麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年05月23日(月)
稲生平太郎「アクアリウムの夜」読了。事の始まりは、親友の高橋と行った奇妙な見世物『カメラ・オブスキュラ』だった。そこである筈のない水族館の地下への階段を見て以来おかしな出来事が続発。こっくりさん、霊界ラジオ、邪強の影、精神に異常をきたした親友……そして、遂に文化祭で惨劇が起きる。
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posted at 15:50:22
一言で言えば、青春幻想ホラー。解説でも触れられているが主人公たちと同じ年代、高校生の時に読めば色々と感じ入るものがあったのかもしれない。どこかノスタルジックな雰囲気の中、展開するミステリアスな物語。とはいえ過ぎ去ってしまった日々に思いを馳せて読んでみるというのも充分アリだと思う。
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posted at 15:52:41
2011年05月25日(水)
斎藤肇「盗まれた死角」読了。名探偵が警察に代わり事件を捜査する、所謂『名探偵システム』が確立された世界で起こったある殺人事件。美術館の森で見付かった死体には首がなく、代わりにヴィーナス像の首が置かれていた。それからしばらくして今度はヴィーナス像の腕を持つ死体が発見される。
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posted at 17:29:45
『名探偵システム』という設定は実にあの「思い」三部作を書いた作者らしいと思う反面、事件の方は捻くれ者の作者らしからぬこじんまりとしたものでやや物足りない感あり。書き方によってはそれなりに盛り上がる題材だと思うのだが、どうも作者的にはその辺のことはあまり興味がないように感じられる。
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posted at 17:30:42
それは本作の終章部分にも如実に顕れており、そういった部分は個人的には結構好みではある。ミステリとしては少々肩透かしだが、「思い」三部作を読んだことがある人ならば色々深読みができる作品だと思う。
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2011年05月26日(木)
石持浅海「ブック・ジャングル」読了。閉鎖された夜の図書館にそれぞれの思惑から忍び込んだ五人の男女を待ち受けていたのは、毒針が仕込まれたラジコンヘリだった。誰が、何のために彼らを襲うのか。全てが謎に包まれた中で、機転と悪意の攻防戦が始まった――。
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posted at 12:28:45
面白かった。本作は作者の集大成的な作品である「この国。」に収録された一編「エクスプレッシング・ゲーム」の長編版とも言うべき作品である。手を変え品を変え襲ってくる敵の攻撃に対し、その場にあるモノを使っていかに対抗するか。その攻防は実にスリリングで、思わず手に汗握らずにはいられない。
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posted at 12:29:32
もともとこの手の作品を得意とする作者だけに出来としては保証済み。更にそこへ近年作者が推し進めている(?)エロ要素も加わっているとあらば正に鬼に金棒。本作は一気読み必至の良質なエンターテイメント作品である。
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posted at 12:31:07
2011年05月27日(金)
似鳥鶏「まもなく電車が出現します」読了。「理由あって冬に出る」から続く、葉山君が語り手を務めるシリーズも早いもので今回で三作目。開かずの間に突如出現した鉄道模型の謎を扱った表題作を含む五つの短編が収録された本作は、シリーズ中最もミステリ度が高い作品に仕上がっている。
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posted at 23:18:15
これまでミステリとして見ると弱いと言われてきた作者だが、本作は見違えるようなとまでは言わないまでもこなれてきた感は少なくとも感じられる。あるプラモデルの値段を巡るロジックが面白い「嫁と竜のどちらをとるか?」も良かったが、最も秀逸なのは本作の掉尾を飾る「今日から彼氏」だろう。
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posted at 23:19:17
葉山君に彼女ができるという内容を聞いて前作「さよならの次にくる」を読んだことがある人間ならば、ある種の予感を覚えるだろうが、それはあながち間違いではない。前作のような連作ならではの仕掛けこそないものの、そこに隠された作者の企みはなかなかのものである。
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2011年05月30日(月)
柴田哲孝「冬蛾」読了。雪に閉ざされた寒村。怪しい村人たち。謎の昔語り。凄惨な連続殺人……とくれば、たいていのミステリファンがそこに本格ミステリ的な何かを期待するだろうが、その読み方は間違いである。何故なら本作は横溝的ガジェットを用いつつも本質はあくまでハードボイルド小説だからだ。
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posted at 22:36:24
とはいえ本格としての読みどころが全くないわけでもない。個人的にはダメミス要素として欠かせない(?)「食へのこだわり」がきちんと伏線として機能していたことに感心した。ただ、やはり本格要素を期待して読むと肩透かしなのは否めないだろう。
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posted at 22:37:20
2011年05月31日(火)
嵯峨島昭「グルメ刑事」読了。事の始まりはあるアメリカの大富豪の遺言だった。「日本一の料理人に百億円の遺産を贈呈する」――ところが選定委員会の許に企画を中止しなければ候補者を処刑するという内容の脅迫状が舞い込む。そして、その直後に最初の候補者が失踪し以降怪事件が続発するようになる。
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posted at 22:44:06
……という粗筋を見るとそれなりにミステリっぽいが、さにあらず。前に読んだ「美食倶楽部」同様、本作も登場人物たちが事件そっちのけでひたすら御馳走を食いまくるという、ミステリファンが唖然とする内容となっている。
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posted at 22:44:56
食に対する異常なまでのこだわりとオヤジギャグ、そして下ネタで本作が構成されていると言っても決して過言ではないだろう。読み進めていくにつれて、それらの要素によって事件部分が追いやられ、しまいにはどうでもよくなってくる感覚はある意味「黒死館」的ですらある。
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posted at 22:46:26
2011年06月02日(木)
谺健二「恋霊館事件」再読了。仮設住宅での幽霊騒動、紙で作られた家の密室殺人、呪いの椅子に纏わる殺人事件、遠隔殺人機による奇妙な殺人、いわくつきの異人館の消失……震災後の神戸で起こった五つの不可解な事件に、私立探偵の有希真一と振り子占い師の雪御所圭子のコンビが挑む。
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posted at 17:07:30
個々の短編の出来にはバラツキがあるものの、基本的にどの事件も震災が大きく関わっている。ある時はトリックとして。ある時は動機として。その使い方はさながら異世界本格的と言ってもいいだろう。ベストは「紙の家」。二段構えの密室トリックと一枚の写真から明らかになる構図が印象深い一編である。
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posted at 17:09:07
2011年06月04日(土)
谺健二「殉霊」読了。谺健二には大作と言うべき作品が二つある。一つは「赫い月照」。そしてもう一つが本作である。但し両者には決定的な違いがある。それは「赫い月照」が現実の悪意にミステリ部分が呑み込まれてしまった問題作であるのに対し本作はミステリ部分においても傑作であるという点である。
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posted at 00:41:29
ビルの屋上から飛び降りたアイドル歌手が地面に墜落する前に消失、その三十時間後に遠く離れた巨大なクリスマスツリーの上でバラバラ死体となって発見されるという冒頭の謎も魅力的だが、真相の方も実によく練られている。
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posted at 00:42:30
ただの演出に過ぎないと思っていたアレが重大な伏線であることを知った時は、あまりの大胆さに思わず笑ってしまった。だが、それよりも感銘を受けたのは事件の構図である。普通にやったらバカミスにしかならないところを絶妙なバランスで踏み止まっているのが素晴らしい。
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posted at 00:43:49
谺健二「新・煙突綺譚」(「新世紀『謎』倶楽部」収録)読了。衆人監視の中、倒壊した煙突に巻き込まれた筈の殺人容疑をかけられた男が、忽然と姿を消してしまうという謎は申し分ないが、この解決はいただけない。奇跡というより個人的にはご都合主義的な印象を受けてしまった。
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posted at 19:06:09
最後に明かされる殺人事件の真相も登場人物の少なさが裏目に出てしまい、意外性に乏しい。むしろこの作品はミステリ部分よりもノスタルジックな雰囲気や少年と男の心の触れ合いに注目して読んだ方が吉かもしれない。
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posted at 19:06:59
2011年06月05日(日)
蘇部健一「ふつうの学校 稲妻先生颯爽登場!!の巻」読了。ぼくの名前は外池明。明日から青陽小学校の5年生。二年に一度のクラス変えでは念願叶って憧れのナナちゃんと一緒になったのはいいけれど新しく担任になった先生がとんでもない人だった。新学期早々、様々な事件に巻き込まれることに……。
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posted at 21:06:10
あの蘇部健一が書く児童向けミステリというと不安に思う人もいるかもしれないがこれがなかなかどうして真っ当な作品に仕上がっている(まあ所々に見られるしょーもないネタはどうしようもなく蘇部健一だけどw)。あとがきで作者は本作について謙遜しまくっているが個人的には面白く読ませてもらった。
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posted at 21:07:25
本作に出てくる人間消失の謎や、ドンジャラ、班決めドラフト会議(!)におけるイカサマの真相はどれも他愛のないものだが、伏線の張り方はさすがミステリ作家らしく堂に入ったものだ。児童向け作品だが、大人が読んでも問題なく楽しめる作品だと思う。
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posted at 21:08:29
蘇部健一「ふつうの学校2 ブラジャー盗難事件の巻」読了。ぼくの名前は外池明。青陽小学校5年の生活にも慣れてきたけど担任(であり変人)の稲妻先生が家庭訪問で我が家にやってくるらしく凄く不安。おまけにプール開きの日には女子のブラジャー盗難事件が発生。その疑いがぼくにもかけられて……。
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posted at 21:09:43
やられた。児童向けと思って甘く見ていたらものの見事に騙されてしまった。といっても、この「やられた」というのはタイトルにあるブラジャー盗難事件の方ではない。主人公はある時、憧れの女の子からお祖母ちゃんの初恋の人探しを依頼されるのだが、そこに作者は一つの罠を用意している。
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posted at 21:11:47
蘇部健一「ふつうの学校3 朝の読書はひかえめにの巻」読了。ぼくの名前は外池明。青陽小学校5年生。6月も終わりになって、クラスでは『朝の読書』で何を読むかで大騒ぎ。おまけに屋外トイレでは幽霊が出没。担任の稲妻先生もカンニングありのテストを行うとかとんでもないことを言い出して……。
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posted at 21:13:56
児童向けミステリにしてエロミスの快作(爆)。 まあエロ要素はシリーズ前二作にもあったけれど、声を出して笑ってしまったのは本作が初めて。読書会で男子生徒全員にポルノ小説を読ませ、しかも何も知らない女子生徒に音読までさせるなんて色々な意味で飛ばし過ぎだと思う(笑)。
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posted at 21:15:39
更にはその読書会で自作を取り上げ、ボロクソにけなすなんていう自虐ネタまで用意するサービス精神には脱帽というしかない。またミステリとしては幽霊騒動よりも個人的には大胆過ぎるカンニングの手口の方に驚かされた。
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posted at 21:17:20
ちなみに作者はあとがきで「本気で書いてないこの小説は、おもしろくもなんともありません」と言っているが、とんでもない。本作は胸を張って面白いと言える児童向けミステリ作品である(下ネタ多めだけど)。
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posted at 21:18:59