麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2017年09月07日(木)
二階堂黎人「巨大幽霊マンモス事件」読了。ロシア革命から数年経ったシベリア奥地にある<死の谷>へ秘密裏に物資を運ぶ<商隊>が巻き込まれた怪事件の数々。未知なる殺人鬼の執拗な追跡、連続する密室殺人、甦った巨大マンモス……常識を超えた不可解な謎を名探偵・二階堂蘭子が鮮やかに解き明かす!
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作者の短編代表作として知られる「ロシア館の謎」の続編にあたる蘭子シリーズの長編。まず本作は人狼城以前の蘭子シリーズのテイストが濃厚な作品であり、ラビリンスサーガで困惑した読者であれば諸手を挙げて歓迎することだろう。
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だがその一方で本作には作者らしからぬ仕掛けが盛り込まれており、二階堂作品に慣れ親しんだ読者ほどあっと驚くに違いない。とはいえ見方によっては本作は作者がモットーとしている「ロジックよりもトリック、トリックよりもプロット」を最も体現した作品と言えるかもしれない。
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勿論作者らしい仕掛けも健在で、特に<赤い館>の密室トリックは某新本格作品の発展改良型として見ることもできるだろう。気になる点を挙げるならタイトルにある巨大幽霊マンモスの真相が一番微妙であることだが(爆)それを差し引いても本作が作者の新たな代表作になりえそうな出来なのは間違いない。
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歌野晶午「ディレクターズ・カット」読了。無軌道な若者たちの暴走と称したやらせ映像で視聴率を稼いでいた下請け番組制作会社ディレクター・長谷見は偶然、孤独な青年が起こした通り魔事件に巻き込まれる。更なる視聴率アップを狙う長谷見は警察の裏をかいてスクープ映像をモノにしようとするが……。
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posted at 22:29:25
ひょんなことから殺人鬼と化した一人の青年を巡る様々な暴走を描いたクライムサスペンス。現代テクノロジーをふんだんに取り入れた見せ方とDQNキャラの巧さはさすが「密室殺人ゲーム」の作者といった所だがそれに加えて物語の後半では「人さらいの歌野」らしい緊張感に満ちた誘拐劇で魅せてくれる。
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尤もオチに関して言えば充分予測の範疇ではあるものの、設定を巧く活かしているのでそれほどガッカリ感はない。どちらかといえば仕掛けよりも物語の面白さで推したい良作である。
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柾木政宗「NO推理、NO探偵?」読了。私はユウ。女子高生探偵・アイちゃんの助手兼応援団だ。けれどアイちゃんは推理とかいうしちめんどくさい小話が大好きでいまいちパッとしない。決めた!私がアイちゃんを超メジャーな名探偵に育て上げる!そのためには「推理って、別にいらなくないーー?」
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第53回メフィスト賞受賞作。本作は『「絶賛」か「激怒」しかいらない。メフィスト賞史上最大の問題作』という触れ込みだが、ミステリとしてどうこういう以前にまず小説として物凄くつまらない上にギャグセンスが致命的なまでに寒いのは大問題と言わざるを得ない。
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それでも一応ミステリとしてみるとラストのロジカルな推理を際立たせるためにあえて推理を封印した連作をやってみせた試みは理解できるものの肝心の事件が面白くも何ともない時点で大失敗だと思うし、ウリの一つである絶対予測不可能な真犯人にしても正直「だからどうした?」以外の感想が出てこない。
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2017年09月09日(土)
綾辻行人他「7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー」読了。「名探偵」をテーマにした新本格ミステリ第一世代の作家(綾辻行人、歌野晶午、法月綸太郎、有栖川有栖、我孫子武丸、山口雅也、麻耶雄嵩)による書き下ろしミステリ短編七編収録。
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新本格30周年を記念して企画されたミステリ・アンソロジー。しかしながら胸を張って本格と言えるものは法月、有栖川、麻耶の三編だけで、中にはミステリですらないものもある。正直新本格を冠しているのだから全編、本格物で勝負してほしかった。
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posted at 18:24:36
ちなみに数少ない本格物三編の感想はというと法月は謎と構図の面白さはあるが捻りすぎて切れ味は鈍い。有栖川は特筆すべき所はないがワンアイディアをベースに無難な犯人当てに仕上げている。麻耶は一応捻った犯人当てにはなっているが本編よりもラストのメルカトルの台詞の方が印象に残った(爆)。
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三津田信三「忌物堂鬼談」読了。得体の知れぬ何かに脅える中学生の由羽希は救いを求め一人遺仏寺を訪れる。そこで由羽希は、美形の住職・天山天空から所有しているだけで祟られる代物――忌物に纏わる怪異譚に毎夜、耳を傾け、謎を解かされる羽目になるのだが……。
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忌物をテーマにした怪談を扱った連作ホラーミステリシリーズの一作目。メインキャラに関して言えばキャラクター性も強く、そういう意味では「死相学探偵」シリーズを彷彿とさせるが、「死相学探偵」シリーズに比べると本作のミステリ度はそれほど高くない。
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とはいえ収録作のうち平凡な親子三人が突如殺し合うスプラッターホラー「霊吸い」では犯人当てならぬ忌物当てというなかなか興味深い趣向が盛り込まれており、今後の展開次第ではミステリとしても面白くなりそうな可能性を秘めているシリーズだと思う。
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2017年09月12日(火)
東川篤哉「ライオンは仔猫に夢中 平塚おんな探偵の事件簿3」読了。転落死した社長令嬢の部屋から消えたハイヒール、密室で殺された女子大生が残したVサイン、命を狙われる鸚鵡、海の家で会った女性をイケメン英会話講師が捜す理由……四つの難事件がライオン探偵と美貌(自称)の助手に降りかかる。
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シリーズ前作に引き続き、本作もまた見所のある短編が多いのが嬉しい。全四話の収録作のうちベストは転落死した社長令嬢の部屋から消えたハイヒールの謎を扱った第一話で、作者が得意とする事件を別の角度から見せることで不可解な謎を演出する技巧が実に秀逸。
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次点は海の家で会った女性をイケメン英会話講師が捜す理由に迫る第四話で謎解きよりもプロットの転がし方に見るべき所がある。他にも密室とダイイング・メッセージを扱った第二話は手掛かりの出し方もさることながらトリックメインと思わせてフーダニット部分もきっちりフォローしている点が良かった。
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天祢涼「希望が死んだ夜に」読了。神奈川県川崎市で14歳の女子中学生・冬野ネガが同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたものの「あんたたちにはわかんない」と動機は全く語らない。何故のぞみは殺されたのか。
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メフィスト賞作家が描く社会派青春ミステリ――それが本作の謳い文句だが、個人的には些か納得しかねる。確かに途中まではホワイダニットをメインとした社会派青春ミステリとして進行するもののホワイダニットが明らかになった瞬間、社会派青春ミステリの皮を被った本格ミステリに変貌してしまうのだ。
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posted at 22:07:29
これが最初から本格ミステリと謳っていたのであればそれでいいかもしれない。しかしながら社会派であればホワイダニットが明かされてからの展開は明らかに浮いており、テーマが完全にぶれてしまったと言わざるを得ない。できれば最後までぶれることなく社会派と本格が融合した作品を書いてほしかった。
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2017年09月16日(土)
東野圭吾「マスカレード・ナイト」読了。警視庁に届いた一通の密告状。それによると練馬のマンシマスカレード・ホテルョンで若い女性が殺害された事件の犯人がホテル・コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現すのだという。あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再び――。
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敏腕刑事・新田浩介とホテルウーマン・山岸尚美の異色コンビが活躍するシリーズの三作目。一作目の「マスカレード・ホテル」同様、メインの殺人事件を追いつつホテルの客たちから持ち込まれた厄介な依頼を解決していく展開はなかなか読ませるものの、最後に明かされる肝心の真相がいただけない。
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これまでのシリーズ二作品はまだミステリ的な伏線がキッチリと張られている印象があったが、本作に関しては意外性だけで読者が解けるようには全く作られていないのが難。とはいえ途中の客たちの問題を解決していく部分は日常の謎物連作として読めばそれなりに楽しい作品である。
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矢樹純「がらくた少女と人喰い煙突」読了。強迫性貯蔵症という、がらくた集めが生きがいの少女・陶子の前に現れた心理カウンセラーの桜木。だが彼も「普通ではない衝動」を抱える人間であった。陶子の治療で訪れた狗島で起こる凄惨な首なし殺人事件。事件の解明と共に明かされる島の哀しい歴史とは?
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作者のデビュー作「Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件」に続く桜木シリーズの二作目。嵐の孤島で起こる不可解な連続殺人というと本格物らしいトリックやロジックを期待したくなるが、どちらかというと本作の見所は京極夏彦の某作を彷彿とさせるエログロナンセンスなドロドロの動機だろう。
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そのドロドロ具合はインパクト抜群な反面、動機に比重を置きすぎたせいか本格ミステリというより伝奇ミステリ的評価になってしまうのは好みが分かれるところだろう。とはいえ最後に明かされる仕掛けに関しては巧く機能していたと思う。
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2017年09月18日(月)
「この世界の片隅に」観了。すずという一人の女性の視点から描かれる戦時下の日常物というべき内容で、直接的な死の描写よりも日常の中にさりげなく織り込まれる死の描写の方が強烈な印象を残す。そんな中でも強く生きようとするすずの姿が実に鮮烈であり、観終わった後に確実に何かが残る作品である。
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友成純一「蔵の中の鬼女」読了。狂女として蔵の中に閉じ込められているはずの大地主の子供が包丁片手に小学校へとやってきた。その哀しい理由とは? 故郷、筑豊を舞台とした作品を始め、悪夢・幻夢の世界、怪談の遺伝子、映画へのオマージュなど友成純一のエッセンスが凝縮された15作品を収録。
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posted at 17:09:28
作者が90年代前半に雑誌に発表した単行本未収録短編15編を集めた四部構成のホラー短編集。ホラーと一言で言っても収録作はクトゥルー物、怪奇幻想物、怪談物、ホラー映画オマージュと幅広く、個人的にはどれも楽しめたが、その中でも特に一作推すとしたら、やはり「恐竜のいる風景」だろう。
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posted at 17:09:44
ジュブナイルテイストの本作は少年が顕微鏡で覗き見たミクロ的幻想譚から一転、マクロ的オチへと繋がっていく課程が秀逸。スプラッター要素を求めるとやや物足りないかもしれないが、それを差し引けばお馴染みの要素がふんだんに盛り込まれているので、作者のファンなら問題なく楽しめる作品集である。
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