麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年07月10日(日)
吉村達也「トワイライトエクスプレスの惨劇」読了。俳優・藤城清秀の家に届いた一つの小包。藤城の妻が開けてみると中には老人の生首が入っていた。……その後、警察の調べで生首が作り物であることが判明、悪質な悪戯と思われるがその送り主もまた変死体で発見。しかもその顔は生首にそっくりだった。
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posted at 12:34:02
本作で起こる事件は大まかに前半の生首事件と後半の寝台特急を舞台にした殺戮劇の二つに分けられるが、前者は推理パートも含めてなかなかよく考えられていると思う。だが、問題はタイトルにもなっている後者の方で、こちらの真相に関して最後まで分からなかった読者は恐らくいないのではないだろうか。
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posted at 12:35:51
何だか前半パートだけで力尽きて、後半パートは勢いだけで書いた感が否めない。事実、後者はサスペンス重視で推理もへったくれもないのが気になる。物語として破綻したところは特にないが、できるならばメインとなる後者の事件もそれなりに練り込んでほしかったと思う。
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posted at 12:37:18
2011年07月11日(月)
北國浩二「嘘」読了。五年前に息子を水難事故で亡くした絵本作家の千紗子は、縁を切った父が認知症になったことを知り、介護のために暫く同居することになる。そんなある時、実の親に虐待されている少年を助けた千紗子は少年が記憶を失っているのを幸いに自分の息子と嘘をつき、一緒に暮らし始める。
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posted at 22:02:04
本作を読んで自分が真っ先に思い出したのは乾くるみ「イニシエーション・ラブ」だった。乾くるみが恋愛小説に擬態した本格ミステリを書いたのに対し、北國浩二は「嘘」というタイトルの家族小説に擬態した本格ミステリを書いてみせた。だが擬態とはいえ本作が優れた家族小説であることには変わりない。
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posted at 22:03:14
かつて道尾秀介は「本格ミステリは人間を描く手段として最も有効だ」と語っていたが、本作がその言葉を見事に体現した作品の一つであるのは間違いない。帯にある「二度読み必至」「感動&驚愕」に偽りなしの傑作である。
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posted at 22:04:25
2011年07月12日(火)
草野唯雄「甦った脳髄」読了。ホラー要素の強いミステリ八編を収録した短編集。草野唯雄のホラーミステリというとキワモノ&ダメミスである確率が極めて高いが(!)本作に関しては幸いにもダメミスではない。ただし、キワモノではあることに変わりはなかったりする(爆)。
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posted at 21:14:09
例えば表題作。知能発育が遅れた子供にある天才教授の「脳汁」を皮下注射したところ、言語の発達・判断力の増加が見られるようになった一方で美人の母親に対し「女の人のあそこが見たい」と発言、性への異常な関心を示すようになっちゃったというあらすじの時点でかなりアレw
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posted at 21:16:04
他にも異常に性欲が強い貧乏画家が見た淫夢がある洋館の惨劇と結び付く「死霊の家」や感度良好な若妻を得たことで初めて性の悦びを知った老博士が事故で植物状態になってしまった若妻を蘇らせるべくおぞましい人体実験に手を出す「呪いの幽体」などどれをとってもキワモノ好きには堪らない内容である。
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posted at 21:17:14
個人的に良かったのは「皮を剥ぐ」と「闇の中の柩」。前者はそのタイトルからも察しがつく通りイヤ感たっぷりのホラー。後者はこの短編集のコンセプトから些か浮いている感はあるものの、作者らしいどんでん返しが鮮やかなサスペンス色の強い本格ミステリである。
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2011年07月13日(水)
草野唯雄「淫らな聖女」読了。サスペンス色の強い短編九編を収録したミステリ作品集。性交中に女の首を絞め、殺人未遂に問われた過去のある男が、ふとしたきっかけで知り合った美女から再び「首を絞めて」と迫られる表題作を始めとしたエロミス群もいいが、ベストは何と言っても「道連れ」だろう。
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posted at 21:25:21
異形の論理によって生まれた悪意が巻き起こす事件の数々は下手なホラー小説の何倍も恐ろしい。読者を突き放すような幕切れも含め大好きな一編である。また緻密に計算されたエロ犯罪計画(?)に爆笑のオチがつく「華やかな罠」もいい。個人的にはエロミスとサスペンスの饗宴が楽しい作品集だった。
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posted at 21:28:34
2011年07月14日(木)
倉数茂「黒揚羽の夏」読了。両親の都合で千秋ら三兄弟が夏休みの間過ごすことになったその村では度々少女が拐われ死体で見付かる事件が起きていた。それと平行して彼らを見舞う不可解な出来事。炎を伴った奇妙な夢。六十年前の日記。死に彩られた不気味な映画のフィルム……それらは何を意味するのか?
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posted at 21:30:17
本作を読んで解説者は「虚無への供物」を思い出したと語っているが、どちらかと言えば本作は「アクアリウムの夜」に近いだろう。事件には一応の解決が用意されているものの不可解な部分も多く、モヤモヤするこの読後感は正に幻想ホラーのそれである。
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posted at 21:31:22
ミステリ好きにも、推理小説好きにも、幻想小説好きにも、ジュブナイル好きにも、ヤングアダルト好きにも、文芸好きにも、エンタテイメント好きにも勧めたい一冊――というのは解説者の弁だが、とりあえず真っ先に読むべきなのは幻想ホラー好きだと思う。
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posted at 21:32:20
2011年07月16日(土)
赤川次郎「失われた少女」読了。雪に埋もれた別荘で一人静かに暮らす作家・伊波の許に記憶を失った少女が迷い込んできて以降、周囲で不可解な事件が続発する。近くの空き家で発見された大量の血痕。少女を知る者から届いた小包。次々と殺人を犯す謎の大男……全ての事件の鍵は記憶喪失の少女が握る。
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posted at 16:52:34
解説でも触れられているが、本作はどことなく「マリオネットの罠」を彷彿とさせるサスペンス・ミステリである。このタイプの作品は作者が得意としているだけあって読ませる力はかなりのもの、謎が謎を呼ぶ展開の連続にぐいぐいと引き込まれる……が、いかんせん肝心のラストがいただけない。
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posted at 16:53:59
伏線も全くなく突然明かされる犯人、辻褄だけ合わせたような真相は興醒めもいいところである。読後感が悪くないことだけがせめてもの救いだが、折角途中までの展開がいいだけに、この結果は非常に残念でならない。
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posted at 16:55:04
2011年07月17日(日)
赤川次郎「晴れ、ときどき殺人」読了。昔、無実の人を死に追いやった。そして最近ごく身近な人の中に真犯人がいることが分かった――そんな衝撃的な内容の手紙を一人娘の加奈子に遺して北里財閥の当主・浪子は急死した。通夜当日そのごく身近な人たちが北里邸に詰めかける中、静かに殺人劇の幕が開く。
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posted at 00:01:10
オーソドックスな設定を赤川次郎が料理したらどうなるかという見本のような作品。まるで舞台劇のように進行する中、次々と発生する事件の数々にちゃんと収拾できるのか不安になってくるが、そこは赤川次郎。250ページというコンパクトな長さでさらりとまとめあげてしまう。
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posted at 00:05:17
ミステリとしても伏線がキレイに決まっていて申し分ない。唯一の不満は屋敷に迷い込んだ青年・上村が巻き込まれた事件が本編と一切関わっていないことだが、さすがにそこまで求めるのは酷というものだろう。赤川次郎にしか書けない、良質の「館もの」ミステリである。
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posted at 00:06:28
2011年07月18日(月)
石崎幸二「袋綴じ事件」読了。孤島に隠棲する研究者がダイヤル錠の付いた部屋で何者かに襲われた。現場は密室状態だったがダイヤル錠のナンバーを知っていれば誰にでも施錠は可能だったという。事件が混迷を深める中、突然ミリアが事件の鍵は石崎の持ち込んだ袋綴じの推理小説にあると言い出して……。
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posted at 17:16:10
ページがまるまる袋綴じになっている「密室本」企画の一冊として書き下ろされた本作。袋綴じであることを仕掛けとして活かそうとした試みは評価するが、お世辞にもそれが上手くいっているとは言い難い。仮にそこを抜きにしたとしても、散々引っ掻き回した割りに至って普通の真相でかなり物足りない。
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posted at 17:26:18
草野唯雄「まぼろしの凶器」読了。謎解き重視の八編を収録したミステリ短編集……なのだけど、どれが良かったと聞かれると正直困ってしまう(汗)。例えば表題作はタイトルからも分かるように凶器の謎がメインだが、専門知識に寄るところが大きいため、いまいちピンとこないのが難。
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posted at 17:59:20
また作者らしいどんでん返しが用意されている短編も幾つかあるものの、伏線がなかったり、予想の範囲内だったりで手放しで褒めることができない。それでも強いてベストを挙げるならば、マンションの屋上から墜落したはずの男の死体が何故か三階の別の部屋から発見される「一寸先は闇」だろうか。
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posted at 18:00:44
島田荘司を彷彿とさせる奇跡のバカトリックに唖然とすること請け合いだが、島田荘司と違い、装飾で誤魔化すようなことは一切していないので「そんなバカな」で終わってしまう可能性も否めない。個人的には不満の残る内容だった。
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posted at 18:01:40
2011年07月20日(水)
草野唯雄「解明旅行」読了。定年を迎えた巽は長年勤めた相互銀行の退職を機に妻と車で長距離旅行を計画する。それはかつて巽の部下であり妻の同僚だった四人の女性を訪ねる旅でもあったが、訪ねる先々で彼女たちは何者かに次々と殺されていく。連続殺人を繋ぐ動機とは?
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posted at 15:39:05
粗筋だけ見るとミッシングリンクものっぽい本作だが残念ながらその動機に関しては物語の早い段階で割れてしまっている。また犯人についても中盤であっさり明かされる上に伏線もなかったりするので消化不良なのは否めない。では何が本作の魅力なのかと言えば勿論この作者得意のサスペンスに他ならない。
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posted at 15:40:11