麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2014年10月01日(水)
円居挽「クローバーリーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ」読了。時間や場所を問わず、大学構内のどこかで気まぐれに営業を始める神出鬼没のバー・三号館。お代は謎というこの奇妙な店で、妖艶な女マスター・蒼馬美希は今日も持ち込まれる謎を鮮やかに解き明かす。
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posted at 20:06:22
全五編収録の連作ミステリ。タイトルだけ見ればまんま○ディアワークス文庫だが、その印象はあながち間違いではない。故に三編目まで読んだ時点では「謎解きは丁寧だけど、これといって突出したところがない作品」としか思えなかったが、それも四編目から変わり始める。
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posted at 20:06:33
四編目は謎自体は大したものではないが、それを機に始まるコンゲームに作者らしさが出ていて○。そして、その作者らしさは連作のまとめである五編目で更に加速。一部読めるところもあるが、大掛かりなトリックとさりげない伏線が光る犯人当てで魅せてくれる。
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2014年10月04日(土)
笹沢左保「赦免花は散った 木枯し紋次郎(一)」読了。幼馴染みの兄弟分が起こした殺しの罪を被り島送りの刑に処された渡世人の紋次郎はひょんなことから幼馴染みに騙されていたことを知り以前から誘われていた島抜けの計画に参加することを決意する――表題作の他、四編収録。
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posted at 17:58:34
股旅物の傑作であると同時に秀逸なミステリとしても読める、作者の人気シリーズ一作目。全編何かしらの意外性が用意されているのが特徴で、特に表題作はそれが最も予想外のところからきて、かつシリーズ特有の虚無感を際立たせるのに一役買っているのが素晴らしい。
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posted at 17:58:44
虚無感でいえば紋次郎が何故命を狙われるか分からないホワイダニット「童唄を雨に流せ」もなかなかのもので逆転の発想とも言うべき動機とある対比が醸し出すやるせなさはかなり強烈。また「流れ舟は帰らず」の鮮やかな構図の反転はその手のフェチには堪らないものがある。ベストを選ぶなら「流れ舟」。
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2014年10月05日(日)
笹沢左保「影絵の愛」読了。プレイボーイの白川と不倫関係にある倫子に思いもよらぬ事件が降りかかった。渋谷のホテルで人妻が殺され、現場から夫の万年筆が見付かったのだ。夫にはアリバイがなく、目撃者の証言によりますます窮地に追い込まれる。倫子は夫の潔白を証明すべく奔走し始めるが……。
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posted at 18:16:36
不倫という要素をきちんとミステリとして活かした佳作。その活かし方にしても、さながら不倫パズルと言うべき凝りようであり、物語が進むにつれ次々と意外な人間関係が明らかになっていく様が実に素晴らしい。
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posted at 18:16:49
人によっては早い段階で真相に気付くかもしれないが、それを見越して展開でミスリードしようとしている点も○。終盤の展開がやや唐突すぎるのが難だが、それを差し引いても、不倫パズルが解き明かされた先に待つ皮肉な構図は一読の価値があると思う。
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2014年10月08日(水)
東川篤哉「純喫茶『一服堂』の四季」読了。珈琲の味はいまひとつ、でも推理にかけては一級品の人見知りの美人店主・安楽椅子(あんらくよりこ)が「春」「夏」「秋」「冬」に起きた四つの猟奇殺人の謎を鮮やかに解き明かす連作ミステリ。
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posted at 23:37:46
東川篤哉の新たな代表作とも言うべき秀作。本作は一見、流行りの○ブリア系ミステリっぽいが、扱っている事件は全て猟奇殺人、しかもバカミス度が高めなのが個人的に嬉しい。加えてキャラもやたらと立っており、東川作品の新シリーズ一作目は得てして微妙というジンクスを見事に裏切ってくれる。
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posted at 23:38:00
ミステリとしてみるとまず留守だったはずの家に忽然と磔死体が現れる二編目「もっとも猟奇的な夏」が秀逸で、大胆過ぎて逆に気付かない真相が明かされた時には思わず変な声が出てしまった(爆)。だがそれ以上に秀逸なのが物理的密室にして監視された密室を扱った四編目「バラバラ死体と密室の冬」だ。
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posted at 23:38:13
ここで披露されるとんでもないバカミスネタと連作ならではの仕掛けの合わせ技にはもう開いた口が塞がらない。巧い……けどそれでいいのか、東川篤哉(爆)。本作は表紙から全力で騙しにきている、作者渾身の作品である。
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2014年10月09日(木)
中町信「偽りの殺意」読了。東京から来た教科書会社の営業マンが群馬県猿ヶ京温泉の崖から転落死した。前日の夜に同宿した若い女と、被害者を恨む男が疑われるが、二人にはそれぞれ強固なアリバイがあった。――作者のデビュー作「偽りの群像」含むアリバイ崩しをメインにした中短編三編収録。
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posted at 23:05:45
作者が鮎川哲也に強い影響を受けて書いたというアリバイ物を集めた作品集。収録された三編ともシチュエーションが被っているのが難だが、まだ作者が文体トリックという作風を確立させる前に書かれたものだけに今読むと新鮮な印象を受ける。
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posted at 23:05:57
尤も使われているトリックはどれも今となっては古びてしまっている感が否めないが、その一方でミスディレクションの技巧やプロットさばきを面白く読んだ(前者でいえば「急行しろやま」、後者でいえば「愛と死の映像」)。
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posted at 23:06:15
特に「愛と死の映像」は中編にこれでもかとばかりにトリックが詰め込まれた力作で一部の仕掛けには後の作風の片鱗を見ることができる。あっと驚くような鮮やかなトリックはないが、堅実な書きぶりに好感が持てる作品集である。
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2014年10月10日(金)
黒沼昇「犯人がわかりますん。」読了。桂林館高校ミステリー研究部所属の超能力者・干支川圭一は良家のお嬢様・眞壁瑠璃子から失踪した彼女の母の捜索を依頼される。早速圭一は後輩で天才推理作家の小町柚葉と共に瑠璃子の家を訪れるが、そこで彼らを待っていたのは伝承に彩られた連続消失事件だった。
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posted at 20:22:41
ミステリ+ホラー+ラブコメで構成されたラノベらしい作品。本作で扱われる人間消失のトリック自体はどれもたわいないものだが、本作のメインは「何故やったか」であり、それが明かされて初めて設定が生きてくる点が○。
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posted at 20:22:50
そして本作が面白いのは真相が明かされても幕とならないところで、そこから恋愛パートへと繋げる展開は「失恋探偵ももせ」を彷彿とさせるが、本作はそれに加えてホラー要素を持ってくるなど工夫を凝らしている。見た目とは裏腹に(?)意外と練られた構成が好印象の作品である。
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posted at 20:23:02
2014年10月11日(土)
内山純「B(ビリヤード)ハナブサへようこそ」読了。元世界チャンプ・英(はなぶさ)雄一郎先生が経営する「ビリヤードハナブサ」。常連たちはプレーそっちのけで各人が巻き込まれた殺人事件について議論することもしばしばだ。そして今日もまた不思議な事件が持ち込まれ、推理談義に花が咲く。
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posted at 00:14:58
第二十四回鮎川哲也賞受賞作。まず書きぶりが手慣れている。キャラも立っている。扱う事件が毎回ビリヤードに絡めてあるのも洒落ている。たまにおっさん臭い表現が出てくるものの、小説としては文句なしの出来だろう。
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posted at 00:16:26
但しミステリとしてみると小粒だったり、どこかで見たものだったり、特殊知識に依存し過ぎだったりとかなり物足りない。事件の見せ方や論証の丁寧さを見る限りミステリセンスが全くないわけではないと思うので、次回作では小説よりも本格として優れたものを読ませてほしい。
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posted at 00:16:58
歌野晶午「ずっとあなたが好きでした」読了。年齢を偽りスーパーでバイトをする中学生、自殺サイトで知り合った者たちと練炭自殺を目論む初老の男、色香に惑わされて演劇サークルに入った男子学生、掲示板で知り合った匿名の相手に恋をした会社員など、ミステリの技巧を駆使した十三の恋愛短編を収録。
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posted at 18:13:38
作家・歌野晶午の巧さが存分に発揮された傑作。収録作を読んでまず驚かされるのは作者の引き出しの多さで、中にはこれまでの作者の作品を彷彿とさせるものもあるが、それでもこれだけバラエティ豊かな恋愛話を揃えるのはなかなかできるものではない。
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posted at 18:13:56
そして本作が何より凄いのはミステリの仕掛けが物語に絶妙な深みを与えていることで、それらは個々の短編(「黄泉路より」とか「ドレスと留袖」とか「幻の女」とか)だけに留まらず、連作としての大仕掛けにまで活かされている。
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posted at 18:15:53
これまでは作者の代表作というと「葉桜の季節に君を想うということ」が挙げられることが多かったが、本作はその葉桜に比肩し得る、新たな代表作に相応しい作品である。
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2014年10月12日(日)
連城三紀彦「処刑までの十章」読了。兄・靖彦が失踪した。弟の直行は土佐清水で起きた放火殺人、四国の寺で次々と見付かるバラバラ死体が兄の失踪と関わりがあるのではないかと睨み、高知へと向かう。真相を探る度に深まる義姉・純子への想いと疑惑に翻弄されながら、直行は事件の迷路を彷徨う。
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作者の一周忌に合わせて刊行された千枚級の大作。この作者ならではの嘘と情念と推理が絡み合う濃密な展開には圧倒される反面、ラストが些か駆け足気味なのが気になる。また真相にしても途中の仮説の方が魅力的な上に、一部の人物描写が足りていないためにイマイチぴんとこない部分があるのが難。
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posted at 18:58:11
何となく犯人の隠蔽のために風呂敷を広げすぎた感があり、お世辞にも良くできた作品とは言い難いが、作者らしさは十二分に感じることができるので、ファンであれば読んでみてもいいかもしれない。
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posted at 18:58:29