麻里邑圭人
- いいね数 9,797/10,375
- フォロー 1,028 フォロワー 1,647 ツイート 91,937
- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2016年01月16日(土)
仁木悦子「青い風景画」読了。伊豆の別荘で私立探偵・三影潤の依頼人である女性がオセロの駒を使った不可解なメッセージを残して失踪、その後、墜死体となって見付かる表題作の他、大学生の僕が四十年以上前に父の初恋の人が殺された事件の犯人探しに乗り出す「まぼろしの夏」など全五編収録。
タグ:
posted at 14:51:11
作者の作品ではお馴染みの私立探偵・三影潤が活躍する表題作などを収録したミステリ短編集。ミステリとしては最初の二編――表題作と「まぼろしの夏」が際立っており、前者は設定の時点で真相が読まれやすいものの、やはり構図の反転から明らかになるダイイング・メッセージの真の意味が秀逸。
タグ:
posted at 14:51:27
一方、後者は犯人当ての醍醐味こそないが、その代わり、この時代ならではのホワイダニットが素晴らしい。そして何より回想の殺人テーマを通して描かれる現代と過去の恋愛模様とタイトルに象徴される結末が印象的で、ベストを挙げるなら本作になるだろう。
タグ:
posted at 14:51:53
その他「光った眼」は作者が得意とする子供視点の描写とさりげない気付きに、「偽りの石」はあるアイテムが意外な伏線として機能する点に、「遮断機の下りる時」は自殺を決意したピアニストが同じく自殺しようとしていた一人の女性との出会いを機に変化していく姿にそれぞれ見るべきものがある。
タグ:
posted at 14:52:07
「クリムゾン・ピーク」観了。オーソドックスな幽霊屋敷ものを丁寧に描いている点は好印象だが、逆にそれが物足りない自分にとっては賛否両論な最後の物理対決(?)が何だかんだで一番楽しめた。ただその対決にしても折角の堀削機という素敵ギミックを活かしていないのが少々残念。
タグ:
posted at 23:21:25
どうせなら堀削機を使って盛大に散らせてほしかった。他にも犬やエレベーターなど折角面白そうなものがあるのにイマイチ使い切れていないような気がする。全体的にスプラッター要素は少なめで、綺麗に纏まりすぎていることに不満を覚えるか否かで評価が分かれる作品である。
タグ:
posted at 23:22:01
2016年01月17日(日)
深谷忠記「南房総・殺人ライン」読了。アパートの一室で殺された三人の男たちは八ヶ月前、冴子や母を襲った暴漢だった。その後、母は自殺。事件が起こったのは冴子が男たちの残した一枚のフィルムを手掛かりに彼らを突き止めた矢先だった。そして驚くべきことに逮捕されたのは冴子の父・広一郎だった。
タグ:
posted at 21:17:56
謎解きをフーダニット一点に絞った法廷ミステリの秀作。前半は事件が起こるまでを丹念に描き、中盤以降は二転三転する裁判の行方で読者の興味を惹き付けてみせる。メインのフーダニットはシンプルながら、設定や構成を駆使したミスディレクションがとにかく強力の一言に尽きる。
タグ:
posted at 21:18:12
2016年01月18日(月)
仁木悦子「陽の翳る街」読了。商店街仲間の推理マニア四人がある春の夜、どんぐり坂で殺人事件に遭遇した。被害者は東京大空襲で記憶喪失に陥っていたという。被害者の過去を探る四人はやがて十九年前に起きた毒殺事件に辿り着くが、それと平行して彼らの回りでも次々と不可解な事件が起き始めていた。
タグ:
posted at 21:36:22
本作について作者はミス・マープルものやライツヴィルもののような、一つの小さな地域の住人たちを描いた作品を目指したと語っているが、その言葉通り、商店街の住人一人一人が実に生き生きと描かれているのが印象的。そしてそれらの中に巧みに織り込まれた伏線が本作を秀逸なミステリたらしめている。
タグ:
posted at 21:36:36
2016年01月19日(火)
城平京「雨の日も神様と相撲を」読了。子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた僕が転校した先は、相撲好きのカエルの神様が崇められている村だった。そこで僕はカエルの神様に見込まれて外来種のカエルとの相撲勝負を手助けすることに。一方、隣村ではトランク詰めにされた死体が発見されて……。
タグ:
posted at 22:40:21
カエルの神様たちの相撲を扱った青春ファンタジーに、トランク詰めの死体の謎というミステリ要素を無理やりぶち込んだ怪作。相撲に纏わる知識と経験は誰よりもあるのに体格に恵まれない主人公が持てる理論を駆使して勝利を目指していく姿はある種コンゲーム的な味わいがあり、なかなか読ませてくれる。
タグ:
posted at 22:40:38
一方、問題のトランク詰めの死体に関しては一応繋がりを持たせてはいるものの、正直浮きっぷりが半端ない。ミステリとしてどうこう以前に折角青春ファンタジー部分がボーイミーツ物らしい良い終わり方をしているだけに、それがどうしても気になってしまった。
タグ:
posted at 22:40:50
2016年01月21日(木)
友成純一「邪し魔」読了。単身バリで女三昧の生活を送る良治は祭の夜に禁忌を犯したことで村を追放されて、妖怪が化けているとも知らず少女イェニのもとへ。一方、良治が行方不明になったという知らせを受けた妻の恵子は原因不明の頭痛に悩まされながらもバリに向かう――。
タグ:
posted at 00:10:32
本作はバリ島を舞台にぼんくら男を巡って女妖怪と妻が対決するという実に単純なストーリーなのだけど、いかんせんメインに入るまでが長すぎる。勿論そこに至るまでの過程が面白ければ問題ないのだが友成作品の面白さに直結するスプラッターもなければ頭のおかしな展開もないのは流石にあんまり過ぎる。
タグ:
posted at 00:10:44
しかもそのメインに入るのが最終章ときては、どんだけオアズケが長いんだと文句の一つも言いたくなる。しかしながら散々引っ張っただけあって最終章でのはっちゃけぶりはなかなか際立っており、友成信者であればそれだけで許したくなる。
タグ:
posted at 00:10:58
加えてある意味(?)ハッピーエンドな結末も印象的。ただどちらかと言えば、やはり最初から最後まで血みどろの妻と女妖怪の戦いを描き、それに巻き込まれた人々がひどい死に方をする話の方が面白かったような気がする。←
タグ:
posted at 00:11:11
2016年01月22日(金)
彩藤アザミ「樹液少女」読了。失踪した妹を捜す男が迷い込んだのは、磁器人形(ビスクドール)作家の奇妙な王国。雪に閉ざされた山荘に招かれた四人のコレクターの前で、無残な遺体が発見された。誰が何のために? 次の標的は? 鍵を握るトランプコードの秘密を知ってしまった者の運命は……。
タグ:
posted at 11:19:10
「サナキの森」で第一回新潮ミステリー大賞を受賞した作者の二作目。雰囲気だけしか見るところがなかった前作と比べると本作の方がまだ纏まりがあると言えるものの、それでもミステリとしてはやはり弱いと言わざるを得ないし、色々と説明不足なのも気になる。
タグ:
posted at 11:22:28
何より散々ミステリではよくあるパターンを並べた後に登場人物の一人に「推理小説じゃないんだから」と言わせた挙げ句、更につまらない真相を語られてもこちらとしては正直反応に困ってしまう。多分この作者はミステリのガジェットに興味があるだけでミステリ自体にはあまり興味がないのだろう。
タグ:
posted at 11:22:43
それが悪いという気はないが、個人的にはわざわざ名探偵を登場させてまでやるほどの内容だとは思えなかった。個性的なミステリが読みたい人には全くお勧めはしないが、よくあるゴシックミステリが読みたい人であれば、それなりに楽しめる作品である。
タグ:
posted at 11:22:58
door「鵺の啼く夜が明けるまで」読了。雨上がりの深夜の学園に呼び出された少女・榊原来夢はミステリー研究会の先輩・白河美里の他殺体を発見する。現場に美里と来夢の足跡しか残されていなかったことから、来夢は警察に疑われる羽目に……。事件に隠された「意外な犯人」とは?
タグ:
posted at 22:54:40
web発のミステリ小説を書籍化したもの。事件自体は極めてオーソドックスながら、やはり目を惹くのは作者が仕掛けた「意外な犯人」だろう。ネタそのものは国内作家Kの某作と国内作家Aの某作のハイブリッドとも言うべきもので、一番の目玉にするだけあってなかなかよくできていると思う。
タグ:
posted at 22:55:14
加えてこのネタを使う必然性が一応用意されているのも好印象。またダイイング・メッセージの解釈や決め手となる証拠もよく練られている。ただ一方で小説としてみると些か冗長だったり冒頭の足跡トリックが犯人が言うほど大したものではなかったりするのが難だが一発ネタとしては申し分ない良作である。
タグ:
posted at 22:55:38
2016年01月24日(日)
藤岡真「死龍(スロン)」読了。新宿・歌舞伎町での台湾マフィアによる抗争は、警官による幹部射殺によって三つ巴の復讐戦の様相となった。警官の失踪、関係者の不可解な連続死、謎の情報屋、秘伝の殺人拳、歌舞伎町の風俗紹介記事……そして浮かび上がる驚愕の事実。「罠」はいつ仕掛けられたのか?
タグ:
posted at 14:55:08
「七つ星の斬首人」以来、久々の作者の新作は血と硝煙の臭いが漂うノワール本格ミステリ。ノワールと本格の融合というと小川勝己や菅原和也の作品が思い浮かぶが、本作がやろうとしたことはどちらかといえば国内作家Aの某作品に近いのかもしれない。
タグ:
posted at 14:56:12
メインはやはり「罠」はいつ仕掛けられたのかというところになるが、作者はイージーなものからハードなものまで複数にわたり仕掛けてきているので、なかなか油断ならない。特に最後に明かされるある人物の正体に関しては完全に騙されてしまった。
タグ:
posted at 14:56:58