない。巧みな筆致で読ませる作品なのは確かだが、ミステリとしては正直物足りなかったと言わざるを得ない。
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2011年06月07日(火)
門前典之「灰王家の怪人」読了。自分の出生の秘密を知るため鳴女村を訪れた慶四郎はひょんなことから既に廃業した温泉旅館灰王館に滞在することになる。そこで彼は女将の娘、綾香から十三年前に灰王家の座敷牢で起きた奇妙なバラバラ事件の話を聞くが、それから間もなく同じ座敷牢で再び事件が起こる。
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posted at 12:31:55
読了後の感想は「やっちゃった」の一言に尽きる。というのも本作はメインのネタが去年出た某作品と完全に被ってしまっているのだ。それを抜きにしたとしても、このネタは余程上手くやらないとすぐに見抜かれてしまう危険性を孕んでいる(現に自分はその某作品もかなり早い段階で気付いてしまった)。
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2011年06月08日(水)
斎藤肇「廃流」読了。S県のほぼ中央に位置する人口およそ十二万の街・田山市が一夜にして日本中の人たちから好奇の目を向けられるきっかけとなったのは『路上に残された上半身』だった。帰宅途中に襲われたその女子高生の死体は、奇妙なことに下半身がまるで溶かされたように消滅していた。
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ホラー長編の書き下ろしシリーズ「異形招待席」の第三弾である本作はあとがきで作者が語るようにホラーとしては変化球な作品である。始まりこそ得体の知れない怪物に対する恐怖を描いたモンスターパニックホラーとも言うべき展開だが、中盤から一転してボーイミーツガール物の気配が濃厚に漂い始める。
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posted at 18:47:41
そして、それはやがて物語全体を覆い尽くし、遂にはホラーとは思えない美しいラストを迎えるに至る。そうして胸に残るのは、清々しい読後感。純粋に「恐い話」を求めている人には微妙かもしれないが、個人的には偏愛したい作品である。
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2011年06月09日(木)
倉阪鬼一郎「死の影」読了。亡くなった婚約者が書いた小説で一躍ベストセラー作家になった男。獲物を求めて街を彷徨する殺人鬼。ストーカーに目の前で自殺されて以来ノイローゼに陥った女。暗躍する宗教団体。そして……物語はやがて一つの『地獄』を迎える。
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posted at 18:04:13
長編ホラーの書き下ろしシリーズ「異形招待席」の第一弾である本作は、倉阪版「インフェルノ」と言うべき作品である。ちなみにこの「インフェルノ」というのはイタリア・ホラー映画界の巨匠ダリオ・アルジェントの映画で魔女三部作の二作目なのだけど、知名度の低さ故に知ってる人は殆どいないだろう。
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posted at 18:05:27
とはいえ知ってる人間からするとニヤニヤできる部分は多く、個人的には「インフェルノ」のサントラを聴きながら楽しませてもらった。またミステリとしてもなかなか面白い仕掛けが用意されているので、ホラーが苦手でなければ読んでみてもいいかもしれない。
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2011年06月10日(金)
辻真先「ローカル線に紅い血が散る」読了。トラベルライター瓜生慎の恋人、真由子は大学の友人、鞠子から恋の助っ人を頼まれる。何でも鞠子と今の恋人の交際に父親が強硬に反対、有力議員の息子を押し付けられているという。そんな折り、廃止されたローカル線で鞠子の父親が轢死体となって発見される。
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posted at 19:27:10
「走りもしない列車によって轢き殺された男」という謎は魅力的ではあるが、個人的に惹かれたのは犯行方法よりもむしろ、その動機である。ミステリとしてはどうなのかという気がしないでもないが、そこに込められた作者のメッセージにはなかなか興味深いものがある。
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posted at 19:27:56
村瀬継弥「僕の推理とあの子の理屈」読了。高校2年の夏休み。ひと夏を楽しく過ごそうと二木平村を訪れた僕を待っていたのは、お正月に起こったある密室殺人を巡る『推理ゲーム』だった。事件当時、現場に人が出入りした形跡はなく、被害者と二人きりだった男の手には凶器の紐が握られていたという。
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posted at 19:30:02
ラノベレーベルから出たとは思えないくらい、キャラ萌え要素皆無の作品である。しかも物語の大半は『推理ゲーム』に費やされているため、ラノベ読者にとっては極めて地味な作品と言えるだろう。だが、それは言い換えれば、作者がそれだけ真面目に『推理ゲーム』に取り組んでいる証拠でもある。
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posted at 19:31:52
事件の内容自体は派手さに欠けるものの、作者が知力の限りを尽くし、フェア・プレーで臨んだと語るだけあって、手堅い出来には仕上がっていると思う。我こそはと思う読者は、作者の仕掛けたこのゲームに挑戦してみてはいかがだろうか。
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2011年06月11日(土)
玩具堂「子ひつじは迷わない」読了。生徒会が毎週水曜日の放課後に第三会議室にて生徒たちの悩みを聞き、解決する相談会「迷わない子ひつじの会」。そこに持ち込まれる様々な悩みを解決するのは生徒会の精鋭メンバー……ではなく、その隣の資料室に居座る文芸部の幽霊部員、仙波明希だった。
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本作は四つの短編から成る連作学園ミステリである。但し、それはあくまで広義の意味であって、狭義の意味でミステリかと言われると正直首を傾げざるを得ない。確かに本作はミステリの手法を用いてはいるものの、それ以上のものはなく手法のみで終わってしまってる感が否めないのだ。
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posted at 19:08:26
しかも最後の短編に至ってはミステリですらない。とはいえ幾つか短編を読む限り、それなりのミステリセンスは感じられたので、引き続き次回作も読んでみたいと思う。
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2011年06月12日(日)
小川勝己「愛の遠近法的倒錯」読了。岡山にあるSという村ではかつて小松崎家と藤平家という二つの勢力が対立していたが、ある出来事をきっかけに藤平家は没落し小松崎家の天下となった。だが終戦間もなく小松崎家の当主が割腹自殺を遂げたのを機に凄惨な連続殺人が発生。金田一耕助が事件に挑む。
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posted at 10:49:38
金田一耕助のパスティーシュ物にしてどうしようもなく小川勝己な作品。本作は中盤までは金田一耕助作品を踏襲しているが、犯人が明らかになり動機の話になった途端、一転して小川勝己の独壇場になる。この狂いつつもどこか哀愁を感じさせる事件背景こそ小川勝己という作家の最大の特徴だと思う。
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posted at 10:51:10
個人的には良くできたパスティーシュ物とは元の作品の雰囲気を忠実に再現した上で、どれだけその作家の個性が発揮できるかで決まると思っている。その基準に当て嵌めて言うのであれば、本作は些か詰め込み過ぎなきらいはあるものの、作者の個性が実に良く活かされたパスティーシュ物の逸品である。
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posted at 10:53:03
2011年06月14日(火)
明月千里「月見月理解の探偵殺人5」読了。このシリーズも今回をもって完結。タイトルに惹かれて買った一巻が思いの外面白かったのでここまで読んできたわけだが、結局ニ巻で感じた問題点(ミステリ的意外性も緊迫感もない、ただ複雑なだけのデスゲーム)を最後まで克服することなく終わってしまった。
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posted at 20:13:41
また物語としても、長々引っ張った割にあっさりし過ぎだったり、ご都合主義的な面が目立っていたのが残念でならない。折角の最終巻なのに微妙な感想になってしまった。
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posted at 20:14:39
2011年06月15日(水)
山口芳宏「蒼志馬博士の不可思議な犯罪」読了。弁護士の私が密かに想いを寄せていた女性、綾子が姿を消したことが事件の発端だった。彼女は姿を消す前に米軍接収地でトラブルに巻き込まれていた。一方、戦時中、数々の兵器を開発した天才科学者、蒼志馬博士を名乗る人物から米軍宛てに脅迫状が届く。
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posted at 11:33:47
眉目秀麗な行動派探偵・荒城と学ランを着た義手探偵・真野原が活躍するシリーズの三作目。本作は作者初の連作短編集だが、ベタな冒険活劇物というスタンスは長編の時と変わらない。むしろ、短編の方がよりそれに拍車がかかっているような印象がある。
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posted at 11:35:46
ミステリとしてみると正直イマイチな感は否めないが、長編のように中弛みすることなくテンポ良く読めるので、何か軽いものが読みたいという人には丁度いいのかもしれない。
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posted at 11:36:56
舞阪洸「万年島殺人事件」読了。横一列に並んだ二つの島「千年島」と「万年島」。樟葉学園ミステリー研究会の面々が合宿先である万年島の別荘にやって来た翌朝、何と千年島が忽然と消えてしまうという信じられない事態が発生する。そして、それを皮切りに外界から隔絶された万年島では惨劇が……。
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posted at 16:55:27
現実を侵食する「妄想」によって引き起こされる事件を解決する「壊し屋」翔子シリーズの一作目。基本的にはオーソドックスな孤島物(しかも読者への挑戦付き)だが、「妄想」というファンタジー設定が本作をバカミスたらしめている。特に島が消失した真相には思わず笑ってしまった。
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posted at 16:56:26
また本作に仕掛けられたトリックに関しては目新しさこそないものの、思った以上に伏線が張られていて好印象。田代裕彦「痕跡師の憂鬱」シリーズ同様、レーベルの特色を上手く活かしたミステリだと思う。あと妹好きの人にはお勧めのエロミスである点も個人的にはポイント高し(爆)。
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posted at 16:58:08