麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年05月15日(木)
辻真先「死ぬほど愛した…」読了。ミス・マープルを思わせるユーカリおばさんが探偵役を務める短編集。老舗旅館の女将の死体が移動する謎を扱った表題作を含む四編に加え作者の作品ではお馴染みの、ポテトとスーパーの二人とユーカリおばさんが共演するボーナストラック短編「特急『燕』驀進す」収録。
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posted at 00:29:21
奇しくも本作には表題作を始め「愛」に纏わる事件ばかりが収録されており、トリックはショボくても事件の背景にある様々な愛の形を楽しむことができるのが特徴。ベストは表題作で、移動する死体の真相はそれしかないというものながら、真相を示唆する伏線にさりげない巧さが光る。
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posted at 00:29:40
次点は自殺場所を探していたヒロインと偶然知り合った老婦人が密室状態のホテルの一室で無残な死体となって発見される「遠くで死にたい」で、トリックよりも何故密室にしたかという動機部分に見るべきところがある。全体的にいい意味で軽く読める連作ミステリである。
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久弥直樹「サクラカグラ1」読了。僕が誰に殺されたのか知りたい――月深学園高等部一年生・上乃此花は夕暮れの旧校舎の屋上で幽霊の少年からそう告げられた。乗りかかった船で犯人探しを始めた此花はやがて学園に隠された非日常を垣間見る。一方、夜な夜な学園で「悪」と戦う一人の少女がいた――。
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posted at 20:58:52
「Kanon」や「MOON.」のシナリオライターとして知られる久弥直樹の長編小説デビュー作。内容紹介には学園ミステリーとあるが、どちらかというと伝奇ファンタジーの色合いが強く、特に中盤の展開などは「Kanon」の舞シナリオそのままで読者によっては思わず遠い目になることだろう。
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しかしながら、その展開そのものが作者の罠であり、おかげでベタな仕掛けながらまんまと騙されてしまった。但しミステリとしてみると明確な伏線はなく、また最初の方にアンフェアな記述があるのが気になる。とはいえ物語としてはまだ始まったばかりなので、今後の動向に期待したい。
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2014年05月17日(土)
笹沢左保「取調室 静かなる死闘」読了。大学教授の小田垣光秀とその息子・悦也が佐賀市内のホテルに泊まり、翌朝、光秀だけがチェックアウトした後、部屋から悦也の撲殺死体が発見される。警察は光秀に疑いの目を向けるが、光秀には悦也の死亡時刻に北海道にいたという鉄壁のアリバイがあった。
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posted at 11:44:14
通常のミステリでは陰に隠れがちな取調室にスポットを当て取調官と被疑者の必死の攻防を描いた異色作。これに関して作者は登場人物に「舞台が六畳の室内に限られているんでは、筆力のない作家によれば単調にならざるをえませんよ」と言わせているが、それにあえて挑むところに作者の自信の程が窺える。
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ミステリとしてみると最も驚かされるのが盲点をついたアリバイトリックで、不可能性に拍車をかけていた被害者に纏わる証言やダイイング・メッセージが、真相が明かされた途端、鮮やかな反転を見せる点が実に秀逸。また被疑者の設定と手掛かりを巧く組み合わせて犯行方法を推理してみせる点も○。
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笹沢左保「地下水脈」読了。静岡県由比町の好清寺近くに停められた車の中から排ガス心中を遂げたと思われる若い夫婦の死体が発見された。だが二人には新婚旅行の予定があったこと、妻がハンカチに口紅で「昌二郎あなたにも」という謎の言葉を遺していたことからルポライターの天知昌二郎が疑われる。
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ルポライターの天知昌二郎が探偵役を務めるシリーズの三作目。前作「求婚の密室」に引き続き、本作にも密室殺人が出てくるが、それはあくまでオマケに過ぎず、メインは心中事件の裏に隠された運命の悪戯とも言うべき偶然の連鎖にある。
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ダイイング・メッセージと絡めたそのうちの一つには驚かされるものの、どちらかといえばミステリというより運命に翻弄された男女の悲劇のドラマとして読ませる作品である。
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2014年05月18日(日)
森博嗣「神様が殺してくれる」読了。パリで大女優が絞殺された。両手首を縛られ現場で拘束されていた異常なまでの美貌の持ち主・リオン・シャレットは「神様が殺した」と証言。そして、その彼の行く先々――ミラノ、フランクフルト、東京で次々と起こる殺人事件。果たして連続殺人の犯人は彼なのか?
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posted at 17:59:21
異常なまでの美が引き起こす連続殺人の中に隠されたシンプルな仕掛けが光る快作。この仕掛けに関していえばひと昔前ならアンフェア扱いになっていたかもしれないが某作などが評価されている現代においてはあながちそうとも言えなくなってきており、そういう意味では本作は現代本格らしい作品と言える。
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posted at 18:00:13
尤も作者としては別に本格を意識したわけではないだろうが(その証拠に推理では到達できない部分や最後まで不明な点がある)、それでもこの意外性だけは評価したいと思う。
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2014年05月20日(火)
笹沢左保「人喰い」読了。花城佐紀子の姉・由記子が許されざる恋に絶望し、遺書を残して恋人の本多昭一と失踪した。それから二日後、山梨の昇仙峡で昭一の死体が発見されるが、姉の死体はどこにもなかった。姉はどこへ消えたのか? 佐紀子は恋人の豊島と真相を追うが、やがて第二の事件が……。
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posted at 22:31:35
第十四回日本探偵作家クラブ賞受賞作。熾烈な労働争議を背景にした悲恋の物語と思いきや不可解な失踪、爆波事件、密室殺人と意外な展開で畳み掛ける構成がまず秀逸。トリックの一部は今となっては古びてしまっているものの、ミスディレクションが強烈なので真相のインパクト自体は損なわれていない。
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posted at 22:31:55
個人的には意外な探偵役もさることながら、構図の反転と共に意味合いがガラリと変わるある証拠品にはあっと驚かされた。トリックそのものよりも、些細な手掛かりから一気に構図がひっくり返る様が魅力的な傑作である。
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2014年05月22日(木)
麻見和史「特捜7 銃弾」読了。葛西潮風公園で発見された警官の死体からは両腕と拳銃が奪い去られてた。それを皮切りに続発する射殺事件と遺体損壊の謎を追い特捜チームの岬怜司は妙な特技を幾つも持つ所轄署の里中宏美とコンビを組むことになる。やがて二人が辿り着いた過去の迷宮事件との関係とは?
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posted at 00:38:30
本作のキャラ設定や構成から、作者が講談社で書いている警視庁捜査一課十一係シリーズの影響を強く感じるが、こちらは十一係シリーズに比べて、特捜チームの岬怜司と所轄署の里中宏美のコンビに重点が置かれている。
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posted at 00:41:50
ミステリとしては伏線が細かく張られている点は好感が持てるものの論理的思考だけでは辿り着けない事実が多々あるのが難(あと表紙が合ってない)。あるものの隠し場所など光る部分もあるだけに惜しいと言わざるを得ず、今後もしシリーズ化するのであれば、もう少しその辺りにも配慮してほしいと思う。
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2014年05月24日(土)
東野圭吾「虚ろな十字架」読了。中原道正はかつて娘を強盗に殺された。犯人は逮捕され死刑となったが心の傷は癒されることなく結果、妻と別れることになった。しかしそれから数年後、その別れた妻もまた見ず知らずの老人に殺されてしまう。老人は金目当てに殺したと自供するが……。
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posted at 00:28:17
別れた妻が殺された真の動機に迫るホワイダニット物。とはいえ本作に奇抜なところはどこにもなく、むしろ構成する要素だけ取り出せば凡庸とすら言えるかもしれない。しかしながら、それらを巧く組み合わせることによってここまで読ませる作品に仕上げている点は流石と言わざるを得ない。
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西澤保彦「下戸は勘定に入れません」読了。鵜久森大の準教授として英文学を教える50歳、バツイチの古徳先生にはある条件下でお酒を飲むと、同席者を道連れに時間を遡ってしまうという特殊能力があった。そんな彼がその特殊能力と推理力を活かして、様々な謎を解き明かす連作ミステリ。全四編収録。
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posted at 00:30:45
作者が得意とするSF設定と酩酊推理を合体させた作品。全四編中、前半の二編「あるいは妻の不貞を疑いたい夫の謎」「もしくは尾行してきた転落者の謎」はこれぞ西澤と言いたくなるロジックが秀逸で、前者は予想外のところからくる真相に寝取られ好きは歓喜すること間違いなし(?)のエロミスの快作。
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posted at 00:30:58
一方後者は特殊設定を活かしつつ綱渡り的なロジックで伏線を回収していく過程が実にスリリングで、その真相はタックシリーズの某作を彷彿とさせる。但しミステリとしては三編目から失速し最終的にSFに着地する点は評価が分かれるところだろう。個人的には前半二編の勢いのまま突っ走ってほしかった。
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笹沢左保「四月の危険な石」読了。自宅の寝室で何者かに襲われ気を失った竜次が意識を取り戻すと妻の千夏が刺殺されていた。折しも現場は密室状態でしかも彼には千夏を殺害する動機があった。逃亡しながら真犯人を探し始めた竜次は、やがて事件の背後に時価15億円のダイヤが関わっていることを知る。
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posted at 16:21:57
密室状態で起きた殺人と逃亡しながら無実を証明しようとする展開は作者の初期作である「結婚って何さ」を彷彿とさせるが、本作において密室は大した問題ではなく、むしろメインはコンゲームにも似た時価15億円のダイヤ探しとそれを巡る連続殺人にある。
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posted at 16:22:17
連続殺人の犯人に関しては一応捻られてはいるものの、登場人物の少なさが災いして容易に見当がついてしまうのが難。一方ダイヤの隠し場所に纏わるトリックについては新保博久氏の解説「江戸川乱歩と笹沢左保」によると、作者なりの乱歩オマージュとしてみることができ、なかなか興味深い作品である。
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posted at 16:22:44
西村京太郎「消えたタンカー」読了。インド洋上で原油を積んだ巨大タンカー「第一日本丸」が炎上沈没した。船長以下六名が脱出し、残り二十六名の生死不明のまま捜索は打ち切られた。だがその船長が怪死し、警視庁に六人の生存者の殺害を予告する手紙が届いたのを皮切りに、次々と六人が殺されていく。
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posted at 23:17:38
傑作。前半は探偵役である十津川警部補が犯人にとことん翻弄されるので読んでいて苛々させられるかもしれないが、それも全てはミスディレクションのためと思えば納得できる。中盤で明かされる構図の反転は正に豪快の一言であり、それはさながら島田荘司の豪腕を彷彿とさせる。
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posted at 23:18:10
ただ以降の展開は地道な証拠探しにシフトするため、それまでに比べると若干テンポが悪くなるが終盤、意外なところからくるロジックで犯人の名前が明かされた時には少なからず驚かされた。ちなみに自分が読んだ講談社文庫版は香山二三郎の解説がネタバレ気味なので要注意。
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posted at 23:18:21