麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2023年06月02日(金)
とはいえ過去の事件を絡めたミスディレクションは相変わらずこなれており、特に答えそのものと言っていいある大胆すぎる手掛かりは○。本作ならではのこれといった仕掛けこそないものの、過度な期待をしなければそれなりに楽しめる作品である。
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中町作品ではお馴染みの氏家周一郎が探偵役を務める、何人殺されようがなぜか中止にならない恐怖の(?)殺人バスツアーシリーズの一作。事件の構図に関しては「散々引っ張ってこれ……?」と思ってしまうような脱力感が否めないものだが、いざその場面を想像するとちょっと笑ってしまう。
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中町信「山陰路ツアー殺人事件」読了。宿泊先のホテルで地震に遭遇した九人の男女のうち一人が何者かに殺害された。一年後、追悼旅行が企画され、推理作家で素人探偵の氏家周一郎に事件解明の依頼が舞い込む。追悼旅行に参加して真相を探る氏家だったが、そんな彼を嘲笑うかのように新たな殺人が……。
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2023年06月01日(木)
思い返してみると違和感が至るところにあったはずなのに何故か気付くことができなかったのが実に悔しい。本作は読み始めこそ微妙かもしれないが、後半になればなるほど評価が上がっていく、堪え忍ぶ系本格ミステリの秀作である。
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しかしだからといって本作がダメと言うわけでは決してなく、むしろ読み終わってみるとそれらの要因が本作の仕掛けの成立に大いに貢献しているのが分かるだけに評価に困ってしまう。更にオチとしても綺麗に繋がるだけでなく犯人に対する痛烈な皮肉にもなっている点が素晴らしい。
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また本作はお世辞にも読みやすい作品とは言い難く、独特な語り口に加え別々の登場人物による日記や私小説、捜査行が挿入される複雑な構成がそれに拍車をかけていて、自分は読み終わるのに(翻訳物が得意ではないのもあるが)一週間以上かかってしまった。
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南の島に集まった人気作家と作家志望の五人の女が次々と他殺体で発見される、クリスティーの「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせる長編ミステリ。まず最初に断っておくと本作には「そして誰もいなくなった」のネタバレがあるため未読の方は注意されたい。
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ミシェル・ビュッシ「恐るべき太陽」読了。南太平洋仏領ポリネシアのヒバオア島に人気ベストセラー作家と彼の熱烈なファンでもある作家志望の女性五人が〈創作アトリエ〉のために集まった。だが作家は失踪、彼女らは意味深なメッセージを残して次々と死体となって発見される。最後に残るのは誰なのか?
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2023年05月27日(土)
ヒロインが大食いキャラなのが何とも平成のギャルゲーっぽくて微笑ましくなってしまった。それとせっかくのアクションが設定上仕方ないのかもしれないが、速すぎ&暗すぎて何をやってるのか所々分かりづらいのが難。とはいえ138分という長さをあまり感じさせない見せ方になっていたのは良かった。
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「THE WITCH/魔女 ―増殖―」観了。サイキックサスペンスアクション「THE WITCH/魔女」の続編。前作よりもサイキックアクションマシマシな反面ハートフル要素は少なくなったがその代わりメリハリある見せ方になっているのは○。またサプライズ展開も衝撃度は抑えめながら健在で次回作が早くも楽しみ。
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2023年05月24日(水)
相変わらずコンパクトなページ数にも拘わらずこれだけの仕掛けを盛り込んでみせる手腕もさることながら、今回は仕掛けの一部を巧く動機に絡めてオチに繋げている点も○。本作はある意味、綾辻行人と有栖川有栖と上木らいちが同時に楽しめる、何とも趣向が盛り沢山な佳作である。
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加えて本作には有栖川有栖の推薦文が寄せられているが、その理由があまりにもマニアック過ぎて笑ってしまう。更に本作には作者の看板探偵である上木らいちシリーズを彷彿とさせる要素もあり、シリアス展開に隠れてしれっとそれをやってのけている点は実に大胆不敵の一言に尽きる。
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未解決事件に端を発するデスゲームの行方を描いたノンシリーズ物の長編ミステリ。本作のタイトルの一部にもなっているデスゲームの舞台から綾辻行人「迷路館の殺人」を思い浮かべる人もいるかもしれないが、実際本作に盛り込まれている仕掛けや構成はそれっぽいと言えるだろう。
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早坂吝「しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人」読了。女名探偵の死宮遊歩が目を覚ますと、迷宮牢にいた。姿を見せないゲームマスターは六つの未解決事件の犯人を集めたと言うがここにいるのは七人の男女。全員が自身の潔白を訴える中、一人また一人と殺されていく。ゲームマスターの目的は?
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posted at 23:57:41
なお書き下ろしの「ロックトルーム・ブギーマン」は密室の独特な使い方に面白さはあるものの文章のあまりの酷さがそれを帳消しにするくらい足を引っ張っているのが難。とはいえ前述した「悪運が来たりて〜」と「フーダニット・リセプション」の二編だけでも充分元が取れる作品集である。
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次点はひょんなことから神のご加護がついた殺人犯がスーパー偶然の連続で罪から逃れてしまうラッキーマン倒叙物(?)「悪運が来たりて笛を吹く」で、ファイナルデスティネーション並の偶然の連鎖に変な笑いが出ること請け合いである。
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ベストはやはりコーヒーをこぼしたことで所々判読不能になったミステリの解決編を読んで特定のワードと犯人を推理する「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」で、まさかのクロスワードパズルと犯人当てを両立させてしまった点は実に画期的と言わざるを得ない。
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作者のノンシリーズ物五編を収録した短編集。全体的に作者らしい変な仕掛けが目立つが残念ながらそれも五編中二編が空回りしている印象が否めない。だがその反面、仕掛けがぴったりハマればこの作者にしか書けないシュールな面白さが堪能できるだろう。
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posted at 01:05:12
森川智喜「動くはずのない死体 森川智喜短編集」読了。ドレスをズタズタにした犯人が出入りした手段、 虫食いだらけの解決編を前後の文章から推理、殺したはずの夫が動く謎、超常的な力で殺人罪から逃れる男、そして瞬間移動能力者が起こした読者への挑戦状付き密室殺人……五つの奇妙な謎の真相は?
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2023年05月18日(木)
加えてミステリ展開にしたことでマウント合戦が面白くなってるかと言えばそんなこともなくむしろ本題とは関係ない本格中華辛いものガマン大会の方がまだマウント合戦としてマシなのが致命的。更にそのガマン大会や唐突な異能力展開が本題と何も繋がらないのも微妙で正直褒める所が殆どない作品である。
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posted at 14:15:13
学園主催でマウント合戦を繰り広げるシリーズの三作目。というかなぜこのシリーズでいきなりミステリ展開を始めたのかは謎だが、まず結論から言うとミステリとしてはかなり薄っぺらい。一応シリーズの特徴であるマウントと絡めた真相にしてはいるが残念ながらその出来は安直の極みという一言に尽きる。
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posted at 14:15:13
吉野憂「最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室3」読了。ある日の深夜、学園内の男子寮で殺人未遂事件が起こった。幸い被害者の男子生徒は外傷もなく元気な様子だったが現場は完全な密室だった。そんな渦中に行われた二回目の優劣比較決闘戦。内容は今回の事件の犯人を見付けることで……。
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2023年05月10日(水)
加えて選挙に絡んだ愛憎劇が事件の展開に巧く反映されているのも○。尤もこのトリックが現実的に可能かと問われたら微妙なところではあるがそこは楽しんだもの勝ちであり、とにかくトリックで驚きたいというミステリファンであれば充分読む価値がある秀作と言えるだろう。
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posted at 22:09:54
選挙の不正に端を発するバラバラ殺人の謎を描いた長編ミステリ。あとがきによると本作のトリックは作者が別名義で発表した中編と同じものなのだそうだが、確かにこのトリックはシンプルながらも意表を突いており作者が再び長編で使いたくなるのも実によく分かる。
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posted at 22:09:54
藤村正太「黒幕の選挙参謀」読了。東京11区多摩選挙区で新人の浜岡がベテランの桂木を敗り当選したのも束の間、浜岡の選挙参謀・有坂は選挙違反の疑いをかけられ逃亡生活を余儀なくされる。そんな中、山中湖畔で顔面や手足を潰されたバラバラ死体が見付かり、その容疑が有坂へと向けられることに……。
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2023年05月09日(火)
そんな謎めいた展開に対し一つの解決が与えられるのが第三部であり、そこで明らかになる本作の構造から三津田信三のホラーミステリを思い出す人も少なからずいるに違いない。本作は三津田作品が好きな人にこそお勧めしたい、ホラーとメタミステリのバランスが絶妙な良作である。
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posted at 20:59:49
〈中国のスティーヴン・キング〉と呼ばれる作者によるシャイニングを彷彿とさせる三部構成の幽霊屋敷物。ジャンルは一応ホラーということになるが個人的にはホラーというよりホワットダニットミステリを読んでいるような印象があり、中でも一際その傾向が強い第二部は酩酊感すら覚えることだろう。
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蔡駿「幽霊ホテルからの手紙」読了。血だらけの女優から託された木匣を届けに海と墓地の間にある幽霊旅館を訪ねた作家の周旋。彼は幽霊旅館にしばらく滞在しそこで起きた不思議な出来事の数々を手紙に綴って幼馴染みの警察官・葉䔥に送ってくる。葉䔥の許に届いた十二通の手紙が物語る狂気と惨劇とは?
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2023年05月03日(水)
「べネシアフレニア」観了。仮面の殺人鬼が観光客を次々と血祭りにあげる話。これぞ現代版ジャッロというべき内容で観光地の特性を活かした大胆な凶行がとにかく痺れる。また音楽を効果的に使った絵の見せ方も秀逸で特に悪趣味すぎるマリオネットは最高の一言に尽きる(あとジャッロ愛溢れるOPも◎)。
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2023年04月30日(日)
またフーダニットという点ではアンモラルな舞台を活かしたロジック(と動機)が印象的な「光川丸の妖しい晩餐」と、ハウダニットとロジックを巧く絡ませつつ連作のトリを飾るに相応しい内容に仕上げた「宝石泥棒と置時計」が秀逸。
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収録作はどれも読み応えがあるがホワイダニットという点では追い詰められた人間の身勝手さが良く表れた「加右衛門氏の美術館」「悪人一家の密室」も捨てがたいが、ベストを挙げるならそれらとは対極とも言える連城的動機とラスト一行が光る「晴海氏の外国手紙」を推したい。
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作者のデビュー作「絞首商會」でも活躍した元泥棒の蓮野が探偵役を務める連作ミステリ。本作に収録された六つの事件はバラエティーに富んだ内容であるのもさることながら、いずれも逆説に満ちており、それが設定と密接に結び付いて読者に何らかの驚きを齎してくれるだろう。
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夕木春央「時計泥棒と悪人たち」読了。死に瀕した実業家が建てた美術館の謎、悪人一家が住む館での奇妙な密室殺人、大雪の日に起きた誘拐と足跡なき殺人、不可解な手紙と結婚に隠された秘密、航行中の船に潜り込んだ殺人鬼、相次ぐ宝石泥棒の正体と動機。激動の大正を舞台に元泥棒探偵の推理が冴える。
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