麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2013年07月16日(火)
土屋隆夫「危険な童話」読了。傷害致死で服役し仮釈放されたばかりの男が従姉妹のピアノ教師の家で殺害された。現場に残された手掛かりからすぐに容疑者は一人に絞り込まれるが、肝心の動機と凶器が見付からない。更に自分が犯人だと主張する謎の投書までが舞い込み、事態は混迷の度合いを深めていく。
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posted at 17:19:30
事件が始まって早々、容疑者が特定されることにまずびっくりさせられるが、むしろ本作はここからが本番。以降、次々と不可解な謎が浮上し捜査陣を翻弄する展開は圧巻だが、トリックそのものよりは手掛かりの出し方にこそ本作の巧さがある。
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posted at 17:20:08
捜査活動の合間に挿入される童話の意味もさることながら、まさか指紋の謎にアレが関わってくるとは思わなかった(笑)。序章との関連性がイマイチ薄い点など不満もあるものの、全体的にみればよく練られた良作だと思う。
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2013年07月17日(水)
土屋隆夫「針の誘い」読了。製菓会社社長の一歳になる一人娘・ミチルが何者かに誘拐された。すぐに犯人から身代金の要求があり、社長夫妻が指定の場所に出向くが、身代金を渡す段階で夫人が目撃者の直前で姿なき犯人に刺殺されてしまう。偶然事件に巻き込まれた千草検事の推理やいかに?
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posted at 19:58:34
傑作。本作は探偵役がいきなり事件の渦中に放り込まれる設定もさることながら、各章の冒頭に挿入される古典ミステリからの引用文が否応なく物語を盛り上げてくれる。勿論その引用文はただの演出ではなく、各章ごとに変化する事件の様相を的確に言い表している。
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posted at 19:58:58
それは言い換えれば、探偵と犯人の一進一退の攻防であり、その熾烈な展開には手に汗握ること必至である。個人的に感心したのはかなり早い段階で仕掛けられていたある大胆な伏線と誘拐の狙いで特に後者に関しては大いに唸らされた。
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posted at 19:59:23
とはいえ動機の一部にはまたかと思わなくはないが(爆)物語としては綺麗に決まっているので、まあいいかなという気もする。何にせよプロットの凝った誘拐物が読みたいという人には是非とも本作をお勧めしたい。
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2013年07月18日(木)
土屋隆夫「不安な産声」読了。明和医大教授・久保伸也。地位も名誉もある彼が、なぜ強姦を装って罪のない女性を殺したのか? 彼の仕掛けたアリバイトリックこそ見破った千草検事だったが、彼のこの理解を超えた行動には大いに悩まされる。彼の真意は一体どこにあるのか?
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posted at 23:10:12
人工受精という、この作者らしいテーマを扱った倒叙ミステリ。重厚かつ丁寧な構成で読ませる反面、ミステリとしてみると全てが予測の範囲から出ないため、かなり物足りなさを覚える。「影の告発」同様、本作もまた本格ミステリとしての面白さを求めると期待ハズレな作品と言えるかもしれない。
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吉田恭教「ネメシスの契約」読了。八年前に実父が犯した首切り事件を追う新聞記者。医療ミス疑惑の調査をしていた厚労省職員。人権派弁護士の息子惨殺事件の捜査にあたる女性刑事。三人がそれぞれ関わった事件がやがて密接に絡み合い、ある義憤の構図を浮かび上がらせる――。
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「変若水」で第三回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞した作者の二作目は、これでもかとばかりにトリックを詰め込んだ力作である。その詰め込み具合は小島正樹を彷彿とさせるが、小島正樹が島田荘司系であるのに対し、本作の作者は由良三郎系なのが特徴か。
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posted at 23:14:08
とはいえ、そのトリック自体は特殊知識に依存し過ぎだったりバレバレだったりと必ずしも褒められるものばかりではないが、それらを纏めあげた構成力と様々な趣向を盛り込んだサービス精神は充分評価に値する。中山七里のようなエンタメ性の高い本格を読みたい人にこそお勧めしたい作品である。
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2013年07月19日(金)
石持浅海「三階に止まる」読了。いつも三階で止まるエレベーターの謎を描いた表題作を始め、女子更衣室の覗きをしていたらしい男子生徒が殺害された事件を巡る「壁の穴」、二人の自殺志願者が廃墟になった工場跡で見付けた死体について推理する「心中少女」など八編を収録したノンシリーズ短編集。
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posted at 22:39:28
収録作は基本的にはいつもの石持浅海らしい、ひたすら議論で進行するミステリなのだけど、中には本作ならではの変わり種も存在する。その一つが「黒い方程式」で、一人の主婦がトイレに現れたゴキブリを撃退するために殺虫剤を使ったことからまさかあんなトンデモ展開になるとは思わなかった(驚愕)。
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posted at 22:39:59
一部の設定に某作との関連性も見られるが、この世にも奇妙な物語にありそうなヘンテコ話(非ミステリ)はある意味石持浅海の新境地と言えるかもしれない。また「院長室」も二階堂黎人企画のミステリアンソロジーの一作だっただけあって、緊急推理解決院という設定だけ見れば極めて石持浅海らしくない。
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posted at 22:40:28
にも拘わらず、そこで示される展開と真相は石持浅海にしか書けない内容なのが非常に面白い(あと探偵役が完全に碓氷優佳)。その他、表題作がホラーミステリっぽい味わいだったが、後で初出がSFアンソロジーの「NOVA」と知ってちょっと意外に思った。
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posted at 22:40:51
ところで本作の帯には何故か「著者の初短編集」とある不思議。「ホラー×ミステリー」という意味合いだとしても、別に収録作の全てがそうというわけでもないしなあ……。
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2013年07月21日(日)
辻真先「本格・結婚殺人事件」読了。文英社が主催する第一回「ざ・みすてり」大賞に推理作家・牧薩次の入選が決まった矢先に、選考委員の一人であるタレントで作家の文月みちやが何者かに殺害される。死体は奇妙なことにぬいぐるみを被せられた上、下半身は剥き出しという状態だった。
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posted at 20:34:18
まず本作には賞の最終候補作である三本の短編ミステリがまるまる収録されているのだが、それらは全て作者が昔雑誌に発表した単行本未収録短編である。言ってしまえばお蔵出しというやつだが、こういう形で再利用してみせたのは面白い。
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posted at 20:34:29
ミステリとしてみると死体の装飾の理由が今一つだったり、賞に関された秘密がバレバレだったりする反面、構成を利用したダイイング・メッセージやもう一つの事件を巧く隠し通した点など光る部分もある。必ずしも完成度が高いとは言えないが、様々なアイディアが盛り込まれた意欲作ではあると思う。
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posted at 20:34:46
2013年07月22日(月)
井沢元彦「死にたくなかった女たち」読了。売れない劇団員・司門貘の夢の中にいつしか恨めしげな美女たちが現れるようになった。女たちは決まって貘に対し自分たちを殺した犯人を探してくれと哀願するのだ。半信半疑の貘が調べてみると、果たして夢の中に現れた女たちは皆、不審な死を遂げていた――。
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posted at 19:41:27
夢を通じて死者の声を聞くことができる特殊能力を持った探偵役が活躍する連作ミステリ。基本的に扱う事件は全て完全犯罪であり、それをイレギュラーである探偵役がどう打ち崩していくかが本作の焦点になる。必ずしもフェアな書き方ばかりとは限らないがその多彩なバリエーリョンは充分読み応えがある。
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posted at 19:42:00
ベストを挙げるなら、誘拐されたアイドルが惨殺体で発見される「わがままな女」で、特殊能力の法則から事件の構図を一気にひっくり返してみせる技巧が素晴らしい。作者の持ち味を最も発揮したこの短編が読めただけでも個人的には収穫だった。
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2013年07月25日(木)
真梨幸子「鸚鵡楼の惨劇」読了。かつて凄惨な殺人事件が起きた鸚鵡楼。その跡地に建った超高級マンションで、人気エッセイストの蜂塚沙保里は誰もが羨むセレブライフを送っていた。そんなある日、連続幼女レイプ犯として刑務所に服役していた元恋人が出所し、彼女の生活を脅かし始める……。
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posted at 00:19:31
「『殺人鬼フジコの衝動』を超える戦慄のミステリー」とは、本作の帯に書かれた煽り文句だが、確かに半世紀にわたり続く殺人の連鎖や、思わぬところからから事件の中心人物を引きずり出す本作の構成は「フジコ」とよく似ている。
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posted at 00:20:06
しかしながら「フジコ」と比べると展開が些か駆け足過ぎて事件やキャラの描写が浅いように感じてしまうのが残念。とはいえ作者の企み自体は成功しており、一応館物っぽいタイトルに相応しく(?)探偵役が関係者を一堂に集めて謎解きを披露するオーソドックスなスタイルも○。
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posted at 00:20:44
法条遥「リビジョン」読了。1992年秋、家の女性に代々受け継がれる手鏡で未来を視ることができる霞はある日生まれたばかりの一人息子・ヤスヒコが一週間後に亡くなるビジョンを視てしまう。我が子をなんとしても救いたい一心で霞は手鏡の能力を利用し息子が死ぬという「未来」の改竄に挑むが……。
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posted at 09:40:58
SF史上最悪のパラドックス「リライト」から数ヵ月後を描いた本作。相変わらず複雑な話を分かりやすくコンパクトに纏めあげている点はさすがだが、その反面テンポ良く進みすぎて『我が子のために手段を選ばない母親の狂気』があまり感じられなかったのが残念。
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posted at 09:41:19
しかしながら未来の自分との改変合戦(?)は面白いし、何より定番ではあるものの、作者の仕掛けたサプライズは成功していると思う。「リライト」を読んでいる人間なら間違いなく楽しめる良作である。
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野崎まど「KNOW」読了。超情報化対策として人造の脳葉〈電子葉〉の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く御野・連レルは情報素子のコードの中に失踪した恩師の天才研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは一人の少女だった。
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傑作。以前「2」を読んだ時は野崎まどの集大成と感じたが、今回初の本格SFである本作を読んで、これまで出た野崎まど作品の発展系という印象を受けた。本作に出てくる天才や「知る」という行為はこれまでの作品でも繰り返し用いられてきたモチーフだ。
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posted at 13:43:42
また本作のメインの謎――天才研究者、道終・常イチが生み出した少女、知ルが“何をしようとしているのか”は作者のデビュー作である「[映]アムリタ」を思わせる。そして、それは最後に明らかになる真相にも同じことが言えるだろう。
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posted at 13:44:07
その一方で本作は本格SFというのを意識したからなのか、これまで以上に世界観の作り込みとエンタメ性に力が入れられている。基本的には従来のファンであれば問題なく楽しめるのは勿論のこと、新規読者にもアピールできる完成度の高い作品である。
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posted at 13:44:59
我孫子武丸「狼と兎のゲーム」読了。二年前に母親が失踪して以来、小学五年生の心澄望と弟の甲斐亜は警察官の父・茂雄の暴行を受け続けていた。ある日、心澄望と友人の智樹は庭で穴を掘る茂雄とその傍らで死んでいる甲斐亜を目撃してしまったことから茂雄に命を狙われることに――。
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posted at 21:25:57
本作の帯には「『殺戮にいたる病』を凌ぐ衝撃!」とあるが、結論から言うと煽り過ぎ。別に何か仕掛けがあるわけでもないし、どちらかと言えば「子どもの王様」をより殺伐とさせたような印象がある。尤もあとがきを読むと、元々ミステリーランド用の話だったとあって、至極納得した。
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posted at 21:26:26
作者としてはこどものトラウマになるような話を目指したらしいが、全体的に描写がマイルドなせいか、どうも物足りない感が否めない。悪い作品ではないが、個人的にはもっとはっちゃけてほしかった。
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posted at 21:26:58