麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年06月17日(金)
「Q.E.D.」39巻読了。今回はオンボロアパートの開かずの間で起きた大家の首吊り事件に端を発する「ああばんひるず6号室事件」と『ボイジャー計画』に携わった燈馬の恩師が妻の命日を前に失踪、その真意に迫る「グランドツアー」の二本を収録。前者は大家の死の真相にまず脱力(苦笑)。
タグ:
posted at 10:00:49
トリックにしても盲点を突いたというよりアレが外れることにビックリした。むしろ個人的に評価したいのは後者の方で何故燈馬たちが呼ばれたのかという理由に「グランドツアー」の意味を絡めた点が秀逸。そして人物設定を活かしたオチの付け方もまた素晴らしい。構成の上手さが光る秀作だと思う。
タグ:
posted at 10:01:51
舞阪洸「青屋敷殺人事件」読了。「妄想」によって引き起こされる事件を解決する「壊し屋」翔子シリーズの二作目。前作が孤島が舞台だったのに対し、本作の舞台は嵐の山荘。しかも上下巻とくれば否応なしに期待は高まるが、残念ながらその期待に応えるような内容だったとはお世話にも言い難い。
タグ:
posted at 19:32:05
発想としては悪くないが、この一発ネタでこれだけの長編を支えるのはさすがに無理がある。現に上巻の冗長さにはかなり閉口した。あとがきで作者はこれを書いた年は九作も出したと多作ぶりをアピールしているが、できれは次回作ではもう少し時間をかけて作り込んだミステリを読ませてほしいと思う。
タグ:
posted at 19:32:50
2011年06月18日(土)
島田荘司「ハロゥウイン・ダンサー」読了。空から太陽が消え世界から風が失われた季節のない街、ハロゥウイン・ダンサー。様々なルールが支配するその街で生きるエドとメラニーはいつしか自分たちがいる街の正体に興味を抱き始める。絶対に開けてはならない「雲の門」が開いた時、日常が一変する――。
タグ:
posted at 18:14:21
「大地を揺るがす圧倒的な奇想」というキャッチコピーに偽りなし。大河ノベル「Classical Fantasy Within」第八話にあたる本作は独立した物語としても楽しめる島田荘司にしか書けない本格ミステリである。本作で扱われる謎――それはハロゥウイン・ダンサーという街の正体だ。
タグ:
posted at 18:17:05
その真相は士郎正宗の美麗なイラストと共に示されるが、その時の衝撃は正に「日常が一変する」という例えが相応しい。圧倒的奇想と胸躍るボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーが見事に融合した本作は「摩天楼の怪人」と並ぶ、島田荘司の近年の傑作である。
タグ:
posted at 18:23:05
2011年06月20日(月)
鮎川哲也「貨客船殺人事件」読了。本作は犯人当て推理傑作集とあるが、収録された九編のうち犯人当てと言えるのは五編で残りは全て倒叙物になる。そして、どの作品も傑作とはお世辞にも言い難い。というのも、ミステリ的にはどれも小粒過ぎて、かなり物足りないのだ。
タグ:
posted at 18:22:50
それでいて、犯人当てクイズに特化しすぎて小説としては全く面白くないという欠点を抱えている(その点では倒叙物の方がまだマシかもしれない)。鮎川哲也の犯人当てと言うと「達也が嗤う」や「薔薇荘殺人事件」クラスを期待していた自分にとっては残念ながら本作は期待ハズレな作品集だった。
タグ:
posted at 18:23:44
2011年06月21日(火)
蘇部健一「恋時雨」読了。一言でいうと蘇部版「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。これまでに作者は何度かSF作品を発表しているがその中でも本作は「届かぬ想い」と並ぶ完成度の高いSFに仕上がっている。「届かぬ想い」を良質のバッドエンドSFであるとするなら本作は良質のハッピーエンドSF。
タグ:
posted at 13:20:26
エピローグから始まる展開に最初は首を傾げる人もいるかもしれないが、読み終わると成る程と納得する一方で、巧みに計算された蘇部作品らしからぬ(!)構成に驚くに違いない。自信作と作者が語るだけのことはある作品だと思う。
タグ:
posted at 13:21:32
二階堂黎人編「密室晩餐会」読了。本作は密室をテーマにした書き下ろし短編六本と中編一本が収録されたアンソロジーだが結論から言うと大山誠一郎の圧勝だった。殆どの作品が密室を単なるシチュエーションの一つとして扱っているがそれを最も上手く活かしたのが大山誠一郎「少年と少女の密室」だろう。
タグ:
posted at 21:59:13
思わぬ所から密室が瓦解しそこから導き出されるロジックで一気に意外な犯人が明らかになる怒涛の展開は他の執筆陣を圧倒的に凌駕している。何から何まで計算された、無駄な部分が一切ない構成には脱帽するしかない。ぶっちゃけこのアンソロジーは大山誠一郎のためにあると言っても過言ではないだろう。
タグ:
posted at 22:06:08
次点はお馴染みのシリーズ探偵・音宮美夜が密室を作り上げた犯人と心理戦を繰り広げる天祢涼「楢山鍵店、最後の鍵」。逆にワーストは麻生荘太郎「寒い朝だった 失踪した少女の謎」で、申し訳ないがこの作品に関しては何がやりたいのかよく分からなかった。
タグ:
posted at 22:07:50
2011年06月22日(水)
湯川薫「Dの虚像」読了。道行く人々の目前で起きた奇妙な女子高生誘拐事件。捜査に乗り出したサイバー探偵・橘三四郎は誘拐された少女の父親宛に送られてきたDNA暗号で書かれた脅迫文を解明し、少女を無事救出した。だが、それから間もなく少女の父親が密室で串刺しにされた無残な姿で発見される。
タグ:
posted at 13:17:22
ミステリだと思って読んだら何か別のものだったというのは湯川作品の常だが本作はこれまで自分が読んだ湯川作品の中では最もミステリしている作品である。とはいえそれも終盤になるとミステリ部分は見事なまでに放棄され、代わりに台頭する新興宗教とトンデモ科学のコンボでかなりゲンナリさせられる。
タグ:
posted at 13:18:06
作中で作者は何度も本作の謎を整理し、これみよがしに提示してみせるが、それをまともに取り合っていたらバカを見ること間違いなしである。また困った時の神頼みよろしく、新興宗教という設定をあまりに都合よく使いすぎている点も気になる。
タグ:
posted at 13:18:52
蘇部健一「長野・上越新幹線四時間三十分の壁」読了。新潟のマンションで殺された男はお天気お姉さんとして人気を誇る遠藤玲奈の双子の妹、安奈の恋人だった。警察は安奈を疑うが彼女には鉄壁のアリバイが……。数日後今度は長野で玲奈の夫が殺され玲奈が疑われるが彼女もまた鉄壁のアリバイがあった。
タグ:
posted at 17:39:19
タイトルからも分かるようにアリバイ崩しに真っ向から挑んだ本作は、双子を使ったアリバイトリックであることを堂々と宣言した上でこちらの予想を裏切ってみせるという離れ業を見せてくれる……のだけど、いかんせん見せ方が下手過ぎて凄いことをやっているようには全く思えないのが難点か(爆)。
タグ:
posted at 17:40:08
むしろ表題作よりもオマケの短編の方が出来がいいと思っているのは多分自分だけではないだろう。自分が読んだのは文庫版なのでボーナス・トラックを含めた倒叙物の短編三本が収録されているが、どれも表題作より確実に面白い(爆)。やはり蘇部健一はアリバイ崩しより倒叙物の方が向いていると思う。
タグ:
posted at 17:41:33
2011年06月23日(木)
湯川薫「百人一首 一千年の冥宮」読了。ニューヨークに住む隼と真紀の許に届いた不気味な封書。中には百人一首の歌が血書されたタロットカードが入っていた。それから数ヶ月に渡り五通の封書が届いた後完全密室と化した部屋の中で隼の弟分・次郎が謎の言葉を残して死亡、真紀もまた姿を消してしまう。
タグ:
posted at 01:54:05
あらすじで完全密室を謳っているものの、正直この真相は噴飯物と言っていいだろう。仮にこれを成立させるならもっと徹底的に下地を作らなければいけないところを作者は突貫工事で済ませてしまっている為、その有り得なさにもはや脱力するしかない。
タグ:
posted at 01:55:25
ただ本作を読む限りミステリ部分はオマケに過ぎないのだろうなという気もする。作者が書きたかったのは百人一首と絡めたネタの方であってミステリ部分はそれを盛り上げる為の装飾に過ぎない。でもそれだったら最初からミステリとして書くなよと思ってしまうあたりが本作のダメミスたる所以なのだろう。
タグ:
posted at 01:56:51
篠田秀幸「蝶たちの迷宮」再読了。密室状態の部屋から突如聞こえた女の悲鳴。だが鍵を開けて中へ入ると、そこには女の姿はなく首に白い紐が巻かれた男の死体が転がっていた。一方、その六週間前には同人誌に『蝶』という短編小説を寄稿した少年が不可解な死を遂げていた。果たして、両者の関連は?
タグ:
posted at 18:52:40
本作は「匣の中の失楽」や「虚無への供物」を意識しているだけあって作者の気迫がひしひしと感じられるが、逆に言えば「それだけ」しかない作品。終盤に至っては作者がこれでもかと傍点を振る度に読者の方はどんどん萎えていく。作者の狙いが壮絶なまでに空回りしている典型例と言っていいだろう。
タグ:
posted at 18:53:27
あとがきによると推薦者の竹本健治からは「本作品は破綻しているからこそ最大の価値がある」との賛辞を頂戴したとのことだが、それは失敗作に対する竹本健治なりの慰めなんじゃなかろうかと思ってしまうのは多分自分だけではないだろう。個人的には奇書とは狙って書くものではないと思う。
タグ:
posted at 18:56:01
2011年06月25日(土)
京極夏彦他「金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲」読了。タイトルにある通り金田一耕助をテーマにした九編の短編が収録されたミステリアンソロジー。中にはどうしてこの人が執筆陣に選ばれたのか首を傾げたくなる出来の短編もあるものの収録作の大半は充分金田一愛の感じられるものに仕上がっていると思う。
タグ:
posted at 17:41:52
ベストはバスティーシュ、ミステリ共に高いクオリティを維持しつつ、自分の個性を思う存分発揮した小川勝己「愛の遠近法的倒錯」。その他では金田一愛というより横溝愛に満ちた京極夏彦「無題」や、どこか東野圭吾「名探偵の掟」を彷彿とさせるギャグ作品の北森鴻「ナマ猫邸事件」が印象に残った。
タグ:
posted at 17:42:42
2011年06月26日(日)
高柳芳夫「津軽富士殺人事件」読了。推理作家の朝見は当初の計画通り、プレイボーイのギーノ・ラーベを弘前城の濠に突き落として殺害した。だが翌朝、驚くべき事実が朝見を打ちのめす。何と、濠に沈んだはずのラーベが数キロ離れた奥羽本線の線路上で轢死体となって発見されたのだ。
タグ:
posted at 15:10:31
トラベルミステリっぽいタイトルとは裏腹に散歩する死体、幻の女、一夜にして消えたバー等々本格ミステリらしい謎が幾つも登場する作品。その解決も斬新さはないが極めて堅実。犯人を絞り込むロジックについても特に不満点はない。また物語としても適度に展開を持たせて飽きが来ない作りになっている。
タグ:
posted at 15:12:31