麻里邑圭人
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- 現在地 涅槃
- 自己紹介 ミステリ初心者。非実在探偵小説研究会所属。 【好きな作家】飛鳥部勝則/梶龍雄/殊能将之/早坂吝/麻耶雄嵩 【好きな作品】「カルロッツァの翼」「殉教カテリナ車輪」「竹馬男の犯罪」「翼ある闇」「魍魎の匣」 【好きな映画】「キルビルVol.1」「サスペリア」「サンタ・サングレ/聖なる血」「ダークナイト」「リベリオン」
2011年03月19日(土)
小島正樹「龍の寺の晒し首」読了。群馬県北部にある寒村首ノ原。その首ノ原の名家神月家の長女が結婚式の前夜に殺され切断された首は近くの寺に置かれていた。それを皮切りに次々と起こる奇怪な事件。ボートを漕ぐ首なし死体。さまよう生首。空を舞う龍……これらの謎に名探偵、海老原浩一はどう挑む?
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トリックの乱れ打ちとも言える作風から「やりすぎミステリー」と称される作者の最新作。本作も今までの作品同様、これでもかと言わんばかりの謎が詰め込まれているが、何故か真相が明かされてもイマイチ驚きが薄い。
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posted at 01:41:59
その理由は多分謎解きがあっさりし過ぎているからというのもあるが、それ以上に真相がどれもこちらの想像を大きく上回るものではなかったからだと思う。悪い作品ではないけれど今回は期待ハズレかなあ……と思っていたのだが、まさか最後の最後でしてやられるとは思ってもみなかった。
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三津田信三「七人の鬼ごっこ」読了。それは深刻な悩み相談を扱う「生命の電話」の相談員八重が受けた一本の電話から始まった。自殺を考えているというその男は毎日知り合いに電話を掛け誰も出なかったら首を吊るつもりだと語る。だがこの時八重はそれが連続殺人のきっかけになるとは知る由もなかった。
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posted at 19:42:53
版元が「禍家」「凶宅」などのホラー作品を出している光文社ということもあり、作品の雰囲気としてはホラー寄りだが、読み終わってみれば、きちんとしたミステリであることが分かる。ミスリードはあからさまだが、最後まで真相に気付かせない手腕はさすが刀城シリーズの作者といったところか。
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posted at 19:43:43
トリックというトリックはないものの、伏線の上手さが光る作品で、真相が明らかになると共にある場面に対する印象がガラリと反転する仕掛けが素晴らしい。他にも三津田作品を読んでいるとニヤリとする要素が多数盛り込まれており、三津田ファンはもとより三津田初心者にもお勧めしやすい作品と言える。
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2011年03月20日(日)
飛鳥部勝則「プロセルピナ」読了。恋人が住む五重の塔の五階にある部屋に、幾つもの無残な死体があるのを女は見た。だが女が目を離したわずかな間に部屋からそれらの死体が全て消え去ってしまう。何故そんなことが起きたのかはわからない。しかし、女は間違いなく見たのだ。
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posted at 09:44:58
昨今の飛鳥部長編ミステリを短編化したような作品。冒頭の残虐な殺人と魅力的な謎。神話をモチーフとした古典絵画と物語の融合。そして、あっと驚く消失トリックが解明された後に待ち受ける異形な結末。飛鳥部勝則という作家の全てが詰め込まれた贅沢な短編である本作は飛鳥部ファン必読の傑作である。
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山村正夫「忍者探偵 秘湯へ行く読了。おれの名前は佐分利健。服部半蔵の妾腹ながら数えて十七代目伊賀流末裔。厳しい忍法修行を終え、伊賀の里の秘湯で疲れを癒していたおれは、偶然にも東京の戌井産婦人科院長殺害事件に遭遇した。なんと、彼は車のトランクから溺死体で発見されたのだった。
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posted at 19:08:30
忍者探偵が様々な忍術を使い事件の真相に迫っていくという粗筋もかなりアレだが、読み進むにつれて、酔拳使いとのバトルやテレフォンセックス(!)、密室にダイイングメッセージと、どんどんカオス化していく展開が素晴らしい(爆)。
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posted at 19:09:29
ミステリとしては特に語るところはないが、破綻という破綻もなく手堅くまとまっているのではないだろうか(ただし手掛かりの出し方には若干不満あり)。むしろ本作はミステリ部分よりも作品全体から感じられるキワモノテイストを楽しむのが吉だと思う。
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白峰良介「飛ぶ男、堕ちる女」読了。男がマンションの屋上から飛び降りた。目撃者が駆け付けるとそこには女の死体が転がっていた――最初、警察は女が「じぶん殺し」というキャッチフレーズが目を引く新聞広告を所持していたことから自殺と考えるが、その数日後に今度は女の友人が何者かに殺害される。
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核となるアイディアは短編ネタだが、そこから上手く話を膨らませて一つの長編に仕上げている。派手さを求めるとハズレだが、確かな文章力と広告業界という舞台設定、丁寧な伏線による堅実な物語作りはこの時期の新本格作品としては珍しい方だと思う。
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posted at 19:12:27
個人的にはタイトルにもなっている冒頭の不可思議な状況が、ある皮肉な暗示になっている点は○。新本格が苦手な人でも本作ならば意外と抵抗なく読めるのではないだろうか。
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2011年03月21日(月)
千澤のり子「シンフォニック・ロスト」読了。北園中学吹奏学部には奇妙な噂があった。「部内でカップルができると片方が死ぬ」――そして、その噂通りに三年生の女子部員が死体となって発見されたのを機に次々と関係者が謎の死を遂げていく。
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posted at 19:26:50
残念ながら結末に辿りつく前に仕掛けが読めてしまった。この作品がアレ系なのはある程度のミステリ読者であればすぐに見当がつくと思う。ではどういった手で仕掛けてくるのか。そういった観点で読むと明らかに不自然な部分が目についてしまい、結末が単なる自分の予想との確認作業になってしまった。
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posted at 19:27:30
決して悪い作品とは言わないが、この手の作品を読み慣れた人間ならば、途中でだいたい予想がつくのではないだろうか。個人的にはそういった仕掛けよりも事件の真相の方が面白かった。思うに本作はミステリを読み慣れていない人の方が楽しめるかもしれない。
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posted at 19:29:02
竹本健治「妖霧の舌」読了。異常気象で連日霧の立ち込める東京・世田谷区では少女誘拐未遂事件が多発していた。一方ネットでは『悪魔の警告』と題した怪文書が横行。そんな中、遂に少女が殺害される事件が発生し、その直後に天才棋士である智久の対局相手が謎の失踪を遂げる。果たして事件との関係は?
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posted at 19:30:46
智久&類子シリーズ第二弾である本作は横溝的世界の前作から打って代わって、大都会を舞台にした、実にこの作者らしい作品に仕上がっている。例えば濃霧の中を徘徊する描写は「匣の中の失楽」を、怪文書に端を発した雲を掴むようなストーリー展開は「将棋殺人事件」をどことなく彷彿とさせる。
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posted at 19:32:13
そして読み進めるにつれて濃霧に包まれた東京がいつしか異世界のように思えてくるのは、竹本健治ならではだろう。正直ミステリとしては大した内容ではないものの、この作品全体に漂う妖しい雰囲気はかなり好み。幻想ミステリが好きな人であれば読んでみてもいいと思う。
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posted at 19:33:28
2011年03月24日(木)
野崎まど「小説家の作り方」読了。「小説の書き方を教えていただけませんでしょうか。私はこの世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのです」新人作家、物実はひょんなことから自分のファンと名乗る女性、紫に小説の書き方を指導することになる。紫の言うこの世で一番面白い小説とは一体何か?
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posted at 22:54:59
野崎まどの四作目である本作はタイトルだけ見るとまるで小説の書き方のレクチャー本のようだが、れっきとした「本格ミステリ」である。とはいえ、事件らしい事件も起こらない本作のストーリー展開には「どこがミステリ?」と大半の読者が首を傾げたくなることだろう。
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posted at 22:56:45
だがそこは野崎まど。これまでの作品同様思わぬ所から「ミステリ」の技法を駆使してジャンルの境界を軽々と越えてみせる。個人的にはキャラ付けとばかり思っていた描写がまさかの重要な伏線になっていることに感心した。ある意味、現代本格の最先端と言っても過言ではない作品に仕上がっていると思う。
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2011年03月25日(金)
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」読了。鎌倉の片隅にある古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は人見知りが激しいけれど、古書に関する知識は目を見張るものがある若く美しい女性だ。彼女はその膨大な知識と優れた洞察力を活かして、店に持ち込まれた様々な謎を解き明かしていく。
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posted at 19:29:56
良質な日常の謎もの短編集。本格と思って読むと若干詰めの甘さが気になるものの、普通のミステリとしては充分許容範囲だと思う。ちなみに第一話はミステリと言うより主人公のキャラを立たせるためのエピソードという意味合いが強く、ミステリとしての本番は二話目からと考えた方がいいだろう。
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posted at 19:30:59
ベストは第三話「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」。作者があとがきで古書についての話を書きたかったと語るだけあって、収録作はいずれも古書との結び付きが強く、そういう意味では古書好きの人にもお勧めの作品と言えるかもしれない。
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posted at 19:31:56
オヤジギショウ「病ミノ中ニ佇ンデ」読了。「探偵小説は、好きですか?」という台詞と共に語られる「行く先々で人間が死ぬ」という名探偵に欠かせない条件(?)。そして、その後に幕を開ける地方都市を舞台にしたバラバラ殺人事件。それはミステリファンならば誰しも心躍る導入部だろう。
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posted at 23:19:44
だが、生憎本作には推理要素なんてものはカケラも存在しない、ただひたすら厨二病的ラノベキャラによる壊れた物語が展開する。言うなれば本作は「行く先々で人間が死ぬという」という名探偵の条件を拡大解釈し、暴走されたような物語なのだ。
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posted at 23:20:42
とはいえ、そんな本作にもミステリ要素が全くないわけではない。これが計算なのかどうなのか判別できないが、最後の最後で本作は「真犯人は殺人鬼の群れの中に隠せ」と言わんばかりの真相をやってのけている。決して人には勧められない作品だが、個人的にはこういった作品は嫌いではない。
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posted at 23:21:45