麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2010年12月05日(日)
神世希「神戯」読了。正直、本作について何と説明していいものやら非常に困っている。率直な感想としては、面白かったかどうか以前にまず疲れたということ。そして、誤解を恐れずに言うなら、これが商業作品として出版されたことに、素直に驚かされる。
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posted at 17:36:27
確かに本作は「すべてを飲み込む大河のごとき超弩級エンタテインメント」と内容紹介にある通り本格ミステリや伝奇アクション等様々なジャンルをミックスさせている。但しその手腕は決してスマートではない。本作を読んでまず気付くのは京極夏彦や上遠野浩平を始めとした所謂オタク好みの作家の影響だ。
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posted at 17:38:06
作者はそれら作家の作風を自分なりに消化することなく、そのまま用いて乱暴に(それがいいかどうかはさておき)物語を作り出した。言わばこれは同人誌スレスレのコラージュ小説とでもいうべき作品なのである。それが果たして評価に値するべき作品なのか否かは残念ながら自分には判断できない。
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posted at 17:39:38
もし本作をミステリとして読もうとしている人がいるなら1巻の方は設定の把握だけに留め、2巻から読み始めることをお勧めしたい。正直1巻の大半は事件とは関係ない言葉遊びと下ネタ、オタネタのオンパレードで構成されているため、耐性のない人にとっては拷問のような苦行を強いられることになる。
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posted at 17:42:29
因みに本作をミステリとして見た場合、個人的にはそれなりに評価することはできる。但しあくまでそれなりなのでそこだけを目当てに三千円近い値段を払って買うと言うのも正直どうなのだろうという気がしないでもなかったり(爆)。とりあえず本作が普通のミステリ読み向けの作品でないのは間違いない。
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posted at 17:44:42
2010年12月06日(月)
詠坂雄二「乾いた屍体は蛆も湧かない」読了。ゾンビ映画の撮影のため、廃墟となったアーケード街に足を踏み入れたニート四人組はそこで高校生の死体を発見する。だが、彼らは警察に通報するどころか、死体を撮影中の映画で使うことを思い付く。しかし、その数日後、死体は忽然と姿を消してしまい――。
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posted at 21:23:58
本作は死体探しがテーマの青春物語である。そういうと真っ先に「スタンド・バイ・ミー」を思い出す人も多いと思うが、それはあながち間違いではない。何故なら本作は詠坂版「スタンド・バイ・ミー」とでも言うべき作品だからである。と同時に本作はミステリでもあるため当然何かしらの仕掛けがある。
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posted at 21:25:16
本作を読んでまず感心したのはその仕掛けがただの驚きだけに終わらず主人公の成長を描くのに一役買っている点だ。ミステリの技法を使って人間を描くことに成功した作品と言えば最近のものだと七河迦南「アルバトロスは羽ばたかない」が挙げられるが、本作もまたその成功例に含めてもいい良作だと思う。
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posted at 21:26:44
2010年12月08日(水)
丸山天寿「琅邪の虎」読了。琅邪の鬼事件が解決し平穏を取り戻したかに見えた琅邪の町で、再び奇怪な事件が続発する。神木の下の連続殺人、暗躍する謎の集団、虎の皮を被った奇妙な死体、そして観光台の謎の崩壊……全ては人に姿を変えることのできる虎「人虎」の仕業なのか?
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posted at 03:21:07
無心を始めとする異能者集団の徐福塾の面子が大活躍を見せるのは前作と変わらず。その他、意外なキャラが意外な形で再登場したりとファンサービスも徹底しているため、前作が楽しめた人であれば、本作も問題なく楽しめることだろう。だが、一方で不満点も多々ある。
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posted at 03:21:56
まず物語の構成が前作と全く変わらないため、イマイチ読んでいて新鮮味が感じられない。またミステリとして見た場合も、真相が前作以上につじつま合わせの感があり、謎解きの醍醐味に乏しい気がする。とはいえ、伏線の大胆な張り方にはそこはかとないミステリセンスが感じられるのも事実。
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2010年12月15日(水)
三津田信三「作者不詳 上下」(文庫版)再読了。ノベルス版とは結末が異なるとのことだが……成る程、そうきましたか。個人的には、この変更は○。ノベルス版ではうやむやのうちに終わってしまった感が強かったが、今回の文庫版ではしっかりホラーとして印象付けることに成功していると思う。
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posted at 09:31:37
何より井上雅彦の某掌編を彷彿とさせるメタメタな幕切れが、この作者らしくて実に微笑ましい。これから「作者不詳」を読もうとしている人にはノベルス版よりもこの文庫版の方をお勧めしたい。
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posted at 09:32:40
2010年12月17日(金)
明月千里「月見月理解の探偵殺人4」読了。人気ネットゲーム「探偵殺人ゲーム」のコミュニティ「黒の箱庭」。そこで勝者となるとどんな願いも叶うと言われる一方で何かと黒い噂も後を絶たなかった。そんな「黒の箱庭」が主催するゲームに妹の遥香が参加する事を知った初は自らも参加する事を決意する。
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posted at 03:54:34
「探偵殺人ゲーム」を題材として扱うのはシリーズ第一巻以来、今回で二回目。一巻の時はほとんど物語に絡んでこなかったのに対し、今回は物語の大半がそれに割かれているのは良い傾向と言えるだろう。しかしながら、それが物語と有機的に結び付いているとはお世辞にも言い難い。
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posted at 03:57:08
というのもこの手のゲームを扱った他作品(土橋真二郎「殺戮ゲームの館」、御影瑛路「空ろの箱と零のマリア」)に比べ本作は読者に対しゲーム内容を面白くみせようという気が全く感じられないのだ。ただただ起こった出来事が淡々と書き連ねてあるだけで、心理的駆け引きによる意外性は一切ない。
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posted at 03:59:47
なんというかここまで酷いと、作者が根本的にこの手の作品の魅力を理解していないとしか思えない。それは二巻のデスゲームの時も思ったことだが、まさか同じ過ちをまた繰り返すとは思わなかった。三巻で多少なりとも復調の兆しが見られていたただけに、この結果は非常に残念でならない。
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posted at 04:03:26
2010年12月18日(土)
古野まほろ「群衆リドル」読了。まず最初に断っておくと、自分は古野まほろが大嫌いだ。版元が変わった影響からか従来のルビ地獄は大分なりを潜めたとは言え、相変わらず奇をてらいすぎて何を伝えたいか分からない文体、寒いギャグのやり取りは健在で、正直読み進めるのがかなり苦痛だった。
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posted at 00:13:32
にも関わらず自分が本作を読もうと思ったのは内容が魅力的だったからに他ならない。孤立した雪の洋館、密室、現場に度々残される「Y」というダイイングメッセージ、ミッシングリンク、そしてマザーグースの見立て等々……これだけ並べられたら本格ファンとして読まないわけにはいかないだろう。
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posted at 00:14:16
しかしながら前述した要素により折角のガジェットも(少なくとも自分から見て)効果的に使われているとは言えず、読み始めて暫くは本作を手に取ったことを後悔していた。……だが、それも解決編に入った途端、一変することとなる。
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posted at 00:15:13
個人的に感心したのは第一の事件のシンプルなロジック、そして第四の事件における技巧だが、それ以上に唸ったのはクローズドサークル物なのに閉じていない、作品世界の広がりを感じさせる動機だ。この動機を設定したことにより本作はクローズドサークルテーマの作品として独自性を出すことに成功した。
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posted at 00:16:49
ある意味それまでの展開と真相にギャップを感じさせる構成は草野唯雄「瀬戸内海殺人事件」と通じるものがある。正直なところ、本作で起こる事件の真相全てが優れているわけではないものの、この一種独特な動機だけでも本作を読む価値はあるように思う。
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posted at 00:20:14
2010年12月23日(木)
友成純一「聖獣都市 土竜の聖杯」読了。新興宗教団体「至福教団」が新宿にある超高層ビルに拠点を築いて以来都内で続発する異常な事件の数々。通り魔殺人やポルターガイスト、果ては人間が突如炸裂する超カマイタチ。そんな中教団の正体を暴く為陸自中央調査隊の陣内と内調の氷室が手を組んだが……。
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posted at 11:00:01
断言しよう。これは陣内の陣内による陣内のための物語である。本作はいたるところでグチャグチャドロドロのスプラッターとエロが展開するが、陣内にとってはそんなこと「知ったこっちゃない」。全て「アカ」の陰謀と疑わず、暴走機関車の如く破壊の限りを尽くす陣内の姿は正に痛快至極!
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posted at 11:01:11
そして、そのあげく言う台詞が「えいクソッ、間違えたあ!」である。これで痺れるなと言うのが無理な話というものだろう。繰り返すが、これは陣内の陣内による陣内のための物語だ。難しいことは考えず、ただひたすら陣内の活躍に対し「ウヒャヒャ!」と笑いながら読むのが吉である。
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posted at 11:02:09
小泉喜美子「死だけが私の贈り物」読了。発端は山田刑事が愛妻の入院した病院で偶然耳にした女とその担当医らしい男の不穏な会話だった。女は自分の病状について言葉を濁す男に対し全てを悟ったらしい、ならば自分のするべき事をするだけだと言い残しその場を立ち去る。数日後、連続殺人が起きて……。
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posted at 18:01:03
粗筋からだいたい察しがつく通り、物語は女や被害者たちの回想を交えつつ、ただひたすら悲劇的な結末に向かって一直線に突き進んでいくことになる。一見、それは全て予定調和のように見えるだろう。だが、最終章に至った瞬間、物語は思わぬ展開を見せる。
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posted at 18:02:11
そこで明らかになる事件の構図は、ある本格ミステリのテーマを浮かび上がらせると同時に物語の悲劇性を更に高めることに成功している。また悲劇の中心人物である女の職業が女優である点も暗示的なものを感じずにはいられない。ともあれ、本作が作者の最後の贈り物に相応しい傑作なのは間違いない。
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posted at 18:03:10
2011年01月01日(土)
草野唯雄「死霊鉱山」読了。冬山の登山中に猛吹雪に遭った男女五名は命からがら廃坑になった鉱山事務所に避難する。早速暖をとるべく燃やせるものを求めて坑道に入った彼らはそこで進路を遮断する禁柵を見付けるが背に腹は変えられぬとこれを破ってしまう。そしてそれを機に一人ずつ殺されていき……。
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posted at 11:30:08
本作は一応クローズド・サークル物に当たるだろう。廃坑に伝わる血生臭い歴史が語られた後に起こる、不可能況下での殺人事件。メンバーの一人が密室で額に矢が刺さった死体となって発見されたのだ。その後も不可解な殺人は連続し、話は否が応でも盛り上がっていく。
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posted at 11:31:04
そして最終的に生存者は二人だけとなり、さあ犯人はどっちだ?そしてその犯行方法は?という所で物語は「ええー!?」という結末を迎える。アレ系の幕引きをやりたかったにしてもこれは幾らなんでも強引過ぎ、というか色々消化不良のものが多すぎる。本作は読了後悶々とすること請け合いの作品である。
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posted at 11:33:10
田代裕彦「セカイのスキマ」読了。麻我部中央英森学園に入学した小澤哲はひょんなことから迷い込んだオカルト同好会「四つ辻の会」は一部から妖怪退治の専門として知られていた。たまたま哲がいる時に「四つ辻の会」にやって来た少女は悲痛な声でこう訴えかける。「ザシキワラシを退治して下さい!」
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posted at 17:03:26
本作を読んで思い出すのは、京極夏彦の「百鬼夜行」シリーズだ。ザシキワラシを巡る事件に対し、主人公が行う謎解きは正に「憑き物落とし」そのものと言っていいだろう。さりげなく語られた事実の一つ一つが重大な伏線となって真相という絵を描いていく様子はミステリとして極めて秀逸である。
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posted at 17:04:47
しかしながら本作はそれで幕を下ろすことなく次第にラノベ的な展開へと発展していく。もしかしたら一部のミステリ読者はそこにミステリとラノベの違いを見出だし興ざめするかもしれない。ただ本作の場合ミステリとしての部分にちゃんと意味を持たせているので個人的にはこれはこれでアリなように思う。
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posted at 17:05:53